8月30日のデモの人数 - 主催者12万人、警察3万人、SEALDs35万人

c0315619_15595085.jpg8月30日のデモの参加人数で論議が起きている。主催者である総がかり行動の高田健が、午後4時前の本部報告で12万人と発表、それから3時間後にNHKが3万人余りという警察情報を出した。ずっとネットの中継動画を見ていた私の感覚では、どちらの発表もリーズナブルで、この集会の人数発表としては頷けるものだった。すなわち、中間の6-7万人という規模が推測される実数として妥当な線だろう。感じたのは、高田健の報告のときの口調と表情が、やや残念そうな影と重さを漂わせていたことだ。主催者発表12万人という数は、高田健にとっては想定していたところより少ない、不本意な結果だったのに違いない。また、直感したのは、この12万人という数も、内部で把握した実数に対していつもより掛け率を高めに設定した主催者発表ではないかということだった。それを聞いた瞬間、警察情報はかなり少なめに出るなと予想を持った。通常、総がかり行動のような左翼系の正規の団体が開催する集会では、主催者発表と警察情報とが2対1とか3対1というバランスになる。その範囲で収まる。主催者は常に実数より割り増しした数を言って成果を強調するし、警察は常に実数より少なめに言ってデモを貶価する。真実の数はその中間にある。2012年7月16日の「さようなら原発10万人集会」は、主催者発表17万人の警察情報7万5000人で、2.2対1という比率だった。



c0315619_161552.jpg伝統的な左翼系の集会だと、人数のカウントがきちんとしていて、このように納得・信用できる数字が発表される。水増しが多いと世間の信用がなくなり、集会と団体の正統性に傷がつくから、数は正確に数えないといけないし、踏み越えてはいけない一線があるのである。高田健としては、主催者発表と警察情報との間の乖離が、2.5倍以内に収まるようにしたかっただろう。警察情報は3.3万人である。3.3万人に2.5を掛けると8万人になる。3を掛けると10万人になる。集会の名目は10万人集会だ。ということは、10万人を主催者発表とすることは、集会が失敗だったという意味を言外に露呈することになる。それはできない。主催者発表は10万人を超えないといけない。できれば、3年前の脱原発集会のように15万人以上が望ましい。12万人と発表する高田健に無念さが滲んでいて、それを見て、警察情報は低めに来るなと推断した。結局、主催者発表と警察情報とは4対1という大きな開きになってしまった。集会の正統性という点でも、目標の達成度の点でも、二重の意味で高田健は苦渋の数字発表だっただろうと想像する。ところが、この高田健の12万人を不服とする準主催者の勢力がいて、夜になって35万人だったという数をネットで触れ回り始めた。自分たちを真の主催者とし、12万人はマスコミ発表の数字だと(スリカエを)言い、35万人が主催者発表の数字だとこじつけ始めた。

c0315619_1623214.jpgSEALDsが公式にTWで発表し、しばき隊が「35万人」の宣伝を始めて騒然となり、デモについての議論は人数が焦点になっている。SEALDs運動の実務を仕切っているのはしばき隊(反原連系)の面々で、「あざらし隊」などと称してSEALDsのデモ活動をずっと指導支援している。もともと、SASPLから始まったSEALDsは反原連系のデリバティブで、いわば反原連系の学生版の運動体として出発したと言っていい。だから、しばき隊が堂々と今回の集会の「主催者」面をし、高田健が発表した12万人の実績を認めず、35万人こそが正しいなどと言い上げる図ができるのである。SEALDsによる35万人説の流布に対して、これまでのところ、主催者の総がかりや関係団体が特に制止や否定をした形跡はない。そのため、この35万人説を攻撃する右翼は、「SEALDs発表35万人、主催者発表12万人、警察発表3万人」という口上でデモの欺瞞性を叩くキャンペーンを張っている。今回の集会の主催者は左翼系の諸団体が結集した総がかり行動であり、新聞広告も事務局も総がかりが担当しているのだが、SEALDsが主催者を名乗れないかというと決してそうではない。表向き、一般に向けては恰もSEALDsが中心のデモのように演出していて、ネットでもその宣伝で動員を呼びかけ、デモ後のマスコミ報道もSEALDsを主役にしていた。総がかりは露出を控え、SEALDsを前面に押し出した取り組みにしていた。

c0315619_1625148.jpgデモの成功のため、イメージアップのため、動員の最大化のため、戦略のオプティマイズとして、「SEALDs主催」という表象を生成させ、それを関係者が操作していたのである。一般の市民は、今回のデモはSEALDs主催と思っている者が多い。だから、SEALDsが主催者を標榜することは決して僭称や逸脱とは言えないだろう。しかし、問題はそこにこそ孕まれるのであり、主催者の一人であるSEALDs(しばき隊)が、このデモの人数を35万人などと公式発表して宣伝してよいかということだ。ここで誰もが思いを廻らすのは、戦後民主主義の金字塔である60年安保の30万人デモの歴史であり、今回のデモが35万人などという謬説が出回って若い世代の間で既成事実化されると、60年安保闘争の意義が不当に相対化され、その歴史が矮小化されてしまうという懸念に他ならない。60年安保のとき、6月18日のデモの参加者は主催者発表で33万人、警察発表で13万人という巨大な数字で残っている。この日がピークだけれども、この日だけでなく、女子学生が警察に殺された6月15日から安保が自然成立となった6月19日の前後は、毎日のように数十万のデモ隊が国会を取り巻き、国内の政治情勢は革命前夜の様相を呈していた。スピーチで法政大の(おそらく元マスコミ関係の)名誉教授が回顧していたように、ラジオ(当時はテレビは一般家庭に普及していない)は朝から晩まで安保の報道で埋まり、国会前からの生中継が流されていたのである。今回の12万人のデモとは全く光景と空気が違う。

c0315619_163715.jpg自衛隊出動による武力鎮圧を要請した岸信介は、その命令を治安官僚(防衛庁事務次官と警察庁長官)に蹴られ、言わば暴力装置の側に逆に羽交い締めにされる格好で権力の座から転落する。首都の治安責任者の警視総監が官邸を訪ね、身の安全を保障できないから官邸から退去してくれと岸信介に申し出た。これで一巻の終わりで、岸信介は退陣表明に至る。つまり、エジプト革命のように圧倒的な数の民衆のデモが政権を打倒した。もし、今回のデモが35万人の規模であったなら、決壊は国会正門前の道路に止まらず、60年安保時のように付近の道路全体が占拠されて解放区になり、南西の官邸まで群衆が押し寄せ、北西の自民党本部も取り巻かれていただろう。昂奮の余波は翌日も続き、平日となった週明けの昨日(8/31)も10万人を超す市民が国会前に詰めかけたはずだ。菅義偉の指示で警視庁に取締対策本部が作られ、官邸が右往左往する幕となり、機動隊のカマボコ車両が大量動員されて周辺道路全域を制圧、法案反対の国会議員が全員国会正門前に集合して市民の歓呼を受ける騒然とした状況になっただろう。30万人(主催者発表)というのはその規模の大きさのデモである。政治のスケールが物理的に全然違う。60年安保のときは新橋まで道路が人で埋まっていた。日比谷公園までではない。新橋駅までである。60年安保のときの警察発表は13万人。今回は3万人。4倍以上の開きがある。

c0315619_1632243.jpgしばき隊は、彼らが反原連だった3年前の官邸前デモのとき、常套手段として異常な人数の水増し工作をやり、世間の顰蹙を買っていた。このことは、サンデーモーニングの放送中に関口宏によって取り上げられ、どうして警察情報とこんなに開きが出るんだという苦言に繋がる。飛ぶ鳥を落とす勢いだった反原連のデモが落ち目に向かう一因となったのは否めない。このとき、主催者の反原連は官邸前に「20万人」という数を発表した。警察情報は2万人で、何と10倍の開きがあった。10倍の開きというのは、デモにおける主催者と警察の数の差異を心得ている一般市民も、関口宏と同じく首を捻る異常に違いない。普通の左翼系団体はこんな非常識なことはせず、過去にやっていたのは異端の新左翼セクトだけだったから、良識派の関口宏の懐疑と批判の一幕となった。無論、当時のデモに参加していた者の中で、反原連の「20万人」をまともに信用した者はいない。3年経ち、しばき隊グループの有力メンバーでSEALDsを指導している木下ちがやは、世間はもうこの一件を忘れたか、若い学生は知らないものと踏んだのか、3年前の「20万人」の大法螺の反復の仕込みに余念がなかった。「ウソも百回言えば真実になる」というゲッベルスの教えの実践だろうか。警察が、政治的バイアスでデモの人数を過小に報道させるのは常識だが、だからといって、警察の調べに何の根拠もないわけではないし、市民は相応の信頼を「警察発表」に寄せている。

c0315619_1633918.jpgしばき隊は、ここへ来て、警察情報のデモ人数は全く根拠のない出鱈目で、まともに数をカウントしていないとデマを言い始めた。首都の治安を預かる警視庁公安部が、特に国会や官邸や霞ヶ関という国家の要所の警備で、デモの人数を正確に把握していないなどということがあるわけがない。毎回毎回、必ず詳細な報告が事務の副長官である杉田和博のところに上がっているし、必要に応じて杉田和博から菅義偉に上がっている。今回の調査と報告は、杉田和博から菅義偉と西村康彦と山谷えり子と安倍晋三にシェアされただろう。杉田和博は警備局(公安警察)のキャリアであり、したがって今回のデモのような事案を担当してきたプロの大御所だ。正確な人数を押さえてないなどあり得ない。今回の3万人という数字は、故意に過小評価した、政府側の政治的思惑をかぶせた数字ではあるけれど、同時に、数字には警察の威信がかかっているから実態と全くかけ離れたウソを垂れ流すことはない。だから、反原連のような水増しはすぐにバレるのである。現在、SEALDsは法案反対運動の中で絶対的なシンボルになっていて、右翼以外から批判されることはないのだが、ここで注意して見なくてはいけないのは、彼らの金曜国会前デモの発表人数である。6月19日2500人、6月24日3万人、7月8日1万人、7月15日10万人、7月24日7万人、7月31日2万5000人、などと発表されている。最も多いのは、衆院で法案が強行採決された7月15日だが、10万人などという数を平然と流していた。

私は7月15日のデモに参加して始終を目撃した証人だ。午後6時半からが第一部の総がかりの部で、午後7時半前の中締め(中間報告)のとき、参加者は1万人という報告があった。さすがに総がかりだから手堅く数字を出しているなと、私は歩道と植え込みの間の縁石に座って思ったものだ。第二部のSEALDsの部が始まり、勤め帰りの女性たちが詰めかけて華やかな雰囲気になったが、私の感覚では人数は2万人で、とてもそれ以上の規模ではない。警察情報では7-8千人。SEALDsの「10万人」は荒唐無稽な数字で、誰もそんなものは信用しない。


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by yoniumuhibi | 2015-09-01 23:45 | Comments(0)


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