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民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」

民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_16365377.jpg全国で32選挙区ある1人区の現状はどうなっているのか。毎日新聞や東京新聞の報道では、各地で市民団体が政党を動かし、「野党共闘」の調整が順調に進み、10とか13の選挙区で間もなく「野党共闘候補」が発表されるという説明になっている。左系マスコミが市民連合の機関紙のような情報を流すため、われわれは、熊本に続く「野党共闘候補」が今にも続々と誕生しそうな気分にさせられる。が、一方で、熊本の候補が12/23に決まったあと、二番目がなかなか出て来ないため、一体どうなっているのだろうと首を傾げつつ固唾をのんで様子を見守っている。実際はどうなのだろうか。真相を知る重要な手がかりの一つが、民主党HPに掲載され告知されている参院選予定候補の一覧だ。これを見ると、候補者調整が各県でどうなっているか、中央での共産党・市民連合と民主党との間の駆け引きがどう進行しているか、水面下に隠れた複雑な事情がよく浮かび上がる。結論を先に言えば、市民団体の周旋の奏功で熊本モデルの「野党共闘候補」が次々出るという見通しは間違いだ。左系マスコミによる楽観的な情勢分析は、真実を無視したところの、世論誘導目的のプロパガンダである。単刀直入に言えば、熊本型の、市民連合がめざした「野党共闘」は完全にスタックした状態にある。



民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_1637460.jpg民主党のHPには、山形選挙区に舟山康江が、石川選挙区に柴田未来が、それぞれ写真と経歴を載せていて、党の「推薦予定候補」として紹介されている。この一覧には、なぜか熊本の阿部広美の名前が載っていない。12/24の読売の記事では、「民主、共産、維新、社民の各党県組織関係者も同席し、阿部氏を推薦する意向を明らかにした」とあるのだが、3週間経った現在も、党本部の公式な名簿から外されている。これは意外なことだ。常識で考えれば、12/23の熊本での記者発表に熊本県連の幹事長が同席する際、必ず党本部の枝野幸男から承諾を得ているはずで、そうでなければ、単独で勝手にこんな場所に出て、マスコミの前で「推薦する意向」などコミットすることはできない。真実を推察するなら、「推薦する意向」は覆さず、最終的には推薦してリストに載せるのだけれど、今は駆け引きのために様子見をしてペンディングにしているのである。現時点では、阿部広美は党の正式な候補者ではなく、共産党との「協議」が纏まって「合意」がされた時点で、HPに名前が載るのだろう。その前に1月末の党大会があり、3月末の維新との「合流」があり、党内右派や連合を刺激すると選挙を前に党が空中分解するからと、そういうエクスキューズを共産党・市民連合に対して立て、この面妖で非常識な措置を合理化しているのに違いない。

民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_16371434.jpg無論、それは民主党の狡猾な戦略と牽制であって、本音は、共産党との「合意」を遅らせて時間稼ぎし、その間に着々と、各選挙区で共産党や市民連合の色の付いてない、民主党が主体の「野党統一候補」を擁立し、熊本以外の全国の1人区を埋め、既成事実を積み重ねてしまおうという魂胆だ。共産党に口出しさせず、民主党が一方的に担いだ候補を「野党統一候補」として固め、宣伝して世間に周知させ、それを共産党・市民団体に認めさせるという思惑なのだ。石川選挙区の柴田未来は、12/23の読売の記事では、見出しで「第2弾」として指名までされていた。すなわち先月末の時点では、熊本の阿部広美に続いて石川の柴田未来が全国報道でクローズアップされ、市民連合のめざす「野党共闘」の成功例として華々しくヒロインになる予定だったのだ。正月を挟んで情勢が急変し、市民連合の存在感と説得力が後退し、民主党と共産党との力関係の均衡が変わり、地方1人区の候補者選びで民主党がヘゲモニーを握る局面になった。山形の舟山康江も同じで、こちらも共産党が独自候補を降ろして推薦を入れ、熊本と同じ「野党共闘候補」のパターンになるという観測が流れたが、その絵は実現せず、時間ばかりが無駄に過ぎる進行になっている。中央で共産党と民主党の「協議」が難航しているため、山形県委員会が独自候補を降ろせないのである。

民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_16372490.jpg市民連合・共産党は対抗策として、無所属の「野党共闘候補」を新しく設立する「政治団体」から立候補させるという打開案を立て、その模索に入って民主党側を牽制したが、どうやら民主党がそれに応じる気配はなさそうだ。民主党のHPを見よう。リストに上がっている1人区の候補者は、32選挙区のうち16選挙区が埋まっている。この内訳は、現職が7人(宮城、福島、岐阜、三重、滋賀、奈良、大分)で、それ以外が9人である。9人のうち、民主党の公認候補が3人(青森、秋田、和歌山)で、残りの6人(山形、栃木、石川、福井、高知・徳島、宮崎)が推薦予定という位置づけになっている。これはつまり、社民や生活や維新の推薦が入るという意味だが、選挙資金については民主党が丸抱えで面倒を見て、当選後は民主党に入ることを前提、あるいは期待したところの「無所属」の「野党統一候補」という意味に他ならない。もっと生臭く端的に言えば、共産党の支援や介入はお断りという「無所属」の立場である。結局、山形の舟山康江も石川の柴田未来もこの範疇に属してしまった。言うまでもなく、背後にあるのは連合の締めつけであり、自治労の社民党系県連が連合本部に従い、市民連合を叩き斬った結果だ。石川と福井の候補が熊本型に旋回せず、市民連合・共産党を失意の底に突き落とす方向に決着したのは、自治労(北信地連) - 黒幕は又市征治 - の差配だろう。

民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_16373598.jpg山形も同じだ。カギとなった自治労(東北地連)が、東京の連合本部の強烈な締めつけに唯々諾々と従い、山形の社民党を民主党と共産党の仲介者にする図を作れなかったというに尽きる。地方の組織は東京の本部の拘束の下にある。地方の政治は東京の政治から容易に自由になれない。かくして、32選挙区の1人区は16が埋まり、残りが半分の16となった。この中でも、長野とか岡山とか、民主党が公認候補を決めて発表している選挙区があり、その動きが加速していて、共産党との「調整」を置き去りにしたまま、民主党主導での1人区の候補擁立の流れが進んでいる。長野と岡山と長崎を除き、そして岩手と熊本と沖縄を除けば、残りは10選挙区となる。具体的には、群馬、山梨、新潟、富山、鳥取・島根、山口、香川、愛媛、佐賀、鹿児島、である。いずれも屈指の保守の牙城ばかり。市民連合(SEALDs)は、この10選挙区のうち、9選挙区を政党から完全独立した「政治団体」の候補にしなくてはならないが、どう考えてもそれは無理な話だろう。共産党と民主党が相乗りできる熊本型の可能性が見えたのは、社民党の影響力の残る、すなわち社民党系自治労の強い地域だったはずだが、そうした相対的に左色の濃いと思われる県の悉くが、先に民主党に押さえられて、共産党を排除する「野党統一候補」で固められてしまったからだ。熊本の奇跡の再現は、現時点ではきわめて困難な状況と言える。

民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_16374617.jpg連合本部が正月返上で迅速に動き、社民党系の自治労が強い県を飛び回って集中的に監視体制を強化し、熊本型の二番手出現を封じるべく、それら重点県の社民党を(飲ませ食わせで)切り崩し、共産党との接触を遮断した電撃作戦(巻き返し)が窺い知れる。やることはいつも同じ。山岸チルドレンだった連合の幹部たちにとっては、若い頃に先輩から教わった政治の極意であり、昔とった杵柄であり、自家薬籠中のものである。さて、稿を閉じよう。共産党と民主党との「協議」の行方は不透明だが、私の予想では、共産党は打つ手がなく白旗に追い込まれ、民主党が立てた推薦候補を「野党統一候補」として認めて無条件に票を流すか、それとも「野党共闘候補」の夢を捨てて独自候補で戦って比例票の底上げを図るか、二者択一を迫られることになるはずだ。そうなったときは、市民連合は用済みとなり、熊本で立った純粋理念型の「野党共闘候補」は、全国の選挙区マップの中で一人だけ孤立した - 共産党色が強いと指さされる - 苦しい立場の存在となってしまう。熊本の候補は参院選の説明地図の中で包囲されつつある。それは、市民連合が包囲されている状況を意味する。連合幹部や民主右派からすれば、昨年後半はSEALDsの威光の前に面従腹背していたのを、「今度が俺たちが言うこと聞かせる番だ」と言いたい衝動に疼いているだろう。しばき隊学者たちは、SEALDsのシンボル価値剥落の測定を誤り、連合の体質と実力を見誤ってしまった。

彼らは連合の歴史と現状について知らなすぎ、安保法が強行裁決された後の政治の見通しが甘すぎた。総がかりには同情するが、市民連合の「野党共闘」戦略は破綻するだろう。


民主党の1人区での候補擁立状況を見る - 包囲され孤立化する「熊本型」_c0315619_163804.jpg

by yoniumuhibi | 2016-01-18 23:30 | Comments(0)


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