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2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路

2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_18431494.jpgNHKのニュースで紹介していたとおり、桜が満開の上野公園は中国人観光客で溢れていた。テレビの映像と全く同じで、中国人の特に女性客がひしめいている。セルフィー棒に取り付けたスマホを前方に伸ばし、桜をバックにしたアングルで自撮りしたり、頭上に高く伸ばした位置から桜のトンネルと満員の花見客を撮っているのは、ほとんどが中国人観光客だ。聞こえてくるのは中国語ばかり。中国の訛り喧し公園の人混みの中に桜を見に行く、という感じだった。無論、日本人も多くいるのだけれど、目立たないというか、セルフィー棒を駆使して躍動する中国人の熱気と存在感が大きく、脇で影が薄くなっていた感が否めない。中国人が元気でエネルギッシュなのだ。喜色満面で、気を張っていて、混雑を全く気にしていない。春節のときの駅構内とか、人気の観光地とか、中国のラッシュ地獄はあんなものではないから、日本人のように苦にならないのだろう。来年の桜の季節は、さらに多くの中国人が日本に押し寄せるに違いない。銀座の通りも、テレビで報道しているとおり中国人観光客が無闇に増えていて、ユニクロ銀座店の客は中国人が半分以上になっていた。松坂屋の空間がポッカリと穴が空き、路上を歩く人の声が中国語だけになり、何か違う世界にいるように空しく思われる。



2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_18434788.jpg日本を訪れている中国人観光客からすれば、旅行パック料金も、日本での買い物や飲食も、かなり割安に感じていることだろう。価格が安くて、モノとサービスの品質がよく、満足この上ない消費環境なのに違いない。同じ出費で、同じモノとサービスを中国で購入することはできない。中国の都市は物価が高い。商品(財・サービス)が粗悪にもかかわらず日本よりも物価が高い。そのことは、仕事で中国に駐在している日本人とか、出張で頻繁に往来している者の実感だろう。為替レートが変わり、2年前に12.5円だった1人民元は19円になっている。中国人は同じ支出で1.5倍のものを日本から買えるようになり、日本人は逆に3分の2しか買えなくなった。中国の購買力が1.5倍になった。日本の通貨円が安くなっている。日本のマスコミは、ひたすら外国人観光客の増加を歓迎し、この経済現象を言祝ぐ説明と演出で埋め、アベノミクスの成功だと万歳三唱しているけれど、通貨円が安くなっているということは、日本人が貧しくなっているということなのだ。途上国は物価が安い。食べるもの、着るもの、商店で売っているもの、何でも安くて驚く。これまで日本は、どの国より物価が高いことで有名な国だった。今、日本は世界から見て物価が安い国なのであり、先進国でありながら、先進国ではない中国の人々の感覚で、中国よりも物価が安いという異常な経済の国なのだ。

2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_18433698.jpg日本人が貧乏になっていること、日本人の購買力が落ちていること、そのことをよく伝えた経済レポートがある。先週(3/25)、ネットで話題になった「軽自動車が200万円」の記事は、今の国際経済の内実をよく説明したものだった。自動車産業はグローバル産業であり、同じ車を日本で生産して150万円なのに、海外で生産したら200万円というわけにはいかないのだと指摘している。グローバル産業の製品は一物一価で、1台200万円で世界市場で売る車は、日本市場でも200万円で売らざるを得ないのだ。世界の主要な国々は、この10年間でGDPを1.5倍に増やしているから、必然的に物価も上昇し、車の価格も上がっているのに、日本は経済が停滞し、GDPも伸びず物価も上がってないから、他国と同じように車の価格が上がることがなかったのだと、そう解説している。当を得たエコノミクス。実にそのとおりで、今後、日本で売る車はもっともっと高くなることだろう。為替が1ドル150円を超えれば、ダイハツの「ムーブ」最上位モデルは250万円の値を付けざるを得ない。日本の貧乏世帯が乗る車はなくなる。それこそ、インドのタタの「ナノ」のようなブレイクスルーで窮地を乗り切るしかなくなるだろう。自動車で起こっていることは、衣料品の世界でも起こっている。ユニクロの主力商品であるストレッチジーンズは4300円だが、従来は2000円とか3000円の価格帯だった。

2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_9355044.jpg現在、政府とマスコミは、日本の企業による国内販売製品の価格引き上げについて、それをアベノミクスの政策的な物価上昇のスキームに沿うものとして「優等生」的評価で意味づけ、デフレ脱却=インフレ=景気回復の文脈で積極的に賞揚する語り方をしている。まるで、日本経済と国民生活を幸福に導くモメントであるかのように、値上げの問題を論じている。だが、実際には全く違う。日本経済の実力が落ち、円が切り下げられ、日本人が購買力を失って、これまで買えていたモノが買えなくなっているのであり、生活水準が下がっているのである。経済の現実が教えられているのだ。昨日(4/2)、報ステですき屋の値上げのニュースをやっていた。NHKは、これをデフレ脱却と賃上げの契機として肯定的に報道している。古館伊知郎は、干魃の影響で牛肉の輸入価格が高騰した結果だと説明した。が、肝心なことを言っていない。国際市場で牛肉が値上がりしている決定的な要因は、中国での消費需要の激増にある。NHKの特集番組を見て驚かされたが、何と、5年間で6倍も輸入を拡大させている。従来は豚肉中心だった中国人の食生活が変わり、富裕層を中心に旺盛に牛肉を食べるようになったため、その貪欲で強烈な需要増に対応すべくバイヤーが海外を飛び回って強気の高値で買い付けていた。割を食らったのは日本の商社で、仕入競争で中国に負け、国内に十分な量を調達できなくなっていたのだ。

2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_18435969.jpg番組に出た双日食料が牛バラ肉を卸していた大口顧客は、吉野屋だろうか。日本の商社は、牛肉を米国や豪州から買うとき、解体した部位単位で商品輸入し、出荷前の安全検査も厳しい基準を要求する。ところが中国は、各部位ではなく一頭丸ごとの単位で購入するため、米国や豪州の輸出業者にはコストが減ってありがたく、おまけに日本より高い値段で買ってくれるのだ。この競争で日本側に勝ち目はない。少し前、中国人がマグロなど遠洋の水産資源を大量に消費するようになり、マグロは日本人の口に入らなくなるという報道をやっていたが、とうとう牛肉まで同じ範疇に入ってしまった。4年後の2019年には、中国のGDPは日本の3倍になると言われている。この予測はIMFの専門家によるもので、為替変動を厳しく見積もっているかどうか怪しく、実際にはもう少し前倒しで、3年後の2018年には3倍を越えるだろう。アバウトなフォーキャストで恐縮だが、3年後の2018年に3倍に差がついているのなら、15年後の2030年には10倍に開いていておかしくない。GDPが10倍に開いたときは、単純に一人当たりのGDPが日本と中国で同じになっているということである。今からは想像もできない姿だが、15年前の2000年、まさか中国が10年後の2010年に日本のGDPを追い抜くとは思わなかった。20年前の1995年当時は、そんな日は死ぬまで来ないと、半世紀以上かかると私は思っていた。

2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_18441649.jpg2014年の中国のGDP値は、IMFの昨年10月の予測によると10兆3550億ドルで、日本の4兆7690億ドルの2倍を超えている。このまま年率7%で単純に成長を続けると、10年後の2024年に20兆ドルを超え、ちょうど2倍の規模に膨らむ。15年後の2028年には27兆ドルになる。15年間ずっと7%成長を続けられるのかという疑問はあるが、為替を考えると、ドルベースで10年後に現在の2倍、15年後に現在の2.7倍の規模は、特に不自然な想定ではないだろう。一方、日本の方は、2012年に5兆9370億ドルだったGDPが、2013年、2014年と数字が小さくなっている。ドルベースでGDP値が縮小している。円安のせいだ。おそらく、2015年も2014年よりドルベースの値は小さくなるだろう。ドルベースで日本のGDPが縮小を続けることは、為替の今後を睨めば長期トレンドと考えていい。さらに、団塊の世代がリタイアした後は日本は本格的な超高齢化社会に移行し、生産活動は一層鈍くならざるを得ない。「失われた20年」という言葉のとおり、1995年から日本のGDPは横這いで伸びてないのだ。先の20年間でGDPを伸ばせなかった日本が、今後の10年、15年でGDP(ドルベース)を伸ばせる保証はない。むしろ、この2年間のトレンドこそが真実で、日本のGDPはマイナス成長が基調になると見るべきだろう。試算として、年率3%ずつマイナス成長を続けると、2030年の日本のGDPは2兆9300億ドルにまで萎む。

2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_1844272.jpg逆に、年率7%成長をずっと続けた中国は、2030年に30兆5880億ドルとなり、この時点で日本の10倍の規模となる。極端な試算ではあるが、長期の見通しはこんなものだろう。英エコノミスト誌の予測では、2050年に日本は一人当たりGDPで韓国の半分になっている。2030年に中国の一人当たりGDPが日本と並ぶと予測しても、さほど荒唐無稽とは言えまい。中国も急速に高齢化が進み、15年後には「世界の工場」の活力は失っているだろうが、人民元国際化のプロジェクトが奏功し、アジアの金融大国と呼ぶに十分な姿に変貌していると思われる。人民元をアジア・アフリカの基軸通貨に据えることに成功したなら、今の米ドルと同様、紙幣を刷って需要を作り出すことができ、通貨マスプリで内需を起こし、中国経済を拡大均衡させることができる。人民元金融圏に入った諸国から集まる冨が、人民元の貨幣信用をバックアップする価値実体となる。中国は消費大国となり、この半世紀の米国のように、次の新興国の製造業の市場となり、人民元を支払い、新興国企業が貿易で溜め込んだ人民元マネーを金融市場で増殖する胴元となる。その莫大な利益で国家を運営する超大国となる。中国経済は、製造業の輸出で稼ぐのではなく、金融と消費が成長エンジンに変わる。本来、この「帝国循環」は日本が担うところだったが、日本が米国に遠慮して辞退したため、中国に歴史の順番が回ってきた。オフショア人民元という通貨は、それだけ意味の大きな存在だ。
 
日本には成長のエンジンがない。成長するための武器がない。中国にはある。


2030年に中国と日本の一人当たりGDPが同じになる試算と理路_c0315619_184441100.jpg

by yoniumuhibi | 2015-04-03 23:30 | Comments(4)
Commented at 2015-04-04 10:26 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by swissnews at 2015-04-04 20:39
日本の外国人に対するバーゲンセールは数年後どうなるのか。買い物観光客が来なくなって何が残るのか。それだけでなく一昔、南アジア諸国は安い、安いと思われていたが5年経ってそこへ行けば物価が高くなっているのが分かる。
きびしいスイスの企業でも、外国人増加の半分は中国人で大手企業では中国人女性が管理職を次々ゲットしている。中国人観光客は高給品を買い、スキー客も多く、大学でも中国人留学生が一番多い。彼らは一見バラバラに見えるがいざとなったら祖国のことを考えるだろう。日本の政府が「許せない」「遺憾だ」とそっくり返っていても、目先のバーゲンセールや花見客を自慢していても、長期の対策がなければ日本の貧困化は防げない。なるようになれでいいのかと本当に思ってしまう。
Commented by 愛知 at 2015-04-05 23:29 x
日本国内での自動車販売台数が○○年から右肩下がり、テレビの経済番組でのエコノミストの発言。そのときも気になっていたのですが、こちらの記事で再度、気にかかり、限られた時間で検索を。トヨタ自動車75年史によれば、1990年がピークで、以後、ずっと右肩下がり。限られた時間内での検索ですし、輸出の増加、輸入車のシェア拡大など検討すべき点は多いのでしょうが、トヨタ自動車75年史のグラフこそが日本経済の鏡と思われました。工業会系のサイトでは3~4年の動向しかすぐに知ることはできません。立派と思えたのはトヨタが75年間を一望できる図表を示していること。短時間の検索でそこまで言うのも何かと思いますが、工業会系その他では、不都合な真実を隠しているような、そんな気まで。AIIBで言えば、麻生がガバンナンスと言うと、バカザンスと聞こえます。親米宦官に操られて。トヨタの拡大は輸出の増加。米国に遠慮の鎖国政策など商売の足を引っ張るだけ。またぞろ些細な経験で恐縮ですが、仕事で27年間、警察官と話をしてきましたが、今の警察官はゲシュタポ。無表情で掴みどころが皆無。何のためにということは考えられないシステム。ゲシュタポというよりロボット、ロボコップ。詳しく書けませんが、人間と話をしているという感情は沸かず。暴対法、個人情報保護法、特定機密保護法・・・個(民)を否定し、官と天下り先を富ませることだけが目的の法律。バンシルー様のコメント(4月1日)、胸に染みます。亡祖父は、日清日露ですが「伍長だった」の他、口開かず。義父は一度だけの京都旅行で、戦中、朝鮮でしてきたことの悪行を悔やんでいました。いつも統合性のないコメントで恐縮です。
Commented by axiote at 2015-05-18 14:00
ボクが子供だった1995年頃には、中国の1人あたりGDPは500ドルとか300ドルだったのに、今や10000ドル…
たった20年でここまで変わるのか…

ボクの家族が、中国人の技術力とか、民度を小馬鹿にしてたけど、
いつの間にか、馬鹿にならない民族に変わってしまっている…
ほんと、時間って怖いわ…
中国 20年で変わりすぎ…
感嘆と共に、畏怖の念を持ってしまう。


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