民進党が一瞬で崩壊消滅した - 小池百合子の狙いは大連立での首班指名

c0315619_15063321.jpg民進党は代表選を機に崩壊するだろうと予測を論じていたが、衆院解散を発端とした政変の中で呆気なく解党の日を迎えた。28日の両院議員総会で小池百合子の希望の党に吸収合併されることが決まり、1996年の旧民主党結党以来の、21年の歴史に幕が引かれる瞬間となった。党は形だけ存在し、参院議員はそのまま残ることになっているが、選挙後の政界再編で激動があるのは必至で、28日が解党を決めた日ととして歴史に残るだろう。選挙を前にして野党第一党が忽然と消えた。新興の保守政党に一夜で併呑された。国民を欺く謀略は長い時間をかけて仕掛けられたもので、電光石火のように見えて伏線が辿れるものではあるけれど、それにしても意外だったのは、両院議員総会が全く紛糾することなく、あっさりと全会一致で前原提案の「合流」が認められたことだ。会議は30分で終了。前夜から内容がテレビ報道で漏れ伝わっていたから、その場で反対の論陣を張る者が現れ、賛成派と反対派に分かれて怒号が飛ぶ激烈な応酬になるかと想像されたが、根回し済みの日本的なシャンシャン会議で代表一任が取り付けられた。普通であれば、誰かが挙手して代表解任の動議を提出、そこから長時間の侃々諤々になる。あるいは物理的な肉弾戦の激突が会場で演じられる。消費税やTPPのときの民主党はそうだった。



c0315619_15065372.jpg小池百合子が立ち上げた希望の党は、25日に党の名前や綱領や基本政策が発表されたばかりで、しかもそれは応急の付け焼き刃もいいところで、とても政党の体を成したものではない。「しがらみの打破」とか思いつきの言葉を並べただけの、電通が一夜漬けで仕作業したコピーフレーズよりも無内容な代物だ。海のものとも山のものとも分からない。そんな政党に合流するという恐ろしい決定を、議員として生き残りを図りたい自己保身の動機だけで彼らは承認した。異を唱えることなく淡々と受け入れた。小池百合子が入党公認の基準として示した要件は、「改革」と「保守」の二語である。小池百合子のイデオロギーを率直に表現した言葉で、この点は非常に分かりやすい政治の線引きと言える。「改革」とは新自由主義の経済社会政策の体系と思想を指す。資本の無制限の自由を求め、フリードマンを教祖とする。「保守」とはこの国では反共親米改憲の意味であり、共産党や戦後民主主義を拒否し敵対する立場を指す。一方、民進党が綱領で掲げている理念は「共生社会」だ。この言葉は90年代からの新自由主義の席巻によって格差と貧困が蔓延した後、社会的弱者の権利を保護救済する政策要求を理念化した表象として立ち現れ、一般の人口に膾炙されてきた。内橋克人がシンボルであり、「改革」とは根本的に対立するイデーに他ならない。

c0315619_15071490.jpg民進党の中には、少なくとも3分の1くらいはこの理念にコミットし、さらに安保法制にも真剣に反対した左派議員がいたはずだが、前原提案の前に重大な会議で論争すら行おうとしなかった。従来から、私は、民進党(民主党)は政党ではないと指摘し、理念を持った同志の集団ではないと批判してきたが、最後の最後にその真実が決定的な形で証明されたと言える。選挙互助会であり、選挙に勝つこと、政権を取ることが自己目的の「政党」なのだ。「政治改革」によって体制化された小選挙区二大政党制の姿を、自民党と並んで回して日本に定着させるということが使命であり、民進党(民主党)を立ち上げて担ってきた者たちの理想なのである。25年前の「政治改革」で設計した構想 - それは幻想なのだけれど - が彼らの理念なのであって、その他の政策はどうでもよく、国民の生活や要求など眼中になく、外交・安保・憲法の基本政策は自民党と完全互換なのだ。それがいいというのが彼らの発想で、国家エリートを自負する彼らの前提である。左派的な言葉をマスコミで操って自民党との相違を強調するのは、有権者から票を集めるためのポーズであり術策であった。現実にシステムが小選挙区制であるため、有権者は何もすることができず、民主党に政権を取らせて裏切られたときは、自民党に政権を戻すということしかできなかった。

c0315619_15073264.jpg小池百合子が狙っているのは、おそらく、自民党との大連立だろう。現状では希望が過半数を取れる見通しは立っていない。公示日直前に小池百合子が劇的に前言撤回して出馬表明し、国民の期待に応えてモメンタムをもう一段上げる演出を図るだろうが、それでも、希望が150議席以上獲得できるという展望は難しい。今のところ、候補者の総数も過半数に届いておらず、時間的に全国津々浦々の小選挙区に候補者を擁立するのは間に合わない。たとえば、自民が230議席になり、希望が140議席になったとき、自民は公明と合わせて過半数になるが、自民は大敗を喫し、安倍晋三の責任を問う声が党内から必ず沸き上がる。自民党はそういうネイティブな属性の党だ。内閣支持率も凋落する。勝敗ラインの防衛線が自公過半数だなどと言っても通用しない。党内は混乱し、そこへ小泉純一郎・森喜朗らが長老として介入、小池クンで大連立を組めばいいじゃないかと提案し、二階俊博がそれで党内と公明党を調整して合意をとるという展開が想定される。小池百合子は現在65歳。年齢を考えると、今回の衆院選を逃すとチャンスはいつ訪れるとも限らない。それに、ここまで来て、小池百合子が出馬しない選挙の図は考えられず、マスコミも出馬を当然視した選挙報道で固めている。サプライズ狙いで隠しているとしか思えない。日本初の女性総理誕生が見えてきた感があり、マスコミの報道はそれを関心の中心(争点)に据えて小池劇場を煽るだろう。

c0315619_15075032.jpg25年前から20年前のことであり、全体の経過を詳細には覚えてないが、今回の政変は日本社会党の解党劇を思い起こさせる。また、旧民主党が誕生するときの「排除の論理」が生々しく再現されていて印象的だ。さらには、あの郵政選挙のときの政変と小泉劇場の熱気が再演されていて興味深い。小池百合子が小沢一郎の剛腕の再来だという声にも納得させられる。現代日本政治史の断片要素が凝縮されていて感慨深い。政界再編らしい政界再編であり、日本の政治が間違いなく大きな転換期にさしかかった。あのとき、50年の歴史を持つ日本社会党は一瞬のうちに崩れ去った。そして、民主党という、元自民党やら、元民社党やら、元社会党やらがまぜこぜになった胡乱な「政党」が出来上がり、政権交代可能な民主主義を謳い文句にして勢力を拡大させる。その指南役となったのは、北海道大学助教授の山口二郎だった。岩波書店と朝日新聞によって「政治改革」が宣伝扇動され、90年代を通じて制度的にも思想的にも定着して政治の常識となる。私は異端となった。今、その民進党(民主党)が消滅しようとしている。第一回目は、山岸章が排除の審査委員長だった。第二回目は、鳩山由紀夫と菅直人が排除の論理を言い出し、武村正義を冷酷に追い出した。民主党の出発は最初から不愉快さが漂っていた。あの頃は若かった。誰もが仕事が忙しく、国民は政治よりも経済の方に関心が高かった。そこから金融危機が起き、政治はどんどん右傾化し、アカデミーは脱構築主義で染まり、日本は再生再建できない状況に変わって衰えてゆく。

今回は三回目の排除の論理、三度目にも当事者として立ち合ったのは山口二郎だ。「野党共闘」の欺瞞が破綻して、共産党も小さな弁証法の復讐を受ける羽目になったけれど、それが最もくっきり浮かび上がる象徴的な人物が山口二郎だろう。まさに人生の負債の清算を迫られるときが来た。同情はしない。破滅するがいい。山口二郎の「政治改革」のために、日本の政治がどれほど底なしの劣化と絶望に転落してしまったことか。私は絶対に許せない。


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by yoniumuhibi | 2017-09-30 23:30 | Comments(10)
Commented by qwe at 2017-09-30 21:53 x
今となっては意外だが、ハードボイルド文学の始祖 ダシール・ハメットは共産党員だった。彼の出世作で、『血の収穫(Red Harvest)』の"red" にはそういう意味合いもあるようで、実際に労働運動の話も出てくる。この作品は、黒澤明の「用心棒」、イーストウッドの「荒野の用心棒」、意外なところでは植木等の「ニッポン無責任時代」の元ネタだが、これらの作品の主人公のように、超人的な胆力と狡猾がないと、左翼運動は上手く行かない・・・ということかも知れない。

まあ、現実世界でそうい資質を持った人間は、サイコパスである場合が多いわけで、それでスターリンも毛沢東のような悪魔を生み出してしまう。逆に、今の日本のリベラルは あまりに間抜け過ぎと言うことか。

ところで、上述の映画三作のうち、黒澤はヒューマニズムが出過ぎ、イーストウッドはかっこ良すぎで、植木等の解釈が一番ハメットの本質に近いかも知れない。映画にも労働組合結成が一つのポイントだった。この場合の「無責任」は「アナーキー」と言うことか。
Commented by 長坂 at 2017-10-01 05:08 x
二大政党制の旗だけ振って、サンダースやコービンのような政治家を育てる努力もせず野党共闘で誤魔化していたら、「全ては中共の陰謀」党と「アメリカについて行けば百年安心」党の二大政党が残った。
Commented by 枝野新党に期待 at 2017-10-01 22:01 x
民主党=枝野新党。いい。すごくいい。

希望の党から排除されたというのは、
リベラルだと太鼓判を押されたということであり、
名誉である。「売り」になる。
ブログ主さんの言う通り、急ぐことだ。
タイミングが大事だ。

小池百合子が話題をさらっているのは事実だが、
そこの話題性の中には、「うさんくさい」という批判が相当に含まれている。
前原に対しても、不信感が生まれている。
民進党左派が、「民主党」として旗揚げすれば、
「我々こそが正当だ」と主張して何の疑問もない。

急造なのも、当たり前として、国民は納得する。
だって、当たり前でしょ。
内閣改造した直後に「今なら勝てるんじゃね、解散」をした安倍が、
むちゃくちゃなんだから。
代表戦をやった直後に「小池に身売りして右翼だけにしよう」という前原が
むちゃくちゃなんだから。
この二人のどこに正当性があるのか。

とにかくタイミングが大事だ。
ここを逃したら、枝野幸男にはもうチャンスはない。
急造でいい。賭けに出るタイミングは今だ。
Commented by Columbites at 2017-10-02 12:20 x
ブログ主氏が力説されるとおり,戦後民主主義の危機を招いた最大の元凶は「小選挙区二大政党制」の幻想(というより嘘)であることに疑いはありません.それにもかかわらず,ひとことも反省の弁がないばかりか未だに主役顔でメディアにしがみついている山口某ほかの「小人」ぶりには,あきれるというより吐き気がします.
qwe氏のご指摘のとおり,いま立憲主義派に必要なのは「超人的な胆力と狡猾」を備えた「悪党」だと思います.保守大連立を阻止するためには,例え小池という毒物でも利用できる限りは「賞味期限付」で利用し,用が済んだらさっさと使い捨てる肚と立憲主義の理想を兼ね備えた真の「悪党」の登場を願って止みません.
Commented by 一読者 at 2017-10-02 17:11 x
小池が若狭を重用してるとは思いません。立ち上げ会見の若狭への連絡も、直前でしたしね。ただ、若狭と細野しかいないんでしょう。
検事時代の若狭の仕事ぶりは、郷原信郎がツイッターで書いてます。
Commented by グーグー at 2017-10-02 20:11 x
立憲民主党が立上がりましたね! まさに災い転じて福です。全力で応援します!
Commented by 私は黙らない at 2017-10-03 06:56 x
今回の選挙、政権交代をめぐる「自民」対「希望」の選挙にしちゃいけない。争点はただ一つ、憲法と安保法制であるべき。護憲対改憲の選挙に戻せ。原発、消費税じゃない。そんなもの、小池のリップサービスだ。
自己保身のために「希望に私もいれてください」なんて、何たる根性なし。
立憲民主党の面子に新鮮味がない。目玉候補が必要だ。しつこいようだが、東京新聞の望月さんの出馬を期待する。
Commented by 立憲民主党には憲法学者を at 2017-10-03 22:29 x
枝野新党は、あえて「立憲」と付けたのだから、
ブログ主さんがかねてからアイディアを出していた通り、
憲法の専門家が出馬することになると良いのだが。
とにかく、早く応援会見を。少なくともそこに憲法の専門家を。タイミングが大事。はやく、はやく!! 
Commented at 2017-10-04 18:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 七平 at 2017-10-04 22:22 x
ご紹介のあった枝野幸男の記者会見と質疑応答 You Tubeビデオ 最初から最後まで見せていただきました。 マスコミニュースには多かれ少なかれ編集が伴い、サウンドバイトになってしまい全体像が掴めませんが、記者会見と質疑応答を見ると、その人の誠実性と能力が浮かび上がります。

日本の国会答弁の様子から察する事ができる、安倍内閣の政治家のレベルの低さ、横柄さに比べ、枝野さんの説明と論理展開には一貫性があり納得のいくものでした。 又、原稿を読まず、質問者に視線を合わせて注意深く返答される様子にも好感が持てました。

平気で嘘をつく云々首相や、心身ともに厚化粧の東京都知事より遥かに信用できそうと言うのが私の直観です。 


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