安倍晋三の支持層の岩盤 - リアルな現実の直視と真に有効な対抗策の発案を

c0315619_14431735.jpg4月2日のサンデーモーニングで、大宅映子が森友問題のコメントで次のように言っていた。「もう2か月になるのに、同じところをぐるぐる回ってばかりで、ちっとも核心に踏み込まない」。この意見に同感で、私の気分を代弁した言葉だと膝を打った。同じところをぐるぐる回ってばかりだ。時間だけが無駄に経っている。大宅映子の苛立ちはよく納得できる。普通なら、2か月も経てば、もう特捜部が動いて誰かが逮捕され、強制捜査のガサ入れの絵があっておかしくないのである。本丸である政治家に迫ることができなくても、人身御供の官僚は逮捕されて、検察が国民にエクスキューズの形を作る。憤慨する国民世論を宥めるべく、司法が形ばかりの「正義」の演出に動き、それなりに疑獄事件の始末をつけて幕引きしてきたものだ。ロッキード事件やリクルート事件や佐川急便事件を見てきたわれわれの感覚では、大宅映子と同じ不満と鬱屈となる。が、そうなるはずのものがならない。1年前に騒動した甘利明の収賄事件もそうだった。泰山鳴動してネズミ1匹もなし。司直は動かず、事件の解明はなく、容疑者は容疑者とならず、誰も何も責任をとらされないまま沙汰止みで終わった。今は昔と違うのである。安倍晋三の独裁政治の環境では、大宅映子の常識が寸毫も通用しない。



c0315619_14435288.jpg何がどう過去と違うのか、その真相を探ろうとしたとき、先週(3/27-31)の世論調査で安倍内閣の支持率が高止まりしたという事実は、無視したり軽視したりすることのできない重要な問題だと思われる。普通なら、ここで内閣支持率が落ちるのである。週末の世論調査が週初に発表され、例えば、55%だった支持率が10ポイント下落して45%になり、永田町に激震が走り、与党内の動揺と狼狽が夜のテレビ報道で拾われ、野党側の攻勢の気運が高まり、昭恵の国会招致必至という流れに向かうのだ。ネットやマスコミの素人の床屋政談では、今の自民党の中に非主流派がないからという繰り言がよく聞かれるけれど、非主流派というものは常に潜在的に存在するのであり、ポスト安倍の野心を持った者は確実にいる。石破茂がそうだし、小泉進次郎、林芳正、野田聖子がそうだ。この者たちは雌伏しつつ機会を窺って風見鶏しているのであり、内閣支持率が55%から45%に急落する変化が確認されれば、必ず口を開いて官邸に造反したことだろう。森友疑獄事件を契機にポスト安倍が活性化する事態になり、そのことが政界の権力構図にプルーラルな要件と展望を与え、さらに内閣支持率が下がる方向に導いたに違いない。内閣支持率が高止まりしたから、ポスト安倍たちは口を噤んで静観した。

c0315619_14451449.jpg内閣支持率が高止まりする現実について、われわれはもっと真摯な態度で考察しないとけない。私は、内閣支持率高止まりの原因について、受け皿がないからだと分析して説明を与えている。それは、今の左翼がキャリーしている「野党共闘」が受け皿になってないという意味でもある。この認識をぜひ反安倍の陣営全体のコンセンサスにしていただきたいと願うが、この指摘と主張は、決して安倍晋三の独裁に対して白旗しかないという諦めを言っているものではない。結論を簡単に言えば、「野党共闘」に替わる別の対抗軸を立てればよいという提案を置いているのであり、永田町の外からリベラル新党を立ち上げてブームを起こす戦略を構想せよと言っているのである。前回、3月31日の記事は、そうした趣旨と提起のものだったが、誤解した読者がいたようだ。私が現状を踏まえた建設的な提案を試みようとすると、必ずこうして左翼から悪意の曲解と揶揄が返ってくる。なぜ左翼がこうした反応になるかというと、現在の路線である「野党共闘」の無謬性を信じこんでいて、そこに固くコミットしてしまっているからだ。「野党共闘」を絶対的なプラットフォームだと信仰しているからだ。そして、その主観的態度の裏腹として、安倍晋三を支持する右翼の岩盤の厚さについて過小評価してしまっているからだ。

c0315619_14465173.jpg前回の記事で、長江上流の三峡の峻険な両岸を今の日本の右翼と左翼の隔絶に喩えたが、右翼も左翼も自分の見たいものだけを見、信じたいものを信じるという風潮と病癖が甚だしく、左翼がどうしようもなく視野狭窄と単純思考に陥っている。本来、知的な観察力と判断力を持ち、自己と現実を客観視して捉える点では右翼に優越しているはずの左翼が、その能力を失って劣化している。具体的に材料を提示しよう。昨年12月に産経が出したデータがある。20代の内閣支持率は他の世代よりも10ポイント近く高く、安倍晋三の支持率は若者が牽引していると説明がある。そして、民進党のシルバー政党化が進んでいると書いている。残念ながら、この傾向は事実だと認めざるを得ず、産経の報道だからデマだと決めつけて切り捨てられない。長い就職氷河期の間、空気を読む(=全体に合わせる)ことを刷り込まれてきた若者は、一般的な政治態度において、デフォルトで自民党支持・安倍晋三支持であり、反共思想が異常に強く、中韓に対して拒否的で不寛容な特性を持っている。無理もない。彼らを教育するテレビやネットの環境はそうした右翼のイデオロギーで染まっていて、普通に生きていれば、空気中から右翼の粒子が摂取されて脳細胞に付着し、歪んだ右翼のカーネルが形成されてしまう。本屋の店頭も右翼本ばかりだ。

c0315619_14472453.jpgあのマンガ右翼の「戦争論」の大ヒットから、もう20年も経っているのであり、あれをバイブルとして読んだ世代が大人になっていて、家庭で子どもに政治教育を施している。左翼の者たちは、週末にTBSの報道特集とサンデーモーニングを見て、平日は東京新聞を読み、しばき隊やその周辺のRT数の多い誰かのツイートを眺め、その言論空間を中心に日本の政治状況を判断している。安倍政治に対する批判はこんなに多いと安心し、安倍批判の声が世論のメインストリームだと錯覚し、自分の見ている世界が正しい世界だという観念の上で自信に浸っている。信じたくないものを意識外に捨て置き、共感できるメッセージとのみコミュニケーションして、視野狭窄の度を深め、右翼化が進んでいる現状を過小評価してしまっている。そうした左翼の態度は、現実逃避のマスターベーションに見えてしかたがない。以前から何度も言っていることで、この論点も政治についての共通認識にしていただきたいが、毎月マスコミが定例発表している世論調査は、そのまま、その時点でのバーチャルな選挙結果と同じだ。民意の実態は、毎月毎月、こうして数値化されて表面に出ているのであり、ある意味で、政党にとっては毎月の活動努力が成績評価されているのと等しい。今、解散総選挙が行われれば、基本的に世論調査の政党支持率に適応した投票結果になる。

c0315619_14472102.jpg自民、公明、民進、共産、維新という、国民にとって退屈な定番プレイヤーで選挙が行われれば、投票率は上がらず、安倍晋三に有利な争点がマスコミによって設定され、公示日を迎えた時点で勝敗が決着してしまう。この4年間で4度経験したところの、いつもの安倍晋三が圧勝する選挙で終わる。マスコミの世論調査というものを、「野党共闘」を信奉する左翼はあまりに軽視しすぎていて、世論調査で安倍晋三が高支持率を維持している中身について深刻に考えようとしない。安倍晋三の支持者はネトウヨであり、ネトウヨは唾棄すべき低劣な人間属性だとする価値観が、ネトウヨのボリュームが日本の政治を作っている現実そのものを無意味なものだと矮小化させ、政治の実像の正確な認識を妨げている。また、「野党共闘」こそが正しく唯一の路線だから、これしかなく、しばき隊のツイートをRTしていれば、世間を覚醒に導き、世論の流れを変えて選挙で勝てると実践論を決めてかかってしまっている。だが、その選択は間違いだ。幻想だ。安倍晋三を支持する右翼の岩盤はきわめて厚く、若い世代ほど右翼の比率は高い。既存政党で得票を競い合う惰性型の選挙に持ち込まれれば、必ず安倍晋三が勝利する結果になる。この岩盤を崩すためには、崩せるだけの波動砲的な巨大な破壊力のエネルギーが必要で、永田町の外から旋風を起こして一撃を与えるしかないのだ。

既成政党が主役になる戦略では勝てない。「野党共闘」は既成野党が主役になる戦略である。「野党は共闘」のスローガンを市民が言い、市民の音頭に乗って既成野党が手を繋ぐ図は、左翼にとっては新鮮かもしれないが、その個々の野党に国民は魅力を感じず飽きていてコミットしてないのである。
 


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by yoniumuhibi | 2017-04-03 23:30 | Comments(3)
Commented at 2017-04-03 17:27 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by r_tta at 2017-04-04 00:12 x
まさに、まさにその通りだと思います。もう既存野党ではとても投票に普段行かない層を投票に足を運ばせる力はないと感じます。民進党は民進党時代において政治を変えなければいけない!と強く願った人々の気持ちの期待の大きさをきちんとした形で満たすことに失敗し、かつては本当に理に通じた人々で運営されていた共産党は、今はただの普通の政治に不満をもつ、どちらかというと日常の生活に根ざした所謂主婦目線でとどまってしまっている議員が増え、かつてのキレも賢さも、理詰め戦法もありません。そして右も左もどちらも結局は言葉も汚く理より前に暴力的な風潮。とても苦々しく思っています。
ブログ主さんの仰る通り、誰か、本当に永田町の外から理性的、理知的に物事を詰めて行ける方が出てこれば、私のように今の全ての党に感じる物凄いフラストレーションを持った人は、投票するのではないでしょうか。今政治がとても下品に感じます。品位のある党を作り上げる人材、いないのでしょうか。誰か、普段投票に行かずとも不満をもつ層を投票に足を向けさせられる人材が待たれます。
Commented at 2017-04-04 10:37 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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