映画『君の名は。』の魅力 - 村上春樹を思わせる物語、今の若者の心を代弁







日本社会は再生産ができなくなっている。大学の経済学で、「賃金が必要以下に食い込んで再生産ができない」という一般論を聞いたが、なるほどこういうことかと頷かされる。映画館の中は10代と20代の若者がほとんどだったが、皆、どことなく活力がなく存在感が薄い感じに見えた。

by yoniumuhibi
| 2016-09-28 23:30
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Comments(1)

『君の名は。』はすばらしい作品である。それは疑いがない。
そのうえで、50代である私にとって、この映画に感情移入できない点は以下の通り。
1、最後に二人がリアルに出会えてしまうこと。
2、惨事がリアルに回避できてしまうこと。
3、「かたわれどき」のあのクライマックスの場面で言葉による説明が多すぎること。
あの二人が時空を超えて何の説明もなく(入れ替わりという形で)繋がるという出来事は、『ねじまき鳥クロニクル』の「井戸の壁をすり抜ける」という暗喩によって描かれたパソコン通信時代のネットコミュニケーションに連なる表現だ。
何の理由もなく無関係だったはずの二人がいきなり繋がるという出来事にリアリティを感じることができるのはネットというものがあってこそだ。
しかし、私のようにネットのない時代を生きてきた者にとっては、ネットで出会うことと、現実に出会うこととは等価ではない。だから、どうしても映画の最後に醒めてしまう。
すれ違う電車の車窓越しに二人が相手に気づく場面でエンディングだったら、私は号泣していただろう。
惨事が回避できたところにも、リアリティを感じることができない。
「生物は死んでもまた生き返ると思っている小学生・中学生がいる」という報道に接することがあっても、これまで私はその報道を信じていなかった。調査の仕方に何か問題があるのだろうと思っていた。
しかし、いろいろな事柄が「取り返しがつく」という感覚が、どうやらネット時代の若者には少なからずあるのだろうなと感じた。
映画という表現において、あれほどの緻密な映像を作る新海誠作品において、台詞によって説明しすぎることにも、違和感がある。映像で表現してなんぼだろうと思ってしまう。
が、ネットにおけるコミュニケーションの主流は、今のところ言葉だ。しかも、レトリカルではない直接的な言葉である。
江戸時代に生まれた夏目漱石が自由を相対化できたように、村上春樹はネットコミュニケーションが相対化できている。ネットがはじめから当たり前の世代の作品を見たことで、そのことがよくわかった。
そのうえで、50代である私にとって、この映画に感情移入できない点は以下の通り。
1、最後に二人がリアルに出会えてしまうこと。
2、惨事がリアルに回避できてしまうこと。
3、「かたわれどき」のあのクライマックスの場面で言葉による説明が多すぎること。
あの二人が時空を超えて何の説明もなく(入れ替わりという形で)繋がるという出来事は、『ねじまき鳥クロニクル』の「井戸の壁をすり抜ける」という暗喩によって描かれたパソコン通信時代のネットコミュニケーションに連なる表現だ。
何の理由もなく無関係だったはずの二人がいきなり繋がるという出来事にリアリティを感じることができるのはネットというものがあってこそだ。
しかし、私のようにネットのない時代を生きてきた者にとっては、ネットで出会うことと、現実に出会うこととは等価ではない。だから、どうしても映画の最後に醒めてしまう。
すれ違う電車の車窓越しに二人が相手に気づく場面でエンディングだったら、私は号泣していただろう。
惨事が回避できたところにも、リアリティを感じることができない。
「生物は死んでもまた生き返ると思っている小学生・中学生がいる」という報道に接することがあっても、これまで私はその報道を信じていなかった。調査の仕方に何か問題があるのだろうと思っていた。
しかし、いろいろな事柄が「取り返しがつく」という感覚が、どうやらネット時代の若者には少なからずあるのだろうなと感じた。
映画という表現において、あれほどの緻密な映像を作る新海誠作品において、台詞によって説明しすぎることにも、違和感がある。映像で表現してなんぼだろうと思ってしまう。
が、ネットにおけるコミュニケーションの主流は、今のところ言葉だ。しかも、レトリカルではない直接的な言葉である。
江戸時代に生まれた夏目漱石が自由を相対化できたように、村上春樹はネットコミュニケーションが相対化できている。ネットがはじめから当たり前の世代の作品を見たことで、そのことがよくわかった。
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