安倍晋三の9条改正策と「改憲翼賛会」の悪夢 - 各野党の9条論

c0315619_16432018.jpg5月3日の憲法記念日に、安倍晋三が改憲派の集会にビデオメッセージを寄せ、憲法改正の具体案を提起、条項と日程をコミットした。9条に3項を加えて自衛隊を明記し、2020年に施行すると言う。安倍晋三が本格的に改憲の政治に出て来た。同日、読売は1面トップでこの内容を大々的に報道、安倍晋三は連休前の4月26日にインタビューを収録していて、計画的にこのニュースを読売に発信させていた。憲法改正をめぐる政治戦は新たな段階に入り、護憲派は正念場を迎えたと言っていい。改憲内容の絞り込みの中身は、私が予想していたとおりで、従来から警告してきたところの本丸攻略の戦法だ。2020年の施行というのも、安倍晋三の任期から計算すれば、そこから先の日程はなく、任期中に憲法改正を実現するのが本人の悲願であり、絶対的使命だから、このタイミングで勝負に出た点は唐突とは言えない。私はずっと、5月以降は改憲の政局となり、それが都議選での小池新党ブームと連動し、さらに改憲にフォーカスした政界再編に繋がると予測を述べてきた。共謀罪の政局と改憲の論議が重なり、既存政党(野党)が右翼的に再編される危機の状況になるだろうと言ってきた。安倍晋三の今回の改憲ローンチの勝算は、政界再編(=改憲翼賛会)をプログラムに織り込んでいる点を見抜く必要がある。



c0315619_16452432.jpg4日に上がったNHKの記事を見ると、山口那津男が、「安倍総理大臣は意欲的な提案をした。これから国会で議論され、国民の理解を伴って合意が作られることが望ましい」とコメントしている。この発言の意味についてNHKは、「公明党は、野党第1党の民進党の理解を得ながら、幅広い合意の形成に努めるべきだとしてい(る)」と解説している。NHKの見方のとおりで、改憲翼賛会が安倍晋三の目論見どおりに形成されるかどうかは、民進党の今後の動向にかかっている。幹事長の井上義久と共に党内左派で婦人部に近い山口那津男は、本心では改憲に反対なのだろうが、安保法制のときと同じで、安倍晋三に強引に引っ張られれば抵抗せず付き従うという態度を貫き、政界再編で民進党が崩壊すれば、簡単に9条3項加憲(=自衛隊明記)を容認して国民投票に臨むだろう。そういう意味の発言に読める。3日の護憲派の集会に出た蓮舫は、「安倍総理大臣は、立憲主義を踏みにじって(いる)」と言い、安倍晋三の「改憲宣言」に反発する素振りを見せているが、その口から「憲法9条を変えてはいけない」という一言は発せられていない。「野党共闘」の立場と演出からの、役割演技でマスコミの前で発した言葉のように受け取られる。

c0315619_16453524.jpg6日の時事の記事では、都議選に惨敗した後で「蓮舫降ろし」が党内で始まると観測、「蓮舫氏と、改憲に前向きな保守系との溝は深まりそうだ。保守系には、共産党との共闘路線に対する不満も根強く、党内対立の火種となっている」と書いている。これは、時事自身が安倍晋三の手先となって民進党に揺さぶりをかけている工作の図だが、実際にこのとおりの展開になる可能性が高い。3月に突然、小池百合子と公明党との間で政策合意が組まれ、東京都の公明党と自民党との間の連携解消が発表されたとき、何が起きたのかと驚いたし、その真相と底流に関心が向かったが、私が直観したのは、動きの裏に安倍晋三の思惑があり、憲法(改憲)が標的に設定されているのではないかという伏線だった。その頃から、細野豪志が改憲私案を出すという噂も出回っていた。一瞥して、無関係に見えるこれらの動きは、裏のコミュニケーション・チャネルで密かに繋がっていて、公明党を9条改憲へと導き、大きな改憲翼賛会を作るという政治構想への布石や脈流なのではないか。現時点で、有明の護憲派集会で手を握り合った四野党(共産・民進・自由・社民)は、表向き、安倍晋三の「9条改正」を論外だと拒絶している。だが、都議選で民進党が壊滅すれば、そこから始動する政治があるのであり、憲法についても全く新しい局面が立ち現れる。

c0315619_16454903.jpg都議選後に蠢動すると目されている議員の一人に、民進党右派の前原誠司がいる。昨年9月の民進党代表選に立候補した際、「1、2項は変えず、3項に自衛隊の位置付けを加えることを提案したい」と憲法政策を公約、党内と世間に一石を投じた。この持論は、3日に安倍晋三が打ち上げた改憲内容と同じだ。安倍晋三は、前原誠司がこうした改憲論を提起した事実を踏まえて策を立てている。憲法論の中身としては、前原誠司が安倍晋三を拒否する理由はないだろう。また、松野頼久とか、江田憲司とか、柿沢未途とか、維新から民主党に合流した面々も、安倍晋三の改憲提案と自らの立場に齟齬はないだろう。それは、岡田克也や枝野幸男も同じだ。そもそも、民主党の2005年の「憲法提言」の中に、「未来志向の新しい憲法を構想する」とコミットし、具体論として自衛権を新たに明記すると書かれていて、この点は今回の安倍晋三と同じであり、現行憲法を守るという共産党の方針とは異なっている。党内で憲法政策を仕切ってきた枝野幸男は、2013年の文藝春秋10月号に「憲法私案」を発表、軍事力の保有、集団的自衛権の行使、国連のもとでの多国籍軍への参加を容認するという大胆な一歩を踏み出した。この内容は、安倍晋三の提案よりもさらに大きく9条を変えていて、言うならば、安倍晋三の提案と自民党の9条改定案の中間に位置する性格のものだ。

c0315619_16460058.jpg小沢一郎の自由党にも目を向けよう。小沢一郎は、前の自由党の党首だった1999年、やはり文藝春秋誌上に「日本国憲法改正試案」なるものを発表している。18年前の文書だが、中身を見ると、今回の安倍晋三の提案とそっくり同じだということが分かる。PDFがネットに上がっていて、そのP.5からP.6に9条改正の部分が記されている。1項、2項はそのままにして、3項を加え、「前二項の規定は、第三国の武力攻撃に対する日本国の自衛権の行使とそのための戦力の保持を妨げるものではない」と明記、自衛権の行使と戦力の保持を規定していた。安倍晋三の提案があまりにもこれと瓜二つだったため、ネットの小沢シンパからは「パクられた」という批判が上がったほどだ。文章の中には、「占領下に制定された憲法は無効」とか、「戦後の日本のタブーに異議を申し立てる決意」とか、さらには「天皇は日本国の元首だ」などという表現があり、自民党憲法草案とほとんど同じ趣向ではないかと思われる主張が満ちあふれている。2009年の政権交代の前から、この10年ほど、小沢一郎はすっかり左派の政治家になり、表象が一変して現在に至っているが、18年前はこのように毒々しい右翼の政治家の領袖だった。果たして、現在の小沢一郎の憲法観はどうなっているのだろうか。昨年後半の頃からか、前原誠司と小沢一郎の接近が伝えられている。

c0315619_16461281.jpg前原誠司が代表選で打ち出したところの、第3項で自衛隊を位置づけるという発想は、小沢一郎と同じであり、ノウハウを借用した可能性を否定できない。関連して見逃せない動きとして、社民党の又市征治が4月11日に、「改憲そのものを社民党として否定はしない」「国民的な合意が得られ、変えた方が良い項目があれば変えた方が良い」と発言した件がある。9条改正は否定しているが、その他の中身なら妥協できるという柔軟姿勢を示した。護憲という原則的立場の貫徹ならば、共産党よりも強硬な印象があった社民党が、あっさり改憲容認に転じ、狼狽と脱力を覚えさせられたが、11日の前には前兆があった。6日に社民(又市征治)・民進(輿石東)・自由(小沢一郎)の3党の大物が会談し、3党合流を含めた意見交換があったことが報道されている。3党合流の新党結成に意欲的なのは小沢一郎で、おそらく、小沢一郎から、合流の障害は社民党の護憲方針だと言われたのではないか。都議選と小池新党ブームを睨んで、反安倍の野党側に生き残りのリアクションが発生し、共産党を外した形での左側の再編が胎動している。普通に考えれば、泥船の民進党が崩壊して右派がごっそり小池新党に抜けた後、左派を回収する受け皿が合流新党の救命ボートという図になるだろう。問題はこの新党の憲法観で、特に憲法9条の考え方が不明だという点だ。

社民党が転び、9条改正を受け入れて再編新党に合流する可能性も否定できない。そうなると、共産党を除く全ての政党が9条改正に賛成となり、安倍晋三の改憲策に反対を唱えるのは共産党しかいないという配置図が出来上がってしまう。そうなると、国民投票で勝てない。



c0315619_16462872.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2017-05-08 23:30 | Comments(1)
Commented at 2017-05-08 20:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


カウンターとメール

最新のコメント

週刊新潮、私も購入。文芸..
by 愛知 at 03:38
(2の2) 豊田真..
by 七平 at 00:02
(1の2) 以前、..
by 七平 at 00:00
>究極のポピュリストで、..
by liberalist at 02:53
自民党の河村元官房長官が..
by ポー at 19:44
twitterに豊田の桜..
by ポー at 15:25
地方在住者で、東京都民で..
by きく at 00:19
橋下徹が安倍内閣に入った..
by エドガーアランポー at 17:57
今度の都議会選挙は小選挙..
by liberalist at 00:03
一番問題なのは、逮捕状ま..
by 私は黙らない at 07:13

Twitter

以前の記事

2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング