理念は広告代理店のコピーにあらず - 理念のない政党が受け皿になれるか

c0315619_15220737.jpg「共通の原理・政策をもち、一定の理念実現のために、政治権力への参与を目的に結ばれた団体」。政党の意味について、広辞苑ではこのように説明されている(第二版P.1228)。これが政党の本義である。これまで何度も執拗に言い続けてきたことだが、民進党(民主党)はこの定義を逸脱していて本来の政党とは呼べない。政党は、結成した出発点から共通の理念を持っていなくてはならず、理念を実現するために同志が結社したのが政党である。理念とは、「ある物事についての、こうあるべきだという根本の考え」であり、政党の理念とは、国家や社会がどうあるべきか、理想とする社会はどのような像かを言葉で表現したものだろう。通常、それは綱領の冒頭で示され、政党の基本政策や路線を規定するところとなる。あるべき社会がどういう姿かは、社会の成員によって考え方は様々であり、全員が同じ理想や思想信条で一致することはなく、したがって、政党は常に複数成立することになる。政党が英語でパーティと呼ばれるのは、部分の意思や利害を代表しているという意味に他ならない。部分であるが故に、当然ながら部分の中は一枚岩である。共産党や公明党はそうした政党の定義に現実の態様が合致していて、自民党も基本的にそうだが、そのため、わが党の理念は何ぞやを党内で熱く論議するということはない。自分探しはしない。



c0315619_15222335.jpgところが、民進党(民主党)については、何度も何度も、暇さえあれば自分探しの議論をやっていて、代表選のたびに、恒例行事のようにわが党は何をする党なのかを唾を飛ばして議論している。それは、この党の共通の理念がないからだ。あるべき社会像が異なる者たちが集まっており、一致してないからいつも同じ自分探しの混乱と騒動をやってしまうのである。他の政党は政党の定義に合致しているが、民進党だけは政党の定義を逸脱している。どうしてそうなったかと言うと、25年前の「政治改革」のムーブメントのとき、選挙制度を小選挙区制に変えて無理やり二大政党制のシステムを作ろうとしたためであり、「政治改革」のレジームに適合する政党を急造したため、元自民党やら元社会党やら元民社党やらが寄り集まり、理念の不明な政党になってしまったということだ。民進党(民主党)の理念があるとすれば、それは「政権交代可能な二大政党制システム」の政治像である。だが、それは社会像ではなく、人はどう生きるのが幸福なのか、あるべき理想の社会とは何かという哲学とは無縁な制度論の問題でしかない。人々の生活に関わる政策とは関係のない話だ。民進党(民主党)は、政党の理念として掲げるのに不適切なものを理念として追及してきた。そこに民進党の根本的な矛盾がある。

c0315619_15223517.jpg別に、庶民からすれば、中選挙区制だろうが小選挙区制だろうがどうでもいいのだ。多党制だろうが二大政党制だろうが、庶民のくらしがよくなる政策が政治過程で実現されればよいのである。だが、「政治改革」の論者とそれにコミットした者たちは、二大政党制こそが黄金の理想郷のように吹聴し、米国や英国やドイツのあり方(ウェストミンスター型式)が人類の普遍的なモデルだと言い、その政治体制を実現すれば政治は浄化されて日本はハッピーになると巧言を吐いてシステムのチェンジへ誘導した。すなわち、民進党は理念によって媒介された政党ではなく、制度によって媒介された政党である。民進党の国会議員の地位は、小選挙区制という制度によって保障されている。小選挙区制という制度に支えられて、彼らは野党政治家という職業を特権的に与えられている。制度に奉仕する政治家であり、国民に奉仕する政治家ではない。前原誠司にしても、野田佳彦にしても、原口一博にしても、大学を卒業してから松下政経塾に入り、政治家以外の職業を経験したことがない。国会議員の平均年収は2200万円であり、普通の庶民の生活感覚は彼らには分からない。だから、前原誠司は平気で消費税を8%から15%に引き上げるなどという政策を言えるのだ。彼らにとっての競争相手は自民党で、競争して売り込んで評価してもらう先は、米国であり、財界であり、霞ヶ関であり、マスコミである。

c0315619_15224802.jpg自民党よりもっとスピーディーにパフォーマンスよく、自民党と同じ政策を実現するから、自民党ではなくわれわれを支持してくれと、米国、財界、霞ヶ関、マスコミに売り込み、評価してもらい、認めてもらって政権獲得をめざすというのが、民進党(民主党)右派の一貫した路線であり、前原誠司はそのことをずっと公言してきた。自民党との間に政策の対立軸などはないのだ。連合が共産党の影響を労働組合から排除するために立ち上げたナショセンであったように、民主党もまた、社会党や共産党の影響を日本の政治から一掃することを目的として作られた政党であり、それが「政治改革」の真の狙いであり、前原誠司ら松下政経塾組はその目的に忠実だった政治家だと言える。民進党の本来性を体現しているのは前原誠司ら右派議員の方で、左派議員は単に国民を騙して、フィクションである「自民党との対立軸」を演出するための疑似餌の存在でしかない。だからこそ、民進党(民主党)の中では世代が若くなるほどに自民党議員と同じ類型のエリート族が議員で増え、結党から時間が経てば経つほど政策が自民党との間で互換性を高める状態となって行った。例外だったのは、小沢一郎がトップに就いて左に舵を切った2006年から2008年までの3年間だけである。小選挙区制が導入されて以来、国民と議員との距離はどんどん遠くなり、国民は政治から疎外されて行った。

自分探しごっこをやればやるほど、民進党は自家撞着に陥る。党に一本の理念がなく、横に座っている議員が自分の同志ではないことが分かる。解党するしかない。政党の意味を無理に変えようとした「政治改革」が間違っていたのだ。



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by yoniumuhibi | 2017-07-31 23:30 | Comments(5)
Commented by 長坂 at 2017-07-31 23:45 x
そうでした。「民主」と言えば「松下政経塾」、佐高信によると「松下電器が作った一番の欠陥品」でしたっけ。棚上げ論で友好関係を築いてきたのに、尖閣を国有化して日中関係に大きな亀裂をもたらしたのも野田でしたね。そのことの責任全く感じてないみたいですけど。本音は自民に拾って欲しい派とリベラル路線で行く派が同じ党って有権者にとってホント迷惑。森友以降色んな委員会見ましたけど、民進には優秀な議員沢山います。応援したいと思っても、どうせ裏切られるんだろうと。党首を背後でなく正面から堂々と斬りつける党ですから。
5年で400台売ってBM東京の社長になった林文子に民心をつかむコツを聞いた方がいいかもしれません。
ついでにあの永田メールと石井紘基の死の真相も明らかにして欲しいですね。
Commented by liberalist at 2017-08-01 00:12 x
本当に仰る通りだと思います。
小選挙区制という制度がもたらした歪んだ政党、選挙互助会が民主党→民進党であると私は思います。
小選挙区制だからこそ、民進党みたいな理念なき烏合の衆が存在するのです。早期に中選挙区制の復活を望みます。

中選挙区制の今年の東京都議会選挙は本当に面白く、新規参入でも第1党が取れることが示され、公示前の第1党が共倒れで議席を半分以上も減らすという、中選挙区制が熱い歴史的な選挙だったと思います。

先日、田原総一朗が官邸で安倍晋三と会ったわけですが、その冒険とやらが「中選挙区制の復活」であることを願っています。彼自身は小選挙区制にしたことを凄く反省し、小選挙区制を非難しているようですので。
今後、与野党の議員から、小選挙区制廃止と中選挙区制復活の議論が活発になることを期待したいです。
自民党支持者にとっても、地元小選挙区の無様な自民党公認候補に嫌々投票するのではなく、複数居る自民党候補の中から、優れた自民党候補者に投票出来るので、自民党支持者にとっても喜ばしい制度だと私は思います。
Commented by 優秀な日本型システム at 2017-08-01 16:12 x
優れた日本型システム
ひとつ目は、「会社は社員のもの」。
会社が利益をあげられたいちばんの功労者は社員に決まっている。
だから会社の利益は、社員で分け合う。
昇給で消費は拡大し、経済は好循環となる。
だから、日本は、奇跡の高度成長を成し遂げた。
株主に「私たちを信じて投資してくれてありがとう」とお礼するのはいいけれど、
「株主を儲けさせるために会社がある」なんて言われて
社員ががんばるはずない。いいものができるはずがない。
こんな簡単な理屈がなんで分かんないんだろう。

ふたつ目は中選挙区制。
多様な人間の多様な意見をすくいとるための代表選びである選挙を
2択にしていいわけないだろ。
この世には2種類の人間しかいないのかよ。
こんな簡単な理屈がなんで分かんないんだろう。

松下政経塾のおかげで、日本の電気産業はもはや風前の灯火だ。
Commented at 2017-08-03 10:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 一読者 at 2017-08-04 19:15 x
細野氏の三島後援会の会長さん、初当選以来の支持者の方だったようですが、離党するなら会長を辞任される意向のようですね。静岡新聞の記事、ネットでも見つけられます。
選挙に強いことが細野氏のウリで、それが党で力の源泉でもあったと思いますが、どうなるんでしょうかね。


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