五たび安倍自民党圧勝の選挙 - 「野党共闘」の戦略を根底から見直そう

c0315619_16532325.jpgマスコミ各社から選挙序盤の情勢報道が出た。朝日、毎日、読売、どれも同じで、自民党が280議席ほどを取る圧勝となり、自公で300議席を超えるだろうと予想している。希望の党への追い風が止まり、逆風が吹き始め、結果的に自民党が議席を奪う形勢となった。本来、希望の党に代わって追い風を掴まなくてはいけなかったのは立憲民主党だが、枝野幸男の新党設立の言葉が事務的で、妥協的で不可解な「枝野原則」で臨み、さらに候補者も78人という期待外れのスケールだったため、モメンタムをハプンさせることがなく、台風の目になって自民党と真っ向対決する野党第一党に躍り出る展開に繋がらなかった。マスコミの現在の情勢調査では、希望の党は60議席ほど、立憲民主党は30議席ほどの見込みになっている。立憲民主党が30議席では話にならない。国民は見ないようで見ている。どれほど左翼が立憲民主党を持ち上げ、それを「立憲野党」として美化し宣伝しても、立憲民主党が希望の党の候補が立つ選挙区に候補を立てず、相争わない姿勢を見せたことで、国民は枝野幸男が裏で前原誠司と握っているのではないかという疑念を持った。その胡乱な態度は国民には魑魅魍魎に映り、結局、判官贔屓の大衆人気が爆発する現象は起こらなかった。



c0315619_16533866.jpg芝居の謎解きとしては、連合の神津里季生が3日に打ち出した「特定の政党を支持せず」の方針があり、おそらくこれは2日に枝野幸男が立つ前に調整されていて、連合が両方の面倒を見るという前提を得られたから、枝野幸男は安心して2日の新党表明を決意できたのだろう。2日は月曜で、その前の土日は、29日に小池百合子が大胆かつ非情に宣告した「排除いたします」が非難の的となり、テレビ番組で糾弾されて国民が嫌悪する槍玉に挙がっていた。ここで希望の党のモメンタムが失速。と同時に - 私もその一人に加わったが - 「枝野立て」コールがネットの中で澎湃と沸き起こる推移となる。そこから10日が過ぎた。矛盾した「枝野原則」が確立され推進されたことで、枝野幸男が何を考え、立憲民主党の正体がどのようなものであるか、動機と真意と展望が浮き彫りとなり、リベラルを中心とした国民全体の失望に至っている。日を追う毎に、立憲民主党の狙いが選挙後の旧民進党勢力の再結集にあり、連合の思惑と要望に沿って動いていることが明白になってきた。そして、選挙後の野党再編が注目の焦点になっている。枝野幸男の政策論は、民進党のそれと基本的に変わっておらず、われわれが期待するエッジの利いたリベラル新党の性格のものではない。改憲反対の主張や論理も曖昧で、先行きが危ぶまれる。

c0315619_16541085.jpg「どんな手を使ってでも安倍政権を倒す」と豪語して小池百合子と抱きついた前原誠司の謀略は、こうして惨めな破綻の顛末となって終焉を迎えつつある。安倍政権は倒れるどころか、解散前よりも強い権力基盤を固め直す進行になってしまった。選挙後に前原誠司がどう弁解するか聞きたいものだし、マスコミはこの男を笑い者にして屈辱を与えてもらいたい。できれば、京都2区で落選するのが望ましいし、希望の党に移って選挙戦をしている元民進右派の現職は、大串博志の判断と行動に倣って、前原誠司の応援行脚を拒否することを推奨したい。実際のところ、客観的に、前原誠司は希望の党に逆風を吹かせている元凶であり、毒性のマイナスシンボルそのものなのだから、選挙区に入って有権者に顔見せすることは集票の逆効果でしかない。応援を依頼するなら蓮舫か岡田克也を呼ぶべきで、その方がまだ逆風を和らげることができる。希望の党は、立憲民主党の現職が立つ選挙区に容赦なく刺客を送り入れていて、逆に、石破茂や野田聖子の選挙区には候補を立てず、維新の大阪にも候補を立てなかった。その意図は明らかで、目的は左派切りであり、憲法改正と安保法制に賛成する議員しか許さないというイデオロギーが貫徹されている。

c0315619_16535620.jpg石破茂や野田聖子に対立候補を立てず、ラブコールを送ったことは、小池百合子らしい露骨な手法だが、日本人はこうした無遠慮で図々しいビヘイビアモデルを反射的に嫌う心性を持っている。無神経で調子に乗りすぎだと反感を招く。その点が、世論の操作に長けたはずの小池百合子の自惚れと誤算だった。選挙が終わった後も野党再編の混乱は続く。この失敗の責任は前原誠司と民進右派だけにあるのではない。ドタバタ劇の原因は、基本的には、保守二大政党を作ろうとする動きと、共産党主導の「野党共闘」を作ろうとする動きと、その二つの潮流の鬩ぎ合いにある。そして、その二つの間で巧妙に立ち回って、案配よくバーチャルな着地点を見つける山口二郎のような姑息な政治芸者の存在と暗躍による。だが、この二つは根本的に対立するし、二つを一つにしようとする手品やアクロバットは効を奏さない。左の「野党共闘」の方に引っ張られると、右バネがはたらき、右派が自分探しのアイデンティティ運動に回帰する。民進右派の議員たちには譲れないイデオロギーの基礎的立脚点があり、それは親米反共の保守主義であり、ネオリベ政策の改革主義である。それが彼らが政治家になった初志と使命感の中身であり、自民党議員と政策思想は同じなのだ。彼らは東大卒の国家エリートだが、残念ながら世襲の門地でなかったため、自民党議員になることができない。

c0315619_16542242.jpg別のプラットフォームが要る。それが保守二大政党を追求する思想的背景であり、自民党Aと自民党Bが政権交代するシステムへの渇望と衝動の本質的契機である。共産党の「野党共闘」戦略はワークしない。われわれは、2年間かけてこの結論に達したことを認めるべきだろう。どういう戦略を立案しなくてはならないのか。それはリベラル新党が単独で過半数を制する政治である。この考え方に対して、無理だ妄想だと受けつけない者も多いけれど、例えば、2009年の衆院選の際の民主党は、結党以来最もリベラル色の強いマニフェストを掲げ、最低賃金時給1000円を打ち出し、社会保障の予算削減(聖域なき構造改革)を拒否し、小泉・竹中の格差拡大策の過誤を正面から批判する政見で臨んでいたこと、われわれの記憶に新しい。安保外交については、地位協定見直しを公約し、東アジア共同体構築をめざす鳩山ドクトリンを言って米国を慌てさせた。歴史を1989年まで遡れば、土井たか子の社会党が参院選で自民党に勝利した経験がある。社会主義政党が第一党になった。また、目を海の向こうに向ければ、2008年の米国大統領選で勝利したオバマは、民主党候補の中の最左翼に位置するリベラルだった事実も想起する必要がある。さらに、本選に出ていれば間違いなく勝利していたサンダースは、社会主義者の看板を堂々と掲げる米国政界の最左翼に他ならない。

c0315619_16543666.jpg国内で右翼が勢いを強め、若者層を中心に右傾化が強まっている現状は否定できないけれども、左翼は絶対に選挙に勝てないだとか、リベラル政党は国民の支持を得られないと即断する見方は、神話の軽信であり視野狭窄である。マスコミに刷り込まれて常識化している思考であり、政治認識としては誤った固定観念と言わざるを得ない。有能で魅力的なリーダーを立て、秀逸な戦略とプロモーションを仕掛けて訴えれば、リベラル新党は必ず自民党に勝つことができる。救世主の出現を待望している国民は多い。実際、2日のローンチで枝野幸男がリベラルを鼓舞する(オバマ的な)名演説を投擲していれば、改憲を危惧する左派の心に火をつけ、巨大なムーブメントを生成させ激震させていただろう。われわれは、「野党共闘」に代わる戦略をデザインしなくてはならない。共産党の党利党略に付き合って、その拘束と限界の中で窮屈に可能性を模索するのではなく、一から、新しいイマジネーションで絵を描くことが大事だ。SEALDsも、市民連合も、共産党を中心とした既成の左翼業界から発生した動きで、演出的に製作(工作)されたアセットであって、地べたの素の市民から出発したものではない。しばき隊の動員に従って毎度のルーティン行動をやっていても埒があかない。共産党主導ではなく、左翼業界のマンネリズムでもない、別のエンジンから駆動する必要がある。

今度の選挙は、憲法改正が初めて争点として設定された選挙である。選挙が終わり、結果が出れば、保守マスコミは必ず「改憲の民意が示された」と裁定を下し、憲法審査会で具体的に改正項目を纏めて発議しろと催促するだろう。安倍晋三と松井一郎は、嬉しそうにその催促を背に受けて国会を動かすだろう。それにしても、憲法改正が争点となる選挙が、これほど空しい、こんなに愚かしく惨めったらしい、国民不在の、我利我欲のマヌーバー一色に染まった、そして、どっちが勝つか誰が漁夫の利を得るかという娯楽ショー的な興味でしか国民が関心を持つことができない、有権者が徹底的に疎外された、民主主義の選挙とは到底呼べない、呆れ果てた選挙になるとは想像もできなかった。



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by yoniumuhibi | 2017-10-12 23:30 | Comments(7)
Commented at 2017-10-12 19:02 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2017-10-12 22:21 x
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Commented at 2017-10-13 22:29 x
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Commented by 七平 at 2017-10-14 00:22 x
安倍晋三の訪米ニュースは当地の大手新聞に無視されるか、4面記事になる程度ですが、神戸製鋼の品管データ改竄のニュース、 当地NYTの記事にも大きく取り上げられ、世界のニュースになりつつあります。技術立国、世界最高の品質管理を売り物にして伸びてきた日本産業にとってタカタのAirbagの不良問題に次いで間違いなく日本のイメージダウンに寄与してしまいます。莫大なPenalty と 損害賠償の訴訟が控えていると思います。 過失ではなく、意図的に隠し、データを捏造したという点を既に認めており、逃げ場がありません。 

日本国を代表する政治家や官僚が大手を振って嘘をつき、それらの大嘘つきの議員が再選され、嘘をつき通した官僚が栄転してしまう、そんな国に成り下がったようです。 一旦、国民がそれらの嘘を容認する文化が定着してしまうと、社会の末端まで、嘘文化が普及してしまいます。 安倍政権から神戸製鋼まで、 ”嘘つき日本” が定着してしまい、そんなイメージが世界に広がってしまいます。 安倍晋三のいかがわしい履歴の中に神戸製鋼が現れる事自体、偶然ではないと思います。

嘘を平気でつく親、嘘を容認する親は一体どのように子育てをするのでしょうか? 

Trump も、安倍晋三に勝る嘘つきですが、65%の米国民はそれらを容認していませんし、マスメディアも容赦なくTrump の嘘を視聴者に伝えています。リンクを入れると投稿妨害に会いますので、You Tube で ”The Dangerous Case Of Donald Trump” で検索してみてください。米国を代表する著名な大学の精神科医27名が実名で、Trump の 嘘の背景にある彼の 病的精神・心理状態に診断を下しています。 
Commented by 匿名子 at 2017-10-15 02:14 x
嘘を堂々とつけるのが政治家だといいますが、安倍さんのそれはひどい。私は立憲民主党に期待しています。共産党とは別の保守リベラルは現実的な路線だと思います。
とりあえず、安倍さんほどひどいわけではないと感じますし、小池さんの新しそうな見えて、実は自民党的な保守とも違うと思うのです。

自民党は長年政権を担ってきたノウハウがある。新しい党もそのようはノウハウを身に付けるように育てていくのも国民の役割でしょう。
Commented by Columbites at 2017-10-16 13:44 x
私は「必要悪」としての野党共闘の価値を否定しません.戦後民主主義を守ろうとする純粋な熱意から野党共闘の実現を希求し尽力されている方々も多いと思うからです.しかしその場合,重要なのはブレーンの人選です.国民の半数以上(および国民の象徴たる方)が反対する案件を,30%の支持率しかない連中が勝手に決めてよいという最悪の制度を提唱した山口某や,暴力三昧のシバキ隊に暇を出す良識・見識がなければなりません.ブログ主氏のような方を三顧の礼をもってブレーンにお招きできればどんなに心強いかと考えている者は,何も私だけではありますまい.
Commented at 2017-10-23 03:46 x
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