毎日新聞の裏切り工作 - 三択方式に仕様変更された9条世論調査の怪

c0315619_17043199.jpg憲法改正の政治戦で、安倍晋三がマスコミを使って布石を打ってきた。巧妙に先手を取られた感がする。世論調査で攻勢を仕掛けてきた異変にお気づきだろうか。具体的に説明しよう。まず、1月3日の東京新聞の世論調査を見てみよう。9条改正について「必要がある」が41.2%、「必要はない」が53.0%の結果になっている。改憲の国会論議について「急ぐべきだ」が28.8%、「急ぐ必要はない」が67.2%とある。この記事が今年初めて見た憲法に関する世論調査であり、東京新聞の数字だからこんなものかと思いつつ、一方、今年は憲法の決戦の年だという覚悟で緊張していたため、新年にマスコミが出す憲法関連の報道が気になっており、この数字を見て安堵を覚えたものだった。幸先のよいスタートを切ったという感想を抱いた。ところが、そこから3週間後の産経の世論調査を見ると、全く逆の結果が出ている。「国会は憲法改正に向けた議論を活発化させるべきか」の質問に対して、67.2%が「思う」と答え、「思わない」の29.6%を大幅に上回っている。産経が出す世論調査だからということで、数字そのものは割り引いて考えてよいだろうが、右からこうした一撃が出たことで、3日の東京新聞の楽観的な世論報道は相殺され、正月のお屠蘇気分は吹き飛ばされてしまった。



c0315619_17102983.jpgだが、最も深刻な危機感を覚えたのは、その後に出されたNHK(9日)と読売(15日)と毎日(22日)の3社の世論調査で、質問の仕様が変わったことである。従来は、憲法9条の改正に賛成か反対かを単純に問うていたが、質問形式が更新され、回答が二つから三つの選択肢になった。①「2項を維持して自衛隊を明記する」、②「2項を削除して自衛隊を明記する」、③「9条をこのまま変えない」の三択になっている。そして、その結果、3社の調査とも、①と②を足した合計が③を上回るという結果になっている。ご丁寧に、その事実を本日(24日)の毎日が記事にして整理している。①は、いわゆる安倍改憲の中身と立場だ。②は石破茂らの立場である。③は共産党など護憲派の立場である。こうして眺めてみると、9条の世論調査をこの三択形式に変えた意味はきわめて大きく、その結果の影響も大きいことがよく分かる。つまり、結論を先に言えば、これは周到な世論工作の謀略であり、③の9条護憲派が少数派であることを印象づける目的の奸智なプロパガンダに他ならない。よく考えたものだと唸らされる。改憲派の陣営から見たとき、きわめて効果的な作戦であり、決戦の冒頭にこの戦略兵器を戦場に投入してきた。政治戦は常に情報戦であり、全ての戦いは先手を奪った方が有利であることは兵法の常理である。

c0315619_17050315.jpg安倍晋三ら改憲側は、マスコミの世論調査の仕様を変えることで、すなわち戦いの土俵を変える戦法で、護憲側を不利に追い込む攻略に出た。少数表象を塗り込んで萎縮させる手口に出た。昨年10月の朝日の世論調査を見てみよう。安倍政権のもとでの憲法改正に「賛成」が36%、「反対」が45%となっている。改憲派の方が少数の結果だ。共同通信の昨年12月の世論調査でも、憲法9条に自衛隊を位置づける「安倍改憲」に対して、「賛成」が36%、「反対」が48%の回答だった。これがマスコミが伝えていた昨年の世論環境であり、護憲派は多数表象を維持し、われわれが自信と安心感を持つ根拠になっていた。年が明け、空気が一瞬で変わった感がある。いったい何があったのか。陰謀論の誹りを恐れず、敢えて一言で政治の真相を衝けば、毎日新聞が裏切りに出たと直観する。3社(NHK、読売、毎日)の質問の基準が同時に変わった。不意討ちだ。朝日と共同が仲間に入っていない点に気づく。朝日も、1月23日に世論調査を発表していて、その中には憲法改正の項目もある。そこでは、「安倍政権下の憲法9条改正に」「賛成」か「反対」かを尋ねていて、「賛成」が34%、「反対」が46%となっている。これは昨年と同じ傾向と結果だ。質問と回答のフォームも変えてない。つまり、朝日は3社のスペック改変に加わらなかったことを意味する。

c0315619_17064296.jpg日本のマスコミの世論調査は、なぜか内容や形式が揃っているのが特徴で、各社が独自に質問項目や回答選択肢を考案するのではなく、世論調査の担当者が裏で集まって秘密の打ち合わせをして、コンパティブルなクエスチョネーアを設計している。そして、会社ごとに数値で傾向が表れるような、イデオロギー色の左右の幅が滲み出るような、そういう世論調査に最初から設定している。90年代まではこのような横並びはなく、世論調査は各社で企画が独自であり、独立した非互換の性格のものだった。現在のように、各社が共通仕様で毎月一度定期的に出すシステムになったのは、小泉政権(安倍晋三副官房長官)の頃からだろう。いずれにせよ、この正月から突然、憲法9条のマスコミ世論調査は概念が新しくなり、①と②と③の三区分で世論が反映される形態に変わった。本日(24日)の毎日の記事は、何とも嘘くさいというか、饐えた背信の腐臭を漂わせるものだ。記事の結論は、9条改憲が①と②に分かれて一つに纏まらないため、方向性が定まらず「自民党が頭を抱えている」という小咄になっている。これは、護憲派を油断させ、毎日新聞の読者を欺くための姑息な細工だろう。間違いなく、NHKと読売と毎日は裏で結託している。この記事の真の意味は、今後、9条の世論調査はこの三択方式を標準にするぞという宣告だ。朝日と共同も輪の中に入れと言っている。

c0315619_17065577.jpgそして国民に対しては、①の3項追加の「安倍改憲」がいいか、②の2項削除のスッキリ論がいいか、どちらかを選べと言っている。③の護憲論は共産党と同じ左翼だからやめとけと言っている。それがこの三択式の新世論調査のメッセージだ。この世論調査方式の転換は、静かなクーデターの発生であり、内実としては毎日新聞の劇的な改憲派への転向と言ってもよいだろう。読売よりは朝日に近く、保守というよりリベラルのイメージだった毎日新聞が変わった。今、朝日の社内は、臍を噛むか、戦々恐々となるか、あるいは一味の仲間に入ってしまおうかとか、少なからず狼狽しているに違いない。この三択の新世論調査は、2月、3月、4月と続行され定着するはずで、時事や日経も統一方式に準拠することが予想される。彼ら改憲派の狙いは、③の数字を時間の経過と共に小さくしていくことだ。条文を変えさせない9条護憲派を、さらに少数派に追い詰め、異端表象に固め、そうすることで立憲民主党と共産党との間に楔を打ち込み、離反させ、立民党の支持者を③から引き剥がす狙いだと思われる。そうした世論工作の計略を仕込み、2月以降も順次動かし、数値を思惑どおりに変化させ、5月の憲法記念日に次の大きな策を繰り出す予定だろう。3項追加策は変えてくる可能性がある。いずれにせよ、安倍晋三の支持率が高止まりしている間は、この三択方式の新世論調査が継続される。

c0315619_17070891.jpgマスコミの世論調査は世論操作だ。新三択方式に官邸が関与している疑惑は濃い。が、こうなった以上、9条護憲のわれわれが対抗する手は二つで、第一に安倍晋三の支持率を落とさないといけないし、第二に③の比率を増大させないといけない。NHKの世論調査では、③の「憲法9条を変える必要はない」が38%で、①と②を合わせた46%と差が小さい現状が表れている。この際、安倍機関紙の読売の数字は無視しよう。NHKの数字で③を上げ、①と②の合計値を凌ぐことが目標となる。そのための言論に死力を尽くすことが肝要だ。何度も言うが、マスコミの世論調査でこんな残念な結果が出てしまうのには理由があり、左派だのリベラルだのを自称する者たちが、未だに「新9条」の主張を捨てず、「新9条」に固執して強弁を続ける現実があることが元凶だ。リベラルに求められるのは、何より「新9条」を払拭することであり、「新9条」を唱えた者たちを断罪し、責任をとらせ、一人一人に自己批判を表明させることに尽きる。卑しく愚かな裏切り行為だった「新9条」の宣伝扇動が、左翼リベラルの中で総括されず清算されていないことは、異常で嘆かわしい思想的事態と言わざるを得ない。「新9条」は「安倍改憲」と中身は全く同一である。自衛隊を明記する明文改憲であり、平和憲法の否定と蹂躙と葬送だ。現在もなお、左翼リベラルは9条護憲で一枚岩になっておらず、井上達夫などの跳梁跋扈を許している。

「新9条」を唱導した主犯の佐藤圭(東京新聞)が処罰されていない。佐藤圭のバックで「新9条」への誘導を差配していた黒幕たちが指弾されていない。2項削除を率先して扇動した野間易通らしばき隊が糾弾されていない。政治戦は情報戦である。この9条を守る戦いは負けるわけにはいかない。内なる敵である「新9条」を完全に叩き潰し、思想的に克服し、獅子身中の虫を排除することを通じて、われわれは平和憲法の普遍性を確信し、9条を守り抜いてきた戦後民主主義の意義を再認識し、政治主体としてのエートスとパワーを取り戻し、改憲派との戦いに勝つことができるだろう。政治戦に勝つための要諦の第一は暴露である、と私は思う。三択世論調査の謀略と毎日新聞の裏切り工作をここで暴露した。



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by yoniumuhibi | 2018-01-24 23:30 | Comments(2)
Commented by Runner at 2018-01-26 22:33 x
まさに、世論調査の世論操作性を如実に示す事例で、いろいろ言わねばならないですが、まずは改憲論二つに護憲論一つではそれ自体が露骨に不公平。
一問目で「改憲か護憲か」を尋ね、二問目で「では改憲派に尋ねます」とやるのが普通なのに、その手順すら踏んでない。
あるいは、「新9条」派の一部が主張しているような「逆改憲」案も選択項目に入れれば「現状維持」が「中立」になるのに、それもやっていない。

しかし、そもそもマスコミがこういう「不正」をやるのは想定されたことであるのに、この国ではいまだに世論調査というものをそんなマスコミを信頼して依存していること自体が問題でしょう。
市民団体も自前でどんどん世論調査をやるべきだし、海外紙の日本支部にやらせるのもよいし、何よりも「大学」がどうして世論調査をやらないのか?
ジャーナリズム側の世論調査に対し、アカデミズムとしてより公正な世論調査をして示すというのも大学の使命ではないのか?
それとも、やってるのに表に出てこないのか?
Commented by 七平 at 2018-01-29 01:14 x
"骨の髄まで腐っている”と言う表現が日本語にありますが、日本のマスコミの現状を良く表していると思います。 日本での報道の自由グローバルランキングは世界72位から一層転落すると思います。 現在の日本では低開発国に見られる、見え見えの武力による報道弾圧より一層悪質陰険な知的犯罪に匹敵する報道統制がなされています。

古賀茂明さんが指摘されたように、政府はマスコミに対し懐柔と脅しの手法を巧みに使い分け、骨抜きにしてしまう。それらの手法は外国特派員にさえも及んでいると、ドイツからの特派員がレポートしています。 その記事につながるリンクを挿入すると必ず、私の投稿は妨害に会いますので、 ”5年間を振り返って/フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイツゥング紙の東京特派員カーステン・ゲルミス氏” をCopy-PasteしてGoogle 検索すると該当記事にたどりつきます。日本政府の情報統制特務機関が偽物記事に導く事もありますので、要注意。

第二次大戦で敗戦国となったドイツと日本を比べる時、前者は歴史の修悪をせず戦争犯罪に直面しNurenburg裁判の後、戦犯処理をドイツ人自身が行いました。一方、後者は東京裁判の後、日本人の手で残りの戦犯処理をしませんでした。米国にとって日本の民主化より、冷戦の砦としての日本に価値を見出し、事を曖昧にしてしまい、今日に至っています。世襲議員の多くは、戦犯処理を逃れた残党の子孫でもあります。

東条英機が 絞首刑に処せられた、即翌日、岸信介、児玉誉士夫、笹川良一が巣鴨刑務所より同時出所した事実が日本の米国に対する飼い犬化を象徴していると考えます。東条英機が死刑前に前述3名の放免を知っていたら、さぞ腹を立てた事でしょう。


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