策士策に溺れる - 利己的な解散で惨敗したメイの二の舞を安倍晋三に

c0315619_13433258.jpg解散権の恣意的濫用そのものの今回の冒頭解散。昨日(18日)の報ステとNEWS23を見た限りでは、安倍晋三の不道理な解散に対して、世論はかなり批判的な反応を示しているように窺えた。拾われた「街の声」は、例によって両論併記の作法で賛否が紹介されていたが、反対意見を上げた市民の憤りが強烈であった点が印象に残った。庶民というのは、日常の仕事や生活の現場で、いつもこうした理不尽なゴリ押しがまかり通るのに直面していて、不利益やしわ寄せを蒙らされ、不愉快な思いに耐えながら生きている。NEWS23の映像に出た大阪の市民が、「争点なんて何もないでしょ。安倍さんが勝つか負けるか、それだけの選挙」と言う場面があり、的確に今回の政治を捉えていて、視聴者の心境をよく代弁する一言だった。一昨夜(17日)、菅義偉から口伝されたとおりの「解散の理由」を「解説」する不興を演じた後藤謙次は、政権の下僕役を忠実に任務するだけでは具合が悪いと案じたのか、急にこの解散に対して批判的な口調になり、大義がなく論外だと正論のコメントを吐いていた。人が変わったような態度の転換に呆れるが、世間の反発が相当に強いという情報を朝日新聞あたりから仕入れたのかもしれない。この解散には反対だという意見を明確に述べた。



c0315619_13434236.jpg今週末か、来週末か、どこかの時点で、この解散についての評価がマスコミの世論調査で問われ、賛否の数字が出るだろう。その間、解散の是非と選挙の争点についてテレビの報道番組で侃々諤々されるはずで、その世論調査の結果は1か月後の選挙に重要な影響を与えるに違いない。解散発表から1日、昨日(18日)の報道を見ていると、解散総選挙に納得していない国民の方が多いのは明らかで、そうした世論状況を踏まえて、後藤謙次も星浩も「大義なき解散」への辛辣な批判を憚ることなくコメントし、安倍批判の姿勢を鮮明にしていた。国民大衆の政治意識は、一度は支持率30%を切る厳しい採点を安倍晋三に与えている。その後、内閣改造や北朝鮮問題の進行の中で支持率を回復させたが、結局、冒頭解散の断行ということは、森友加計問題の説明から卑怯に逃亡することを意味し、「丁寧に説明する」と頭を下げた反省の弁を裏切ることに他ならない。安倍晋三にチャンスを与えた国民の失望は大きいだろう。世論調査で「解散の是非」が尋ねられるときは、同時に内閣支持率の数字も必ず出る。8月9月と連続して回復上昇した支持率は、この解散に対する不信と抵抗のために再び下降低落へと反転する可能性があり、その傾向がマスコミの表面に出た途端、選挙は安倍晋三にとって不利な形勢になる。

c0315619_13435337.jpg安倍晋三の突然の解散の動きを見て、諸外国の人々はどのような感想を抱いただろう。北朝鮮情勢が一触即発の緊迫した中で、日本はずいぶん非常識な政治をするものだと不審に感じただろうし、特に欧米先進国の市民は、この環境下で日本が気楽に選挙できるのだから、極東の情勢は心配するほど深刻な危機的状況ではなく、朝米日の政権が意図的に空騒ぎし、マスコミが商売のネタにして過剰に煽っているだけで、北朝鮮問題はフェイクニュースなのではないかと訝しんだだろう。もう一つ、欧米の市民が何を連想するかというと、おそらく、テリーザ・メイが総選挙で敗北した英国の顛末ではないか。今年4月、メイは満を持して下院を解散、ハード・ブレグジットを遂行する万全の態勢を図るべく総選挙に打って出た。不意の解散だったが、敵の労働党は不人気で落ち目であり、保守党の圧勝は誰の目にも明らかで、メイの大胆な戦略に悪口を言う者はなく、時機を捉えた決断に納得する論調が支配的だった。ところが蓋を開けてみると、社会保障政策(介護サービスの個人負担)が争点になり、緊縮財政に対する国民の不満が爆発、メイに強い逆風が吹く展開となって保守党は惨敗してしまう。警官削減のコストカットも槍玉に挙がった。3分の2を取るはずだった保守党は過半数を割り、少数政党の民主統一党の協力を得て政権を維持というまさかの結果に終わった。

c0315619_13440479.jpg策士策に溺れる。この諺(ことわざ)の典型例のような政治の一幕が英国で起き、その記憶はまだ生々しい。支持率が凋落する一途のコービン労働党を相手に、メイ率いる保守党が完敗するとは誰も予想しなかったが、前言を翻して総選挙を前倒ししたメイに対して、スコットランド民族党のスタージョンは、「首相が解散総選挙を決めたのは、利己的で狭量な党利党略のためだと思う」と痛烈な批判を浴びせていた。利己的で狭量な党利党略の解散総選挙。メイを嘘つきと揶揄する風刺動画がネットに上がり、有権者に大きな影響を与えていた。利己的で狭量な党利党略の解散総選挙。今、日本でそれが行われようとしている。安倍晋三がメイの失敗を再演する喜劇の事態を予感する者は、世界中で少なくないだろう。国連総会で演説し、北朝鮮の脅威に対して国際社会の結束した圧力と制裁を呼びかけつつ、北朝鮮を巧妙に選挙に利用する手法に対して、利己的で狭量な党利党略だと誰もが反感を持つだろう。そうやって演説しながら帰国した後の選挙に負ければ、安倍晋三は日本の首相ではないのである。姑息な男だと国連に集まった首脳たちは苦笑するはずで、メイの轍を踏む裏目の図を想像するに違いない。英国に較べれば日本の有権者は民主主義のレベルが低く、残念ながら、首相の嘘や独善や権力私物化への許容度も高いけれど、英国で起きたことは日本でも起き得る。

c0315619_13441934.jpg松井一郎が、この安倍晋三の解散を擁護する論陣を張っている。首相の解散権には何の束縛もなく、有利な時期に解散するのは当然だという論法だ。大阪府知事という要職にある者の発言として、あまりに非常識で無責任と言わざるを得ない。自民党の山本一太ですら、「『仕事師内閣』と評した有能な閣僚を活用し、実績を積み重ねた上で国民の審判を仰ぐのがあるべき姿だ」と言い、「記者会見での約束を守って真摯かつ謙虚に国民への説明責任を果たすべきだ」と言っているのに、維新の党首の松井一郎のこの言い草は何だろうか。
解散権も一つの権利であり、権利は濫用すべからずの原則に例外はない。私自身は、首相の解散権行使について、最近の傾向のように積極的に法的に制約づけようという見解ではないけれど、それでも物事には限度というものがある。マキアベリズムの権謀術数論で、政治家の行為を何もかも正当化するのは無理がある。今回の解散はあまりに異常で身勝手すぎる。それは、山本一太が嘆いているとおりだ。6月の国会閉幕の時点で、また新内閣を立ち上げた8月の時点で、森友加計問題については真摯に誠実に説明すると約束したのだから、国民への約束は守らなくてはならない。百歩譲って、森友加計問題については卑怯な逃亡に目を瞑るとしても、現在の北朝鮮情勢の中で日本が解散総選挙を行うのは、国際社会への体面上、どう考えても立場と行動を正当化できない。

日本国の主権者である国民として、このような解散総選挙の暴挙を認めるわけにはいかない。日本の面汚しだ。日本の信用失墜であり、重大な国益の毀損だ。海外マスコミの特派員は呆れているだろう。海外の視線が集まる中で、われわれは安倍晋三にメイの二の舞を演じさせ、策士策に溺れる2017年の政治喜劇の第二幕を世界に示し、日本にも民主主義の成分の質量が微かにあることを証明しなくてはならない。



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by yoniumuhibi | 2017-09-19 23:30 | Comments(1)
Commented by イギリス好き at 2017-09-21 06:23 x
保守党と協力してるのは民主統一党(北アイルランドの地域政党)ですよ。


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