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民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16435047.jpg一昨日(26日)、第2次安倍政権から5年というニュースをテレビが流していた。5連勝した国政選挙の絵が順番に並べられ、NHKもテレ朝の報ステも同じように安倍一強を強調する報道になっていた。支持率が50%もあるのだから、そういう報道になるのはやむを得ない。2年前、安保法制の政治戦を切り抜けて支持率を戻した後、安倍晋三はテレビ関係者への報復に出て、政権に批判的だった古館伊知郎・岸井成格・国谷裕子の3人を降板させる仕置きをやった。テレビはすっかり牙を抜かれ、安倍晋三に媚びて礼賛する番組ばかりになったが、今年の衆院選の圧勝を経て、さらに朝鮮中央テレビ的な放送私物化の度を増した感がある。見ながら思ったことは、次に選挙をやっても安倍晋三が勝つだろうということだった。多くの視聴者が、親安倍でも、反安倍でも、同じ感想を抱いたのではないか。再来年の夏には参院選がある。あと1年半後だ。あっと言う間に来る。1年半後に安倍政権が続いていたとして、それに対抗できる有力な勢力が存在しているだろうか。選挙で安倍自公に勝てる野党側の環境が準備されているだろうか。素人目にも、それは全く期待できないことが分かる。むしろ逆に、既成野党の方はさらに力を弱め、国民の支持を失って行く方向に向かうだろう。



民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16464222.jpg2017年は、民進党(民主党)が壊滅した年だった。山口二郎の「政治改革」に端を発して四半世紀続いたところの、二大政党による政権交代システムという政治イデーが音を立てて崩壊し、イデーにコミットする者がいなくなった年だった。「二大政党による政権交代システム」という演劇を上演する館はあり、下手な役者が舞台で芝居をしているのだけれど、館に観客が入っていない。チケットを買う客がいない。大塚耕平とか、玉木雄一郎とかが、「自民党に代わって政権を担う」とか「二大政党制の定着」などと言うのは、滑稽で噴飯なジョークでしかなく、壊れたスピーカーの音声反復を聞かされる興醒めでしかない。実際、彼らは勘違いしている。「政治改革」以降に次々と生まれた諸政党、すなわち、安保外交では自民党と同じ現実的な路線にシフトし、経済政策では自民党よりクイックでパワフルな「改革」を進めるのだとアピールして、二大政党の野望と幻想に挑戦してきた保守政党は、ことごとく同じ泡沫化の運命を辿ってきた。渡辺喜美と江田憲司もそうだし、小池百合子もそうだ。玉木雄一郎と大塚耕平も、彼らと同じ運命になるだろう。保守政党を自認し、「リベラル保守」などと嘯いている枝野幸男の新しい政党も、同じ資質と動機を引き継ぐかぎり、既成野党の俗臭が次第に露わになり、時間が経てば人々の支持が離れるだろう。

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16474353.jpg安倍自公政権を倒そうとする側の現状は、結局のところ、崩壊した民進党の残骸を頼りにして、永田町で議席を持っている民進系列の塊を中心にして戦うという展望しかなく、それを共産党がサポートする「野党共闘」の図式しかない。あまりにも貧弱で、とても将来に向けて勢力が拡大する感じがしない。「野党共闘」も2年間やってきて、そろそろ推進力のエネルギーが枯渇し、ぬかるみに立ち往生の気配になってきた。立憲民主党に内在して考えれば、共産党と共闘するという基本姿勢は最初から打ち出せる方向性ではない。基本政策(安保と憲法、税と社会保障)が違いすぎるし、そもそもの原点を顧みたとき、立憲民主党は民進党(民主党)の派生たる「連合左派党」であって、二つの党は基本政策以前に党のレゾンデートルで壁がある。共産党を否定し排除したところに、民進党(=民主党=山口二郎の「政治改革」党)が生きる地平が前提されていた。そうした違いは、一回一回のテンポラリーな選挙で共闘を組む妨げにはならないが、国政でブロックを長期間維持し、国民に一体性を証示することは原理的に不可能なものだ。時間とともに破綻が露呈する。実際、3年目の今年、民進党と共産党との共闘は破局を迎え、その結果、民進党は分裂して馬糞の川流れ状態になった。共産党が民進系列の残骸に共闘で揺さぶりをかけるかぎり、残骸党は刺激に過敏反応して際限なく分裂してしまう。

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16490436.jpgこのことは、共産党主導の「野党共闘」が、中期レンジの国政レベルではワークしないという矛盾を示すもので、根本的なところで「野党共闘」の戦略が論理的に失敗していることを意味している。私はその認識を2年前から説明し、「野党共闘」では安倍自公政権を倒せないこと、他の戦略を準備すべきこと、永田町の外からリベラル新党を立ち上げて投票率そのものを上げる策しかないことを訴え続けてきたが、誰も耳を傾ける者がなく、そうした考察と提案に興味を示す者は皆無だった。反安倍の側は、山口二郎と中野晃一が操る「野党共闘」の方向に収斂し、その路線に固着して、思考停止した体育会系の筋肉運動になってしまった。今もその動きが左翼リベラルで続行中である。
内部では相変わらず「野党共闘」のシンボルは不滅で健在だが、今後の永田町界隈の成り行きの中で、立憲民主党の表象が従来の民進党(民主党)の概念と交錯すればするほど、世間の評判は落ちて支持率は低下せざるを得ない。その結果、左翼・しばき隊が奉じる「野党共闘」は説得力を失う。結論的に、民進党(民主党)に対する世間の評価は決まったのであり、失望され、飽きられて捨てられたのだ。残骸であれ系列であれ何であれ、民進党(民主党)の過去と形質を引き摺る集合体は嫌忌されるしかない。「政治改革」政党への最終的審判が下った。だから、民進党の残骸に頼る既成野党の野合戦略には先がない。

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16494935.jpg一方、安倍政権を倒す条件はどんどん困難になっている。反安倍の左翼リベラルに自覚が必要なのは、そうした現実へのリアルな認識である。反安倍の側は、5年間で5回も選挙に連敗し、安倍晋三の圧勝と権力の増大を許し続けた。選挙で負ければ負けるほど、次に勝つ条件はヘビーでタフなものになる。反安倍の声は、霞ヶ関で抑えられ、マスコミで抑えられる。テレビは安倍晋三のプロパガンダ機関としての性格と機能を強め、反安倍の声は言論空間でよく反響しなくなる。そのことが、安倍内閣の高支持率の条件を作り出す。そうした悪性の循環が5年間も続き、日本の政治は5年前とはすっかり変質してしまった。5年前よりも右傾化の度が甚だしくなった。あのとき、ちょうど米国でトランプが出現したときと同じように、日本人もまた、極右の安倍晋三に対してアレルギー反応を起こし、歴史修正主義やファシズムの言葉を投げて猛反発の態度を示した。だが、5年間で5回も選挙に負け、内閣支持率50%で毎度年を越して新年を迎えるという生活を続けた結果、嘗てのような生理的拒絶反応は表から消えている。実感としては、年を追う毎に安倍晋三の支持者が増えていて、マスコミだけでなくネットの中も右翼色が濃くなった。慰安婦合意の日韓問題についても、5年前なら現在と同じ(安倍肯定の)意見に染まったとは思えない。社会一般のイデオロギーが明らかに右翼化している。右翼化が年々深まっている。

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16563651.jpg安倍政権を倒すために必要な力とエネルギーは年々大きくなっている、という、いわば政治物理学的な認識が必要だ。そういう客観的な認識が反安倍の側に欠けている。安倍晋三と右翼を甘く見ているから、共産党主導で既成野党を束ねる数合わせをやれば勝てる、というような安易な発想になってしまうのだ。単純に選挙区毎の過去の得票を計算して、幾つの選挙区でひっくり返せるというような楽観論に飛びつき、幼稚な根拠で政治戦略を立案し納得してしまうのだ。加えて、ツイッターというツールが、反安倍の左翼側に自己に対する過大評価を与える原因になっている事情もある。しばき隊シンパの論者が何か発信すれば、すぐに1000件とか2000件のRTの数を集め、影響力の大きさを可視的に誇示できる。そのため、言論戦の空間で右翼とイーブンに戦って切り結んでいるという感覚(錯覚)に陥りやすい。だが、投票箱を開けてみれば、共産党はわずか440万票しか得ることなく、得票率は8%でしかない。そのことは、マスコミの世論調査で最初から歴然で、共産党は3-4%の支持率しかなく、自民党の10分の1でしかないのだ。安倍政権を倒すためには、選挙で反安倍の政党が1500万票取る必要があり、巨大なエネルギーを創出して投票率を上げるという環境を作り出さないといけない。そのブームとモメンタムは既成野党の合従連衡では生み出せない。こうした最初の一歩の認識がないかぎり、反安倍の側は永久に負け続けるだろう。

それでは1年間、ご愛読ありがとうございました。来年は憲法改正の決戦の年です。正念場です。新年は9条護憲
について精力的に論じて行こうと考えています。必勝を期して、今年はここで筆を置きます。皆様、どうぞよいお年をお迎え下さい。

民進党(民主党)が終わった2017年 - 反安倍側は対抗戦略の一新を_c0315619_16585506.jpg




by yoniumuhibi | 2017-12-28 23:30 | Comments(4)
Commented at 2017-12-29 00:37
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 無頼派 at 2017-12-29 01:16
 今の野党共闘(市民連合なるものを加味しても)が安倍政権に対する有効な対立軸にほど遠いというブログ主の一貫した主張に同意しています。少し私の考えを補足しますと、今の野党でとにもかくにも軸となる政策の一致を望めそうなのは立憲、共産、社民、自由までですから、とても自公に歯が立ちません。維新、希望が正式に与党入りすれば、なおさらです。
 さらに、立憲は次の選挙で共産党と相互主義を原則にした候補者一本化をする見込みはなく、共闘よりも自党の伸長第一というスタンスを当分,変えるとは思えません。よって、4党の共闘も共産党の夢のまた夢(言葉は悪いですが立憲民主党への抱きつき)で終わるのはほぼ間違いありません。しかも、志位氏は今なお、民進党とは政策合意の実績があるから共闘のパートナーとするとお人よしなことを言っています。(実際は自分たちが唱えてきた共闘が破綻したと認めたくないため)
 問題は市民連合を名乗るグループ(広範な市民を代表せず、グループ内の意思決定の過程さえ見えないにもかかわらず、「市民連合」を名乗ることがそもそも問題。リーダー気取りの山口二郎の言説のいい加減さはブログ主が指摘されるとおり)がこういう野党共闘を至上のものと信じ込んだふりをして、市民に向かって、これしかないかのような幻想を振りまいていることです。
 今、私たち市民にとって重要なことは、頼むに遠く及ばない野党共闘にのめり込むことではなく(結果として個々の局面で「協力」関係を築くことは否定しませんが)、市民自体の中に反安倍政権、それに代わる市民主体の広範な政治勢力(政策立案能力も含め)を築くことだと思います。そうした市民主体の動きが、弛緩し劣化した既成の野党を鍛え直す力にもなると思います。また、新党結成に至らなくとも、選挙の時に市民が主体となって無所属候補者を擁立し、既成の野党が共同推薦するという形の「共闘」が最も現実的で望ましい「共闘」の形だと思えます。
 ブログ主には1年間の健筆、ご苦労さまでした。来年も、誰に気を遣うでもないご健筆をお祈りします。
Commented by Takahashi at 2017-12-31 08:22
いつも拝読しています。今年の記事では特に社会主義の捉え方に感銘を受けました。安倍一強に絶望的な気分にさせられながらも、貴ツイッター、ブログの記事を読み、理想を追求し行動していくことは無駄ではない、と勇気づけられます。来年もよろしくお願いします。
Commented by 愛知 at 2017-12-31 22:23
安倍政権を倒すために必要な力とエネルギーは年々大きくなっている、といういわば政治物理学的な認識―――今年、沖縄からいらした数人の草の根市民運動の方と直接、お話をする機会に恵まれたのですが、そうした認識を強烈に持たれており、かつ既存政党の宣伝ではなく、若い世代を含めた広範な市民の声の広がりを希求、熱望しておられるとの強い印象が。直接にお話しても腑に落ちる話ばかりで、道行く人にも本当に耳を傾けて頂きたいと胸を打たれました。根底にある人に対するやさしさは共通でしたが、ことに山城博治さんは印象的でした。貴下ブログに一貫してある人へのやさしいまなざしと重なって見えて。今年も残り僅かですが、一貫した正鵠を射たご教授に心より感謝申し上げます。


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