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沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義

沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_15591591.jpgしばき隊の添田充啓が逮捕された事件は、7月に高江のヘリパッド工事が強行された後、初めて逮捕状が交付され勾留請求が承認されたケースである。従来、揉み合いの中で公務執行妨害で現行犯逮捕された場合でも、すべて勾留請求が地裁によって却下され、連行された被疑者市民は無事釈放されていた。その意味で、高江の抗議行動全体においてきわめて重大な事態の発生と言える。この逮捕の後、政府側は強硬姿勢に転じ、高江の抗議行動に刑特法を適用して取り締まるぞという脅しに出ていた。その点に着目するなら、言わば転機となる口実と動因を政府側に与えた事件であったことは間違いない。また、もし、これが真に不当逮捕であり不当勾留であったなら、琉球新報と沖縄タイムスが見逃すことなく大きく取り上げ、国家権力による弾圧だと筆誅を加え、警察当局を糾弾する論陣を張って世論に訴えたことだろう。琉球新報と沖縄タイムスは、この国でジャーナリズムの精神と能力を持った最後の砦と言える新聞社であり、無条件で論説を信用できる希有な言論機関である。2紙の論説は、リベラルにとって時事を考える際の、言わば北極星のような基準的存在だ。その沖縄2紙が、添田充啓の逮捕を不当逮捕だと論うキャンペーンに出なかった。



沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16000151.jpg7月に工事が強行着手されて以降、逮捕者は何人も出ていて、その都度、2紙は「不当逮捕」と見出しで報じ、沖縄の世論に訴え、警察と防衛局の横暴を非難、勾留請求却下を実現する後押しの役割を果たしている。その沖縄2紙が、今回は「不当逮捕」の四文字を紙面に踊らせなかった。つまり、添田充啓の逮捕が不当ではなく妥当なものであったことを事実上認めている。初めて勾留請求を裁判所が許可した案件であり、高江の抵抗運動においてマイルストーンとなる重大な問題だ。2紙において、この事件の持つ意味の重さはわれわれの比ではないだろう。それが不当逮捕・不当勾留であったなら、2紙が率先して真実を報道し、国家権力の不条理に対してペンで対抗しなくてはならない。世論を喚起して被疑者の人権を救済しなくてはいけない。だが、2紙はその地平へ踏み出さなかった。沖縄で起きている出来事は、最も正確で詳細な情報が2紙に入ってくる。添田充啓の逮捕勾留の問題についても、われわれが知らない情報が2紙に届いている。それを十分に検討した上で、逮捕勾留を不当とする主張は無理だと判断したのだろう。現場の状況を整理分析して、容疑が明白で覆しようがなく、逮捕を批判する立場には立てないと結論したということだ。

沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16003054.jpg添田充蒙の逮捕勾留に対して2紙は論説を掲載していないが、10月12日に沖縄タイムスが興味深い記事を上げている。ヘリパッドの早期完成をめざす政府が、高江の抗議行動に対して強行な法的措置で排除しようとしている問題について、沖縄の反対派の側がどう対応しつつあるかを構図化した記事だ。分かりやすくて感心する。注目させられるのは、反対派の中でも慎重派の存在があることだ。例えば、東村の村議で「ヘリパッドいらない住民の会」の伊佐真次は、「逮捕者が出て世論に受け入れられるかどうか」懸念し、「社会に認められ、一緒に頑張れる運動にしたい」と述べている。また、統一連事務局長の瀬長和男は、「建設を止めたい思いは一つだが、方法論で異なる」と言っている。伊佐真次は共産党の東村議であり、県統一連は共産党系の団体だ。統一連の加盟組織を見ると、党県委員会、民医連、医療生協、県労連、新日本婦人の会、民青同盟などが名を連ねている。統一連が「方法論で異なる」と言っている「方法論」とは、山城博治の運動方針のことで、訓練場内に侵入して工事を妨害する方法であり、「そうでもしないと阻止できない」という山城博治の発言を指す。共産党は逮捕者を出す運動に否定的で、山城博治の路線と距離を置いていることが分かる。

沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16030985.jpgしばき隊の添田充啓が活動していたのは、山城博治が指揮していたN1裏のポイントで、北部演習場内に立ち入って工事進行を妨害する任務についていた。逮捕された午後に第一報を発した産経の記事に、「社民党の福島瑞穂参院議員が現地を訪れた際には行動をともにしていた」とあるのは、この事情と関わっている。しばき隊が現地に活動家を派遣していたのは、N1裏の拠点で、誤解を恐れず敢えて直截に言えば、山城博治麾下の社民党系の活動縄張りで、すなわち最もラディカルでバンガードな、合法性においてグレーゾーンに位置するところの、したがって国家権力とのフィジカル・コンタクトのリスクが最も高い場所だったのだ。要するに、逮捕者が最も出やすい活動と領域。私は、高江の運動で二つの異なる考え方があることは理解できる。私自身は共産党の運動論の方が正しいと思うし、伊佐真次が説いているように、沖縄の反基地闘争は国民の幅広い層の支持と共感を得られなければ勝利できないと確信する。沖縄の運動の手本はベトナムにあるはずで、小さなベトナムが米国に勝つことができたのは、国際社会の世論をベトナムの味方にすることができたからだ。米国の同盟国や自由主義陣営諸国の国内世論を、ベトナムは見事な情報戦略で説得に成功、正義をベトナムのものにした。

沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16013765.jpgだが、山城博治の運動論が間違っているとも思わない。N1裏からの戦術はゲリラ戦で、工事を急ぐ防衛局を消耗させ疲弊させている。工事の進捗を遅らせる上で最も効果的である事実は疑いなく、ヘリパッドの年内完成の阻止を政治目標としたとき、この鍔迫り合いの正念場で簡単に退却することはできない。社民党と共産党と二つが持ち場と戦法を分け合い、協力共同して年内阻止を実現させればいい。だが、問題なのは、しばき隊を高江に招き込んだことだ。その選択は明らかに間違っている。間違っていたから、防衛局職員への傷害事件を惹起させ、逮捕勾留という反対派にとって最も不具合な結果を導いた。果たして、山城博治はどこまでしばき隊の実態を知っていたのだろう。福島瑞穂と辛淑玉の口車に巧く乗せられて、うっかり軽信してしまったのではないか。若くて体力のある「兵隊」の本土からの補給を必要とするあまり、しばき隊なる集団の前歴や正体を見落としてしまったのではないか。しばき隊が抗争を繰り広げてきた敵は在特会だけではない。中核派やヘイトスピーチに反対する会がある。「ヘ会」はまさにオーソドックスな左翼団体だった。しばき隊が卑劣な暴力の標的にした相手は、鄭玹丁や小菅教授や高島弁護士やろくでなし子であり、むしろ、リベラルに属する者の方が多く被害に遭っている。

沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16022357.jpg山城博治が指導する沖縄の反基地運動は、一貫して非暴力で粘り強く抵抗を続ける性格のもので、逮捕者を出さないという趣旨が徹底されていた。挑発せず、挑発に乗らない闘争だった。山城博治がしばき隊をどう評価したのか、私には疑問だが、しばき隊の「超圧力」の行動様式は、沖縄の非暴力の抵抗路線とは全く思想的に異なるものである。しばき隊の「超圧力」の実行によって、男組組長の添田充啓は過去3年間で3度(今回で4度)も逮捕され、3度とも有罪となっている。また組織No.1の野間易通はこの1年間で2度も名誉毀損で訴えられており、昨年の静岡の事件では敗訴が確定、今年の事件は大阪で裁判が続いている。しばき隊の「超圧力」は、むしろ積極的に暴力を行使して相手を痛めつけるところに特徴があり、暴力の発動を躊躇しない。相手を恫喝し、侮辱し、嘲弄し、脅迫し、嫌がらせし、袋叩きにし、泣き寝入りさせる。ネットでは個人情報を晒し、路上では取り囲んで暴言を吐いて吊し上げる。暴力を行使することで目的を達成し、自己の権力的優越を誇示し、仲間を増殖して行くのがしばき隊の行動原理に他ならない。こうした集団属性は、これまでの左翼集団とは全く異質のものだ。そもそも、しばき隊の原点は左翼ではなく新右翼であり、そのことは菅野完や野間易通や山口祐二郎を見れば瞭然で、だから簡単に手を出してしまう。

沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16122137.jpg沖縄の運動が非暴力主義であるとすれば、しばき隊は暴力主義で、両者は全く正反対の運動原理である。水と油だ。これまで、しばき隊は幾度も刑事事件を起こして警察に逮捕され、有罪になってきた。また、多くのトラブルで民事訴訟の被告や原告になってきた。刑事事件の相手は主に在特会だが、その際、しばき隊の顧問弁護士の神原元が採った戦略は、すぐに容疑を認めて警察や検察と争わず、なるべく略式判決の軽い罰金刑に持って行く、あるいは懲役の判決になっても執行猶予を勝ち取るという方向だった。手心をねだり、(相手が在特会だから)それが奏功した。今回、添田充啓は否認を続けている。これまでと180度異なる対応を強いられ、尋問を受ける添田充啓はストレスが溜まるだろう。今回はしばき隊にとって国家権力を敵に回した初めてのケースとなり、これまでの「警察と仲よく」の路線が通用せず、打つ手を見失って立ち往生している様子が窺われる。しばき隊が裁判で対峙した相手は、在特会や青林堂であり、また、組織のバックのない一般市民で、しばき隊は常に裁判をなめていた。自分たちが絶対的に有利だと増長し、傲慢な態度を隠さなかった。在特会や中核派が抗争の相手なら、国家権力やマスコミはこちらの味方だという自信があったからだろう。
しばき隊リンチ事件の裁判もそうである。そのしばき隊の思い上がりが、今回の事件で一撃されて崩壊した。

逮捕から10日が過ぎ、勾留決定から一週間となるが、赤旗新聞に記事が載らない。朝日新聞や東京新聞も無視のままである。


沖縄の非暴力とは無縁な「超圧力」 - 足を引っ張ったしばき隊の暴力主義_c0315619_16032760.jpg

by yoniumuhibi | 2016-10-13 23:30 | Comments(1)
Commented by 七平 at 2016-10-15 00:37 x
​しばき隊員が沖縄で起こした傷害事件に関して掲示された2つの記事を読んで考えさせられる事ですが、​後藤健二の人質事件と類似、お膳立てが出来過ぎているように思われてなりません。 非暴力主義を守って抗議を続けている沖縄の基地移転、拡張に反対してきた人々、団体にとっては迷惑千万。このような暴力行為は国民世論を脱線させ政府に強硬弾圧を行う言い訳を与えてしまいます。例の人質事件と同様、政府の情報統制特務機関が仕込んだ傷害事件ではないかと疑わざるをえません。

湯川遥菜がそうであったように、実際、暴力団の単細胞チンピラと思われる連中は、いったいだれが資金を投入しどのように彼らを操作しているのか、又、その背景にどのような意図があるのか全く解っていないと思います。そもそも、沖縄の基地問題とレイシスト問題とは全くの無関係、しばき隊が沖縄まで足をのばす事自体が不自然です。レイシストでも無い防衛省の職員に暴力を振るう等、意図と目的は全く別の所にあると考えます。 

政府と検察が共謀して、ある事件を政治目的の為に仕込むと言うのは、今始まった事ではありません。リンクを挿入すると蹴られますので、Google で ”松川事件”(1949年)で検索してみてください。



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