両陛下の高麗神社訪問のサプライズ - 東京国立博物館で「高句麗展」を

c0315619_17025542.jpg20日、両陛下が日高市にある高麗神社を訪問した。前日からその「私的旅行」を伝える報道がネットに流れ、注目を集めていたが、両陛下の勇気と行動力には本当に驚かされる。この時期に、わざわざ高句麗と縁の深い神社に足を運ぶのは、意味は一つしかなく、メッセージは一つしかない。高麗神社は7世紀後半に亡命した高句麗の王族を祀る神社で、新羅に滅ぼされた高句麗からの多くの渡来人を朝廷がこの地に移住させている。高句麗は半島の北部にあった。「葦原の 瑞穂の国は 神ながら 言挙げせぬ国」、ということで、天皇陛下(宮内庁)は、この件について「私的旅行」と言う以外に何も説明していない。説明はせず、行動で真意を悟らせ、何を考えるべきかを諭した。「秋津島 大和の国は 神からと 言挙げせぬ国」。そのすぐ後ろには「然れども」が続く。然れども、夜の報ステは5分ほどのニュースにして意味を伝えた。2001年の会見での映像を流し、天皇陛下が古代の日本と半島との交流史に強い関心と深い知識を持っていることを解説した。このニュースを編集させたのは神田秀一だろう。臣の神田秀一が、天皇陛下に代わって少しだけ意味を伝えた。無論、核心の動機はマスコミの誰も口にしていない。誰も口にしなくても、中学生以上の者なら誰でも一瞬で了解できる。



c0315619_17031469.jpg北朝鮮情勢だ。北朝鮮と平和外交をせよという意味であり、戦争を煽るな、対話をせよと示唆している。そのメッセージを国民と政府に伝えるため、すぐに行動を起こして高麗神社訪問に出立した。それをマスコミに報道させた。誰の発案でも進言でもなく、皇居の居間で二人でテレビを見ながら、北朝鮮問題を深刻に憂慮し、相談してこの決断と実行に至ったのだろう。天皇陛下は、ここぞと言うときに、われわれの期待を越えて、電撃的に、大胆で果敢な挑戦と快挙をやってのけてくれる。昨年の生前退位の力業もそうだった。刮目させられた。今回も感服させられた。まさに平和と民主主義のカリスマであり、戦後民主主義の永久革命の革命家そのものだ。早速、韓国の主要各紙が取り上げて話題となっている。北朝鮮に対する人道支援を決定し、制裁一辺倒ではなく対話の方向性を模索する韓国政府と国民世論にとっては、この両陛下の動きは歓迎の一事だろう。天皇陛下の日朝古代関係史への関心について、ネットの中に上田正昭との関係を示す情報があった。2008年、上田正昭は両陛下に京都御所に招かれ、特別な晩餐会の接待を受けている。両陛下の古代史の知識と関心は、上田正昭の学問に負うところが大きい。おそらくそうだろうと想像していたが、これほど密接な親交があったとは知らなかった。

c0315619_17032622.jpg今の日本の政治的座標軸にプロットすれば、途方もなくリベラルに属する人だ。両陛下の勇気と胆力に私は昂奮を覚え、一人一人が平和のためにできることをしなくてはいけない義務を痛感させられた。天皇は政治的な行為や発言が許されていない。政治への介入や干渉は厳禁の身だ。その窮屈な限界と強制の中で、ぎりぎりのところで、言挙げせず、9条の理念を行動で垂範し、日本の平和を守ろうと懸命に尽力している。平和憲法にコミットしたリーダーの意思と執念を見せ、紛争を平和的解決へ導く新しい環境を作り出そうと努めている。今、北朝鮮に対する憎悪一色で染まり、征韓論(征朝論)で沸騰している国民世論に対し、冷静になって歴史を認識するよう促し、半島と日本との繋がりを内在的に思考するように諭している。心が洗われる思いがし、勇気づけられた。同じ感慨を抱いた者は多いのではないか。もしもこの報道が北朝鮮でなされたら、きっと大きな反響が興るに違いない。誰か、朝鮮中央放送と労働新聞にこの件を報道するよう働きかけてくれる者はいないだろうか。それが実現すれば、情勢は変わる可能性がある。トランプと安倍晋三は立場を失う。武貞秀士、プーチン、楊潔篪、ローマ法王、誰でもいい、パイプとチャンネルを持っている者は動いて欲しい。平壌政府の李洙墉にコンタクトして提案と説得をして欲しい。

c0315619_17034066.jpg思いつきの雑談で恐縮だが、一つの夢のある平和戦略のアイディアが浮かんだ。韓国政府は、来年、上野の国立東京博物館で「高句麗展」を開催することを企画し、プランを東博に持ち込んだらどううか。誰か、この構想を韓国の文化当局に持ちかけてもらえないだろうか。日韓中で共催する形がよい。高句麗の歴史と文化だけをテーマとした大型の特別展は、これまで日本で開かれた実績はない。が、両陛下が高麗神社を訪ねたことで、俄然、大衆の関心が盛り上がった点は疑いなく、イベントは事業的に成功するだろう。京都大学(故上田正昭一門)あたりが仲介役となり、韓国文化財庁と東博との間でコンセプトを纏め、朝日新聞、NHK等が協力する態勢を作り、中国政府に打診して参加を調整、展示品を供与するよう依頼すればいい。中国政府は乗るだろう。北朝鮮情勢緊迫の折、国益上これは悪くない文化外交の機会だ。「高句麗展」の最大の目玉は、高句麗好太王碑(広開土王碑)の展示である。高校日本史の教科書に写真が載っていて、現在は吉林省集安市にある施設に安置され、四面ガラス張りの堂の外から見物できる観光史跡になっている。実物が無理ならレプリカでもいい。日本人なら誰でも知っているし見たいだろう。高さ6.3m、幅1.5m。この大きな石碑を平成館2階の特別展示室に運び上げ、広めのフロアスペースの中央に配置する。

c0315619_17041614.jpg東博「高句麗展」の展示を構成するパートの一つは、司馬遼太郎・金達寿・上田正昭の「古代日本と朝鮮文化シリーズ」の復元と紹介である。中公文庫で4巻の座談会として編まれている70年代の文化事業について、その足跡と成果と影響を辿り、ビジュアルなディスプレイとプレゼンテーションを試みる。京都大学文学部史学科が作業する中心になるだろうし、司馬遼太郎記念館が全面支援する取り組みとなる。金達寿の方面のサポートを誰がするか、その主体や関係先の情報については私はよく知らない。本来、これは金達寿の「日本の中の朝鮮文化」の研究と運動から派生したもので、こちらが中心になるのが筋なのだろうが、朝鮮総連の現在の立場や日本の政治状況を鑑みたとき、文科省管轄の一機関である東博にそれは荷の重い任務だろう。あくまで70年代の文化事業に限定してフォーカスし、すなわち、両陛下が上田正昭の進講を聞いた時点のフェーズでフィックスして総覧し意味づけるもので、したがって、現在のしばき隊的な在日ヘイトがどうのという主張と宣伝に潤色された内容にすべきではない。リスクと混乱が生じる。上田正昭・司馬遼太郎・金達寿の、今は亡き3人の巨人が闊達に談議して古代の半島と列島の交流史を浮かび上がらせ、互いのエスニシティとアイデンティティの中に互いの影が色濃く存在する事実に気づいたという結論でよい。

c0315619_17045862.jpgもう一つ、エンタテインメントの要素を膨らませたパートとして、ペ・ヨンジュンが主人公の好太王を演じた「太王四神記」を特集した展示スペースを独立に設える案はどうだろうか。韓国では11年前に高句麗ブームが起きた。韓国MBCで大型ドラマが制作され、2007年にNHKでも放送されている。韓流ブームの最盛期のことだ。高句麗の歴史認識については、韓国と中国の間で論争と紛争がある。そのため、東博で特別展を開催となると、中韓の間で政治的に揉める事態が当然予想される。だが、逆に考えれば、そこで日本の歴史アカデミーが第三者として割って入り、交通整理役を演じて妥協案を作ることは十分可能で、双方に偏らない形で両者の顔を立て、3国が協力して東京で大きな文化イベントを実現させることは不可能ではないだろう。成功させれば意義は大きく、日本政府(文科省)にとって国益になることだ。研究の蓄積と精度のある日本の出番と言える。近現代の歴史認識の相違は、政治に直結する問題なので簡単には一致させられない。だが、古代となると話は別で、唾を飛ばして論争しながらでも仲よく談笑することはできる。むしろ、古代や中世の歴史認識の問題というのは、二国間関係を改善し友好化するときに政治的に利用するもので、司馬遼太郎はその発想と見地に立っていた。古代史ならば、自己を相対化することは比較的容易なのだ。

東博「高句麗展」に合わせてペ・ヨンジュンに来日してもらう。初日に東博を訪れる両陛下を、ペ・ヨンジュンが出迎えて挨拶すれば、日韓友好親善の重要な絵ができる。中国政府を通じて李洙墉からレスポンスがあり、平壌から何か貴重な国宝の文化財が届けば、それは画期的な国際政治のハプニングとなる。夢があり、やってみる価値がある企画だと確信する。

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by yoniumuhibi | 2017-09-22 23:30 | Comments(3)
Commented by 長坂 at 2017-09-23 05:07 x
こんな時、ブルース・カミングスなら何と言うだろうと思っていたら、有難いことに乗松聡子さんが「朝鮮半島の血塗られた歴史」を紹介してくれていた。500年以上続いた李王朝を消滅させ、民族の誇り、文化、伝統を踏みにじった国と解放後、無慈悲に38度で線を引き分断させ、戦争させた国。朝鮮半島の歴史を知らなくても(朝鮮に関わる)自国の歴史は知るべきだと。平和構築を模索するはずの国連で、国連憲章を全く無視したスピーチをした日米の代表に、カミングスの言葉は届かない。
70年談話で「積極的平和主義」と大見得を切ったのに、韓国の人道支援は非難、外務大臣は断交を呼びかけるというなんと薄っぺらな平和主義!
Commented by 宮澤喜一や河野洋平の頃は本当に良かった at 2017-09-23 06:07 x
昭和天皇は嫌いだが今上陛下は好きという国民は多いし、自分も同じです。
辺見さんの坊主にくけりゃ、には与することはできない。
息子だからこそ、親のやってきたことを悔やみ反省するという姿勢は重要
内的成長に於ける多感な時期に、バーニング夫人が平和の尊さを教えてくれたことに国民のひとりとして感謝。
Commented by ゆう at 2017-09-25 00:59 x
外交的解決が望ましいと思うけど、交渉内容は具体的には
①北朝鮮の核保有を認めるor認めない
②北朝鮮のICBM保有を認めるor認めない
だと思う。
どちらも認めないのか、①だけ認めるのか。①②を認めるのか。
①だけ認めると、韓国の核武装をはじめとする核ドミノが発生する可能性がありますね。①②を認めると世界最貧国なのに超大国アメリカは北朝鮮に逆らえなくなるので絶対NGでしょう。交渉するにも何と引き換えなのかトレードの内容がわからないですね。①②を完成すると終わりなので、とにかく時間がないですね。


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