稲田朋美の進退問題となった森友学園事件 - 騒動が収束しない理由

c0315619_17164758.jpg今日(15日)の朝日と毎日の社説は、稲田朋美の虚偽答弁の問題を取り上げている。朝日は「こんな釈明は通らない」と見出しを打ち、不誠実で身勝手な弁解の態度を厳しく責めている。「記憶に基づいて答弁している」という釈明に対して、そんな言い訳は通らないと一蹴、「不明確な点があれば答弁を保留し、事実を確認したうえで答弁すべきだ」と正論を置いて反駁した。南スーダンのPKO派遣に関して、ジュバでの戦闘を「衝突」と言い換えて国会で強弁した件についてもあらためて指摘し、「現実をねじ曲げた答弁だ。本末転倒もはなはだしい」と批判している。「国防を預かる稲田氏の答弁の信頼性そのものが揺らぐ、深刻な事態である」と結論した。毎日の社説は、「虚偽答弁の責任は重い」の見出しで、「結果として答弁が虚偽であったことは間違いない。『虚偽ではなく記憶違いだった』という稲田氏の説明は著しく説得力を欠く」と指弾、「結局、ウソがばれたから認めたのではないかと見られても仕方がない。閣僚が国会答弁を軽んじるのは許されない」と断じ、稲田朋美をあくまで擁護する安倍晋三に対して、「この政権の対応も理解に苦しむ」と言っている。読売と日経は、社説に稲田朋美の問題を取り上げていない。



c0315619_17165779.jpg新聞社が社説で閣僚の失態を責め、資質に問題ありとして非難する論陣を張った場合は、その週末に緊急世論調査を打ち、「大臣は辞任すべきかと思いますか」と問い、結果を翌週に報道する場合が多い。そのときは、内閣を支持するかどうかも一緒に訊き、最新の内閣支持率が出ることになる。当然のことだが、内閣支持率は数ポイント下がることになる。朝日は、先週末に定期の世論調査を打っていて、安倍内閣の支持率は49%という数字が出ていた。朝日と毎日は、国民の世論をバックに、森友学園の問題を積極追及する構えになっていて、籠池泰典の国会招致を阻んだり、稲田朋美を擁護して開き直る安倍晋三に批判的な姿勢を強めている。朝日と毎日、テレ朝とTBSが、稲田朋美の進退問題で世論調査を行う可能性は小さくないだろう。顧問弁護士として裁判に関わった件は、13日の国会答弁で疑惑を否定した翌日早朝に、裁判出廷記録の証拠文書が出てきて覆された。稲田朋美が籠池泰典との関係を否定する答弁はウソばかりで、10年前に関係を絶ったという弁明も覆ってしまうだろう。籠池泰典の方は、1-2年前に「自民党会館」で会ったと証言している。「自民党会館」というのは、永田町の自民党本部(自由民主会館)のことだ。

c0315619_17171157.jpgそのとき稲田朋美は政調会長の要職にあった。籠池泰典がカメラの前でそう断言するのは、証拠があり、証人がいて、いつでもそれをマスコミに提示できるぞという自信があるからに他ならない。証人が名乗りを上げ、政調会長室でこういう相談があったと暴露を始めれば、稲田朋美は再び「記憶に基づいた答弁」だったと言い訳し、撤回して野党とマスコミの前に頭を下げないといけない。右翼の同志である稲田朋美と籠池泰典は、昵懇の間柄だったから、ツーショットの写真も残っているはずだ。政調会長室などという政権の中枢深部に入り込み、政策予算の陳情をして了承してもらったときは、陳情者は、その証拠として政治家(政調会長)との記念写真を撮って残しておく。今、日本会議の中で責任のなすり合いが始まっていて、蜥蜴の尻尾切りの競演が始まっている。先週までは、尻尾は籠池泰典だけだったが、今週になって尻尾が胴体の方に伸び、稲田朋美が危なくなる状況に及んできた。橋下徹と松井一郎は、12日夜から13日朝にかけて、「国(政府)から大阪府に圧力がかかった」と言い出し、責任は安倍政権と財務省にあり、維新府政はとばっちりを受けて迷惑を蒙った側だと言わんばかりの姿勢に転じた。橋下徹と松井一郎が急にそう言い出したのは訳がある。

c0315619_17173276.jpgそれは何か。13日のNHKの報道で、大阪府の私学審議会の梶田叡一が登場し、森友学園の申請を認可適当とする判断が異例の経過で行われたことについて、政治権力の介入があった心証を仄めかしていた。この動きが橋下徹と松井一郎を慌てさせたのに違いない。NHKの報道を管理統制しているのは官邸である。NHKが梶田叡一を出し、私学審議会の議論が政治によって歪められていたと証言したときは、不当な介入をした主体は維新の府政権力という意味になる。松井一郎だ。NHKの報道の踏み込みは、維新の二人から見れば、官邸あるいは官僚が維新を尻尾切りに出た政治として映る。だから、慌てて牽制と反撃に出て、「(早く認可するよう)国から圧力がかかった」と世間に言い切る方針に出たのである。13日夜の民放の番組で橋下徹がまくしたてていたように、通常、近畿財務局などというお役所が、府下にある一介の教育業者のために汗をかいて奔走するということはない。官僚機構である近畿財務局が、大阪府という自治体に対して、地元の事業者の一事案で、ああしてくれこうしてくれと執拗に頼みごとをして行政決定を急がせるということはない。橋下徹の言い分は、実際には維新府政も財務省と共謀共闘関係だったという真相の一点を除いては、一般論としては正論だ。

c0315619_17174930.jpg稲田朋美が当選したのは2005年の衆院選で、いわゆる小泉劇場のときのことだった。小泉チルドレンの新人候補として公認され、マスコミ向けの会見で売り出したマドンナの中に、佐藤ゆかりや藤野真紀子や飯島夕雁らと並んで、46歳の稲田朋美がいた。最後の方の公認だった。稲田朋美を抜擢したのは、当時幹事長代理だった安倍晋三で、確か、武部勤と並んで会見場に安倍晋三が後見人として顔を出していた記憶がある。そのとき、気になって検索をかけて稲田朋美について調べたところ、父親が右翼活動家の高校教諭で、生長の家の「頑張れ日本全国行動委員会」の京都本部代表だったことや、弁護士として南京事件の百人斬り競争に関する訴訟を担当していたことを知った。また、8月15日に靖国神社境内で行われる右翼集会のスピーチに立っていた事実も知った。そこからしばらく、私は稲田朋美のことを「極右靖国ギャル」とブログで呼んでいる。小泉劇場から3年後の2008年、映画『靖国』が右翼の圧力で上映中止になった際、田原総一朗がこの問題を討論すべくサンデープロジェクトに稲田朋美を呼んだところ、稲田朋美が遁走して逃げるという事件もあった。まさかこんな人物が、その5年後に「ポスト安倍の有力候補」だの「次期総理の期待の女性政治家」などという権力者になるとは、実に浦島太郎の気分である。

c0315619_17175941.jpg「ギャル」と呼ぶには稲田朋美もすっかり薹が立ってしまったが、最初の第一印象で直感した「ギャル」の本性は、やはり真実だったなと感慨を覚える。この人物は軽薄で、センスがグロテスクなくせに人前で目立つ格好をしたがり、衣装や化粧の面での自意識と承認欲求が異常に強すぎる。しかし、これほど頭の悪い人間だとは思わなかった、その点は最近まで見抜けなかった。稲田朋美が防衛相になった後、南スーダンPKOをめぐる質疑で何度か国会中継の絵を見たが、辻元清美など野党議員に質問されると、すぐに後ろに控えている防衛官僚の方を向いて身体を伸ばす。資料をめくって救援と補助を求め、狼狽して固まったままの時間が続く。席を立って答弁に向かおうとしない。そうすると、安倍晋三が手を挙げて代わりに答弁を始める。そんな絵ばかりだ。かりそめにも弁護士なのに。弁護士の議員といえば、真っ先に頭に浮かぶのが、その理念型ともいえる共産党の正森成二の勇姿だが、そこまで完璧なパフォーマンスには及ばなくても、福島瑞穂もそれなりの活躍で面目躍如しているし、詭弁の技能も含めて枝野幸男が一つの通念を提供している。稲田朋美の劣悪は何なのだ。本当に司法試験を合格して、弁護士の実務をやっていたのだろうか。無能すぎる。天敵の辻元清美は教育学部卒だが、本当に稲田朋美は法学部卒なのかと怪しむ。

c0315619_17180949.jpg森友学園の事件が簡単に収束せず、フェイドアウトの様相にならないのは、渦中の人物である籠池泰典が、カメラの前で奔放に自己主張を繰り返すからである。普通なら、疑惑の人物は姿を隠して病院の奥に逼塞するものだが、籠池泰典はそれをせず、右翼たる自己のイデオロギーの宣伝拡散に努め、あるいは安倍晋三や松井一郎を脅し揺さぶって尻尾切りの代償対価を要求するため、メッセージを発信しようとしてカメラの前に立つ。籠池泰典がマスコミの前で喋ることは、結局、国会に招致されて話しているのと同じで、国会招致が実現しているのと半ば等しい。だから疑惑が途絶えることなく、新たなネタが投下され、世間の関心が持続されるのである。参院予算委は残す日程が2週間。いつもなら、ここで一区切りがついて後半国会という流れになり、国民の世論も尻すぼみになるけれど、今回は日本会議内部での責任逃れと責任のなすり合いの契機があり、右翼(日本会議)の中の軋轢がエンジンになって事件報道のフェイドアウトを防ぐ効果になっている。前面に登場するプレイヤーは右翼ばかりだ。籠池泰典(日)、籠池詢子(日)、安倍昭恵(日)、安倍晋三(日)、佐川宣寿(日)、鴻池祥肇(日)、松井一郎(日)、稲田朋美(日)、菅野完。籠池泰典の思惑からすれば、安倍晋三夫妻を守れば、後は小物だからどうでもよく、政権に影響はないという見通しなのだろう。

半フリーメーソン的な性格を帯びた組織である日本会議の中の、各人の序列意識と自己主張と自己保身があり、それらが輻輳し、各人の思惑とは違った方向に進行し、疑惑が拡大し、言い訳が破綻し、混乱して収拾がつかなくなっている。



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by yoniumuhibi | 2017-03-15 23:30 | Comments(2)
Commented by 愛知 at 2017-03-16 02:53 x
「邦人保護のため、海自艦が韓国に入港できる」と発言。オブストラクション島田(解説副委員長)から「そんなこと韓国が受け入れますか」と詰られ、「狼狽して固まってしまった極右靖国ギャル」が今も頭に残って。戦争法制審議中の「日曜討論」で。「極右靖国ギャル」を取り上げられた08年10月2日から05年まで同ギャルを追って御ブログを拝読。一貫した情熱に改めて頭が下がります。学園監事の木澤克之氏が政府閣議において最高裁判事に任命され就任(2016年7月1日)という加計学園のHPを目にして暗澹たる気分に。「極右靖国ギャル」の弁護士資格さえ、地獄の沙汰も・・・という思いさえ。短い期間、SEALsファンであった細君が本件疑獄事件、「もう誰が悪いのか、わからなくなってきた」とテレビの前で音を上げて。この終止符に追い込むことこそ大政翼賛の狙いなのでは。貴下情熱には遠く及ばぬ鼓腹撃壌乍ら、SNSでは小さくても声を上げ続けていきます。
Commented by 和田啓二 at 2017-03-17 15:37 x
頓馬な稲田朋美の百人斬り裁判書籍についての私のアマゾン評の一部

稲田朋美は、「百人斬り裁判」の原告主任弁護士。一審判決の解説を、否定派の重鎮、東中野氏が『南京「百人斬り競争」の真実』で「競争をした事実自体は否定できない。百人斬り競争は新聞記者の創作記事とは認められないとしていて、南京裁判と本質的に変わらない判決である」と評するのに比べ、ピント外れで曖昧な評価をしている。さらに高裁判決を、「裁判所は百人斬り競争の記事を信じることはできない、甚だ疑わしいと認めている」とし、まるでその認定が、百人斬りの無罪を証明するかのような記述である。向井等の百人斬り無罪主張の柱は「記者による創作論」と「向井負傷説」の二つ。向井負傷説については、秦郁彦が「政経研究2006年2月号」で「歩兵砲小隊の部下(第二分隊長)だった田中金平伍長は向井が負傷せず、南京占領まで戦ったと筆者に語り、分隊員の辻岩松、松田清治郎の両氏や松田利春中尉(第八中隊長)も同様の記憶である。」と記述する。証言時、田中氏は高齢でぼけだと言われればそれまで。しかし、稲田著作152pから154pにかけて、阿羅健一が1983年ころから数年取材した成果である「南京事件日本人48人の証言」に関連し、阿羅氏に会った田中金平氏が「小隊長は砲撃をわれわれ分隊長に任せて、全体を見ていて、無錫から南京にいくまでほとんど私の側にいました」と記述する。そこで、阿羅氏の著作を検証すると補遺を含めた48人の証人の中に田中金平氏は欠落している。最も妥当な推測はバリバリの否定派である阿羅氏は、向井にとって不都合な田中氏の証言を隠していたが、同じ否定派の稲田氏に、つい気を許して話してしまい、稲田も田中氏の証言が向井のアリバイを崩すことが記憶から消えていたということ。この種のことは、通常ありえない。稲田は向井等個人への同情が薄く、戦前体制への慕情からする信条で弁護を引き受けたため、つい前のめりになり見境がつかなくなったのではないか。


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