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1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか

1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_180443.jpg昨日(1/12)、NHKの世論調査が発表された。この中で、参院選に向けての野党共闘について質問した項目があり、野党が候補者を一本化することについて賛否を尋ねている。回答は、「大いに期待する」が9%、「ある程度期待する」が24%、「あまり期待しない」が41%、「まったく期待しない」が20%。NHKの調査では多くの人々が野党共闘に否定的で、候補者一本化に期待していないという結果が出た。実は、1/11に発表された読売の調査でも同じ質問項目があり、選挙区で野党が候補者を統一することの是非を訊いている。結果は、「統一する方がよい」が49%で、「統一する必要はない」が33%。読売の世論調査ではNHKと逆の結果になっていて、有権者は候補者統一を求めている。興味深い情報だ。どちらが本当の民意なのだろう。朝日や毎日、日経や共同が同じ質問項目を設けて調査していれば、実際の傾向が明らかになる。普通に考えたとき、イデオロギー的なポジショニングとバランスの見当では、読売とNHKはほぼ共通した傾向が出そうだが、これほど極端に異なる結果が出ると、世論をどう判断していいか迷わざるを得ない。この世論調査の結果は、今後の政局に重大な影響をもたらす。読売の数字が真実であれば、市民連合・共産党の背中を後押しし、NHKの数字が正しい反映であれば、強い向かい風が吹く事態になる。



1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_1801475.jpgこの問題の民意の真相は推し量りにくいが、自民や公明やお維を除く野党(民・共・社・生)の支持者に限定すれば、候補者統一を求める声が圧倒的に多いことは間違いない。ただ、この野党4党の支持者全体を合わせても、NHKでは13.2%、読売では15.1%しかなく、すなわち自公の支持者の3分の1であり、無党派の2分の1ほどの小さな比率に止まる。肝心な点は、無党派層がこの質問にどう答えたかという点だ。細かなメッシュの詳報がないので何とも言えないが、無党派が「野党統一候補」に賛成なのか反対なのか、またその場合、「野党統一候補」の意味を「共産党を含めた統一候補」と認識しているのかどうかが重要な問題となる。共産党を除くところの、民・維・お・生・社で「野党統一候補」が立つ場合でも、言葉と形式の上では「野党統一」ということになろう。今回の読売とNHKの世論調査では、共産党を含めた形か除いた形かという、生臭い中身に質問を踏み込んでおらず、回答者の自由な思考と判断に任されていて、すなわち、政局の関心の核心であるクリティカルなイシューが曖昧に回避され処理されたクエスチョネーアになっている。だから、「統一に期待する」という世論が多く出た読売の結果を見ても、果たしてそれが本当に、共産党を含めた野党統一候補の歓迎の意思なのかどうか一概に断定できないのだ。

1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_1882843.jpgNHKの調査では、野党統一候補について6割が期待せず、期待する3割の倍近くになった。市民連合にとってはショックな数字だろうが、このNHKの調査が正確に行われたと仮定して、この結果に内在して意味を分析すれば、ネガティブな反応を返した理由として、既存野党を足し合わせても自民現職には勝てないという冷めた見通しと、政策がバラバラの野党で統一候補を立てて大丈夫なのかという不安と、その二つの見方が介在しているだろう。これに対する説得の論理としては、(1)政策の違いよりも安倍政権を倒す方が先決だという小沢一郎の持論や、(2)立憲主義を回復することが何より第一義で最優先ではないかという市民連合の言説がある。また、(3)イデオロギーの好き嫌いを言っている場合じゃないという説教もある。だが、これらの正論は、同時にもう一方の正論であるところの、(a)政策がバラバラでは最後は失敗するとか、(b)今、何より重要なのは安保法制より改憲阻止だとか、否、TPPや社会保障など経済政策こそが最大の関心事なのだとか、あるいは、(c)政治家には原点たる譲れない思想信条があるという反論の主張によって相殺され、誰もが頷いて結集する一つの正論として通らない。その原因は、前者の正論でリベラルと無党派の全体を領導できる強力なカリスマがいないためだ。市民連合は理論的指導者を欠く。SEALDsは、日々シンボル価値が剥落して影響力を失っている。

1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_180369.jpg1人区の選挙区における野党統一候補の動きがどうなっているか、各地の最新情勢が知りたいが、現時点で詳しい内実は出ていない。12月下旬に熊本で候補が決まって発表があったが、それ以外の31選挙区は調整中ということで、2例目が難航して未だにマスコミに登場しない。毎日の1/8の記事では、13選挙区で共闘作業が本格化とあるけれど、熊本に続く第二の選挙区がどこかは特定されていない。各新聞社の取材と報道に差異があり、毎日の場合は前のめりの楽観論が過ぎる感じで、客観的に信用できる確かな解説と予想がないのが実状だ。先週からは、無所属統一候補のための「政治団体」の設立が議論に浮上した。重要な問題に違いないけれど、本質を外した選挙の手続き論のマターであり、枝葉末節と言わないまでも、何か進路を間違えて藪の中に迷い込んだ印象を拭えない。本当なら、龍馬的な仲介カリスマが出現し、民主党と共産党のトップと3人で会談し、同盟書に署名捺印して歴史を動かすという図があるべきで、国民が望むのはそういうコンプリートな政治の方向だろう。民主党と共産党が折り合えないため、小手先の選挙の事務的問題に窮屈に旋回し、交渉の進展を焦躁して見守る国民にエクスキューズしているように映る。「政治団体」あるいは「無所属」についての駆け引きで、民主党と共産党・市民連合の間で応酬をしていると、時間ばかりが過ぎる愚に陥るのではないか。

1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_1804717.jpg11月にあった市民連合の第2回目の会議で - 当時はまだ市民連合という名称はなかったが - この席で、民主党と共産党の政策調整が容易でないから、先に地方のレベルで候補者調整をして、下から実績を積み上げて行こうという方針が決定されていた。おそらくこのとき、ママの会などには、熊本で第1号を成功可という「玉」があり、熊本をモデルケースにして全国各県でムーブメントを起こし、地方から(民主党がゴネる)東京を包囲しようという展望があったのだろう。いかにも左翼リベラル的な楽観的な発想だが、東京の人間が考えているほど地方の政治は東京から独立したものではない。共産党については説明の要はないだろう。民主集中制の党で、県委員会が独自に地元で他党と政策調整や統一候補の選定など動けるわけがない。県委員会は、中央の指示に従って黙々と参院選の独自候補を準備したのであり、そして次は、その候補者を降ろせという中央の指示を待っているだけである。CPUは代々木にあり、県委員会はペリフェラルのバス・インタフェースだ。裁量権はない。民主党はどうか。民主党の方は一様ではなく、地方各県によって事情が異なる。自治労の社民党系が強い地域では、共産党と民主党の間を彼らが仲介する動きができる。だが、この人脈は高齢化して衰弱しており、嘗ての活力がない。そもそも地方の民主党の党組織や自治労そのものが、選挙のエンジンとして弱体化の一途にある。

1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_1805970.jpg地方の民主党県連が顔色を窺っているのは、選挙でお世話になっている地方の連合 - 田舎では自治労が主力 - であり、地方の連合は、東京の連合本部を上目遣いで見ている。東京の連合本部の方針は、何度も書いたように、共産党との連携に断固反対だ。地方で共産党と民主党がミニ薩長同盟を結ぶ「事故」のないよう、つまり、地方の連合(自治労・日教組)が東京本部の目を盗んで独自に左方向に動き回ることのないよう、厳しく地方の現場を監視しているのであり、要するに、市民連合的な「野党統一候補」の実現を妨害するべく、東京の連合本部は神経を尖らせて統制を強化している。そういう状況だから、地方の左翼リベラルも、組織的な正規の動きで「野党統一候補」を擁立するのが難しいのに違いない。嘗てなら、大学教授や弁護士など、地方の革新政治の触媒となる文化人の活躍があったが、高齢化して、現在は担い手となる有力な若手が育っていない。SEALDs運動があるのは、東京と大阪と東海など一部の都会のエリアである。地方の左翼リベラルは、東京で両党のトップが合意するのを渇望しているのだ。それが地方の事情であり、東京が想像するほど地方の政治主体は東京から自由ではない。志位和夫が「国民連合政府」のバーを下げたのも、地方の左翼リベラルの声が強く届いていたからだろう。熊本は早く立ち上がったから成果が上がった。環境条件はこれから厳しくなる。1月よりも2月、2月よりも3月と、市民連合・共産党への逆風が強くなる。

結論として、そして推論として、悲観論で恐縮だが、おそらく共産党は1人区を独自候補で戦わざるを得なくなるだろう。比例票掘り起こしのため、背に腹は替えられず。


1人区での野党統一候補の擁立の遅れ - 熊本に続く共闘選挙区は出るのか_c0315619_1811491.jpg

by yoniumuhibi | 2016-01-13 23:30 | Comments(3)
Commented at 2016-01-13 20:12 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 阿蘇のパン焼きオヤジ at 2016-01-14 08:08 x
去る10日日曜日、熊本城下で開かれた熊本の野党統一候補・阿部広美さんの集まりに参加してきました。初めて阿部さんの話を伺いましたが、苦学して弁護士となり、離婚や貧困問題など市民の側に立った活動をされており、集まった方々からも信頼を受けているなという印象を持ちました。ただ若い人たちの参加はやはり少なく、いかに彼らにアピールしていくかが今後の課題のように思われます。

もう一点。立憲主義を守るためにも、熊本の阿部さんのように候補者には法律を熟知している弁護士さんが多く出馬されると予想されますが、個人的には、来るべき未来へのヴィジョンを見透す感性を持った詩人だとか文学者だとか、そういった人たちにこそ政治の世界に参入してもらいたいと願っています。
Commented by ごはん at 2016-01-14 12:43 x
>読売の世論調査ではNHKと逆の結果になっていて、有権者は候補者統一を求めている。興味深い情報だ。どちらが本当の民意なのだろう。

これ僕には理解できますよ。
NHKでは期待派が33%、期待しないが61%
読売では「統一する方がよい」が49%で、「統一する必要はない」が33%
要するに、野党には実行力や政策の面から期待してはない、
しかし小党が無数あっても、一般市民からすると差異すら判別しにくいので
とりあえず一つににまとまれ。
ただし統一したところで、支持するとは限らないと。
上の回答を見る限りだと、一般市民の感覚としては、どの党が右寄り左寄りって所までは知識も関心もなく
みんな「反自民・反安保」だけしか言ってないから、まとまればいいんでは、位のスタンスに見えます。

訂正してペンを入れて読むならば、ある程度近い方向の政党はくっついて、
野党右・野党左・共産位の構図に再編しなおせ、って事でしょうけどね。
「政界再編」ならぬ「野党再編」をして、国民の信頼に耐えうる力を野党勢力は身につけろという意味でしょう。


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