今村復興相辞任の政治 - マスコミを動員しての一夜の火消しと情報工作

c0315619_18173099.jpg今村雅弘の大臣辞任の件。収拾の動きがやたら速く、マスコミ報道の流れが急だった点が奇怪な印象を残した。二階派のパーティが始まったのは午後5時頃だろうか。報道を見ると、懇親会の前に講演が二つ組まれ、そのうちの一つが今村雅弘の担当で、20分間、復興と防災の話をしている。もう一人が沖縄北方相の鶴保庸介で、おそらくこちらも20分間が割り当てられていたはずだ。領袖の二階俊博の挨拶もあっただろうから、懇親会に移ったのは午後6時すぎ。首相動静で安倍晋三の動きを追うと、午後6時31分に宴席に顔を出すべく官邸を出発、同37分にニューオータニ着、B1宴会場階の「鶴の間」ですぐに来賓挨拶し、同51分にホテルを出ている。喋った時間は5分足らずだろう。が、安倍晋三が金屏風の前に立った頃は、もうネット上には「再び失言」の一報が載って騒ぎになっていた。NHKの7時のニュースでは、午後6時すぎの撮影と思われるが、会場付近のトイレの場所で今村雅弘が記者に囲まれて陳謝する場面が流れた。今村雅弘の話を聞いた誰かが、安倍晋三に連絡を入れ、マスコミ各社の記者にも指示し、今村雅弘を囲ませたものと推察される。一報を聞いた安倍晋三が、すぐに二階俊博に電話で更迭を伝え、その足でパーティの壇上に臨んだのだろう。



c0315619_17580267.jpgNHKの7時のニュースの後半にこの件が報道された後、午後8時40分頃だったと思うが、テレビの画面に「辞任の意向」の速報テロップが流れた。昨日25日はプライムニュースがお休みで、代わりにマツダスタジアムの広島-巨人戦が放送されていて、その試合が菅野智之の完封で短時間に終わったため、他のチャンネル(BS朝日)を回して暇つぶししていたら、画面の上に速報の文字列があっさり流れてきた。午後8時45分からのNHK首都圏ニュースでは、「辞任」の報道に被災地の街の声が入り、仙台駅のペデストリアンデッキを歩く「市民」が二人登場、事件について反発と遺憾の感想が述べられた。気仙沼の「市民」も出ていた。さらに午後9時の冒頭から伝えたNW9では、浪江町と他にもう一か所あったと思うが、福島県内の仮設に暮らす被災者の怒りの声が何本か撮られて映像が挿入されていた。何と手回しのよい、NHKらしい早業の報道だろうと驚かされる。間違いなく言えるのは、ニュース速報で「辞任」が流れる前にNHKが動いていて、支局の者が被災地に入って住民の声を取材していたことだ。仮設の被災者に「憤激」を言わせ、カメラで撮り、絵と音を報道局で編集し、午後9時放送のNW9のトップに出すパッケージを完成させている。

c0315619_17582674.jpgだから、NW9で出て来たあの仮設暮らしの何人かは、私より早く、テレビの速報で「辞任」を確認した一般国民より早く、辞任の事実を知っていたことになる。つまり、NHKの報道の演出だ。取材にはクルーが車で動く必要がある。記者とカメラマンと照明係が機材を持って現場に行かないといけない。仮設の住民にもプライバシーがある。いくらNHKでも、飛び込んですぐ撮影録音というわけにはいかない。事前に了承を得て訪問している。段取りがある。支局に詰める職員が、渋谷の報道局から「絵を撮ってこい」と緊急指示を受けたのは、おそらく午後7時半頃だろう。指揮系統から考えれば、その前に官邸から渋谷に指示が入り、8時45分からの首都圏ニュースと9時からのNW9で流せ、必ず被災地の声を入れろと任務が厳命されている。菅義偉だろう。テレビで速報が流れる1時間前に、「辞任」のテレビ報道が制作され作業が進んでいた。マスコミ業界の者たちには、午後7時頃の段階で、今村雅弘の「辞任」は周知され、既成事実になっていたのである。当の本人が「辞任の意向」を表明する前に、官邸がマスコミに「辞任」を決定事項として拡散し、既成事実として固め、テレビ報道での伝え方を工作している。情報工作は「被災者の声」だけではない。

c0315619_17584072.jpgNHKの首都圏ニュースでは、共産党の小池晃と公明党の大口善徳がコメントする絵が出た。NW9では、公明党の大口善徳(使い回し)と民進党の福山哲郎と共産党の志位和夫が出た。小池晃と大口善徳のコメントでは、二人はまだ「辞任」の事実を知っていない。二度目の暴言が飛び出したという事件を受けての反応である。時間的に当然だと言える。だが、これの映像は、どう考えても、マスコミが官邸から指示を受けて、報道の演出に使うために緊急で取材されたものだ。NHKの記者から小池晃に電話が入り、こういう問題が起きたので所感をお願いしますと要請があり、すぐに小池晃が応じてカメラの前に出ている。撮った場所は代々木の党本部だろうか。大口善徳の絵は国会の部屋の前だった。いかにも演出的なコメントで、「言語道断で許しがたい、出処進退を考えるべきだ」と激高する場面を見せている。あの絵は、おそらく菅義偉が漆原良夫に連絡を入れ、NHKに撮らせるから大口善徳にこう言わせてくれと依頼し、漆原良夫が了解して手配したものと憶測される。大袈裟な演技だった。公明党幹部というのは、通常、あのような感情剥き出しの態度はしない。国対委員長の大口善徳の昨夜の異例の論評は、代表の山口那津男も、幹事長の井上義久も、事前に承知していないだろう。

c0315619_17585202.jpg与党の公明党が、事情はどうあれ、自民党や官邸の意向も確認せず、簡単に自民党閣僚について「出処進退を考えるべきだ」などと、それも暴言からわずか1時間後のNHKの取材で言えるはずがない。それができるのは、立場上トップの山口那津男だけだ。大口善徳の発言は情報工作の一部で、「与党内からも厳しい批判の声が上がった」という事実材料を作るための入念な政治である。きわめて周到に、そして素早くやっている。安倍晋三の目論見どおりの政治が手際よく形作られ、マスコミが手足となって機敏に動き、安倍晋三が意図する「絵」作りのために与野党の政治家が「役者」になっている。仕上げに登場したのが後藤謙次で、報ステでのコメントは菅義偉に言い含められたとおりの内容だった。すなわち、事の重大さを「安倍総理」がよく認識して迅速に事態収拾を図ったと評価し、当夜の安倍晋三の即断即決を賛美して強調するヨイショ解説。内閣支持率に影響がないようにと意をこめた、菅義偉と後藤謙次による姑息な火消しの世論操作が窺われる。後藤謙次は安倍晋三の任命責任には触れなかった。本来なら、マスコミはここで安倍政権を叩くのだが、後藤謙次は逆に、「被災地への思いの強い安倍さん」を宣伝する機会にスリカエた。

c0315619_17590905.jpg今回、今村雅弘はマスコミから袋叩きされている。袋叩きされて当然で、復興相でありながら被災者を蔑ろにする発言は即刻辞任で当然だが、しかしそれなら、辺野古移設に反対する沖縄県に対して、「ポジショントークするような向き」などという不埒な言葉(11日)で蔑んで傷つけた沖縄担当相の鶴保庸介も同罪だし、同じ重さの責任が問われて当然だろう。二度目だから今村雅弘は断罪だと言うのなら、鶴保庸介も二度目であり、昨年11月には、例の(大阪府機動隊員の)土人発言は差別ではないなどと妄言を発して沖縄県民から怒りを買っている。今回のマスコミによる今村雅弘叩きは、安倍晋三の指示によって動いている政治で、悪玉を今村雅弘一人に設定し、そこに責任を集中させ、ガス抜きの気分的浄化の術策で安倍政権を持ち支える政治だ。が、いずれにせよ、甘利明以来、1年2か月ぶりにようやく安倍政権で閣僚辞任の幕を作ることができた。この「決壊」と「達成」の政治的意味は小さくないだろう。学芸員を「がん」呼ばわりして侮辱した山本幸三についても、次に失言騒動を起こしたら即辞任になる。稲田朋美についても次に疑惑が出たら辞任へ追い込める。白紙領収書の問題を抱えた高市早苗も同じだ。共謀罪の国会審議が佳境を迎えて、閣僚は迂闊なことを言えなくなり、安倍政権は守勢の局面に入ることになる。

昨夜のニュースで、福島の仮設住宅に暮らす被災者の姿を久しぶりに見た。今年の3.11のときは、テレビがその姿を映さなかった。彼らの姿こそ、今の日本の政治の真実をわれわれに直截に覚醒させるもので、永田町と一般国民、東京のエリートやマスコミ関係者と普通に暮らす国民との関係を、そのコントラストと実相をよく教えてくれるものだ。福島の仮設に暮らす人々こそが、国民の生活の声を代弁し、政治に対する不満と政治の矛盾をありのまま代弁している。今後、テレビクルーが福島の仮設に通う機会が増えることを期待したい。


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by yoniumuhibi | 2017-04-26 23:30 | Comments(0)


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