内閣改造と蓮舫降ろしの政治 - 安倍退陣のロードマップはスローなテンポに

c0315619_16075050.jpg注目の内閣改造が3日に行われ、マスコミ各社からの世論調査が出揃った。先陣を切って4日に発表した毎日新聞では、前回より9ポイント上がって35%。同じく4日に出た共同通信の数字では、前回より8.6ポイント上がって44.4%。5日に出された読売新聞では6ポイント上がって42%、6日の朝日新聞では2ポイント上昇して33%の結果となった。NNNでは3.7ポイント上がって35.6%、JNNでは3.6ポイント下がって39.7%となっている。反転上昇と呼べるものもあれば、横這いと呼ぶのが適当なものもあり、各社の数字がまちまちで傾向を捉えにくいが、基本的に前回7月に底に落ちていた状況から回復し、支持率下落に歯止めをかけたと言えるだろう。安倍晋三の側から見れば、内閣改造は一定の成功を収めた。この図は、慣性の法則が支持率下落を継続させることを期待した私からすれば、残念で落胆させられる反動である。安倍退陣へのロードマップのドライブにブレーキがかかってしまった。8月中にマスコミ全社が20%台を打ち、9月に10%台に突入する破滅となり、総裁選前倒しの声が上がる政局に速やかに移行させたかった。橋下徹と小泉進次郎の入閣が阻止され、サプライズが封じられた改造で、9ポイントも支持率が回復するという変動は意外だ。



c0315619_16082189.jpgが、失望の中にも楽観できる要素があり、例えば、安倍晋三の御用新聞である読売のグラフを一瞥すると、不支持が48%と高い水準にある事実が確認できる。一般的には、改造をやればご祝儀相場で支持率にプラスの効果がもたらされ、権力者はそのカードを常用するのだけれど、逆に言えば、改造直後の支持率が瞬間風速のピークで、その後は下降するしかないという法則が待っているという意味でもある。支持率で反転上昇の結果を出した共同の調査でも、安倍内閣の不支持理由として「首相が信頼できない」と56%が答えていて、内閣改造が安倍晋三の信頼回復に繋がっていない事情が読み取れる。読売の不支持率48%や、共同の安倍不信56%の数字の内実を窺えば、そこには安倍離れした女性層の反感が、いわば「反安倍の岩盤」として最終的かつ不可逆的に存在することが察せられる。要するに、今回の世論調査で支持率下落に歯止めがかかった理由は、野田聖子や河野太郎が入閣し、自民支持層が納得と好感を持てるイメージを訴求できたからで、安倍晋三の人格への不信や不満は残ったままだ。世間が政権を見る眼は厳しくなっていて、今は賛美ではなく批判がマスコミの安倍政権に対する視線のデフォルトとなっている。転換を遂げてしまった。

c0315619_16084786.jpg今回の世論調査で、もう一つ安心材料となったのは、高い支持率を出した共同の調査で、安倍晋三の下での憲法改正に賛成が34.5%、反対が53.4%という数字が出たことだ。この意味は小さくない。改造後の記者会見で、安倍晋三は憲法改正について「スケジュールありきではない」「党と国会に任せる」とトーンダウンした印象の発言を漏らし、翌4日の朝日の1面トップで大きく報道された。先送りが明言されてはいないが、従来の方針であった臨時国会(憲法調査会)への改憲案提出の日程を修正して後退させたかのような素振りを示している。その朝日の記事には、「求心力を欠いたまま『日程ありき』で突き進めば政権運営が不安定になりかねない」と観測が書かれ、さらに「与党内の賛成を得るのは困難で、憲法改正はもはや不可能だ」という「首相周辺の声」なるものまで紹介されている。この見方で間違いない。ただ、9条改正は安倍晋三の政権戦略そのもので、今年の国会提出、来年の発議・国民投票は、政権の命運を賭けて遂行するプログラムだった。改憲日程の予定どおりの進捗と達成があり、その成果をもって総裁選と衆院選を乗り切るというのが安倍晋三の今年から来年にかけての政権戦略で、したがって改憲日程が躓くとすべての目算が狂ってしまう。

c0315619_16093027.jpg安倍晋三にとっては、発議と国民投票での勝利ありき、改憲の悲願達成ありきであり、総裁選も衆院選も今秋国会での改憲案の成案で突破するというのが方針だった。他に武器(戦略)はない。アベノミクスはタネ切れで、独裁権力の求心力の維持拡大に寄与しない。逆に、残業代ゼロ法案のようなものが主役になり、強行採決で押し通そうとすると世論の反発を受けて支持率下落に拍車をかけてしまう。残業代ゼロ法案を通すためには、秋国会を改憲論議の関心一色にして、民進党を二つに割り、小池百合子と保守マスコミのエンドースを得て、高い支持率のまま安倍改憲案(9条改定案)を憲法調査会の結論にする必要があった。改憲論議で沸騰させてスピンすることで、どさくさ紛れの火事場泥棒で国会を通す必要があった。もし、秋国会で改憲論議がなくなるとすれば、「人づくり革命」と銘打ったところの、①残業代ゼロ法案と③こども保険がクローズアップされる展開になる。これらは国民に不人気な社会政策であり、常識で考えて安倍晋三の支持率は低下せざるを得ない。支持率が下がれば、解散は打てず、来夏の総裁選3選の目処が立たなくなる。改憲について慎重姿勢を示さざるを得なくなったということは、安倍晋三にとってきわめて深刻な求心力喪失の危機を意味する。

c0315619_16094193.jpg一方、代表選を控えた民進党の方だが、不可解な蓮舫降ろしの政治について、一つの謎解きが思い浮かんだので披露したい。まず、本来なら蓮舫体制を支えるべき岡田克也と枝野幸男が幹事長の要請を断ったのは確実だ。安住淳も間違いなく拒否している。何があったのか魑魅魍魎の藪の中だけれど、どうやら、7月26日に一人で部屋に籠もって「幹事長を引き受けてくれ」と懇請し、何人かに断られた時点で、蓮舫そのものが続投を投げ出して新代表を前原誠司にしようと跳躍を決意した可能性がある。普通に考えて、後任幹事長を引き受けるべきは、党の要石であるゴッドファーザーの岡田克也だろう。1年前に蓮舫にバトンタッチした張本人で、蓮舫体制の後見人でもあり、岡田克也だけが党の左右対立を丸く収めて上に立つヤジロベエになることができる。その岡田克也に断られた時点で、おそらく、蓮舫は民進党の存続を見切ったのだ。前原誠司を新代表に据え、丸ごと小池新党と合併して保守二大政党の道へ進む、あるいは、左派の誰かが新代表に就いた場合は、右派と一緒に離党して小池百合子が国政進出する母体となる原基政党を発足させ、その一員に加わる。そういう針路と展望を7月26日に決断したのではないか。そう考えると、謎の多い蓮舫降ろしの真相が見えてくる感じがする。

c0315619_16095401.jpg突拍子もない推理のようだが、そのように疑う根拠があって、着目すべきは、蓮舫が代表選を早くやれと急かしている事実だ。党員サポーターを含めたところの、時間をかけた代表選の準備と催行に対して、8月2日の両院議員総会で彼女は苛立った反応を見せていた。そして、早くやれと催促しているのは、渡辺周であり、篠原孝であり、前原誠司を強力に推している議員たちである。ということは、党員サポーターを含めず、国会議員だけで投票して即決すれば、前原誠司が多数を得て当選するという意味に他ならない。議員だけの勢力分布では、右派(前原)の方が左派(枝野)よりも数が多く優勢な構図なのだ。その要求に対して、蓮舫自身が積極的に乗る様子を示している。結局、機関決定の手続きで代表選は党員サポーターを含める方式になったが、蓮舫自身は議員だけで即時に選出する進行を想定していたのだろう。加えて、もう一つ疑う根拠として、7月27日に辞任会見したとき、次の代表は誰が意中かという記者の質問に対して、新しい国家像を持った者がいいと答えた場面があった。民進党の関係者が聞けば、これは前原誠司の「ALL for ALL」を示唆しているものと推察了解するだろう。さらに疑いを進めて、26日に辞任を決断したとして、そのことを派閥ボスの野田佳彦に伝えて協議していないはずがない。

c0315619_16102822.jpg代表を辞任するとなると、次をどうするという相談になる。党と自分たちの今後をどうするのか、蓮舫と野田佳彦が密談して共通認識を得ていないはずがない。蓮舫はもともと右派であり、小池百合子に接近する意向をマスコミの前で強調し、小池百合子との政策的イデオロギー的親和性を隠さなかった政治家である。党の代表に座っていたがために、立場上、共産党との連携を演出して左右バランスに配慮する中立指揮官の役割を務めてきた。その職務を離れれば、野田佳彦も蓮舫も同じ右派で、小池新党と合体して保守二大政党の地平を模索するのが唯一の生き残り策だと確信している議員の一人と考えていい。その方向へ持って行くには、前原誠司を新代表に据えるのが最短の近道であるだろう。岡田克也に幹事長就任を袖にされ、代表続行が無理だと観念したとき、蓮舫は右派たる本性を剥き出しにしてリベンジに出たのではあるまいか。それなら党を壊して、ネイティブに右派として生きるだけだと、そう開き直ったのではあるまいか。自分以外にヤジロベエの配役がこなせる者はおらず、自分が最後のヤジロベエだったのだと。誰が見ても、最早、右派と左派が路線抗争を封印して、欺瞞的な協調体制をこれ以上プリテンドすることは不可能だ。辻元清美が言っていたように路線を左にシフトして野党共闘を純化させるか、右派主導で小池新党と合体してブロックを作るか、分党解党してピリオドを打つかしかない。

共産党としばき隊が妙に前原誠司に宥和的で、猫なで声で前原誠司を美化して持ち上げるツイートを連発しているのは、前原誠司が代表になっても現在の「左右協調体制」を壊さないでくれという願望のメッセージを送っているのだろう。無論、前原誠司がそんな虫のいいリクエストに応じるはずがないが。


c0315619_16104585.jpg
 

[PR]
by yoniumuhibi | 2017-08-07 23:30 | Comments(3)
Commented by NY金魚 at 2017-08-08 04:11 x
数カ月前の当ブログに「慰霊の季節」は安倍を叩く最大のチャンス、とありましたが、慰霊の真っ只中、その気配はまた縮小しはじめました。肝心の『受け皿』を小池新党にさらわれ、極右化の波はとめどなく押しよせてくる気配もします。
なんともふがいないリベラルの同志は、慰霊のコンセプトを即反アベのコンセプトに変換できなくて、海の向うから誠に臍を噛む思いがつづいていました。
このブログ記事で、多少の楽観が戻ったものの、すぐまた有象無象の跋扈し盛衰する政局に、ほとほと疲れ果てました。結局政局を大転換できる(アホのアベに対応できる)強力な人間など列島にはひとりもいない。だれかの力で新党を立ち上げて受け皿にすることなど、まったくありえない、ということですね。
◆ 太宰の名作『走れメロス』に山本太郎をなぞって『走れ太郎』を書き出そうとしていますが、メロスが走り切って暴君ディニオスを滅ぼすには、最低人質になる親友セリヌンティウスが必要。いまの太郎にはその親友すら皆無。いやはやこの国でヒーローが出現することの不可能性をひしひし感じます。(続く)
Commented by NY金魚 at 2017-08-08 12:35 x
続き: ◆ 視点をアメリカ国内に転じれば、村上春樹云くの『古代の祭祀=トランプ』を阻む新しいヒーローなど、こちらにもどこにも出てくる気配もない。ひたすらトランプの自滅を祈るばかり。しようがなくバーニー・サンダース2020のキャンペーンがはじまりました。ハワイのタルシ・ギャバードと組んで新風を噴き上げたいところですが、如何。
◆ 世界的に『現政権の退陣ロードマップはスローテンポに』ということでしょうか。
Commented by 前原より小池 at 2017-08-08 21:21 x
左派が、前原をほめるなど、政治音痴の極みである。
前原は筋金入りの右翼なので、
何がどうなっても、左に手を伸ばすことはない。

前原が、いま民進党にいるのは、両方が右翼の二大政党制を作るために、
自民党のタカ派と裏で手を握っているからに他ならない。

一方、小池百合子は、筋の通った政治理念などなく、
その時その時の国民の声にあわせるだけの政治屋だから、
小池にこそ風を向けるべきなのだ。

風見鶏という批判があるが、
風の正体は多数の国民の声であり、
それを見ることの何が悪いのか。
むしろ、風を読んでもらえないからこそ、投票率は低いのだ。

前原と小池をくっつけてはならない。


カウンターとメール

最新のコメント

籾井が会長を退任してから..
by 宮澤喜一や河野洋平の頃は本当に良かった at 18:02
小沢一郎が自民党を離れた..
by foo at 21:08
進歩の理念を持つ人々のな..
by 宮澤喜一や河野洋平の頃は本当に良かった at 19:36
左派が、前原をほめるなど..
by 前原より小池 at 21:21
続き: ◆ 視点をアメリ..
by NY金魚 at 12:35
数カ月前の当ブログに「慰..
by NY金魚 at 04:11
細野氏の三島後援会の会長..
by 一読者 at 19:15
優れた日本型システム ..
by 優秀な日本型システム at 16:12
本当に仰る通りだと思いま..
by liberalist at 00:12
そうでした。「民主」と言..
by 長坂 at 23:45

Twitter

以前の記事

2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング