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慰安婦問題の日韓合意は破綻する - 倫理的主体を欠いた歴史外交は成就しない

c0315619_1538172.jpg慰安婦問題をめぐる日韓合意が12/28に発表された。それによると、今回の合意は「最終的かつ不可逆的解決」と確認されていて、以後、この問題をめぐって「国際社会で互いに非難・批判することは控える」という方針が表明されている。蒸し返さないということだ。政府間の合意であり、国際社会も高い関心を寄せている中でのコミットであるため、軽い合意ではないのだが、私はこの合意は守られないだろうと予想する。すぐに破綻して反故という流れに向かうのではないか。最初に報道を聞いたとき、そう悲観的な見方を持った。内田樹など左翼リベラルの論者は、この合意を一歩前進と前向きに評価し、歓迎のコメントを発しているけれど、私はそのような感想を持つことはできないし、この政治に積極的な意味づけを与えることはできない。なぜなら、この合意は、米国への媚売りが目的の粗悪なハリボテ細工の外交で、すぐに合意の中身が崩れるからで、合意が破綻した後に現在よりも強烈な日韓の不信を招くことが見え見えの政治だからである。韓国の動向を見ると、今回の合意に対して最大野党が強く反対して政府を非難している。屈辱であり野合であると言い、弱腰外交だと糾弾している。日本の野党の肯定的な姿勢とは様子が違う。元慰安婦たちも、日本側に法的責任を認めさせることなく、自分たち被害者に相談もなく、唐突に、政府が「最終的解決」を日本側に約束したことを激怒している。

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by yoniumuhibi | 2015-12-30 23:30 | Comments(9)

『母と暮せば』と次の戦争の絶望 - 死んでゆく意味すら信じられぬまま

c0315619_17195510.jpg山田洋次監督の『母と暮せば』を見てきました。井上ひさしが戯曲を書いて黒木和雄が映画化した『父と暮せば』の登場人物を逆の配置にし、長崎の原爆投下で母の方が生き残り、息子の方が死に、3回忌の夜に幽霊になって現れるという物語です。井上ひさしは、広島、長崎、沖縄と三部作を構想していたらしく、その長崎編を山田洋次が遺志を継いだ形で映画化した作品だそうです。山田洋次の新作で、吉永小百合が主演で、戦争をテーマにしたものですから、何はさておき見なきゃということで映画館に足を運びました。師走のシネコンは『STAR WARS』の客でごった返していました。とても悲しいお話で、救いのない印象を受けました。正直に感想を言えば、比較して、黒木和雄の『父と暮せば』の方がずっといい。『父と暮せば』の方は、ハッピーエンドという表現は適当ではないですが、次の生への希望というか、命の絆というものを最後に感じることができました。映画の中にすっかり没入して、感情移入して、ラストの宮沢りえの「おとったん、ありがとありました」の台詞を聞いたとき、ああよかった、素晴らしい作品だったと満足と感動を覚えたものでした。今回は、ラストの部分に暗い違和感と絶望感が残りました。作品全体の評価でも、『父と暮せば』が90点なら『母と暮せば』は60点です。宮沢りえと二宮和也の演技力の差ということになります。『父』の宮沢りえは絶品だった。

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by yoniumuhibi | 2015-12-24 23:30 | Comments(7)

今年1年を振り返って - 安保法成立の無念とSEALDs運動のあざとさ

c0315619_1249324.jpg今年1年を振り返ったとき、やはり言わなくてはいけないことは、安保法が制定されてしまったことだ。9月19日未明に成立し、9月30日に公布された。来年3月末までに施行となり、来年度の自衛隊は新しい安保法制の下での運用となる。あらためて言うまでもなく、この新法制は憲法9条の改定を先取りしたもので、違憲立法であり、本来なら9条を改定した先に生まれ変わるべき自衛隊が、そのまま出現して活動してしまうことになる。中身としては、安倍晋三がDCで約束してきたとおり、米軍の戦争に自衛隊を差し出して使ってもらうということであり、来年からの戦争に自衛隊を駆り出すということだ。具体的にどんな戦争かということは、1年前に米国の安全保障と外交のシンクタンクの幹部が報ステで証言を残していて参考になる。私は、尖閣危機が起きて安倍晋三が政権を取った2012年から、ずっと、2016年6月頃に中国と軍事衝突を起こすという予想を言い続け、その根拠を論じてきたが、半年後に日程が迫った今でも、特にそれを修正する必要性を覚えない。不思議なのは、巷の空間に戦争が始まるという危機感がないことだ。あれほど安保法の危険性を報道し、法案阻止の論陣を張った報ステやNEWS23が、最近は戦争に恐怖する気配が全くなくなった。戦争法と呼んだ安保法が成立した後、まるで平和な時代を取り戻したかのようだ。

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by yoniumuhibi | 2015-12-23 23:30 | Comments(5)

自由と民主主義を考えるための「世に倦む」選書15冊 - 知識人になるために

c0315619_18421135.jpg 「世に倦む」選書15冊の続きを。⑨の日高六郎編『1960年 5月19日』。1960年10月に出版の岩波新書。60年安保闘争とは何だったかを知る最良の入門書。1960年5月19日の強行採決、6月10日の羽田ハガチー事件、6月15日のデモと樺美智子の死、6月17日の七社共同宣言、6月18日の自然承認、6月23日の岸信介の退陣表明と、怒濤の1か月間が綴られている。戦後民主主義が運動のレベルで爆発した沸点の日本人のドラマ。この政治の激動を通じて、日本国憲法の理念は体制として確立し、いわゆる平和と繁栄の戦後日本ができた。ダワーが言うところの、憲法の理想を日本人が地上に引き降ろした市民革命の瞬間である。SEALDs選書にこの一冊が入ってないことも、どうにも不自然で不可解でならない。運動としての民主主義の意義にコミットするならば、60年安保の歴史を基礎知識として持とうとするのは当然のことだろう。除外された理由は何なのか。われわれは、日本国憲法について、東京裁判について、60年安保について知らなくてはいけない。基本を押さえないといけない。これらは学校教育では教わらないことが多く、正確な知識を持った教師が少ない。この書で歴史の概要を掴んだ上で、丸山真男集第8巻に所収されている「選択のとき」と「復初の説」の2論文を読み、世織書房『同時代人丸山真男について』での日高六郎の回顧を参考にして欲しい。

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by yoniumuhibi | 2015-12-20 23:30 | Comments(1)

自由と民主主義を考えるための「世に倦む」選書15冊 - 対案はこれだぁ

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by yoniumuhibi | 2015-12-18 23:30 | Comments(3)

SEALDs選書の面妖 - 君たちは『君たちはどう生きるか』をどう読んだのか

c0315619_1755068.jpg少し前、「SEALDs選書」のプロジェクトという動きがあった。8月23日には第一弾の基本15冊なるものが発表され、この選書を店頭に並べる書店を増やす運動が始まった。その後のl騒動と紆余曲折は周知のとおりで、ここでは経緯を省略するが、プロジェクトはやや尻すぼみになった感がある。プロジェクト始動を告知する口上には、「SEALDsの活動理念の基礎を形作り、多くのメンバーがフェイバリットに挙げる書籍を厳選しました」とある。また、「より多くの皆さんに安保法制や政治、歴史問題についての幅広い知識に触れる機会を提供するべく、各メンバーが影響を受けてきた書籍を選書リスト化」したとある。この説明そのものは、並んだ15冊を見たとき、おそらく彼らの中での事実だと思われる。推測するに、半分ほどは院生の諏訪原健がピックアップし、残りは他のメンバーが無造作に上げたものを入れたのだろう。これを見ての私の感想は三つほどある。第一に、本当に読んだのだろうかということだ。第二に、無駄なもの、不要なものが多いということだ。第三に、思想的に矛盾するものがごちゃまぜになっているという点だ。具体的に言えば、例えば、高橋源一郎とか小熊英二とかは、いわゆる脱構築派のイデオローグであり、戦後日本の社会科学の基本的な思想や所産に対して批判的で冷笑的な言説や視線を浴びせてきた者たちである。

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by yoniumuhibi | 2015-12-16 23:30 | Comments(3)

村上春樹に感謝をこめて - 書生たる個人として生き、自由に言論すること

c0315619_18331579.jpgこのところ、しばき隊の問題ばかりを取り上げていて、もう食傷だから中止にしてくれと思われている読者も多いだろう。私自身は、この問題は今の日本の政治において重要で、考察と検討が必要な問題でありながら、誰も議論をしていないことを不満に感じている。辺見庸がしきりに問題提起しているところの、ファシズムを反対側から支えるファシズムの問題とも関連する、すぐれて意味のある政治学の問題だ。だが、この問題を正面から批判して論陣を張ることは、勇気の要ることで、これまでなかなか本格的に着手することができなかった。SEALDsやカウンターの運動というのは、右傾化の極に達したこの国で、安倍政権に対抗する唯一の救世主のようにマスコミから評価されている政治表象である。そのため、これにネガティブな視角で対峙することは、世間一般、すなわちリベラルの常識世界から孤立するリスクを拾うことに繋がってしまう。辺見庸が9月27日の日記でSEALDs批判を書いたときも、左翼リベラル方面から猛烈なバッシングの嵐が吹き荒れ、彼の発言を擁護する者は、おそらく私を除いて一人もいなかった。左翼リベラルの界隈では神様のごとく崇められ、辺見庸が論稿を載せれば週刊金曜日の部数が売れるというその人気者が、9月28日から数日間は、「2分間憎悪」の磔刑に処せられて石を投げられていた。

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by yoniumuhibi | 2015-12-14 23:30 | Comments(7)

左右二つに路線が割れた野党共闘 - SEALDsほかの「新市民団体」の暗雲

c0315619_16321857.jpg参院選に向けての野党の動きが活発で、ネットの中でもとても関心が高い。選挙は半年以上先だが、もう議席予想が週刊誌に出てもおかしくないほど、人々の政治の関心は来年7月の参院選に向けられている。現時点での私の予想を言うと、やはり、安倍晋三の圧勝に終わるだろうと言わざるを得ない。その理由は、自民党に勝てる対抗勢力がないからで、半年後もその現状に変化がないと思われるからである。9月の安保法の強行採決の後、安倍内閣の支持率は着実に上がり、毎日が12/7に発表した調査結果では、前回(10月)より4ポイント増の43%に回復している。前々回は35%だった。調査の度に4ポイントずつ上がっている。日経が11/29に発表した調査結果では、支持率は前回(10月)より8ポイントも上昇して49%になった。新年には50%を超えるだろう。今年前半の安保法の政局を通じて落ちていた支持率は元に戻り、昨年並みの安定水準に戻った。ということは、昨年12月の衆院選のときと同じ環境条件を得たということであり、選挙をやれば同じ結果に導かれる蓋然性が高い。争点が曖昧となり、投票率が低くなり、論戦が散漫となり、自民が圧勝となる選挙である。2013年の参院選、2014年の衆院選と繰り返されたところの、安倍晋三の勝ちパターンが再現されてしまう。

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by yoniumuhibi | 2015-12-12 23:30 | Comments(6)

SEALDs運動の神通力が消えた大阪ダブル選挙 - 共産党の挫折と失速

c0315619_17212996.jpg些か古い話に戻って恐縮だけれど、11月22日に投開票された大阪ダブル選挙の結果は、無視できない重要な問題だと思われる。これまで快進撃を続けてきた共産党の勢力が、ここで大きな壁に突き当たり、逆風の事態を迎えることになった。ぐんぐん党勢を伸ばしていた共産党が、突然、何かの選挙でブレーキがかかって失速するというのは、これまで一度ならず目撃してきた光景で、1990年代末にも遭遇したし、1976年の衆院選の衝撃は今でも生々しく記憶にある。あのとき、それまで破竹の勢いで議席を増やし、大都市を次々と革新自治体に変え、「民主連合政府」への期待に国民を昂奮させていた共産党が、一気に38議席から17議席に半減、手痛い敗北を喫した。その躓きは、そのまま2年後の1978年の京都府知事選に繋がり、大きな大きな関ヶ原の戦いで左翼は敗れた。釜座の落城。以後、残酷で苛烈な政治の掃討戦が始まり、あの、凄惨をきわめた都教組分裂劇を含む80年代の「労働戦線の右翼的再編」に至る。信仰を守り、意地を貫き、左翼の立場に踏み止まった者は、長い長い負け犬の人生を歩むこととなった。『借りぐらしのアリエッティ』の家族のように。レーガン・中曽根による新自由主義の開幕。そして、バブル・ポストモダンへ。時代が変わることを告げるように、若者たちに改宗を促すように、1980年12月8日、ジョンレノンが射殺されて姿を消した。

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by yoniumuhibi | 2015-12-09 23:30 | Comments(1)

「流行語大賞」の違和感 - 安保法の対立を解消する機嫌とりの共同体儀式

c0315619_17301285.jpg先週(12/1)、年末恒例の「流行語大賞」の発表があり、トップ10の中に「アベ政治を許さない」と「SEALDs」が選ばれ、受賞式の会場に澤地久枝が出席していた。そのテレビ映像を横目で見ながら、私はとても怪訝な気分になった。できれば、その違和感について辺見庸に言葉をあてがってもらい、代弁を果たしてもらって、すっきり爽快になりたかったが、叶わぬ望みのようなので自分で試みることにする。選考委員長が鳥越俊太郎だったので、こうした結果になるのは自然だとも言えるけれど、何か面妖で不快な感じが残る。奇妙で奇怪だし、人をバカにしていると思うのである。最初に、難しい表現で直観を言えば、その絵はまさに、辺見庸的な意味の「ファシズムの左側からの補完物」の政治そのものだ。以前、10月頃だったか、私は、安保法の政治は年の瀬と正月で一つに丸く纏められ、そこで国民の意見対立は止揚されるだろうという意味のことを言った。和をもって尊しとなす。日本人というのは、(良い悪いを別にして)均質性と一体性を重んじる。共同体に対立を引き摺るのを嫌う国民性を持ち、正月という時間の区切りを利用して、共同体の成員全員が新しく生まれ変わる機会と儀式を上手に使い、対立を忘れる(水に流す)ということをする。勝者と敗者が丸く一つに収まるということをする。

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by yoniumuhibi | 2015-12-07 23:30 | Comments(5)


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