忖度の語の一人歩き - 事件を「官僚の忖度の物語」にする言説工作と陥穽

c0315619_16092453.jpg忖度という言葉が一人歩きして、森友学園の事件の認識を誤解に導いているように思えてならない。忖度という言葉の氾濫と馴れが、この事件の実像を歪め、われわれに真実ではない偽りの像を信じこませている。安倍晋三と親安倍のマスコミは、忖度という語を巧妙に操って問題を説明していて、そのことによって安倍晋三の関与や責任から世間の目を欺くことに成功している。忖度がキーワードになって事件の通念が形成されることで、疑獄の中心にいる安倍晋三の主体的契機が隠され、不正が曖昧にされ、何やら官僚たちが自然に動いて8億円の国有地値引きが実現したような構図にされている。この事件について忖度の言葉を使うのは危険だ。忖度の語の頻用と氾濫には注意を要する。まず、間違いのないように、忖度の語の定義を確認しよう。広辞苑には「他人の心中をおしはかること。推察」とある。果たして財務省の官僚は、安倍晋三の心中を推し量り、首相の安倍晋三が森友学園の開校を急いでいるに違いないから、その意に沿うよう行政を差配すべく、国有地の定期借地を認めたり、8億円の値引きによる売却を決定したのだろうか。この間の財務官僚の意思決定について、忖度による行為として理解するのが本当に正しいのだろうか。



c0315619_16093928.jpgこの事件の真相の説明で、忖度という語が中心の柱に立ち、忖度があったという認識になってしまうと、安倍晋三と財務官僚とは意思が繋がらない別個の存在に切り離され、いわば共同正犯ではなくなってしまう。不正をはたらいた主体が官僚の側に移され、しかも、それが権力者の意向を慮(おもんばか)っての忠誠行為となり、ヒラメ官僚のサラリーマン行為の表象となる。犯罪性の要素が薄い性格のものへと後退してしまう。実際には、今回の官僚の行為は背任であり、ゴミの撤去費用なるものは悪質な偽計である。偽計によって国民の財産を不当に安く売り渡した犯罪だ。豊中市議の木村真と住民は、22日に背任容疑で近畿財務局を刑事告発したが、この告発状に書かれている事実認識こそが正しい。近畿財務局(財務省理財局)は背任を行っている。この背任の犯行過程を正確に追跡し、誰が何をしたか具体的に描画したとき、果たしてその関係と行為を忖度の語で言い表すのが適当だろうか。登場人物を絞り込めば、具体的には安倍晋三と迫田英典ということになる。迫田英典は、下僚として安倍晋三の意向を忖度して、安倍晋三から指示や介入を直接受けてないのに、よかれと思って安倍晋三のために動いたのだろうか。二人の間に阿吽の呼吸があり、以心伝心だったのだろうか。

c0315619_16101166.jpgそうではないはずだ。もう一度、2015年9月の首相動静に戻ってみよう。9月3日の午後2時17分から27分、官邸執務室で財務省の岡本薫明官房長、迫田英典理財局長と接見している。この時期は、安保法制が参院特別委で大詰めを迎え、情勢が緊迫して官邸周辺も慌ただしい環境だった。主計や主税の局長ではなく、閑職の理財局長がわざわざ多忙な官邸に呼ばれるのは珍しい。それと、首相動静を見てあらためて気づいたが、午後2時27分から午後3時までの約30分間が空白になっている。分刻みの日程表で接見を消化している安倍晋三が、この30分間、何をしていたのだろうか。おやつの休憩だろうか。推理するに、おそらく、この30分間は迫田英典と二人きりの密談をしていたのだ。その密談時間を、官邸の公式発表ではプライベートタイムと処理したのに違いない。つまり、午後2時17分から27分の間は、執務室で3人(安倍、岡本、迫田)が同席していたのである。要件は森友学園の国有地問題で、この場で翌9月4日の近畿理財局での会合の件も報告され、安倍晋三の指示や了承が出たのだろう。その行政上の意思決定とは別に、細部(りそなの21億円とか)について安倍晋三と迫田英典が密談をしているのである。官房長の岡本薫明に席を外させ、右翼で同郷の同士が詳細を詰めているのだ。

c0315619_16102694.jpg午後2時27分というのは、岡本薫明に席を外させた時刻であり、迫田英典と二人きりになった瞬間だろう。巧く首尾が運んだら国税庁長官にしてやるぞと、この場で昇格を約束してやったのかもしれない。いずれにせよ、9月3日に安倍晋三と迫田英典は面会しているのであり、首相と局長が官邸執務室の公務で面会しているということは、国務政策上の報告と指示が為されているということだ。その翌日、近畿財務局のビル9階会議室で、森友学園の工事を請け負った業者と、近畿財務局の統括管理官、大阪航空局調査係が会合を持っている。一連の動きが無関係であるはずがなく、報告と連絡が安倍晋三に上がっていないはずがない。最後に時価9億5600万円の土地が8億1900万円値引きされ、1億3400万円という破格の安値になったのも、架空のゴミ埋設費用の計上が誰の悪知恵かはともかく、安倍晋三に情報が入ってないわけがない。官僚の独断でこんな悪事はできないのであり、ここまで大胆な不正 - 背任罪、公用文書等毀棄罪 - を決行する忖度などできるはずがない。谷査恵子のFAX回答も同じで、官僚の公務として官邸(首席秘書官)の指示に従って動いているのであり、個人で勝手に何らかの忖度をして、ペットの犬のように昭恵に喜んでもらおうと先回りして、籠池泰典に便宜を図る口利きをしたわけではない。

c0315619_16104042.jpg26日に放送されたTBSの時事放談に出演した藤井裕久は、「忖度なんていい加減なことを財務省の官僚は絶対にしない」、「前例踏襲主義の官僚は忖度なんてしません」と言い、今回の事件を官僚の忖度で説明することは誤りだと指摘している。当を得た問題提起だろう。藤井裕久が言いたいのは、官僚は忖度する生きものではないということであり、忖度というような、その場の主観的な状況判断で意思決定はしないということである。官僚は指揮命令系統の中で動いていて、官僚の決定や裁量には必ず合法性の根拠がある。上の指示に従ってやりました、規則で決まっているからやりましたという、責任のエクスキューズが必ず担保されている。そうした合法性の裏づけのない行動はしない。今回の問題を「忖度の物語」にして世間に刷り込みをしているのは、他ならぬ安倍晋三自身であり、森友スキャンダルから安倍晋三を守ろうとする親安倍の論者たちである。今、世論はそのトラップに引っ掛かって、半ば騙されかけている状況にある。だが、それに手を貸しているのは、「忖度があったんじゃないですか」と国会で質問している野党議員であり、無自覚なまま「忖度があったに違いない」と言っている反安倍のマスコミに他ならない。忖度の語を氾濫させ、忖度の有無を焦点にすることは、安倍晋三を追及することでも何でもなく、逆に免責してやっているのと同じだ。安倍晋三と官邸の思うツボである。

迫田英典は忖度などしていない。空気を読んで安倍晋三のために奉仕したわけではない。この問題で忖度という語を無闇にキーワードにする態度をしてはいけないし、忖度という言葉に安易に引き摺られて真相を見失ってはいけない。忖度で不正が動いたのではない。政府の指揮命令系統の中で、関係者によって意図的に不正(犯罪)が行われている。


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by yoniumuhibi | 2017-03-29 23:30 | Comments(4)
Commented by tenten at 2017-03-30 02:30 x
「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」(憲法15条第二項)
公務員は、決して「忖度」などでは動きません。高級官僚ならなおさらです。そんなことをしたら重大な責任を負うことになる。必ず上からの指示を仰ぎます。もし生保窓口が「市議秘書の紹介だから」と忖度して生保の条件を充たさない人物に生保を受給できるようにしてやったら、どうなるか。これを『不正受給』と言うのではないか。これを桁違いに大きくしたことが財務省で、大阪府で行われているのが今回の事件ではないのか。もし「忖度」で行われたなら公務員の「背任罪」です。そんな重大な危険を高級官僚はおかしません。絶対、上からの指示があったはずだ。しかし、政権はその「指示」の部分を隠して官僚にすべての責任を負わせようとしています。官僚のみなさんは怒りを感じないのだろうか。そこまで腐っているのでしょうか。
Commented by 愛知 at 2017-03-30 02:42 x
文部科学大臣所管各学校法人におかれましては、今般の改正も踏まえ、税額控除対象法法人の証明申請を御検討いただくとともに、より一層の寄附金の募集に取り組み(中略)各都道府県におかれましては、今般の改正の趣旨について所轄の学校法人及び準学校法人に対して御周知願います。28文科高第328号(2016年6月20日)各都道府県知事・文部科学省所轄各学校法人理事長殿 (発信者)文部科学省高等教育局私学部長○○○―――奨学金で利息を稼ぎながら、一方で私学寄付マネーロンダリングノススメです。「よどきかく」さんの年表、2015年3月31日、森友学園の資産総額が前年同月同日より約4億円増え、約8億2千万円となる(ソース:登記資料)を見て私学への寄付について検索。鼓腹撃壌の身乍ら、畢竟、現ファッショ政権の勅令によるロボット官僚の業務、忖度、斟酌(大阪府知事)の筋合いではなく、アフガン病院への米軍正確空爆(大統領令)と同じと腑に落ち。Jan Ruff O'Herneのこと、まるで存じませんでした。七平さんに心より感謝いたします。
Commented by May Breeze at 2017-03-30 08:14 x
流石!明解な分析に霧が晴れる気がします。私も最近「忖度」という言葉に疑問を感じ始めていました。官僚は忖度するもの、などという記述を目にしますが、おかしいだろうと。仮に忖度をして上司や総理の意向を汲み取って国有地を不当に安く総理のオトモダチに払い下げていたとしたら、国民に損害を与えて総理に利益供与したことになるだろうと。国家公務員が「為に働く」先は国民であって官邸ではないはず。忖度をして国民に損害を与えたのなら背任罪になるだろうと。官僚よそれでいいのかと。 そう思っていた矢先に世に倦む日日さまの分析を読み、なるほど、忖度は、行った官僚に責任が移る魔法の言葉でもあったかと気付きました。 三宅弘氏、藤井裕久氏の論説も素晴らしいと感動していました。 誇り高い官僚よ、このままでいいのか、汚名を着せられていいのかと言いたいです。 
谷さんのファクスが出てきた時、安倍晋三は「これで政治家の関与がなかったことがはっきりした」と言い、私は目が点になりました。
それは例えれば、強盗事件が起きた(森友事件)、容疑者が見つかった(財務省)、証拠の鈍器も見つかった(谷さんFAX2枚目)、指紋も合致した(平成28年度予算での予算措置を行う方向で調整中)、普通はそれで容疑者も万事休すとうなだれてお縄につくでしょう。それを「これで私が犯人でない事がはっきりした」と声高に言っているようなものではないですか。理解の異常が疑われます。そんな時警察が通常行うのは、責任能力を調べるための精神鑑定なのではないですか。 
Commented by tenten at 2017-03-30 22:47 x
昨日、投稿させていただいたtentenです。
公務員について、ここのブログ主さまと読者のみなさまに、もう一つお話ししたいことがあります。
財務省、大阪府が文書は破棄した、と言ってますが『絶対に』残ってます。公文書が残ってなくても(それもほとんどあり得ないですが)官僚の個々人がメモを絶対残してます。
実は私の公務員のはしくれでした。何かトラブルや異例のことがあるたびに、上司から「必ずメモを残しておけ。できるだけ具体的に細かくメモを残せ。それが後々大きな説得力となる。」と言われました。どこの世界にも無理を押し付けて来たり、難くせをつけて来る輩はいます。そのとき、後々どういう力が働いたか、を説明するため、自分の身を守るため、メモ(や録音)が有効なのです。頭のいい官僚たちが、政治家の横やりに対して「保険」を残していないはずはありません。いま、政治家たちから『忖度』とやらで責任を押し付けられようとしている官僚たちも「背任罪」に問われるとなれば、残していた文書を出すでしょう。木村市議のように、現場の官僚、公務員を「背任罪」で告訴するのは有効と考えます。


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