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山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕

山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15065819.jpg一昨日(10月17日)の記事を上げた直後、山城博治逮捕の報道があった。急な展開であり、そしてまた、沖縄右翼の予告どおりに本人が逮捕されたことに驚かされた。沖縄右翼の手登根安則が山城博治の逮捕を予告したのが10月14日金曜であり、そこから3日後の、週が明けた10月17日月曜の午後に瞬殺で逮捕されてしまった。すべて計画的に動いている。ただ、逮捕の中身は沖縄右翼の手登根安則が動画で言った話とは違っていて、意表を衝いた現行犯逮捕であり、北部演習場内に張られていた有刺鉄線をペンチで切断したという器物損壊の容疑だった。一報を報じたのは産経で、夜に毎日と時事が続き、深夜には朝日が配信、琉球新報と沖縄タイムスも報道した。琉球新報の記事にはこう書いている。「沖縄県警名護署は17日、米軍北部訓練場(沖縄県東村・国頭村)内で沖縄防衛局がヘリパッド移設工事現場で使用していた有刺鉄線を切断したとして、沖縄平和運動センターの山城博治議長(64)を器物損壊容疑で現行犯逮捕した。山城議長は取り調べに黙秘しているという。接見した金高望弁護士は逮捕手続きに疑義があると指摘し『必要性のない不当な逮捕だ』と話した」。



山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15085504.jpg逮捕容疑は17日午後3時31分ごろ、北部訓練場内で工事現場と提供区域内を隔てるフェンスに設置された有刺鉄線2本をペンチのようなもので切断した疑い。防衛局の通報を受けた警察官が、山城議長が区域外へ出るまで追跡し、東村高江の県道70号に出た後の午後4時22分、準現行犯として逮捕した」。準現行犯というのは、特定の罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる者のことを指し、刑事訴訟法212条2項で規定されている要件に該当する場合を意味する。具合的には、(1)犯人として追呼されているとき、(2)贓物又は明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持しているとき、(3)身体又は被服に犯罪の顕著な証跡があるとき、(4)誰何されて逃走しようとするとき、である。今回の場合、可能性としては(1)あるいは(2)が適用されたと考えられる。(1)の「追呼」とは、犯人として追われているか犯人として呼びかけられている状態をいう。事件の現場では、有刺鉄線の切断を目撃した防衛局職員が警察に通報、警察官が追跡して50分後に県道70号上の車内で逮捕している。そのときペンチかニッパーを所持していれば、(2)を適用する根拠となるだろう。

山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15095597.jpg14日に沖縄右翼が言っていたのは、8月25日にP1裏テントで起きた「書類強奪」事件の容疑である。これは防衛局側が被害届を出していたものだが、すでに逮捕状が発行されていて、逮捕が秒読みなのだと手登根安則は言っていた。だが、実際には、逮捕は現行犯逮捕の形となり、器物損壊という想定外の容疑がかけられる顛末となった。この展開はどう考えるべきか。一つの推理としては、右翼が嘘八百のブラフを言っている疑いがある。もう一つは、裁判所に逮捕状の交付を蹴られた可能性が考えられる。右翼の予告は自信満々だったが、普通に考えて、この高江のクリティカルな状況の中で、裁判所が県警からの山城博治の逮捕状請求を承認することは政治的にリスクだ。山城博治はこれまで二度、辺野古の抗議行動中に逮捕されたが、いずれも釈放となっている。裁判所が勾留請求を却下したか、検察が勾留請求を断念している。裁判所にも政治的な立場があり、政権の論理に一方的に与して露骨な弾圧司法の共犯者になるのは躊躇するだろう。この推測がもし当たっていたとすれば、令状に基づいた通常逮捕は無理になり、警察は自供を狙った別件逮捕、すなわち現行犯逮捕の形で身柄を拘束するしかない。その選択をしたのではないか。

山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15104429.jpg18日の沖縄タイムスの記事を読むと、山城博治は午後3時18分に市民20人と共に北部演習場内に進入している。有刺鉄線を切断したのが、それから13分後の午後3時31分。沖縄タイムスの記事にある市民の目撃情報では、その後、N1地区の作業ヤードで抗議行動をしていたところ、背後のフェンスを開けて機動隊が出てきて揉み合いになったとある。「もみくちゃになりながらも山城議長を取り返した」とか、そのとき複数の警察官が有刺鉄線切断の事実確認を聴取していたとあり、沖縄県警が山の上手と斜面下の県道70号の両方から山城博治を挟み撃ちにして捕縛したことが察せられる。これを見ると、17日の現行犯逮捕は偶然の出来事ではなく、明らかに用意周到に計画されて遂行された作戦だ。N1での山城博治の動きを朝から見張っていて、有刺鉄線を切る瞬間を待機し、それを防衛局側に撮影させると同時に通報させ、器物損壊による現行犯逮捕の形式を整えている。14日に仲間である右翼が予告を出し、「近日中に逮捕」と明言していたから、それを成就させるべく、なりふり構わずどんな形式でもやってしまえという行動になったのだろうか。当然、そこには佐藤正久の介在があり、菅義偉と安倍晋三の意思があるだろう。この事件は官邸マターだ。

山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15112970.jpg官邸が指示している。指揮系統の末端に沖縄の民間右翼がいる。逮捕は民間右翼が予告し、警察が執行した。戦前の小林多喜二も、このように特高と右翼に憎悪され、標的にされ、予告され逮捕され拷問で殺害された。沖縄では、ファシズムがファシズムらしく古典的な姿で現実に進行している。沖縄でファシズムがファシズムらしい現象形態をとるのは、そこにファシズムに抵抗する政治的実体があるからだ。抵抗を潰すため、小林多喜二を殺したように山城博治を狙って潰している。本土では、ファシズムに抵抗する政治の契機がないため、ファシズムは古典的な暴力性を帯びない。ところで、高江のヘリパッド建設阻止は、辺野古と違ってオール沖縄のアジェンダになっていない。オール沖縄、すなわち翁長県政の共通公約に入っておらず、辺野古とは対応方針を分けられている。菅義偉が来沖したときに、翁長雄志が北部演習場の早期返還を歓迎する発言をしたのは、そういう背景があり、辺野古と高江の政治的位置づけの違いが根底にある。本来、7月にヘリパッドの工事が強行された後は、沖縄らしく、大規模な県民集会が打たれ、そこに翁長雄志が立ち、沖縄県民の断固たる決意を本土と安倍政権に示さないといけない。自己決定権の主張をビジブルに見せないといけない。

山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15121524.jpgだが、高江の問題は辺野古と違ってオール沖縄で温度差があるため、その政治が実現せず、そのため、安倍政権と右翼による猛毒のファシズムが高江で現実化する事態となってしまった。7月11日に高江の工事が強行されたとき、警察が抗議市民を暴力的に排除する場面が報ステで報じられたが、富川悠太は、「高江のヘリパッド工事はこのまま進む予定です」と簡単に言ってニュースを締めくくった。問題はあるが政治的には決着済みという説明をした。SACO合意があり、高江のヘリパッド新規建設は北部演習場返還の条件であり、沖縄県がそれを認めているからやむを得ないのだという、朝日の認識と視点が視聴者に示されていた。加えて、自治体である東村の村長が工事に賛成している事実があり、埋立工事に名護市長が反対している辺野古とは意味が違うという前提もあるのだろう。それっきり、(私の記憶では)報ステは一度も高江の問題を取り上げていない。本土の一人の人間として素朴に疑問に思うのは、SACO合意を根拠にして高江のヘリパッド建設を容認してしまったら、その論理の延長線上で、そのまま辺野古の新基地建設も合理化・正当化されてしまうのではないかという危惧である。この疑問について、琉球新報や沖縄タイムズは、あるいはオール沖縄の中枢はどう整理しているのだろう。

米国と安倍政権が沖縄に言うところの「基地負担の軽減」は、実のところ真っ赤なウソで、口先の見えすいた口実であり欺瞞に他ならない。ここで懸念され、また不審に思われるのは、山城博治逮捕について、福島瑞穂と社民党が何の反応も示していないことだ。48時間のタイムリミットを過ぎるのに、コメントを出す様子がない。事件を素通りしている。いつもであれば、すぐに不当逮捕だと抗議声明を出し、名護署まで飛んで行って接見し、署の前に集まった市民の前で身柄奪還の檄を飛ばしていていいだろう。福島瑞穂や社民党の「静観」は、検察や裁判所のこの事件の処理と判断に悪い影響を及ぼすのではないか。最初に書いたように、彼らも政治の中の一つのステイクホルダーであり、高江をめぐる政治動向を注意深く見守っている。昨年2月、キャンプシュワブの敷地境界線で山城博治が拘束され、名護署に移送されたときは、全国的に注目のニュースとなり、多くの市民が名護署に集結し、刻一刻を息をのんで皆が見守った経緯がある。どうやら、今回はそこまでの関心事に盛り上がっていない。逆に、警察・防衛局の情報をネットでリークする右翼が政治の主導権を握っているようにすら見える。


山城博治逮捕の謀略と戦慄 - 右翼の予告動画から2日後の現行犯逮捕_c0315619_15130012.jpg

by yoniumuhibi | 2016-10-19 23:30 | Comments(0)


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