何が護憲派で何が改憲派なのか - 定義を明確にさせようではないか

c0315619_14115528.jpg先週(4日)「安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会」が設立され、記者会見の模様が新聞報道され、8日に都内で決起集会が開かれた。テレビ報道では紹介されていない。朝日の記事を見つけたとき、菱山南帆子と佐高信の写真があり、澤地久枝と瀬戸内寂聴の名前が出ていたので、ようやくこの問題で全国運動が立ち上がったのかと安堵の気分でいた。その後、詳しい情報を探して赤旗の記事を見たところ、発起人の19名の中に香山リカがいて不審に感じた。香山リカはしばき隊の主要メンバーであり、野間易通と強い絆で結ばれた一心同体の同志で、しばき隊の広報宣伝部長のような役割を務めている。そのしばき隊は、9条2項の削除を主張していて、伊勢崎賢治や想田和弘や中島岳志と同じ「新9条」の仲間であり、自衛隊の存在を正式に憲法に位置づけることを要求している。東京新聞の佐藤圭も同じ立場で、紙面を使って「新9条」のプロパガンダに熱中しており、読者を9条改憲の容認へ誘導する動きを続けている。あらためて確認するまでもないが、「新9条」の中身は、安倍晋三が5月に提唱した改憲案と同じであり、戦力不保持を規定した2項を否定し無意味化するものである。自衛隊を軍隊と認め、個別的自衛権を条文に書き込む改憲案に他ならない。



c0315619_14120799.jpgそれは、①ずっと昔からの自民党のオーソドックスな改憲論と同じであり、②小沢一郎の「普通の国」の改憲論と同じである。さらに言えば、③2013年に枝野幸男が文藝春秋に発表した「改憲私案」と同じであり、また、④昨年、前原誠司が民進党代表選で提起した改憲論の持論と同じである。①から④の改憲論の中身はどれも基本的に同じであり、9条2項の否定・削除が眼目になっていて、いわゆる戦後の改憲派とはこの主張を指すものだった。一方、護憲派とは、憲法9条をそのまま護守する立場であり、9条2項を守り、自衛隊を戦力とは認めず、国家から事実上の軍隊が消える理想の実現をめざす立場を指していた。軍隊の放棄という徹底したラディカルな平和主義によって、戦争の放棄を実現するというのが日本国憲法の神髄で、前文にその国民の決意が宣誓され、国家原則として9条が具体的に規定されている。9条がこの憲法の核心であり、特別な位置づけにあることは、9条だけが独立して第2章として編成され、さらに基本的人権を並べた第3章に先行して、すなわち別格の優越的地位を与えられている法典の設計からも分かる。そのため、この憲法は平和憲法という別称で呼ばれてきた。戦力放棄が主権国家として特異であることを承知した上で、敢えて、丸腰で生きていくのだという並々ならぬ情熱が示されている。

c0315619_14121854.jpg最近、護憲派とは何だろうかと思い悩むことが多い。どう考えても、「新9条」は護憲派ではない。「新9条」は、すなわち「普通の国」であり、したがって「安倍改憲」と同じである。だが、「新9条」をマスコミで喧伝している伊勢崎賢治は、われこそ「真の護憲派」だと嘯き、左翼のマスコミは伊勢崎賢治を好意的に取り上げ、伊勢崎賢治を護憲派でカテゴライズしてその主張を持ち上げている。「護憲派による9条改憲論」などという、わけのわからない欺瞞と倒錯が言論の世界でまかり通っている。いったい、戦後の護憲派は何に反対して戦ってきたのか。何から何を防衛することに懸命になってきたのか。護憲派を自称する東京新聞が、9条2項を削除して自衛隊を明文化する9条改憲を打ち上げて世論工作に精を出すことは、明らかに転向であり、9条2項削除論を護憲論だとすることは卑劣な詭弁である。2項を削除して戦力保持を明文で認めてしまったら、それは9条ではなくなるし、前文の決意は反故にされてしまう。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」とする前文が意味が失われる。この決意と戦力保持容認とは両立しない。矛盾する。前文を白紙化して新たに書き替えなくてはいけない。

c0315619_14123065.jpgそろそろこのあたりで、護憲派とは何か、改憲派とは何かの言葉の定義をする必要があるのではないか。私から見れば、加憲を称して改憲派として認識されている公明党の方が、しばき隊や佐藤圭よりもよっぽどまともな護憲派であり、護憲派に属せしめる憲法論の立場だと認定できる。環境権を加憲することは、平和憲法を否定することにはならないし、日本国憲法の神髄を侵すことにはならない。私自身も、例えば、水俣病訴訟に代表される戦後日本の公害薬害をめぐる諸闘争の中で、その悲痛で壮絶な戦いの中で日本人が掴んできた人権について、どこかで憲法の条文に入れるべきだと考える。憲法判例を学ぶ大学1年の基礎法ゼミで、将来、学生たちが、戦後の日本人がどうやってその権利を獲得してきたかを教えるようになればいいと想像したりする。あるいは、2000年代の反貧困運動を通じて提起されたところの、すべての国民は住居を持つ権利を持つとか、国はすべての国民に住居を保障しなくてはならないとかの文言があっていいと考える。この国からホームレスという生き方をなくすということを、日本国はホームレスを許さないということを、憲法の基本的人権の条文の中に入れていいのではないかと考える。これらの考え方は加憲論という立場になろう。こうした加憲はあってよく、この種の加憲を求めたとしても、その者を改憲派だと私は思わないし、改憲派とネガティブに呼ばれるべきではない。

c0315619_14124307.jpg日本国憲法の場合、基本的に何が護憲で何が改憲なのか。辻元清美も、国民の中からこれを新しく加えて欲しいという人権の追加要望があり、それが国民運動となって盛り上がる事態になれば、国会で発議して国民投票にかける流れが自然だと言っていた。同感する。安倍晋三や橋下徹のような侫悪な「お試し改憲」ではなく、歴史の中で日本国民が勝ち取ってきた新しい人権については、それを憲法に書き加えるのは当然だろう。そうした態度について改憲派と呼ぶのは不具合に感じる。護憲派による憲法改正とは、辻元清美が言うような動きのことだろう。護憲派とは、憲法の一字一句を変えてはいけないとする立場ではない。結論を言えば、護憲派とは、日本国憲法のコンセプトを守り、核心となる原理原則を変えない立場のことだ。それは何よりも、憲法前文であり憲法9条である。平和憲法のアーキテクチャーである。平和憲法の生命は9条2項にあり、武力放棄の理想にある。他の条文の改正には興味もないのに、目の色を変えて9条2項を削除せよと吠える者たちを、日本語で「護憲派」と呼んでいいのか。現在の左翼の中の欺瞞を正し、言語の乱れを正す必要がある。護憲派は公明党であり、改憲派は「新9条」論者である。公明党は、憲法9条の1項と2項をそのまま残して守るとコミットしている。この立場に改憲派のレッテルを貼るのはおかしいだろう。

c0315619_14125530.jpg逆に、9条2項を削除せよと言っている伊勢崎賢治や佐藤圭を、護憲派と呼んで喝采するのは間違いである。まるで、最近の左翼の語調は、反安倍であれば全て護憲派であり、改憲派とは安倍与党であると言っているかの如くだ。今回の佐高信らの運動は、残念なことに「安倍9条改憲」に反対する運動であって、9条改憲そのものに反対する運動として定義されていない。安倍晋三による9条改憲に反対という、限定的で妥協的な、政治的な目的が露わな運動という限界を帯びている。それならば、前原誠司の9条改憲には賛成なのかと、自民党や右翼から揶揄され、ディベートで急所を衝かれてしまうだろう。前原誠司がプライムニュースに出演したとき、どうして安倍9条改憲に反対するのかと訊かれ、私的な名誉欲が動機だからけしからんと言い、今の「護憲派」が言っている口上をそのまま垂れていた。それでは、前原誠司が9条改憲を言い出せば、それも私的な名誉欲の不純な動機にならないのか。今の反安倍左翼の9条護憲論は、何とも付け焼き刃的で、方便的な中途半端な議論で、9条2項の意味や価値を正面から正当化する立論になっていない。世界中のすべての国が戦力を放棄し、話し合いで紛争を解決する理想の実現にコミットしていない。それが日本人の理想であったことを忘れ、9条の理想を掲げて60年安保の市民革命を闘い抜いた経験を忘れている。自分たちが守るべきものを忘れ、憲法論と政局論をごちゃまぜにしている。

なぜ、丸山真男の9条論をマスコミで説明する者が出ないのか。苛々してならない。左翼が自ら言葉を不当に混乱させ、戦後の護憲派の闘争の歴史を裏切っている。



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by yoniumuhibi | 2017-09-11 23:30 | Comments(2)
Commented by 9条の変更が壊憲だ! at 2017-09-12 18:55 x
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
いま私たちが生きている現実の世界がどうであれ、この理想のどこに間違いがあるのか!
そもそも実現が難しそうだからといって、あきらめる理想など、はなから理想の名に値しない。

「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」
これこそが人類が目指すべき理想の方向なのだということに、誰か反対があるか!

「第二項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
当たり前である。
《武力の行使は放棄するが、戦力は保持する》などという「憲法」=【それが私たちの目指している理想の姿であるという宣言】を持つ集団を、いったい誰が信じるのか。

国民国家の目指すべき理想とあるべき姿を規定したものが憲法である。
だからこそ、結果的には、まず真っ先に政治家と役人を縛り、「憲法の示す理想の方向」に向かって政治と行政を運営させねばならない。
環境や人権について、「新たな理想」を加えることは当然あってもいい。

しかし、現実に合わせるという詭弁で、理想を取り下げるのは、ただの恥さらしである。
「現実の様々な具体的問題を、とりあえず調整しておさめるための一般の法律」と、「国家としての進むべき理想を掲げる憲法」とを同列に語る輩など、本当の馬鹿か、詐欺師である。
Commented by 私は黙らない at 2017-09-13 03:23 x
自民党の改憲論議一ヶ月ぶりに再開のニュース、報ステの後藤さんのコメントで気がついた。山尾スキャンダル直後の改憲議論復活。あまりにタイミングが良すぎる。
安倍自民党にとって、一番将来こわいのは蓮舫でも前原でもなく、山尾議員だったのではないだろうか。
不倫は男女の問題。家族には迷惑かもしれないが、国民には痛くもかゆくもない。国民のカネにかかわる森架とは訳が違う。
山尾さんの離党が残念でならない。左も右も9条改憲と言ってる現状を、おたかさんは草葉の陰でなんと思っておられるか。


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