人気ブログランキング | 話題のタグを見る

座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー

座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14443049.jpg座間のアパ-トで殺害された23歳の被害者のことがテレビで報道されていた。小学校のときの写真と卒業文集が紹介され、飼育係で動物を可愛がっていたという。山梨で母親と兄と3人で暮らし、中学1年のときにトラブルがあり、家に引きこもりになった。何があったのか詳細は伝えられてないが、おそらくいじめだろうと想像される。薄幸な少女は12歳のときに引きこもりになり、10年間ずっと家にいて、母親が死んだ今年、事件に巻き込まれて犠牲になった。今週になって23歳の被害者の実名と写真がマスコミに公表され、経歴情報が公開されたことでネットでは驚きの声が上がっていた。警察はこんなことをしていいのかという声があった。無論、公開したのは被害者の兄の意思と決断によるものだ。幾つか年上のはずの兄は、天涯孤独の身になってしまった。この兄妹に同情する。そして、写真とプロフィールを出してくれてよかったと思う。兄が勇気を出して妹の素顔を教えてくれたことで、私の中で事件はかなり立体的な輪郭を整え始め、この事件をどう理解すべきかという視角が備わり始めた。意味を解読することができるようになった。まだ、誰もこの事件について本格的な考察を出していないが、私の直観を言えば、まさに日本の貧困の現実が本質的契機ということになる。



座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14444491.jpgこの子が受けたいじめがどんなものだったか、できればそのことも兄の口を通して詳しく聞きたい。母親がどうして死んだのか、病死だったのか、そのことも知りたい。母親は40代後半から50代前半の若さだと推定される。3人は母子家庭だった。この子が中学校に入っていじめを受けた時期は、11年前だから2006年頃ということになる。小泉竹中の「改革」が猛威をふるって格差が激しく拡大し、派遣労働者が増え、ワーキングプアが問題になった頃だ。この被害者の少女の写真をニュースで見て、心やさしい性格だったことが説明されたとき、思い出したのは、NHKの『ワーキングプア』で登場した、千葉のGSで深夜に父親が働く父子家庭の絵だった。うろ覚えだが、3人家族で、男の子が2人で中学生と小学生だっただろうか。父親は子どもの進学の学費のことで深刻に悩んでいた。家事を手伝う父親思いの子どもの表情が心細げで、カメラに撮られる姿が切なくて、気の毒で同情して涙が溢れてしまった。あの映像に出てきた男の子と今回の被害者の像が重なる。あの頃から、日本の子どもたちの多くがこのようになり、弱々しく小さな生き方になり、自己表出や自己実現がよくできない、全面発達から疎外された人格になった。今の若い人たちの多くがこのように不幸に育ち、影の薄い哀しく孤独な人格と人生になることを強いられている。

座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14445411.jpg気分が塞がれる。とても可愛い子だから、一昔前の、私たちの世代が子どもだった頃と同じ日本社会があれば、この子はいい感じの娘さんになり、恋人もできて楽しい青春時代の人生を送ることができていただろう。先日、紅葉を見に晩秋の奥日光へ出かけたら、戦場ヶ原も中禅寺湖畔も中国人の若いカップルだらけだった。快活で闊達に、嬉しそうな様子で、満足感と征服感いっぱいの得意顔で日本の国立公園の景勝を楽しんでいる。オキュパイしている。2人連れ、3人連れの若い観光客は外国人だけで日本人はいない。日本人の2人連れ、3人連れ、4人連れは高齢者だけ。中国人の若いカップルが幾組もいて、奥日光の紅葉の景色を堪能して人生を謳歌している。東京の山手線に乗っても、若い2人連れとか4人連れの家族とかは外国人だけだ。山手線では常に中国語が聞こえる。キャスター付きのバッグをガラガラと元気よく引き摺り、意気軒昂に話し声を上げているのは中国人の集団だけだ。日本人の若い子たちはその場所にいない。どこにいるんだろうと探すと、八王子で一人で引きこもりになり、唯一の頼りで支えだった母親を失い、自殺願望のハッシュタグで騙されて殺人鬼の餌食になっていた。この被害者のような若い子は、日本中にとても多く生息している。貧困のため、10代前半で受けたいじめのため、逼塞している子はとても多い。

座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14450622.jpgテレビのニュースは、毎日、トランプと安倍晋三の仲睦まじい姿を伝え、日本の国民全員がトランプの大ファンで、心の底からトランプを絶賛して大歓迎しているように伝え、二人が錦鯉に餌をまく場面を放送していた。あの迎賓館の錦鯉にも国民の税金が膨大に負担させられている。トランプと安倍晋三の食事代にどれだけ出費がかかっただろう。イバンカにはゴージャスな脚線美のお披露目の対価として57億円を渡してやった。安倍晋三らしい趣向と演出だ。テレビのニュース制作のスタッフもキャスターも、安倍晋三の脳になりきって、安倍晋三B、安倍晋三Cが視聴者国民に向かって話している。テレビのニュースは、毎日毎日、トランプ訪日の話と座間の大量殺人の話を並行して流してきた。どちらもとんでもない話なのだが、どうやら底が抜けるほど不条理で理解不能で目眩がするのは「トランプ歓迎」の現象と報道の方であり、座間の大量殺人の暗黒と絶望が霞んでしまう感がある。日本のお金が米国に使われている。無闇に無尽蔵に貢がれ注ぎ込まれている。よくこれほどお金が余っているものだと思うほど、日本に大量のお金があり、米国にバキュームで吸収されている。トランプと安倍晋三の絵はゴージャスきわまる。そして対照的に暗鬱な貧困があり、声も上げられず膝を抱えて固まっている小さな日本の人々がいる。

座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14451929.jpg私が素朴に疑問に感じるのは、被害者リストの中に多くの高校生が存在することだ。群馬の15歳の女子高生、埼玉の17歳の女子高生、福島の17歳の女子高生。通常、15歳の女子高生が行方不明になったらすぐにニュースになり、警察による公開捜査が始まるのではないか。8月には北海道を訪れた旅行中の26歳の中国人女性が消息不明になり、大騒ぎになってテレビが足取りを追跡した事件があった。26歳の成人の外国人が行方不明になってもこれほど国を挙げての騒動になる。群馬の15歳の女子高生はどうして遺体が解体されてDNAが検出されるまで捜索の対象にならなかったのだろう。理由は不明だが、それぞれの子どもたちも、23歳の八王子の子と似たような事情があり、家庭の問題を抱え、居場所のなさや生きづらさに苦しみ、悩み相談の問題を抱えていたのではないかという想像に行き当たる。埼玉とか、群馬とか、福島とかの地名が出て、東京という比較相対的に富裕層が住む地名が出て来ないのも、何かしら経済的な問題系がそこに介在するのではないかという予想に傾かせる。その根拠になる。彼女たちはあのアパートに引き寄せられ、悩み事相談のはずが、暴行され殺害されて遺体をバラバラに解体された。あまりにも惨めで悲しい、短すぎる人生の結末だ。何のために生まれてきたのだろう。やりきれなさすぎて言葉にもならない。きっと、重すぎて人はこの事件で多くを語ることができない。

座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14453408.jpg素朴な疑問のもう一つとして、部屋にクーラーボックスに入れた大量の遺体の肉片や頭部が置かれていたことで、ひどい悪臭を周囲に放っていたという事実だ。2か月で9人殺した部屋に、被害者は一週間ごとに入っていた。ニュースでは、部屋から周囲に発散する屍体の悪臭が、ゴミ出しする近所の住人の服にへばりついて取れなかったなどと証言が出ていた。そんな部屋に女の子たちは一人で入り、殺人鬼に対して警戒をすることがなかった。クーラーボックスから異臭を感じなかったのだろうか。狭い部屋に転がっている大きなクーラーボックスに異変は感じなかったのだろうか。それはともかく、この事件について学問的に問題を分析したり考察したりする試みというものが全くない。アカデミーから意見や反応がない。関心が感じられない。アカデミーの社会学は、脱構築(ジェンダー、マイノリティ、カルスタ、ポスコロ)の趣味の講座群だから、こんなときに何も言えないのだろう。本質に迫る議論ができない。誰も何も言わず、意味の追求が閉ざされ、場合によっては誤解されたイメージが広がり、被害者である女の子たちの自己責任にさせられるから、23歳の被害者の兄は勇気を出して口を開いたのではないか。マスコミは、SNSの責任に転嫁してみたり、事件の深層をどう説明していいか分からないから、本質的な解明をすることをせず、対処療法的に自殺対策のNPO法人の取り組みを報道したりしてお茶を濁している。

去年の障害者施設での大量殺人事件のときもそうだった。的外れな浮薄な言説ばかり繰り返していた。



座間の大量殺人事件への視角 - 何の意見も反応もない社会学アカデミー_c0315619_14454716.jpg

by yoniumuhibi | 2017-11-08 23:30 | Comments(4)
Commented by kokoron at 2017-11-08 15:34 x
相模原の事件の時は、若年層の逼塞感、未来への絶望が犯行に駆り立てた背景になっているのではないかと感じました。
しかし今回の事件は、点描的に明かされていくに従って浮き彫りになる犯行のあまりの異常さに、分析ができず、不定期に出現する異常者の犯罪、という見方しかできませんでした。
被害者の方に焦点を当てた、世に倦む様の慧眼に脱帽いたします。
被害者たちがこれだけ若い(自立したとは到底思えない)年代にもかかわらず、八王子の女性の兄が声を上げるまでその他被害者たちの存在が見えてこなかったのは、その親たちに余裕がなかったのではないか、その家庭がそもそも揺らいでいたのではないか、ということは、次に同様の犯罪を起こさせないためにも、しっかりと考察されるべき問題と思います。
ここから先は、私の戯言になります。私は40代独身女性、自営業です。昨夜、仕事が上手くいかずにせっぱつまった気持ちになって、ふと、この座間の犯人の心情に思いを馳せてみました。
明るい未来なんてあるとは到底思えない、殺伐とした毎日。精神的に弱って頼れるものを求める女性をおびきよせ、短期間に、次々と殺す。そしてその遺体に囲まれて生活する。「どうせろくな人生じゃないし」「どうせいずれつかまるだろうし」「ここまでやればどうせ死刑だろうし」という気持ちがこみ上げ、五感、自分を取り巻く現実が急速に現実味を失い、自分と関係なくなるような感覚を覚えました。
この犯人はサイコパスだ、という分析もあるようですが、案外そうとも言えないのかもしれない、絶望し自暴自棄になった時にこの状況は思いのほか近くに存在するものなのかもしれない、と思いました。
Commented by ayako at 2017-11-08 23:56 x
今記事を読んで、ブログ主様の心情と同じです。家庭が崩壊して、若年層に、自力で抜け出すのが困難な闇の世界が広がっていると感じます。安定した家庭で、守られて育つと、自己形成され、自分を主張し、守ることが出来る人間に育ちますが、環境に恵まれなければ、ブログ主様の言葉のように、「全面発達から疎外された人格になる」ということも成り得ます。 皆、やっと生活しているような時代に下がり、民間のサポートは追いつかないでしょうし。 今の殺伐とした空気の中では、学校でのいじめのように、誰かを攻撃したい気持ちがあたりに散らばっていて、強い人が弱いものに向けていると感じます。公共の場において、我儘な人も増えました。昔話ですが、80~90年代の明るい空気の中で育ったものとしては、今の若い人は気の毒だ、と感じます。社会が健全であれば、家庭が崩壊しても、居場所を見つけることが出来ましたが、今の壊れかけた社会の中では、中々難しいだろう、と思います。近年、猟奇事件が増えていますが、メディア、マンガ、アニメ、映画、等の内容が、悪質になっている影響と感じます。不気味な内容が増えました。幼稚な性愛ものとか、サディスティックな変質的な内容のオンパレードですから、あんな物を見ていたら、おかしな感覚になるだろう、と思います。
本当に国家が独立していれば、自国を豊かに形成する為に、健全な思考の人間を育てることが出来るのにと思います。過去の民度が高かった頃の意識を保っていられたら、自己防衛(他国の権力層から)出来た事が沢山あったのに、豊かな時代に、人々は浮かれすぎて、楽しいこと以外の、大切なことを、放棄してしまったから、そのツケがまわってきて、こんなにも民度が下がってしまったのだと思います。 15年ほど前に、グローバル権力層が、各国の国家、独自の文化、家族制度、社会制度、社会を安定させているモラル、等を壊そうとしていることを、本で読みました。3S政策とか。その中で、市井の中まで、監視体制を敷くために、猟奇事件も増えるだろう、と書かれていました。人々が、反発せず受け入れる為に、と。 自分達には何が出来るのだろう、と考えるのですが、頼みの綱は、市井の人々の意識の改革や、気づきによるかと思います。社会の仕組みが厳しい状況に追いやられている現状、草の根で人々が人間らしさを取り戻し、つながる(助け合う)ことが希望かなぁ、と思います。

Commented by Runner at 2017-11-09 05:08 x
どこかで誰かが優れた考察をしていたところで、マスメディアが紹介しないことには我々は気付かない。
ところが、日本のマスメディアは人材を発掘するという作業をほとんどやっておらず、いつも横着して同じ者にコメントを求めるだけ。

そんなマスメディアがご意見番としている社会学者の宮台真司は、何せ、「僕はいじめに遭ったことも見たこともない」と言ってるような有り様ですから。
よほど特殊な環境に育っているか、「いじめ」があるのに気付いてないかどちらかでしょう。

ちなみに、宮台真司が盛んに持ち上げるのがフランスの社会学者のピエール・ブルデューですが、ブルデュー自身は「エリート教育では鼻持ちならない者を養成しているだけで優れた社会学者は養成できない」と言ってます。

大島渚がよくこんなことを言ってました。
「京大なんかに行かなきゃよかった。京大なんかに行かなかったら僕はもっといい映画監督になれたに違いないんだ」
宮台真司が「東大なんかに行かなきゃよかった」と言うようなら、もっと優れた社会学者になれてると思うんですけどね。

もっとも、社会学に限らず、政治学も経済学も含めて日本は社会科学全般に弱いんだろうと私は思います。
社会科学系雑誌に日本人学者の論文が載るのは年に二回くらいと聞いてますし、理系では考えられないことでしょう。
しかも、世代を追うごとに劣化して行っているように感じます。
Commented by 宮澤喜一や河野洋平の頃は本当に良かった at 2017-11-09 06:44 x
私は子供の時に冷淡な幼稚園の先生や底意地の悪い小中学校の同級生のいじめを受けて、それが人格に影響してしまいました。
最近、日本人から仏教的な、かつての党人政治家にあった優しさが失せてしまったように感じます。
変にとがってて、ひねてて、精悍そうで実際は精神内容に貧しかったり

それは温かみのある心になることを教育が幼稚園のときから潜在的に否定してきたからと思います。
使い勝手のいい要領のいい人間を量産するために、優しい心はむしろ邪魔になるのだと。
弱肉強食の経済の中で我慢と妥協を強いられて、おかしいことをおかしいと主張すれば、逆に反発され、
理由もなく弱そうというだけで快感を得るためにいじめをする。
教育の質を下げて子供に自分を表現する術を取り上げて上の言うことを従わざるをえない状況にして奴隷にする、
親が子供のために学区を選ぶことは差別じゃないです。
子供に危機が及ぶ可能性を減らすために、そういう地区を回避するのは普通のこと。
これ言っちゃあれかもしれないけど、明らかに怖い雰囲気を持つ人はいます
分かり合うよりすみわけするほうがいいです。高知県に住んでた世に倦む日日様なら分かっていただけると思う。



メールと過去ログ

since 2004.9.1

ご意見・ご感想




Twitter

最新のコメント

今こそ「テニスコートの誓..
by 印藤和寛 at 09:18
総裁選で石破さんを倒すた..
by 人情味。 at 09:29
もし山上容疑者が安倍元首..
by 人情味。 at 21:23
杉田水脈なる人物は論評に..
by 住田 at 10:51
あれは15年程前..
by ムラッチー at 11:27
悪夢のような安倍政治から..
by 成田 at 13:03
ハーバード大学で比較宗教..
by まりも at 23:59
重ねて失礼いたします。 ..
by アン at 17:48
安倍晋三のいない世界は大..
by アン at 13:16
今まで、宗教2世の問題に..
by さかき at 10:31

以前の記事

2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング