理念と政策の一致、筋を通すこと、数合わせ、永田町の権力ゲーム

c0315619_17023186.jpg選挙後のマスコミの世論調査が行われ、予想どおり立憲民主党が高い支持率を得ている。朝日の報道では、立憲民主党が17%、希望の党が3%となり、読売の報道では、立憲民主党が13%、希望の党が5%となった。選挙前の立憲民主党の数字が5%とか7%だったから、一気に2倍に躍進していて、国民の立憲民主党への期待の高さがあらわれている。野党第一党が支持率15%を超えたのは久しぶりのことで、民進党は長い間一桁の支持率で低迷していた。選挙の結果は自民党の圧勝で終わったが、ようやく安倍晋三と対決する野党らしい野党が出現し、枝野幸男という実力ある党首の下に一つに纏まった野党ができたことで、今後の政治に一つの光明が見いだせたような楽観的気配も漂っている。悪役となった希望の党が空中分解するのは間違いない。国民もその進行を歓迎し待望していて、前原誠司と小池百合子が破滅するドラマの顛末を年末までの娯楽の収納庫に溜め込んでいる。右も左もその感覚は一致しているから、マスコミはデフォルトで希望の党を叩いてよく、小池百合子と民進右派の面々は哀れな敗残兵役を演じざるを得ない。誰も同情しない。希望の党は世論調査の度に支持率を落とし、その分が立憲民主党の支持率に積み上がって行くだろう。



c0315619_17024215.jpg選挙後、枝野幸男は、筋を通すことの大切さを言い、永田町の数合わせと権力ゲームに与することはしないという姿勢をしきりに強調し、野党再編には参加しないと断言している。このメッセージが国民の中に清冽に響いて共感を広げ、立憲民主党の支持率をさらに押し上げる効果となっている。マスコミの政治屋たちの注目は、四つに割れた民進党の勢力がどうなるかであり、野党再編の行方に興味が注がれて床屋政談の駄弁がテレビで毎日行われているが、国民は無意味な離合集散にうんざりしていて、政権獲得ハングリーの合従連衡を拒絶する枝野幸男の言葉の方に爽快感を覚えている。この枝野幸男の方針は正解であり、立憲民主党の支持率を高める上でプラスの選択だと言えるだろう。国対委員長の人事を辻元清美にして、国会論議での安倍政権との対決路線を鮮明にした点も正しい。党運営を間違わず、国民が納得できる毅然としたメッセージを発信し、国会での政権批判の実績を積み重ねて評価を高めて行けば、2年後の参院選前に支持率は20%を超え、選挙区で自民党現職と十分に戦える展望を持てる。そのときは、共産党の下駄票を選挙区でねだる必要はなく、共産党との「野党共闘」を無理に演出する必要もない。単独で選挙戦を戦える態勢となる。

c0315619_17025503.jpg今回の選挙とそこに至る政治の一連の流れを通じて、今年の政治のテーマとなったのは、「理念と政策の一致」という問題だった。「理念と政策の一致が重要」というフレーズがずっと言われ続けた。現在はその言葉を枝野幸男が言い、国民から拍手喝采を受け、主張の中身が肯定されている段階にある。少し前までは、この言葉は前原誠司によってしきりに言われた。前原誠司も同じキーワードを頻繁に言い、「理念と政策の一致が重要」だと唱え、その主張が支持されて民進党の代表選を勝ち抜いた。前原誠司が言う「理念と政策の一致」とは、2年前の安保法制の政治戦を契機にしたところの、選挙での下駄票を動機にした共産党との蜜月を見直し、保守二大政党システムを追求する本来のあり方に戻れという意味で、リベラルに偏りすぎた党を保守に旋回させ、共産党との関係を断絶する方向性だった。代表選は、前原誠司と枝野幸男の二人で戦われ、憲法改正と民共共闘が争点となり、改憲賛成で共闘清算の前原誠司が圧勝した。希望の党への合流の提案が9月28日の両院議員総会で満場一致で支持されたのも、単に小池百合子のブームと人気だけが要因ではなく、代表選の結果と党全体の結論を踏まえた各議員の判断があった事実は見逃せない。

c0315619_17030624.jpg前原誠司による希望の党への合流の政治は、巷間では、理念なき政権獲得衝動が突出した暴走のように捉えられているが、実はそうではなく、左派を切る、共産党を切る、改憲一直線に進むという意味で、「理念と政策の一致」が原理主義的に実践された行動だった点を再認識しないといけないだろう。前原誠司に内在して言えば、妥協せず徹底して「理念と政策を一致させる」政治を推進したのであり、保守二大政党制の一翼を担うところの改革保守に純化した「自民党B」を作ろうと動いたのである。小池百合子と意見一致するのは当然だ。小池百合子と前原誠司の間で、理念と政策の面で不一致はないし、「踏み絵」と称される政策協定書を了承し署名して希望の党の公認を受けた50人ほどの面々も、その点で不一致は何もない。一方、現時点では善玉の表象となり、リベラルの軸で「理念と政策の一致」を強調して国民から歓呼を受けている枝野幸男だが、果たしてその主張がどこまで論理的に整合性のあるもので、最後まで貫徹される原理性を持っているかは慎重に見きわめる必要があるだろう。私の観点から言えば、リベラルの旗を掲げた今の枝野幸男の「理念と政策の一致」の方針は、どこかで豹変してリベラルを裏切る可能性も潜まれたものである。

c0315619_17032145.jpgここで考えるべき事実は、55歳の前原誠司と53歳の枝野幸男が、24年前の1993年からずっと同じ政党に属して政治家人生を歩んできた経歴だ。1993年に日本新党から出て初当選したとき、そこには小池百合子や野田佳彦や山田宏や中田宏や樽床伸二がいた。1994年に一緒に日本新党を離党して会派「民主の風」を結成、さらに一緒に新党さきがけに合流。1996年には一緒に旧民主党の結党に参加、98年には新民主党に参加、以後ずっと民主党現職で当選を続けてきた。さらに二人は同じ派閥である凌雲会の同志で、枝野幸男は凌雲会の幹事長を長い間努めてもいる。これほど長く同じ政党とグループで活動を続けてきた二人の政治家が、「理念と政策が一致」しないということがあるだろうか。世間一般の表象と観念においては、前原誠司は保守、枝野幸男はリベラルと、二つにくっきり分かれた構図になっている。だが、二人は30歳の頃からずっと同じ政党の中にいて、派閥まで同じ仲間だったのである。さらに加えて、枝野幸男は自らを保守政治家だと言い、憲法9条改正の私案を2013年9月号の文藝春秋に発表していて、その中身は安倍改憲の中身と全く同じだ。自衛隊と自衛権を位置づける条文を明記するだけでなく、集団的自衛権の行使まで容認している。

c0315619_17033365.jpg私の見るところ、枝野幸男は前原誠司と同じかそれ以上に権力への野心の強い男で、また、そうでなければ長く政治家を続ける資質を持てないし、ウェーバーもそう言っているけれど、どこかの時点で、保守側に立ち位置を寄せて政権を狙いに行く展開は十分に予想される。最後にもう一つ、「理念と政策の一致」の問題で言えば、共産党が進めてきた「野党共闘」は果たしてどういう評価ができるだろうか。今回の政変と選挙結果により、共産党の「野党共闘」の戦略は完全に破産したと言っていい。私は2年間ずっと、それは理念なき野合であり、必ず崩壊するに違いないと批判的な予言を言い続け、左翼から罵詈雑言を浴びてきたが、結局、その予測が的中する事態になった。民進党が前原誠司を代表に選び、共産党と手を切って希望の党に合流する道を選んだのは、民進党に即して言えば、2年間悩みに悩んだ末の進路であり、連合の意に沿った決断であり、左から揺さぶられて右バネがはたらき、民進党(民主党)の結党の原点に戻った結果である。民主党にとって共産党は天敵であり、めざす二大政党の政権交代システムの構想の中に共産党の生きる場はない。共産党と組む絵もない。そのような二党が国政でブロックを組めるはずがなく、一点共闘の関係を永続させられるはずがないのだ。

「野党共闘」(=「市民と野党の共闘」)は共産党を起点とする共産党の党利党略であり、野合を本質とするテンポラリーなものだった。それは「理念と政策を一致」させた政治ではなかった。共産党が大きく得票を減らしたのは、共産党の戦略にそもそも矛盾があったことが原因で、幻想を追いかけていたことが誤りであり、幻想を有権者に説得していたことが誤りだったと言える。

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by yoniumuhibi | 2017-10-26 23:30 | Comments(4)
Commented by コンセプトライター男子 at 2017-10-26 22:28 x
既存の政党や国会議員は政党交付金を供託金にあててる一方で、日本国の供託金は英国の10万円の30倍
カナダの40倍であり、現状の供託金は「議員の資格を収入によって差別してはならない」
憲法第四十四条に違反し、政党交付金を受ける既存国会勢力の参政権独占である。

重要社会資本や農地などの私有維持はいずれグローバル外資企業の私有化となっていく
ことがグローバル市場経済の論理である。
スエーデンの相続税廃止は社会民主主義の終焉を意味しとおり、重要社会資本や農地の公的所有を
肯定することが未来の進歩派に求めれれるだろう。
自由民主主義でも社会民主主義でもない思想が求められるのであり、功利民主主義という運動でも
日本に起きるようにするには参政権促進として供託金を英国並にすることが重要となる。


Commented by 連立政権を狙え at 2017-10-26 22:43 x
枝野幸男が、政権交代を狙うのは、政治家として当然であり、
その実現を期待したい。

今回の選挙から学ぶべきは、
リベラルを求める国民が多いこと。
保守勢力による政権交代は実現しないこと。
二大政党制が求められていないこと。

つまり、前回のような、二大政党的な政権交代を目指すと失敗する。
もともと、自民党政権の内実は、派閥による連立だった。
そして、現自民党政権だって、連立なのだ。
連立政権こそ現実的なのだ。

相手が、「安倍・右翼・タカ派・政権」なのだから、
立ち位置は、「枝野・中道・ハト派・政権」になる他ない。
リベラルを切り捨てれば、自民党政権と交代させる必要がない。
Commented at 2017-10-28 01:47 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by コンセプトライター男子 at 2017-10-31 00:03 x
枝野自身がリベラルではなく保守だと宣言してることから
枝野も保守二大政党制論者にすぎない。
立憲民主党も第2の民主党にすぎないだろう。
民主党と同じく思想的に曖昧で、機能としては
55体制の社会党的役割がせいぜいだろう。


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