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「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼

「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16023057.jpg新聞報道によると、自民党が「改憲推進本部」の体制を拡充し、幹事長の二階俊博も役員メンバーに加え、年内に原案を取り纏める方針を固めた。来年1月からの通常国会で改憲原案を提示し、憲法審査会にかけて発議に向けての合意をとる見通しとある。半年かけて学会婦人部を調略し、公明党を9条改正に転換させる。学会婦人部が応諾するには、たしかに半年の時間は必要だろう。都議選の後に民進党と小池新党をめぐる政変が起きる可能性が高く、その政変が憲法9条改正と絡めば、夏以降は今とは全く違った政治環境が出現することになる。私は、小池新党をテコにした野党再編が成った場合、安倍晋三は発議前に9条改正の是非を問う解散総選挙をやる思惑なのではないかと睨んでいる。現在の民進党の議員は「安倍政権の下での改憲には反対」と訴えて議席を得ている。この者たちが君子豹変して、選挙の洗礼もなしに憲法審査会で改憲発議に合意するのは有権者にとって公約違反であり、その発議は正統性に瑕疵を抱えることになる。また、安倍晋三からすれば、政界再編で民進党を潰し、新たな枠組み(自民・公明・維新・小池)での巨大安倍与党が選挙で圧勝すれば、国民投票でも圧倒的大差で勝てるという見込みが成り立つ。



「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16024689.jpg衆院の任期は来年の2018年末で、マスコミの報道では、その前に、安倍与党(自公維)が衆参3分の2を握っている間に発議と国民投票があるだろうという見方が多い。だが、政治の常識では、任期いっぱいまで待つのは安倍晋三に不利であり、選挙の主導権を握って有利な態勢に持ち込むためには、機先を制して、任期を残して解散を打つのが得策だ。安倍晋三の性格や過去の手法を考えても、追い込まれ解散を選ぶことはないだろう。今後、時間が経てば経つほど、追い込まれ解散の形に近づき、2019年10月の消費税増税が争点として浮上することになる。消費税増税が争点になれば、上げようとする与党が不利で、反対する立場の野党が有利になるのは当然だ。安倍晋三が選挙に勝つためには、消費税を争点から外さないといけないし、与野党を増税賛成で一致させないといけない。政界再編はそのための仕掛けでもある。そうした幾つかの条件を考えて総選挙の時期を睨んだとき、今年中の解散が狙われているという推測を出すのは自然だろう。マスコミが総選挙を来年秋の日程だとまるで既定事項のように説明するのは、国民に政界再編と年内解散を悟らせないようにするための、すなわち手の内を読ませないようにポーカーフェイスしている倍晋三の謀計なのではあるまいか。

「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16025915.jpg一方、共産党は16日に「憲法九条改悪阻止闘争本部」を設置、志位和夫が自ら本部長に就任し、党の総力を挙げて改憲阻止に取り組む決意を示した。このニュースがマスコミ各社に取り上げられ、「闘争本部」という言葉が話題となったが、「闘争本部」という言葉が過激で時代錯誤だという誹謗がネット右翼から飛び、TWに流れ、それに一部の若い左翼が同意を表明するという事件が起きた。その若い左翼は、「闘争本部はないでしょ」「自分として嫌。 語感として受け付けない」などと言っている。正直な気分を表明したもので、彼女自身はその反応が妥当なものだと確信している。すなわち、「闘争本部」などというアナクロでネガティブな語感の言葉を、憲法を守ろうとする側が看板に掲げるのは政治的にマイナスだと捉えていて、その判断に自信を持っていることが窺える。自分の意見が一般常識に即したもので、多くが支持するはずの言説だという認識があることが分かる。まず、最初に彼女に理解を促さないといけないのは、左翼が右翼の主張に同調し、共産党が始めた護憲の取り組みを出鼻で挫く批判をしたら、それが政治的にどのような効果や影響に繋がるかという基本的な問題だろう。政治は多数の奪い合いであり、常識の奪い合いである。常識に基礎づけられた主張が多くの支持を得る。

「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16031199.jpgそのことが了解されていれば、右翼の主張に簡単に乗ることは警戒すべきという態度が心得として持たれるものだろう。すでに9条をめぐる政治戦の攻防は始まっている。政治戦は情報戦であり、世論を動かす戦いだ。共産党が掲げた「闘争本部」の語を見て、右翼が攻撃の材料に論うのは当然で、9条を守ろうとする側がそれに反応して同調するのは敵側の思うつぼだ。罠に嵌まる行為だ。もし、正直に「闘争本部」の語に違和感を感じたとしても、護憲の側にいる者はそれを公共空間で言論することは禁欲しないといけない。改憲策をキャリーする右翼を利する方向に導かれるからである。言論の政治的効果と言論の自由の行使を秤にかけ、慎重に比較衡量して行為を選択しないといけない。護憲か改憲かの政治の地上戦が始まっていて、護憲軍に属する者は自らを兵士として自覚し利敵行為を戒めなくてはならず、右翼に得点を与える軽率な発言や行動は慎む必要がある。これが第一点である。次に第二点として、2年前に沖縄に行ってシュワブゲート前に座り込んだときの経験だが、県庁前から辺野古に向かうバスの中で、島ぐるみ闘争の事務局の人が、「高江の闘争」「闘争の教訓」という言葉を何の衒いもなくポンポン口にする場面があり、それを耳にして、懐かしく感じ、新鮮な感動を覚えた記憶がある。

「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16032427.jpg本土では「闘争」という言葉を左翼が使わなくなった。昔は「闘争本部」はよくあるもので、何か大きな政治戦があるときは、総評が「闘争本部」や「国民運動本部」を作り、総評議長が本部長になって気勢を上げ、NHKの7時のニュースで大きく報道されたものだ。右翼と同じ理由で「闘争本部」の語を嫌悪する若い左翼に訊きたいが、それでは、「闘争本部」に代わる言葉は何なのだろう。どういう言葉に置き換えれば納得と満足が得られ、積極的な政治表象に変わるのだろう。「運動本部」だろうか。共産党がそれを「運動本部」とせず「闘争本部」として語気を強めたのは、そこに敵があり、勝ち負けがあるからだと思われる。運動するだけではだめで、闘って勝利しないといけないという性格の政治だからである。どうやら「闘争本部」の語への不快感を言った若い左翼には、その批判を正当化する思想性があるように見受けられる。それは何かというと、彼女にとって、「闘争」の語を頻回に使うのは、戦後の旧来左翼の体質や特徴であり、ひたすらネガティブで異端的な政治属性で、古臭く時代遅れのもので、冷戦で否定され負け犬となった立場で、唾棄していい価値のないものなのだ。彼女の視線から見て、「闘争」の語に執着するのは古い戦後左翼で、自分とは違う生きもので、右翼が叩くのと同じようにバッシングしていい存在なのだ。

「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16033934.jpg彼女が、戦後左翼とは異なる自己の立場の正当性を確信するのは、そこに小熊英二があり、内田樹と上野千鶴子があり、しばき隊の指導性と小宇宙があり、ジェンダーとマイノリティとカルスタとポスコロの脱構築主義の王国の繁栄があり、過去の古い左翼と断絶し、それを超克した地平に自分は立っているという思想的根拠が意識されているからだろう。最近の若い左翼は脱構築のイデオロギーに洗脳されきっていて、自分たちを戦後民主主義と60年安保闘争の末裔だと思っていない。戦後民主主義を否定する脱構築のドグマを頭から信じこみ、戦後日本の営為と達成をどこまでも不毛で無意味なものだと決めつけている。白井聡のバカの一つ覚えである「戦後からの脱却」を経文のように唱え、神棚の護符のように奉じている。われわれが法学部に入学したとき、1年生の基礎法で学んだのは別冊ジュリストの「憲法判例」で、戦後の日本人がどうやって基本的人権を獲得したのかの生々しい闘争史だった。テキストにあった逐条の判例解説は、最高裁判決までの人間の闘争の記録だった。あわせて、岩波文庫のイエーリングの『権利のための闘争』が必読文献として指導された。「闘争」という言葉を使わず、どうやって自らを基本的人権の歴史の中に位置づけられるのだろう。基本的人権は、そもそも近代ヨーロッパの市民革命で人類が手に入れたものだ。

「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16060509.jpg彼女に言いたいことは、「闘争」の語を自ら言葉狩りしてゴミ箱に棄てることは、まさに共謀罪の内心の自由を剥奪されることと同じだということである。オーウェルの『1984年』に登場する「ニュースピーク」と同じだということだ。「闘争」の言葉には旧来左翼の過激性と不毛性の臭いがあるから使うのをやめましょうというのなら、同じ論理で、「革命」という言葉も使うのをやめましょう、「社会主義」や「資本主義」も古い左翼臭がするからやめましょうと、そういうことになる。今の脱構築左翼の傾向と感受性はそうなっている。自らの知識や認識のカテゴリーから、闘争の語を消し、60年安保を消し、革命を消し、社会主義を消し、資本主義を消し、マルクスを消し、ロシア革命を消し、丸山真男と大塚久雄を消している。家永三郎を消している。自らの前に誰がいて、どんな思いで「権利のための闘争」をしたかも忘れ、関心を向けず、彼ら先人の言葉も引き継がず、ただ、中野晃一やしばき隊が反安倍を言ってデモせよと扇動するものだから、反安倍の仲間の中に入ってプロトコルを合わせている。そのうち、「基本的人権」の語は左翼的だからやめようとか、「市民」も左翼的だからやめようとか、「抗議」とか「抵抗」の言葉も語感が悪いからやめようとか、言語系の座標軸が右にどんどん寄り、左翼がさらに言葉狩りを激しくして、自らの拠って立つ母なる故郷を忘れて行くに違いない。


「闘争」を嫌悪する思想性 - 言葉狩りして自ら武装解除する羊化左翼_c0315619_16035409.jpg

by yoniumuhibi | 2017-05-19 23:30 | Comments(4)
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Commented at 2017-05-20 01:41 x
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