北朝鮮解散 - 北朝鮮危機を出汁にして政権延命を図る卑劣な私物化選挙

c0315619_14503985.jpg3連休中日の昨日(17日)、朝日と産経が1面トップで解散総選挙の報を伝え、さらにNHKも続き、臨時国会冒頭での衆院解散が確実となった。夜、テレ朝の番組に出演していた後藤謙次が「政府高官から聞いた話」の紹介として、投開票は10月22日に決定したと断言、なぜこの時期に解散なのかという「政府高官」が披露した理由も縷々並べ、テレビを見ている永田町関係者にメッセージを伝えた。「政府高官」とは、言うまでもなく菅義偉のことである。平日の報ステでも、後藤謙次の解説というのは常に「今日、私が政府高官から聞いた話では」という口上で述べられ、菅義偉のコメントを復唱する内容となっている。「夜の官房長官談話」の時間である。官邸のプロパガンダを、後藤謙次の口を使って視聴者に刷り込んでいる。テレビの公共性表象と社会的信用を利用して政権の意思や見方を中立的性格に偽装させ、国民一般に巧妙に納得させている。後藤謙次は菅義偉の忠実な下僕だ。こうして、安倍晋三と菅義偉は公式には何も認めず、一週間を過ごしつつ、既成事実が固められ、選挙関係者は実務を進行させるのである。自治体の選管は大変な激務となるだろう。あと1か月しかない。準備作業で土日がなくなる。政治家は「常在戦場」かもしれないが、公務員はそうではない。



c0315619_14525448.jpg後藤謙次が「政府高官」を代弁して説明した解散の理由とは、①支持率が回復した今がチャンスであること、②民進党が離党騒ぎで躓き、小池新党の態勢が整わず、敵である野党が不利であること、③北朝鮮情勢は今後さらに緊迫を増すので、今がむしろ安定した環境であること、の3点である。この3点については、テレ朝の藤川みな代が自分の見解を装って記事にして配信している。テレ朝と菅義偉の露骨な一心同体ぶりが窺われて脱力させられる。①と②については、本音の動機を「政府高官」という匿名で、図々しく、鉄面皮の態度で国民の前に示したものであり、非常識きわまる解散権の不当な濫用の図であるけれど、加計問題の追及を避けたい政権側の本音として理解できないこともない。だが、③についてはあまりに滅茶苦茶で、何の根拠もない論法を無理やり押し通そうとするものだ。ここで解散となると、①の理由でも「加計隠し」として非難を浴びるけれど、それ以上に、③の問題について、北朝鮮危機の非常時に政治空白を作るのかという批判に直撃されるだろう。それに対する説明として、安倍晋三と菅義偉は、これからもっと情勢が緊迫するのが確実だから、現在がまだ相対的に安定した時期であり、解散総選挙をやっても不都合はないと嘯くのである。

c0315619_14533760.jpgこの弁解に納得する者はいないだろう。菅義偉らしいゴリ押しの強弁だ。「ゴリ押し」の言葉の意味をネット検索で調べると、「どう考えても理にそぐわないことを強引に押し通すこと。無理押し」とある。ゴリ押しばかりを5年間続けてきた政権であり、ゴリ押しばかりがまかり通ってきた5年間だった。明らかに、北朝鮮情勢は米朝対話の局面になっていて、水面下の直接交渉が注目の焦点になっている。制裁一辺倒では効果がないというプーチンの主張が国際的なコンセンサスになりつつあり、米国の中でも条件を付けずに対話を始めよという声が上がり始めた。北朝鮮問題の解決にあたって、トランプ政権が軍事オプションを放棄したという事実は共通認識になっている。現在より2か月後の方が軍事的緊張が高まっているという予測は根拠がなく、国際情勢の客観的判断とはあまりに乖離があるものだ。こんな異常な論法が、解散総選挙を正当化する論理として通用するとは到底思えない。これから、解散総選挙の理由や意義について国内で議論されるが、議論が始まれば、政権側が繰り出す説明はどれも不当で論外で、国民の理解を得られないものだという結論になるだろう。前回2014年の解散も、きわめて恣意的な解散権の行使で、消費税が云々という詭計の争点を捏造し、辻褄の合わない、正統性(Legitimacy)のない身勝手な解散に及んでいた。

c0315619_14542598.jpg北朝鮮危機を利用した姑息な解散総選挙。本来、臨時国会の場でこそ北朝鮮問題は議論すべきなのである。ミサイル防衛の有効性について、Jアラートの仕様と運用について、独自制裁の可能性や限界について、中身のある議論を国民の前で展開し、問題点を整理して政策に繋げることをすべきだった。多くの国民はその論戦を期待していただろう。国際社会から見て、北朝鮮危機のさなかにありながら、問題の具体的解決のために議会で冷静な議論することなく、政権が危機を利用して国民を扇動し、政権側の議席を増やす目的で選挙戦に突入する日本はどう見えるだろう。国際的に見て、あまりに非常識で無神経であり、逸脱と不作法の極致であり、先進国の政治とは思えないに違いない。あの未熟で驕慢なトランプでさえも、北朝鮮問題については議会に丁寧に説明し、与野党議員との意思疎通に尽力していた。産経の報道によると、安倍晋三は今回の解散の大義名分として、「安保法制の意義問い直す」ことを争点にする構えだとある。昨夜(17日)のテレビ報道でも、萩生田光一が登場し、北朝鮮核ミサイル危機の折、安保法制の是非を争点にするという趣旨の発言を垂れていた。しかしそれならば、なぜ昨年の参院選でそれを争点にしなかったのか。参院選はアベノミクスを争点にし、安保法制は隠して論戦を逃げていた。そもそも、選挙に勝っても違憲は違憲であり、選挙に勝てば違憲が合憲になるわけではない。

c0315619_14554337.jpg今回の解散総選挙について、マスコミやネットに登場していない論点を三つほど指摘したい。一つは改憲問題である。選挙戦で憲法9条の問題がどのように論争されるのか、よく見通せないが、報道を聞いたかぎりでは、安倍晋三は今回の選挙の争点から9条改憲を除外しているように見受けられる。後藤謙次によれば、解散について11日に山口那津男を官邸に呼んで打診した後、外遊中のモスクワから「冒頭解散で」という承諾の返事を受け取っている。モスクワの大学で講演した山口那津男は、学生の質問に「首相提案の9条改正、現状では困難」と答えている。9条改憲を争点から外すという口約束を安倍晋三から得られたから、山口那津男と創価学会は解散総選挙の求めに応じたのではないか。いずれにせよ、10月には9条改憲の案文を国会に提出すると言っていた当の、保岡興治を座長とする憲法改正推進本部の活動は一時中断となり、改憲日程は凍結されて棚上げになる。選挙の結果次第では9条改憲の策動が再開される可能性はあるが、全体を俯瞰すると、総裁選三選のために衆院選をクリアすることを優先した安倍晋三が、戦略を変更して改憲日程を後退させたと考えてよい。本来、安倍晋三の戦略は、9条改憲を基軸にして政界再編し、民進党の右派を取り込んで発議に持ち込み、国民投票と衆院選をセットにして勝利、その勢いで総裁選三選を果たすという筋書きだった。7月に支持率が下がり、軌道修正を余儀なくされ、衆院選を国民投票と切り離して前倒しにした。

c0315619_14563555.jpg二つ目の論点は、11月のトランプ訪日に関わるもので、日米FTAの農産物自由化問題である。日本の報道は、トランプの訪日は北朝鮮問題が主題で、日米の連携を強化するための外交だと説明している。だが、米国側の関心はそれが第一ではない。FTA交渉で日本からTPP以上のものを毟り取ること、日本側を譲歩させ、米国の国益を最大化させる成果を得ることが第一である。9月に予定されていた麻生太郎の訪米はキャンセルとなった。経済交渉は麻生太郎とペンスが担当になっている。訪米中止の理由は、北朝鮮情勢の緊迫ということだったが、無論、それが本当の理由ではなく、米国側の要求が過剰で貪婪すぎるため、とても会談を設定することができなかったのだろう。TPP交渉のときよりも農産品自由化の要求レベルが格段に上がり、日本の工業製品については壁が高くなっている。医薬品の知財や混合診療やISD条項についても、日本側の大幅妥協が強要されているだろう。これらが明るみになった後で、国会論議となって選挙となると、自民党に決定的に不利な条件が出来上がる。任期は残り1年しかない。北海道や東北など東日本で「野党共闘」が優勢なのは、TPPの問題が土台にあるからだった。つまり、今度の解散は、森友加計隠しであるとともに日米FTA隠しであり、農産物自由化妥協隠しでもある。選挙が終わった後で、交渉の中身はマスコミが報道するところとなり、自民党に投票した農家の有権者は愕然とする羽目になるだろう。

加えて三つ目を言えば、麻生太郎が解散を強く進言したのには意味があり、解散が来年に持ち越され、追い詰められ解散になったときは、再来年19年に引き上げが予定されている消費税が争点にならざるを得ないからである。またしても増税延期を公約せざるを得ない立場に追い込まれてしまう。今なら少し時間があり、消費税を選挙の争点にせずに済む。消費税隠しの選挙ができる。9月解散は財務省と霞ヶ関官僚の意向の反映でもある。



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by yoniumuhibi | 2017-09-18 23:30 | Comments(1)
Commented by 私は黙らない at 2017-09-22 03:24 x
世に倦む日々さん、私は、報テレで天皇皇后の高麗神社訪問のニュースを見て、胸がいっぱいになりました。これは、訪韓という悲願を未だ果たせていないご夫婦のプチ訪韓ではないかと。
ご夫婦は、現状に大変な危機感を抱かれていて、政治的発言ができない中、朝鮮由来の神社を私的に訪問するという実にスマートな方法で、安倍政権に牽制球を投げたのではないかと思いました。
私は、退位される前に是非、訪韓を実現させてあげたい。そうでないと、天皇の天皇人生が完結しないと思います。日本の良心を体現しているこの老夫婦を私は大変誇らしく思う。


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