稲田朋美の「自衛隊としてお願い」発言を違法行為だと断定しないマスコミ

c0315619_15325827.jpg稲田朋美が都議選の応援演説で、「自衛隊としても(自民党候補に投票を)お願いしたい」と発言した件、それを批判するマスコミの言論が生ぬるくて苛立ちを覚える。昨夜の報ステの後藤謙次も、NEWS23の星浩も、正面から真剣に批判する論調ではなかった。「単なる失言のレベルではない」と富川悠太は口にしたが、レベルがどう違うのか、今回の舌禍の意味がどれほど重いのか論点が十分に提示されることはなかった。報ステとNEWS23の番組スタッフは、①憲法15条の「全体の奉仕者」、②国家公務員法102条と自衛隊法61条の「政治的行為の制限」、③公職選挙法136条の「公務員の地位を利用した選挙運動の禁止」について箇条書きし、法律論の要点を簡単に整理していたが、二つの番組のキャスターとも、それを使って踏み込んだ本質論を展開することがなく、単なる閣僚の軽はずみな失態として流し、都議選への影響がどうのという政局小咄のルーティンで纏めていた。官邸が2年前の「蛮社の獄」の後に据えた御用キャスターの後藤謙次と星浩では、結局のところ軽薄で空疎な政界漫談にしかならず、問題の深刻さが視聴者に伝わらず、正しい政治認識が社会に提供されない。



c0315619_15331280.jpgテレビは民主主義政治の教育機関であり、報道の解説者には知見の深さと民主主義の使命感が必要である。そのことを、それを職業としている者には自覚して欲しいものだ。筑紫哲也にはそれがあった。筑紫哲也であれば、今回の稲田朋美の舌禍事件について、後藤謙次や星浩のような粗雑で淡泊なコメントでは済ませなかっただろう。もっと迫真の表情と言葉がテレビに出現し、法律の条文に書かれた禁止や制限の意味が重く語られ、この国の民主主義の基本的な原則と規範が掘り起こされたことだろう。今日(29日)の毎日の論説記事を見ると、「稲田氏、軽さ露呈、安易な『政治利用』」という見出しになっている。稲田朋美の発言に対して「軽い」「軽さ」の表現を当てて評論していて、事件の意味を「軽さ」の語に収斂させている。記事本文を読むと、「軽さ」の語を実際に用いているのは「官邸関係者」であり、要するに、この記事を書いた毎日の記者は、官邸関係者による事件の評価と総括を見出しにしていて、その一言を自らが読者に発信する事件認識にしている。つまり、事件についての意味づけが、この毎日の記者と「官邸関係者」は同じなのだ。おそらく、この記者は政治部の所属で、匿名の「官邸関係者」とは昵懇の関係なのだろう。だから、事件は「軽い」という言葉で軽く済まされるのだろう。

c0315619_15332564.jpgこの毎日の記事は、表面上は稲田朋美を批判した文章になっているが、「軽さ露呈」という見出しを表記したことで、事件の重大性が十分に訴えられない、すなわち、この国の民主主義の条理が不当に犯されたことへの危機感や焦躁感が内面に不足した平板な記事になっている。当日の現場の音声を聴いても分かるとおり、稲田朋美の主観の中では、自衛隊と自民党とは一体なのであり、自衛隊は自分と同じイデオロギーの仲間であり、靖国神社の軍隊であり、政治性が無色透明な機関ではないのだ。稲田朋美の頭の中では、憲法15条や国家公務員法102条や自衛隊法61条はタテマエを並べた面倒な紙切れでしかなく、GHQが押しつけた憲法から体系づけられた窮屈な法規であり、憲法を変えて戦前日本に戻せば、自分の行為は当たり前に認められる正当なものなのだ。その信念と信条は、毎日の記事に匿名で登場する「官邸関係者」も同じであり、単に稲田朋美が過激に自由で奔放であるにすぎない。こうした稲田朋美の思想と行動は、官邸と永田町を住処にして生息する御用マスコミによって見逃され、批判されないまま大目に見られてきた。この記事を書いた毎日の記者や、後藤謙次や星浩には、法律の基礎にある思想と教訓へのコミットがなく、法律を守る倫理がない。

c0315619_15335541.jpg倫理的精神の欠如において、マスコミ連中と稲田朋美とは五十歩百歩なのだ。今日(29日)の朝日の2面には、木村草太の事件へのコメントが載っていて、「発言は明らかに、特定政党の応援のために防衛相の地位を利用した選挙運動になっている」と言い、「公職選挙法に違反する明確な違法行為だ」と断定している。この断定が、どうして新聞社の社説や論説ではできないのだろう。毎日の記事では、「法に触れる可能性は否定できない」という指摘に止まっている。朝日の1面記事でも、「稲田氏の発言は同法令(公職選挙法)に抵触する可能性がある」と言っているだけだ。木村草太には違法行為だと言わせながら、社としては違法行為だと指弾していない。社内で慎重に検討した上で、この行為が違法ではないと解釈できる余地があると、そういう結論になったのだろうか。であれば、この行為が公職選挙法違反にもならず、国家公務員法違反にも自衛隊法違反にもならないという潔白の解釈論を示して欲しいものだ。グレーだとする見解で固めるのであれば、合法だと正当化できる根拠もあるということだろう。それはどういう理屈になるのか。菅義偉は、単に撤回と謝罪をしたから問題ないと強引に擁護しているだけで、法律解釈の説明は会見でしておらず、違法性を否定する論拠は示していない。マスコミの腰が引けているのはなぜだろうか。

c0315619_15344118.jpgマスコミがまともに追及せず、明確な違法行為をグレーの認識で済ますから、政治家の横暴がお咎めなしで放任されてしまうのである。法律で禁止事項が明記されていても、人がその法律を使わないから、法律が社会的に有効に機能せず、空文化して拘束性を失ってしまうのだ。さて、テレビと新聞で事件の報道を見るかぎり、稲田朋美はまったく反省していない。釈明会見は2回やっていた。演説会場で問題発言をした直後の午後7時に屋外で記者団に囲まれ、趣旨は何なのかと問われて答えている。これが1回目で、このときは失言したとも何とも自覚がなく、平然と弁明して開き直っている。その後、5時間後の午後11時半に2度目の会見をし、発言の撤回をした。翌日(28日)の菅義偉の会見を見ると、撤回を要求したのが菅義偉だということが分かる。午後9時からのNW9や午後10時からの報ステで取り上げられるのを回避するため、時間を引き延ばして深夜にセットしたのかもしれないが、あるいは、都議選の打撃になるので撤回会見は必要ないと安倍晋三が突っ張っていたのかもしれない。それに対して、菅義偉が、撤回会見をしない方が都議選への悪影響が大きいと反論し、安倍晋三が折れて会見を組んだ可能性もある。菅義偉の会見の中で、「首相からも稲田氏を続投させるよう指示があった」と言っていて、この一言には注意が向く。

記事を書いた朝日の記者が、質疑応答の言質を勝手に要約している可能性もあるが、もし、菅義偉がこのままの表現を言ったとすれば、安倍晋三があまりに稲田朋美だけを過剰に溺愛して庇護することに不快感を示しているようにも窺える。ひょっとしたら、当夜の午後7時から午後11時まで、稲田朋美を更迭するしないで二人の間で揉めていたのかもしれない。翌日(28日)の稲田朋美が特に憔悴した様子もなく、図々しい余裕の表情で記者団をかき分けてのし歩いていた態度を見ると、安倍晋三からは何の譴責もなく、弁護と激励一色だったことが分かる。



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by yoniumuhibi | 2017-06-29 23:30 | Comments(4)
Commented by ポー at 2017-06-29 23:56 x
安倍は自分より優秀な男が嫌いなんですよ。だから稲田を後継者なんて失笑もののことにこだわってる。
サミットの集合写真でも、いつも女性の隣で映っている。女性が好きなわけではなくて、自分より優秀でハンサムな男の隣だと、自信がないんですよ。
T田真由子が、自分より美人な女の子を合コンに呼ばなかったのと同じ、自信がないからですよ。
安倍のお友達のことも見透かれてますよね、幼い時から人間的魅力がないからまわりに人がいなかった、だから何かうまみがないと友達はまわりにいてくれない、それで必死にお友達内閣だの、自分をうまく持ち上げてくれる人を腹心の友だと言って利益供与している。
かけにとっては安倍なんて単に利益を引き出す先でしかないんですよね。
Commented by 七平 at 2017-06-30 00:27 x
何らかの共通分母があるのかもしれませんが、嘘を平気でつく米国のTrump大統領と日本の安倍晋三首相が政権を握り、横暴をきわめているのは明らかです。しかし、類似するところはそこまで、日米のマスコミのNews 扱いと一般市民の反応は全く異なっています。Trump が7歳の幼児の様に、飛んでも跳ねても喚いても、Russiagateの調査は大人によって静かにすすめられています。三権分立が正常に機能しておりTrump と彼の取り巻きが違法行為を行えば、立法府、司法府が沈黙を守る事はできません。要するに法治国家として機能しています。加えて、勇気ある記者だけではなく、内部告発する官僚や実務を行う人が山ほど存在しており、”リーク”という形で続々と真実が漏らされています。 そこには、各個人の主体性と、幼い頃からの教育のせいでしょうか、”自からの意見を形成し、意思表示をする姿勢” があります。 暗記と反芻を中心にした日本教育、生徒に考えさせ自らの意見を形成する事を訓練しない日本教育の欠陥が現況の根幹原因だと思います。要するに私の言うCPU欠落、DRAM人間が、貴重な日本教育システム上の限られた席を食いつぶしていると考えます。さもなくば、天下の東大が豊田真由子や佐川宣寿理の様な卒業生を輩出するとは思えません。放置すると、日本の教育ランキング、強いて言えば東大のグローバルランキングも下降の一途をたどると思います。

話はそれますが、三宅弁護士の指摘に反して、佐川宣寿理が”嘘を突き通したご褒美”に理財局長から国税庁長官に昇格すると日刊現代が伝えています。

忖度であろうがなかろうが、違法行為(公文書隠滅)をした者が罰せられる事もなく、逆に昇格する社会の行く末は明らかです。

Commented by 私は黙らない at 2017-06-30 06:10 x
稲田も小池もいらない。国会に望月衣遡子さんを送りたい。
Commented by ともちんLOVE at 2017-07-04 21:56 x
稲田朋美が右翼の男に人気なのは「バカだからかわいい」ということだろう。
蓮舫は生意気だが、稲田朋美はかわいい。
だって、バカだから。
稲田朋美は、軽いのではない。バカなのだ。
彼女を支持する男にとって、失言は、プラスであって、マイナスではない。

彼女にあるのは、安倍晋三への媚び諂いだけで、自分の意見など実は皆無。
夫の意見を100%受け売りするセレブ妻のようなものである。
そう思えばあの服装もしっくりくる。
下品で、古くて、成金で、しかし、ある種の男が喜ぶ、あの感じ。
網タイツの政治家? コントかっ!

小池百合子には女性の支持者がいるが、
稲田朋美にはいない。
似ているようで、決定的に違う。


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