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拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由

拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13423718.jpg歴史的な米朝首脳会談が行われた翌日、13日に河野洋平が都内で講演し、「植民地問題の処理もできていない国に、ただ(拉致被害者を)帰せ、帰せと言っても問題は解決しない。国と国の関係を正して、帰してもらうという手順を踏まざるを得ない」と述べた。拉致問題の解決のためには、まず国交正常化が必要であり、過去の植民地支配への反省が大切だと言っている。この勇気ある発言を支持し、価値のあるステイツマンの政治行動だと評価したい。これこそが正論だ。われわれが即くべき対北朝鮮の正しい方針だ。平和憲法と村山談話の精神に則った本来の外交論だ。河野洋平の中には95年の村山談話が生きている。現在、与党どころか野党も含めて、永田町の政治家において完全に死に果て、両陛下のみに看取されるところの、村山談話の思想的神髄が健在のままだ。河野洋平の勇気に感動を覚える。誰もここまで言おうとしない。共産党でさえ、拉致被害者家族会に忖度して、この正論を口にしようとしない。河野洋平こそ、今の日本の政治のリーダーになるべき人物だと思う。



拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13424749.jpg一昨日(17日)から昨日(18日)にかけて、マスコミ各社から世論調査の結果が発表された。それを見ると、軒並み安倍内閣の支持率が上昇している。17日に出た共同通信の世論調査では、前回から6.0ポイント上がって44.9%となり、支持が不支持を上回る結果となった。同じく読売新聞でも、内閣支持率は前回より3ポイント上がって45%となり、3か月ぶりに支持が不支持を上回った。18日に発表されたテレ朝の世論調査では、前回より5.3ポイント上がって39.4%となっている。朝日新聞が3月初に森友問題の文書改竄を暴露した後、ずっとマスコミの攻勢が続いて支持率は下落していたが、今回、反転上昇し、改竄が発覚する前の水準まで戻った感がある。マスコミが醜聞や不正の追及報道で押し込んでいくと、安倍政権の支持率は30%まで下がるけれど、そこで野党が国会で力不足を露呈し、マスコミの銃弾が途切れてしまうと、途端にバネが反発するように支持率は回復してしまう。安倍政権のいつものパターンだ。こうなると予想していた。


拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13425956.jpgだが、共同通信やテレ朝の数字が示すように、本当に、この1か月の間に5%も6%も安倍内閣の支持率が上がるような要素があったのだろうか。そうした疑問は誰もが素朴に持つだろう。何か秘密があるのではないか。実は特別な秘密があるのである。NHKが11日に発表した今月の世論調査結果を見てみよう。内閣支持率は前回と同じ38%である。上がってない。この調査は8日から10日にかけて行われている。時事通信を見てみよう。こちらの方は内閣支持率は35.5%で、前回より2.6ポイント下がっている。時事の調査が行われたのも、8日から11日にかけてである。つまり、簡単に言うと、先々週までは、安倍内閣の支持率は下落か平行で、先週、何かの契機があって上昇することになったということになる。直近の16日から17日にかけて行われたマスコミの世論調査では、例外なく支持率が上がっている。11日から15日にかけて何かがあったのだ。それは何か。言うまでもなく、米朝首脳会談の報道であり、そこに必ず登場する拉致被害者家族の映像である。


拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13431010.jpg14日には家族会が官邸を訪れて安倍晋三と面会する絵があり、それが夜のトップニュースだった。そこに至るまで、毎日毎日、毎晩毎晩、家族会の面々がテレビ報道をオキュパイし、安倍さん安倍さんと安倍晋三を持ち上げる。「拉致問題がライフワークの安倍総理」というイメージが繰り返し訴求され、テレビで積極表象としてプロモーションされる。これこそが安倍晋三の支持率維持の切り札なのだ。拉致家族会、特に横田早紀江をテレビに頻出させ、北朝鮮への悪罵と怨恨を言わせ、安倍晋三への信頼と期待を言わせ、両者の固い絆を強調することで、安倍晋三の支持率は自然と上がる。そういう構造と法則性が出来上がっている。だから何度でも、しつこいくらい、安倍晋三とCIAの手下である日本のテレビは、横田早紀江を報道の前面に出し、「拉致問題」の宣伝を繰り返すのである。森友加計問題で汚れて失墜していた安倍晋三のイメージは、聖人である横田早紀江の支持によって浄化され復活するのだ。現在の日本において、拉致家族会は絶対的な存在であり、誰も彼らを批判しない。


拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13432364.jpg私は、この社会現象をカルトだと考えている。そういう結論にしかならない。外国人が見たらわけが分からないだろうし、とても非合理的な、日本人独特の閉ざされた呪術現象のように見えるだろう。左翼も含めて、北朝鮮に大勢の拉致被害者が囚われていて救出を待っていると幻想している。それは、右翼団体が勝手に作り上げて何十年もプロパガンダしている物語にすぎないのに、左翼がそれを本気になって信じこみ、あの家族会の面々を偶像崇拝している。もし本当に、日本への帰国を望んでいる拉致被害者が生きているのなら、政権も変わったことだし、北朝鮮はとっくに帰国させるか、あるいはそれをカードに日本との外交交渉をするに違いない。なのに、そうした合理的な思考と判断を左翼ができない。右翼団体と安倍政権の言うがままを信じ、騙され踊らされて「拉致問題」の神話に漬りきっている。昔、日本人全体が、昭和天皇を現人神と信じ、神風が吹いて米軍に勝つと信じたのも、日本人のこういうネイティブに全体主義的なメンタリティの為せる業なのだろう。日本の21世紀のカルト。


拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13433532.jpg丸山真男が死ぬ直前、僕らが若い頃は日本全体がオウム真理教のようだったと言い、嘗ての日本社会の異様なカルト全体主義の実相を証言していたけれど、それは決して昔話ではないことを思い知って寒気がする。横田早紀江の動機と真意は、娘を取り戻すことではなく、北朝鮮の国家体制を日米の武力行使で打倒することであり、金王朝を転覆させ、北朝鮮に復讐することである。恨みを晴らすことだ。彼女はただの市民ではなく、国家権力の要人であり、安倍政権の中枢にいるイデオロギーの同志である。もっと言えば情報機関(軍)の高級将校に他ならない。北朝鮮に関して日本国が入手しているあらゆる機密情報は、彼女のところに集まっている。したがって、2014年から始動したストックホルム合意履行の「調査結果」についても、安倍晋三や西岡力が知っていることは彼女も知っている。「拉致問題」の国家プロジェクト(行政・作戦)の頂点にいる人物だから当然だ。「調査結果」の内容を知りながら、「早く返しなさい」とか「返せばいいんです」と言い、圧力を絶叫し、国内の世論を圧力に扇動し、安倍政権支持へと誘導する。


拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13434954.jpg横田早紀江や家族会を批判することは、この国ではタブーとなっている。誰一人としてそれをしない。批判するどころか、聖なるイコンとして崇め奉り、彼らの主張を全面肯定して納得している。左翼が自ら右翼が作ったフィクションを信じている。愚神礼讃している。安倍政権の支持率が簡単に崩れない原因の一つは、「拉致問題」のマインドコントロールが強固で、左翼も含めた国民全体が「拉致問題」の神に帰依しているからである。マスコミのプロパガンダのシャワーに漬け込まれた左翼は、自ら観念操作をしていて、安倍政権と家族会は別物だと考えている(本当は一体なのに)。安倍晋三と横田早紀江を独立した対峙的な関係として捉え、両者の間に緊張関係があると認識している。横田早紀江は安倍晋三に騙されて利用されているのだと思っている。そういう虚構を信じこみ、自らを横田早紀江の立場と同一化させている。これは完全な錯覚であり、事実誤認にもとづく倒錯した信仰だ。真実は、家族会が安倍晋三に操られているのではなく、左翼が家族会に騙されているのである。左翼の知性がとことん劣化してしまったため、こういうカルトに国民全体が包摂され、恐るべき極右政権を永続化させる結果になってしまった。


「拉致問題」は政権浮揚に効果があるのだ。それで支持率が上がるのだ。それが国民の「宗教」だから。左翼はよく考えるべきなのだ。北朝鮮が「安倍一味」と言うとき、そこには誰と誰がいるのかを。


拉致家族会への幻想と忖度 - 安倍内閣の支持率が下がらない理由_c0315619_13440482.jpg

by yoniumuhibi | 2018-06-19 23:30 | Comments(2)
Commented by takahashi at 2018-06-19 14:51 x
モリカケというアキレス腱とは別に、安倍には、拉致問題という伝家の宝刀があるわけですね。米朝会談は中味が無いだの、北朝鮮は必ず裏切るだの、日本のマスコミがこぞって和平路線を邪魔しようとしているのは、安倍の影響力のみならず、日本もまたアメリカの軍産複合体に牛耳られているからなのですね。そして、(ケネディのように)トランプが暗殺されないか心配するのも、実に説得的です。
Commented by 町田 at 2018-06-20 15:46 x
横田早紀江さんは全てを把握している、という点については本文に書かれていることに同意しません。
私の母は早紀江さんと同年代ですが、メンタルの老化による暴走が進行しています。あんなものです。
娘を救えなかった事実など決して受け容れられない。その一心だと思います。
しかし仰りたいのは、こうしたことをも想定して物事を凝視しなくてはならない、リベラルはあまりに能天気で間抜けすぎる、ということだと思います。
ニュートラルな視点に立つための処方として読ませていただきました。

めぐみさんらが生きて助けを待っているミラクルな設定を是が非でも維持し続けるために無理なストーリーが編み出され、理屈ではありえないとわかっていても、そうだったらいいのにと願ってしまう情動は私自身も制御できていません。拉致問題のニュースを目にする度、茶番だと感じてしまうことに罪悪感を抱いてきました。

堂々と娘のウンギョンさんを出してきて、日本に連れて行ってもよいとまで言った時点で、横田めぐみさんに関しては既に何も隠す必要がなくなっていたということですよね。
騙されない誤魔化されないと騒いで潰したのは家族会でした。
ウンギョンさんは母は亡くなったと述べており、来日させれば更に政府には都合の悪い話が出てくる可能性もありました。

小泉政権当時、遺骨は偽物だと断定したDNA鑑定もかなり胡散臭いものでした。
その後ネイチャーに掲載された帝京大・吉井氏の発言内容を大多数の国民は知らぬまま、北朝鮮側だけが何から何までデタラメで日本は全面的に正しいのだと信じ込まされたままです。

「日本が偽物だと言うなら、それは朝鮮人の遺骨だということだから、早急に返還してほしいと、われわれは何度も言ってきた。だが日本は、いまだに返還しない。」と朝鮮労働党幹部は不信感をあらわにしています。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55276?page=2
なぜ政府は偽物と証明済の遺骨を保管し続けているのでしょうか…


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