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山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース

山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース_c0315619_17065259.jpg革命とは、単なる政治権力の移動にとどまらず、これまでの社会の常識や観念が根底から崩れて新しく置き換わるような、人々の世界観の変動を伴うものだと丸山真男が『現代政治の思想と行動』の中で論じていた。辞書をひもとくと、革命の語の意味について、(1)「天命が革(あらた)まること。前の王朝が覆って別の王朝がかわって統治者となること」という中国の易姓革命と、(2)「被支配階級が、支配階級を倒して政治権力を握り、国家や社会の組織を根本的に変えること」というマルクス的な説明の二つが整理されている。手元の1954年刊の平凡社の政治学事典を確認すると、後者の概念だけが詳しく記述されていた(P.156-159)。政治学における革命の語の言説と用例は、もっぱら後者の範疇で語られていて、中国の易姓革命の意味は排除されている。この点、Revolution を革命と翻訳して定着させた幕末・明治の知識人は、少なからず語感の適合性や安定性に不具合を覚えたことだろう。そしてまた、われわれの観念の中に、中国の易姓革命なんぞは学問的に意義の低いもので、これを真面目に政治学の理論の部材に使って現実政治を分析する道具にするなど問題外だという、アジア蔑視の価値観があることも間違いない。



山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース_c0315619_17072300.jpgだが、今回の内閣支持率下落と都議選大敗の二つのショックを見て、その政治の風景を言語で意味づけるとき、易姓革命の表象を当てて擬える方法こそが真をついていると私は思う。易姓革命の概念には被支配階級の存在はないけれど、不条理な暴政と専制支配に苦しむ民衆はいる。堪りに堪った不満と怒りの爆発があり、政権を転覆させる人民のエネルギーはある。易姓革命の歴史と概念も、丸山真男の革命の語法に当て嵌まると考えてよい。もしも、次のマスコミの世論調査でさらに一段の支持率下落があり、第三のショックが連続し、流れが止められなくなり、安倍晋三の失脚と退陣という事態になれば、全体として眼前で進行している政治は革命と呼べるものになるだろう。徳を失った現在の王朝が天に見切られたとき、天の命が革まるとして、古代中国の人々は王朝の終焉・継起を伴う政権交代を思想的に正当化した。まさに、今、安倍晋三の独裁体制は徳を失って天から見限られた状態だ。安倍晋三が失脚したとき、安倍的なもの、安倍カラーの諸々は価値を剥奪されて全否定され、安倍人脈で引き立てられて出世した者は、世間や周囲の恨みを買って石を投げられることになるだろう。価値観が転換する。そういう経験を、おそらく古代中国の人々は繰り返し、易姓革命の考え方となったのだろう。

山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース_c0315619_17075498.jpgさて、注目の憲法改正論議だが、与党の中で鬩ぎ合いが行われている。都議選から3日後の7月5日、安倍晋三が欧州に出発したのを見計らったように、公明党の山口那津男が憲法改正について「政権が取り組む課題ではない」と断言した。さらに「与党の枠組みはただちに憲法の議論につながるものではない」と言い、発議は国会が行うもので政権与党が主導して行うものではないと言い切った。この映像は6日の報ステで詳しく紹介されたが、国民の世論と自民党内の論議に大きな影響を与える一撃だろう。昨年の憲法記念日にBSフジのプライムニュースで憲法論議があり、下村博文や辻元清美が出演して4党(自公民共)の間で論戦が行われた際、公明党の国重徹は、明確に9条1項2項はそのまま守ると言い、改正の必要はないと党の立場を明言した。5日の山口那津男の発言は、公明党のその基本姿勢に変化がないことを明示したものだ。世間では加憲派だとされる公明党は、実は、「新9条」を唱えて明文改憲するべく策動している佐藤圭(東京新聞)や鈴木耕(マガジン9条)やしばき隊などよりずっとファンダメンタルな護憲派だ。公明党の口から、この条文を変えろという改憲論を聞いたことがなく、憲法論議の現場では常にブレーキ役に回ってきた。

山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース_c0315619_17082583.jpg衆院選は1年後にある。自民党の衆院の現職議員は287人いて、小選挙区選出議員が224人もいる。その多くが2回生以下の選挙基盤が脆弱な安倍チルドレンであり、彼らは公明党の票の上積みがなければ議席を守れない者たちだ。山口那津男の発言の意味は小さくないだろう。少し脱線して私論を述べさせてもらうが、現在、マスコミの議論では、公明党は、都政は都民Fで国政は自民で二つの使い分けだと言われている。だが、そんな意味不明な使い分けを有権者が許すだろうか。1年後、早ければ半年後かもしれない衆院選の東京の小選挙区で、公明党が今度は自民党の現職を応援しますなどと、そのような出鱈目な選挙運動をやって、有権者の理解と支持を得られるだろうか。半年後だろうが1年後だろうが、間違いなく小池百合子は国政新党で出陣するし、東京の小選挙区に新人候補を並べるだろう。それが有権者が求めている政治の絵であり、それをやらなければ小池百合子は世間の期待を裏切ってしまう。ポピュリストの小池百合子は、大衆とマスコミのニーズを掴む人気取りの政治しかできず、その軌道を外れれば忽ち失墜する。逆に言えば、現在の所与として、大衆とマスコミのニーズを掴んで自民党に勝利できるのは小池新党だけだ。民共の「野党共闘」では自民現職に勝てない。

山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース_c0315619_17085547.jpgその山口那津男の重大な発言を、NHKは5日6日の放送で伝えず、ネットの報道配信にも載せなかった。NHKの政治ニュースのサイトを確認すれば分かるが、記事が上がっていない。これは驚くべき隠蔽工作だ。朝日の6日の朝刊紙面では、1面と3面に記事が載っている。NHKのサイトでは、かわりに、自民党憲法改正推進本部の本部長の保岡興治の発言が出ていて、「憲法改正案 秋の臨時国会までに取りまとめへ」と見出しが打たれている。中身を読むと、保岡興治が安倍晋三の意向どおり、秋の臨時国会に自民党の憲法改正案を提出するべく、取り纏めの前倒しへの決意と自信を述べたような論旨になっている。一瞥したかぎりでは、改憲案取り纏めの前倒しは順風で、安倍晋三の指示どおりに保岡興治が動いて、推進本部の作業が進行中という様子に読み取れる。これは他の民放の報道とは全く異なる認識だ。ところが、朝日の記事によれば、保岡興治の「改憲案への提出」は、党原案の正式提出ではなく、叩き台レベルのものを憲法審査会に出すのだとある。ハードルを下げたものだと朝日は解説していた。自民党が正式に決定した改正案でないものを憲法審査会に出されても、国会側(野党側)は扱いに困って混乱するだけで、発議に向けての議論が前に進むことにはならないだろう。

自民党内の改憲論の空気は後退して弱気になっている。朝日の記事が事実であれば、NHKの報道はフェイクニュースだということになる。



山口那津男の改憲制止論とそれを隠蔽するNHKのフェイクニュース_c0315619_17093105.jpg

by yoniumuhibi | 2017-07-07 23:30 | Comments(5)
Commented by ネット受信料を払うの? at 2017-07-08 00:01 x
公明党山口代表が、憲法改正について
「政権が取り組む課題ではない」と断言したという事は、
まぎれもない事実である。
それを、まったく無視するなど、そんな、報道機関があるか。
それが、半強制的に、我々から受信料を徴収しているNHKだというのだから恐れ入る。

そのうえ、NHKは、ネット受信料などというとんでもないことを言い出している。
ネットの人々は、今回のNHKの姿勢を許してはならない。
いますぐNHKに総攻撃をかけるべきだ。
安倍政権が、改憲したがっているからといって、
こんな姑息な、やり方で、認めてもらおうなんて、恥ずかしい!

ネットを主戦場とする右翼の人たちよ。
あなたたちは、ネット受信料を払うつもりなんですか?
NHKの、こんな恥知らずなやり方を、良しとするのですか?
Commented by 一読者 at 2017-07-08 19:35 x
フェイクニュースといえば、九州の豪雨災害の扱いもひどいですよね。
発生からもう3、4日経っているのに、いまだに被害の全容がわかっていない。この情報技術の発達した時代に、何をやっているのか。
ここの自治体は本当に能力が低い、福岡県大分県は何をやっているのか。同時に、ここ以外の自治体でも、山間地の集落はこういう扱いなのだろうか。日本は地方の小さな集落を見捨てているんだな、とはっきりわかります。
現地の捜索が追い付かないので、被害の状況も小出しにされているが、大災害ですよ。
それと、気象が変化しているのに、気象庁の体制がそれに追いついていない。
Commented at 2017-07-08 20:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ともえ at 2017-07-08 23:46 x
安倍の腐臭を放つ政治に、長らくTVニュースや新聞が苦痛で、このブログを窓口に世の中と繋がるという楽な暮らしをさせて頂いておりました。ブログ主様は相当過酷な状況だったことを思い、申し訳なくまた感謝でいっぱいです。そしてこの度は易姓革命ということを知り、感銘を受けております。
山田洋次が『映画をつくる』(国民文庫)の中で、日本は全員一致するまで話し合うというやり方があり、多数決は日本には馴染まない、ということを言っていました。現にこの田舎では「一人でも反対の人がいれば気持ち悪いから・・」というスタンスで集落の事柄が運営されています。革命も欧米とは違うのではないかとずっと思っていたので易姓革命ということを知り、やはりアジアにはアジアの、日本には日本のやり方があるのだろうとあらためて思いました。
 ちょっと話は飛びますが、ブルーノ・タウトが「現代における最大の世界的奇跡」と評した桂離宮を持つ日本なのですから。
Commented by ポー at 2017-07-09 16:25 x
北欧旅行もあるでしょうが、前川さんと国会で対決したくないから日本に帰国しないんですね。前川さんと堂々と対決したらいいじゃないですか、無理でしょうけどね。
帰国するまで朝倉日田は見捨てる、総理不在を目立たないように控えめに報道する、総理以外の者がしゃしゃり出て対応するなどまかりならん、北欧も控えめに報道して前川さんのほとぼりが冷めたころひっそりと帰国。
劣等感の塊の小心者の考えそうなことですね。


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