夏が来れば思い出す - 自然の循環の中に生きる日本人が原点と向き合う

c0315619_16562807.jpg憲法9条改正についてのNHKの世論調査が15日夜に出た。自衛隊を明記することに、「賛成」が32%、「反対」が20%。読売とほぼ同じ結果になっている。先週のマスコミ報道では、石破茂の反対論や船田元の消極論が大きく紹介され、また、安倍晋三の「読売新聞を読め」の傲慢な発言に対してマスコミが反発していたため、その余波で賛否が拮抗する図になるかと予想したが、残念ながらそうした数字にはならなかった。朝日の世論調査も16日の朝刊で発表され、「自衛隊の存在を憲法に明記する9条改正」について、「必要がある」が41%、「必要がない」が44%。こちらの方は予想どおりとなった。読売とは質問の設計を変えるだろうし、結果も異なって出るだろうと推測していたところ、そのとおりの結果となった。本来、NHKは読売と朝日の中間の世論を反映していいし、そういう通念(正常性バイアス)でNHKの世論調査の中立性や信頼性を期待するのだけれど、今回はそうした結果にはならなかった。それ以上に、今回の世論調査で失望させられたのは、NHKも、朝日も、内閣支持率が高いまま安定を維持した事実で、「読売新聞を読め」の暴言の影響は全くと言っていいほど表れなかった。



c0315619_16581474.jpg3月下旬、森友問題の騒動が最も大きく盛り上がった頃、石破茂がTBS時事放談に出て、安倍昭恵に説明責任があると言い、放送前からネットのニュースで注目され、週明けに発表される各社の世論調査に影響を与えるかと期待されたが、支持率が下がらず拍子抜けさせられたことがある。安倍晋三の支持率は盤石で固まっている。NHKの9条改正についての結果は、安倍晋三の高支持率と無関係ではないのかもしれない。安倍晋三の独裁政治を所与のものとして容認し、何も不具合を感じなくなり、神経が麻痺し不全になっている国民の姿がある。唐突な9条改正について、「読売新聞を読め」の暴言について、テレ朝は多少とも批判的に報じたが、NHKはそうした報道はしなかった。NHKの世論調査の数字は、NHKの報道姿勢そのものであり、ヘーゲル的に言えば、NHKの放送を見ている視聴者の意識がNHKと即自無媒介結合していることを示している。国民一般の中に安倍独裁との緊張感がなく、対自的な契機がない。独裁政治の環境を受容している。水中でえら呼吸していた両生類が陸上に出て肺呼吸に変わるように、日本人は自らの脳細胞を変え、政治の感性と判断をつかさどる神経系器官を変え、ファシズムの環境に順応して生息する生きものに変わった。

c0315619_16582592.jpgテレビでは、安倍晋三の9条改憲についての議論が続いている。昨夜(16日)は、夜8時からのプライムニュースに西修と井上達夫が出演し、9条は欺瞞だ、9条を削除せよ、徴兵制が必要だと右翼の改憲論を吠えていた。また、夜10時からの深層NEWSでは、船田元、北側一雄、枝野幸男、小池晃の4人がスタジオに揃い、この問題の是非や今後の展開について議論をしていた。討論で出た論点として注目を惹いたのは、枝野幸男が問題提起したところの、もし国民投票をやって否決の結果が出たら自衛隊はどうなるのか、国論が賛否真っ二つに分かれた形で自衛隊に関わる憲法改正の国民投票をやっていいのか、ブレグジットも当初は反対多数が予想されていたが逆の結果に出た、という主張で、これは批判として説得力のあるものだ。船田元も北側一雄も肯いていた。そのとおりだろう。前から述べてきたことだが、仮に国民投票で過半数を得て9条改正が決まったとしても、賛否が55%と45%だったり、60%と40%の比率だったら、その憲法改正の正統性に瑕疵が付着してしまう。もう一度国民投票をやったら違う結果になるかもしれないという疑念が生じかねず、政治的に不安定な状況になってしまう。英国のように国論が二つに割れ、国民の間に分断と亀裂が深まって国益が損なわれる事態になる。

c0315619_16583936.jpg自衛隊にその政治責任が負わされてしまう。こうした問題は国民にとって不如意であり、また、シロかクロかをはっきりさせることを日本人は忌避する傾向が強い。枝野幸男が提起した点は、自民党内でも懸念事項となって論議され、9条改憲断行を躊躇する要因となり、さらに公明党との合意を詰める上でも難題となるだろう。ただ、だからと言って、枝野幸男の指摘が効を奏して、安倍晋三の目論見が前回(非常事態措置)や前々回(96条の3分の2要件)のように簡単に挫折するかというと、そうではなくて、今回は改憲策動が政界再編とセットになって戦略化されている。仮に、憲法審査会で民進党の合意をとることが発議の必要条件であるとして、民進党が乗って来ないから発議に持ち込むのは難しいだろうという「安心理論」の想定があるとすれば、それは楽観的に過ぎる認識だと言えよう。民進党を解体させればいい。民進党が崩壊して影も形もなくなってしまえば、その条件を埋める必要はなくなる。枝野幸男の議論は、「改憲には賛成だが、安倍内閣の下での改憲には反対」だという岡田克也の立場と基本的に同じであって、「9条改定に反対」という護憲論の主張ではない。中身についての是非はどうなんだと正面から問われれば、賛成だと答えるしかない。枝野幸男自身が4年前に改憲私案を発表し、安倍晋三と同じ内容の9条改正案を提案しているのだから。

c0315619_16585043.jpg小池新党の立ち上げと同時に野党再編の激動が起き、民進党が分裂・解体する政変が到来したときは、そのとき、枝野幸男が憲法9条についてどう言っているか分からない。16日の朝日の記事(3面)を見ると、こんな見方が示されている。「護憲派と改憲派を抱える同党は、昨年3月に民主党と維新の党が合流して結党したことで、『寄り合い所帯』の性格が強まった。執行部は両派に配慮した党運営を強いられており、最も対立を呼びかねない9条論議には慎重だ。首相提案に対しても『相手の土俵には乗らない』(党幹部)との構えをみせる。ただ、9条に自衛隊を位置づける『加憲』は、前原誠司元外相が昨秋の代表選で主張した内容。党内で賛同する議員が少なくない。民進の苦戦が伝えられる7月の東京都議選の結果次第では、蓮舫代表の交代論もささやかれる。蓮舫体制が続く限りは『安倍改憲』に反対姿勢を維持できたとしても、『代表選になれば9条改憲が最大の争点になる』との声も出ている」。一般論の政界記事だが、実際にこのとおりだろう。前原誠司が3項で自衛隊を位置づける9条改正案を掲げて代表選を戦ったのは、それで勝てると票を計算した上でのことだ。7月2日の都議選開票の後、民進党内で9条の論議が始まり、右派が封印している本音を言い始め、政界再編の方向と輪郭をくっきりさせて行くだろう。政治家は局面が変われば政見を変える。詭弁を弄して巧みに変節を言い繕う術を持つ。

c0315619_16590668.jpg私は、今の野党が「立憲主義」を看板にして、安倍晋三の改憲に反対姿勢であることに楽観していない。それがいつまでも続くと想定していない。政治家の各自が、原理的に9条と自衛隊の問題に選択を迫られ、正面から態度決定しなくてはいけないときが来ると思っている。私が頼りにするのは季節で、6月から8月の慰霊の季節になれば、日本人の心は自然に反戦の方角に向くということだ。幼少のときの空襲で体に傷を負った高齢者や、親を失って苦労して生きてきた普通の人が、口を開き始め、戦争を知らない者に戦争を教え始める。人々の心を神聖な何かに近づけていく。愛子内親王が広島で学んで作文に書いた真理を悟らせる。ジブリの『火蛍るの墓』がテレビで上映され、親と子が一緒にそれを見て考える。それは、日本がどういう国かという問題に一人一人が向き合う時間だ。一年に一度、日本人は集合教育の機会を持って平和主義の演習をする。その夏の教育は、それまでの、政治家やマスコミ論者が喋々していた俗悪な9条改憲論を一瞬で相対化してしまう。この10年ほど、ずっとそういうことが続いてきた。憲法記念日を機に右から改憲論議が起こり、上からのキャンペーンが世論を動かしながら、夏の慰霊の季節になると、再び国民が平和主義の神に祈りを捧げ始め、両陛下と同じ内面をエミュレートして平和憲法に頭を垂れるという態度に変わった。

今年は、都議選と政界再編の政治が待ち受けているけれど、いつもの夏のように、日本人が平和教育で心を浄め、9条の原理に即き直し、70年前の純粋な誓約と立志の精神を甦らせて欲しいと願う。平和主義者として決意を新たにするということであって欲しいと思う。

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by yoniumuhibi | 2017-05-17 23:30 | Comments(2)
Commented at 2017-05-18 01:23 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 長坂 at 2017-05-19 11:43 x
もしラッキーで後20年、80まで生きられるとしても、文在寅の5.18 民主化運動37周年記念辞の様なスピーチを、日本で聞く事はないだろうなと昨日改めて思いました。「不義に妥協しない怒りと正義」「国の主人は国民である事の叫び」引用したい所は沢山あるのですが。。。嘘と隠蔽と忖度(口利き)が、何時の間にか正義や公正より価値のあるものになってしまった日本で、平和主義を謳う憲法も手放したら何が残る? 「そもそも」総理大臣は 5.3 に文大統領の様なスピーチをして、何故9条なのか、66条の文民にこだわるのか説明すべき。残念ながら今年の8.6 8.9 8.15 も例の官僚の作文を頭を上げる事もなく「粛々」と棒読みでしょ。


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