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金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り

金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15030279.jpg日本のマスコミ報道の金与正バッシングが凄まじい。無理やり悪女に仕立てて口汚く叩いている。昨夜(15日)のプライムニュースでは櫻井よしこが出演し、金与正を「死臭の漂う女」と言って貶めていた。ある程度の罵倒は予想していたが、そこまでの悪口は非常識に過ぎるのではないか。三浦瑠麗の「スリーパーセル」の発言もそうだが、日本のマスコミ空間で、北朝鮮に対する誹謗中傷なら何を言っても構わないという風潮が蔓延している。北朝鮮に関わる存在を全否定して攻撃するための粗探しや虐待の言説に拍車がかかっている。まさにリンチそのものだ。若い女性が国際政治の大舞台で孤独に頑張っている姿を見て、個人として、もう少し内在的な視線を送ることはできないものか。少し視点を変えて公正に金与正を見てやれば、彼女はいつ金正恩に殺されてもおかしくない人物だ。この重要な外交でヘマをやった場合、韓国側との交渉過程で、あるいは宿舎での挙動で、少しでも兄に不信を買う態度を疑われて怪しまれた場合、即、告発され粛清されておかしくない立場にある。事実上のNo.2で白頭の血統という地位と身分であるからこそ、平壌での本人は常に危険な境遇に置かれているのであり、その緊張と精神的重圧は想像を絶するものがある。



金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15031404.jpg現に、白頭の血統の一人である異母兄の金正男は白昼暗殺された。中国がいつ金正男を担いで宮廷クーデターに出るか分からず、疑心暗鬼だったためであり、猜疑心の強い金正恩にとって枕を高くして眠れない邪魔な血縁だったからである。実妹で金正恩に何でも言えるという実権を持つ補佐役の身は、国内で否応でも期待がかかって声望が高まる立場になる。また、そのルックスとイメージのよさは、中国など外国から評価が上がり、ポスト金正恩を待望される「奇貨」の位置に彼女を置く。5年前に粛清された張成沢は金正恩の叔父であり、金王朝ファミリーの一員で側近中の側近だった。金与正が指導部の中で重要な役割を担えば担うほど、金与正に直接仕えるスタッフが増え、その結果、政治一般の生理として自ずと派閥が形成される状況になる。プルーラルな権力的位相に変化する。金正恩の暴君独裁への不満が強くなればなるほど、金与正の存在感と期待値が相対的に浮上する。それは、粛清される可能性が増すという意味に他ならない。北朝鮮のような閉ざされた権力空間では讒謗や密告の契機は必ずある。金与正の下に配された若手官僚が有能であればあるほど、古い官僚や党幹部の嫉妬を買い、失脚を狙った噂話が金正恩の耳に入るという事態は十分にある。

金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15032681.jpg金与正の身になって考えれば、毎日が恐怖の日々だろうし、とりわけ大役を与えられた今回の韓国訪問は、ミスの許されない命懸けの任務の遂行だっただろう。2泊3日の全行程をマスコミが追いかけ映像を流したが、2日目の晩餐会では笑顔の中に疲労が濃厚に滲んでいた。国家の命運を担ったいきなりの外交デビューで、全世界のマスコミから一挙一動が注目され、日米韓のマスコミからは粗探しの目で見られ、そのため、粗相や非礼だと揶揄されて口実を作る過失は絶対に許されず、さぞ神経衰弱を強いられたに違いない。外の世界からは冷笑と好奇心の対象となり、平壌からは監視の目が光り、実際に同行者(目付)によって24時間を監察され報告され、しかし成果は出さねばならず、30歳の精神的負荷はどれほどのものだったか。文在寅はそういう金与正に気遣いしてやっていた。3日目の夜、楽団を観覧する座席に隣り合って会話する絵は、お互いの疲労をねぎらい合う様子が垣間見えた。人は生まれる場所を選ぶことができない。誰が好んで北朝鮮などに生まれたいと思うだろう。たとえ王朝の王女様であり、一国のNo.2であっても、金与正に自由はなく、いつ残酷に処刑されるとも知れぬ恐怖の中で生きている。精一杯、自分に与えられた役目を努めるだけだ。そういう境遇を背負った振る舞いであることを、少しは理解してやる日本人はいないのだろうか。

金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15034004.jpg美女軍団も同じだ。どうしてあれほど罵詈雑言を言わなくてはいけないのだろう。匿名のネットならともかく、マスコミで、著名な論者やキャスターが異常な名誉毀損の暴言を吐きつけないといけないのだろう。彼女たちは北朝鮮のプロパガンダをやっているけれど、望んでやっていることではなく、彼女たちに責任のあることではない。上陸した米軍の戦車の下に手榴弾を抱えて飛び込む沖縄の鉄血勤皇隊の少年たちと同じだ。そしてそのことを、美女軍団を嘲弄しているマスコミ論者はよく分かっているはずだ。であれば、これは悲しい物語で、コンパッションを寄せるべき人間の現実ではないか。それを見て、むごく悲しいと思うのが正当な感覚と判断なのではないか。個性を消して全体主義のパフォーマンスをしている彼女たちも、本当は、心の中では、できれば客席の向こうの自由な人になりたいのであって、こんなことをしている自分の運命を恨んでいるのに違いないのだ。北朝鮮の美女軍団に生まれたくて生まれたわけではない。本人の希望で応援団に入ったかどうかも分からない。おそらく上から指名され強制されて、韓国行きのバスや万景峰号に乗ったのだろう。韓国に入るのは本人には大きなリスクだ。監視している同僚から帰国後に何を密告されるか分からないし、反省会(総括会)で言いがかりをつけられて糾弾されるか分からない。糾弾対象になれば収容所に送られる。家族にも累が及ぶ。移動中も、宿舎でも、五輪会場でも、気の抜けない息の詰まる一分一秒だろう。

金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15035221.jpgユネスコ憲章の前文にこう書いている。「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり、この疑惑と不信の為に、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。ここに終わりを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代りに、無知と偏見を通じて人種の不平等という教養を広めることによって可能にされた戦争であった。文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、 かつ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神を持って、果たさなければならない神聖な義務である」。このユネスコ憲章前文の言葉を、私はブログを始めた13年前からずっと何度も繰り返し紹介し、右翼化するこの国の風潮に警鐘を鳴らしてきた。誰かが、マスコミでユネスコ憲章前文を言わないものかと期待してきた。しかし、その努力は全く実を結ばず、日本人は義務教育で教え込まれたはずのユネスコ憲章前文と全く逆の精神に向かった。平和を否定し戦争を肯定する人間の心となって、敵国(北朝鮮・中国)に対する憎悪を滾らせ、日に日にその程度を増し病弊を重くしている。

金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15040901.jpg12日にバッハが訪朝を発表した後、米朝対話を前向きに観測する報道が出るようになった。15日のハンギョレの記事では、米国務省報道官のナウアートが、「相手が何を話したがっているのか、議題を設定するため、そのような議論をどう進めるかについて予め“敷居の低い対話”(chat)をすることもできる」と述べたとある。これは、ペンスが11日にワシントン・ポストに語った「米朝対話の用意ができている」という発言を裏づけたもので、昨年末のティラーソンの「前提条件なしの対話」の呼びかけを踏襲するものだ。バッハ訪朝の発表は、それを歓迎する一部が米国務省の中にあり、米国の中のタカ派とハト派の綱引きに絡む政治だということが窺える。金与正の「微笑み外交」とバッハの訪朝発表がモメンタムを作り、米朝和平への展望を確かなものにしつつある。少なくとも、平昌パラリンピックが終わる3月末までは、北朝鮮と韓国は南北の対話外交を自由に推進することができ、それを米国に軍事的に妨害される心配はない。13日夜にトランプと安倍晋三の電話会談があったが、どうやら中身は日本のマスコミ報道と違って、米国内に日本企業の工場を新設せよという要求が突きつけられたらしい。トランプは11月の中間選挙に焦点を当てて動いている。北朝鮮危機もそのゲームに利用する道具であって、したがって必ず軍事攻撃が行われるという方向性にはならない。

和平で決着する可能性がある。この電話会談は、安倍晋三の方からリクエストし、韓国を牽制するコメントを日米首脳が揃って発信するのが眼目だったのだろう。ところが、トランプの方は、待ってましたとばかり会談を貿易問題の要求を出す機会に切り換え、選挙でアピールする成果を準備する作戦に出たわけだ。トランプらしい。



金与正を侮辱し悪罵し人格否定する日本のマスコミ - 右翼の焦り_c0315619_15043145.jpg

by yoniumuhibi | 2018-02-16 23:30 | Comments(3)
Commented by 長坂 at 2018-02-16 21:03 x
三池淵管弦楽団の公演で、涙を拭う90歳の金永南委員長と与正氏、その隣に朝鮮戦争の難民で離散家族の文大統領と夫人。単純にいい絵だと思った。私が若い頃のオリンピックは、東西ドイツを始め冷戦で交流のない国々が一堂に会する本当に貴重な機会だった。オリンピックでなければ共産圏の人々を見るチャンスなんてなかった。米ソのどちらが先に核のボタンを押すかと言われながらも、東欧やソ連の選手の活躍を見れば声援を送った。亡命する選手もいた。閉会式では4年後又絶対会おうと約束し、別れを惜しんでいた。オリンピックはこういう歴史があるのに、何が「政治利用」よ。未だ冷戦構造の残っている東アジアで、南北朝鮮が統一旗の下一緒に競技してどこが悪い!平和の祭典で平和を願うのは当たり前だろう。
Commented by グーグー at 2018-02-16 23:44 x
国際問題を別にしたとき、金与正氏と若い軍団の女性に、旧き良き昭和の面影を見たように思いました。韓国の女性のようなメイクをしていない、純朴で清潔感のある顔立ち。同じ民族を南北に分断したことこそ、諸悪の根源なのに、争い合わねばならない人間の哀しさをつよく思います。
Commented by 私は黙らない at 2018-03-03 04:54 x
私は、与正さんが弟でなく、妹で本当によかったと思いました。(男系を重んじる社会で、この場合女であることは安全保障ではないかと。)
これが弟であれば、政治の表部隊に出てこれなかったし、兄も出すことはなかった。
与正さんが青瓦台を訪れた際の記帳「平壌とソウルが我が同胞の心の中でさらに近くなり統一繁栄の未来が早まることを期待します。」素晴らしい。
日本人は、南北に分断された朝鮮の人の気持ちを理解しなくてはいけないと思う。日本にとって、この隣人達は、反目の対象ではないはずだ。(某国の安全保障上、犠牲になっている同胞ではないか。)
イカとタコのジョーク、本当に微笑ましい。日本の外相は対話のための対話は不要などど言っているけれど、対話のための対話のどこが悪い。安倍政権は北朝鮮との独自のルートを持っているのだろうか。


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