共謀罪を阻止した10年前 - 世論の半数が「テロ等準備罪」容認に愕然

c0315619_16161018.jpg平成27年度予算案は、今日(27日)衆院を通過して参院に送られた。国会論戦の主舞台は参院予算委に移る。森友学園の問題は、毎日新しい情報が飛び出して疑惑が広がり続けている。この問題の特徴は、いわゆる法的責任が関心の焦点になっていないことで、国有地払い下げに伴う、政治家の介入による利益供与という明らかな疑獄事件であるにもかかわらず、贈収賄の容疑が当事者に浮上すると誰も想定しておらず、テレビ報道でも元特捜検事とかの法律専門家が登場して解説しない。その気配が寸毫もない。注目は、安倍晋三の支持率が落ちるかどうかという点にかかっていて、世論調査の数字に影響を与えるマスコミ報道がどれだけ熱心にこの問題を扱って批判を拡大するかというところにある。世間も、マスコミ関係者も、半信半疑というか及び腰なのは、昨年の甘利明の口利き収賄事件の顛末があり、稲田朋美や高市早苗らの白紙領収書の問題があったにもかかわらず、結局、何もお咎めなしで済まされ、捜査当局が動くでもなし、国会証人喚問があるでもなし、何もないままに政治が進行した現実があるからだ。甘利明の口利き疑惑はわずか1年前のことだが、遠い昔のことのように思われる。その後の参院選は安倍晋三が大勝した。



c0315619_16091467.jpgネットを見るかぎり、森友学園をめぐる疑惑についての関心はきわめて高い。この問題には安倍晋三と安倍昭恵だけでなく、維新の松井一郎が深く関わり、さらに国交省絡みで公明党が関与している。2015年9月4日のタイミングで、どうして国交省が森友学園に6200万円の補助金交付を決定したのか、大阪航空局が例のゴミ撤去費用分を8億円と見積もりした経緯も含めて、当時の国交大臣であった太田昭宏から説明を聞く必要がある。大阪の政治と行政を仕切っているのは維新と公明だ。2015年9月4日に大阪入りした安倍晋三が、故冬柴鉄三の三男が経営する東梅田のかき料理の店に午後4時過ぎに立ち寄っている事実は、果たして単なる偶然だったのだろうか。この事件では、他の事件と違って、渦中の人物である籠池泰典が能弁で、恐いものなしで、積極的にマスコミの取材を受け、活発な発言を続けていることが特徴だ。法的責任を問われる心配はないという安心感があり、政治家(安倍晋三と松井一郎)の弱みを握っているぞという優越意識があり、そして4月開校のための認可を焦っていて、強気の態度で反撃に出ているように見える。普通であれば、籠池泰典は雲隠れするか病院の奥に逼塞するものだ。そういう展開にならないことが、逆にこの事件の異常さを際立たせ、今の日本の政治の異常さを示している。

c0315619_16093027.jpgその公明党が、共謀罪について慎重姿勢とも取れる素振りを見せ始めた。2月23日の漆原良夫の記者会見で、従来と変わり、党内論議の時間が必要で3月10日の閣議決定は困難だという見解を表明している。漆原良夫は、胸に右翼の青バッジを光らせている党内最右翼の重鎮で、日本の政治の右傾化と共に党を右に寄せつつ党内の地位を上昇させて行った幹部だ。今は中央幹事会会長という肩書きだが、マスコミ報道から垣間見えるところでも、幹事長の井上義久よりも発言力が大きく権力的地位が上で、代表の山口那津男よりも上ではないかと思われるほどの強大な権勢を誇っている。学会の女性部向けには山口・井上の体制で中道のイメージを標榜しているが、実際の党の政策決定は自民党 - というより官邸 - とのパイプが太いこの右派の首領が牛耳っている。が、ということは、公明党が共謀罪の10日の閣議決定を拙速と判断しているというのは確かな事実で、何事か裏で官邸と交渉をしているという意味に解釈できる。女性部が共謀罪に反対なのは当然のことで、党が女性部を宥めるポーズをするのも自然な動きだ。きむらゆいが言っているように、森友学園の問題が炎上と延焼を続けている状況を奇貨として、この政治を共謀罪の阻止に繋げる工夫が重要で、共謀罪の阻止を図る者たちは、この機を逃さず手を尽くす必要があるだろう。

c0315619_16095574.jpg漆原良夫が共謀罪の3月10日閣議決定に難色を示したという旋回は、この動きが自民党幹事長の二階俊博と繋がっている可能性も考えられる。楽観的観測かもしれないが、永田町の政界記者の感性ならそういう憶測も可能だ。もしそうであるなら、森友学園をめぐる新しい情勢を睨み、さらに総裁任期延長の問題も睨んで、官邸権力の絶対支配に対して与党から牽制がかかった兆候とも読み取れる。とすれば、反安倍のマスコミはこの機を利用すべきで、3月10日の閣議決定の延期に向け、そのための世論醸成に注力するべきだろう。きむらゆいの言うとおり、現状、世論の半数がテロ等準備罪を容認していて、国民の中に強い反対論が噴出している環境にない。きむらゆいの焦躁は理解できるが、3月10日までに安倍晋三が退陣するほど情勢が急転するとも思えない。私の提案する一策としては、小池百合子に慎重論を表明させることで、小池百合子がここで共謀罪に消極論の一石を投じれば、世論の空気は大きく変わるだろうと思われる。無論、小池百合子は共謀罪に賛成で、法案成立を急ぐ立場にあり、本人は安倍晋三や橋下徹と同じタカ派の右翼である。だが、現在の表面上の政策スタンスは必ずしも安倍晋三と一致させておらず、公明党や維新や民進右派の方にも媚を売っている。

c0315619_16101362.jpg彼女には野心があり、野心とは安倍晋三の次の首相ポストを射止めることだ。都知事は次の大きな目標へのステップにすぎない。豊洲移転問題と石原慎太郎への追及の経過を眺めても、小池百合子は世論の支持を最大化するべく、マスコミを使って民意に沿う八方美人のイメージ作りを腐心する。ポピュリズムのウケ狙いに執着する。基本的に安倍晋三と政策は一致しているけれど、それとは距離をとっているような演技をして、右翼に拒否感を持つリベラル寄りの中間派から票が入るよう細工を凝らしている。7月の都議選までは、政治のスタンスは状況に応じて自在に変えて行くだろう。今後、森友学園の問題で安倍晋三が窮地に立ち、支持率が低下する局面になれば、小池百合子は安倍晋三との距離をさらに演出し、大衆の支持を離すまいと人気取りの立場取りをするに違いない。今、小池新党への一般の期待はとても大きく、したがって小池百合子がテロ等準備罪に慎重姿勢を示せば、その発言はマスコミと保守層に影響を与える。6割が同法を容認している現在の世論を動かす原動力になる。ポスト安倍を狙う小池百合子にとって、共謀罪は無理に急ぐ必要のない政策で、自分の政治生命を賭ける必要のないものだ。記者から「東京五輪のために必要か」と質問されれば、公明党と歩調を合わせ、慎重論を口にする選択をするだろう。

c0315619_16103234.jpgそれにしても、半数の世論がテロ等準備罪と名前を変えた共謀罪を容認する現実には、あらためて驚かされる。3回目の廃案になった2006年の刻一刻はよく覚えているし、ブログにも記事が残っている。小泉政権の末期。民主党の代表が前原誠司から小沢一郎に変わり、トロイカ体制で党の政策を左寄りに移動させ、「国民の生活が第一」の標語を掲げて、「小泉改革」の弊害に対する批判的姿勢を鮮明にした直後だった。このとき、共謀罪に体を張って抵抗した野党議員が3名いて、福島瑞穂、平岡秀夫、細川律夫の3人の弁護士である。この3人の活躍は素晴らしかった。10年前も国会議員の数では負けていて、強行採決されれば可決という絶体絶命の危機だったが、宇都宮健児が会長職にあった日弁連が反対論のエバンジェリズムに努め、3人の野党弁護士が法務官僚の前に立ちはだかり、紆余曲折の末に国会での成立を阻止できた。このとき、筑紫哲也のNEWS23も、古館伊知郎の報ステも、当然のように反対の論陣を張っていて、これが治安維持法の復活である本質を視聴者に啓蒙、反対世論を国民の間に喚起するべく奮闘していた。当時の共謀罪をめぐるマスコミ報道では、日弁連の位置が中立公平な主張の標準だった。したがって、共謀罪を容認する世論が半数などという事態は起こらず、共謀罪は反動で悪という常識で固まっていた。

c0315619_16114403.jpgそこからわずか10年なのに、なぜ国民の半数が共謀罪の容認に転じているのか、私には納得ができない。富川悠太や小川彩佳の報道を聞いていると、市民社会にとって共謀罪が悪で脅威だという認識が彼らにはないように感じられる。危機感がない。それは、われわれとは受けた教育が違うからだろう。われわれは、治安維持法がどれほどこの国に惨禍をもたらしたかを聞いて育っている。治安維持法による恐怖支配がどれほど耐えがたい苦痛であったか、どれほど戦争に反対する人々の精神を圧殺し、社会を戦争へ強制する凶悪な暴力装置だったかという経験談を聞いてきた。それは、共産党を捕まえて殺すだけの法律制度ではなかった。普通の市民が、映画「少年H」のように、不当な嫌疑をかけられて特高に拷問されたり、うっかり軍部批判を口にした庶民が隣人に密告され、白昼、夜中、特高に連行されて署内で暴行制裁を受け、腫れ上がった顔で帰ってくるということが日常茶飯事に起きていた。それが特高刑事の平素の業務であり、見せしめのため、内部の締め上げのため、治安維持法は庶民の日常生活のところで猛威をふるっていた。だから、戦後、特高警察と治安維持法は国民の目の敵となり、保守層も含めてそれへの拒絶感は共通のものだったのだ。しかし、テレビを見ながら思うに、富川悠太にはその前提が欠落している。治安維持法への恐怖心がない。

昭和は遠くなりにけり。そういうことで、国民の半数が共謀罪を容認するという信じられない現実が出現するのだろう。



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by yoniumuhibi | 2017-02-27 23:30 | Comments(3)
Commented at 2017-02-27 20:46 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 七平 at 2017-02-28 00:11 x
安倍首相のTrump 訪問は日本のマスコミニュースを見ていると大成功の様に受け取められているようですが。当地では随分異なったイメージを残しています。 あの会談以来、Trump は相変わらず暴言を続けるだけに止まらず 米国での聖域、報道の自由、言論の自由に侵入し弾圧声明をするに至っています。 自立性の高い米国のマスコミは日本のマスコミとは違い、尻尾を巻いて引き下がる事にはなりません。真向からの戦いが始まっています。 私の推測ですが、Trump は任期を全う出来ないでしょう。時間の問題で、Pence に置き換えられると思います。三権分立のうち、まだ立法府(共和党)が反旗を翻すところまで行っていませんが、予想される大型赤字予算を見ると、風向きが変わると思います。 司法府は既にTrump暴走 にブレーキを掛けています。

日本のマスコミによる編集が如何に政府の御用聞きかを実証する一例に、You Tube に上がった、笑ってしまうVideoをご紹介しておきます。You Tube に ログインして、”WATCH: Donald Trump and Shinzo Abe (Japan Prime Minister) Meet at White House (FNN)” をコピー貼り付け検索すると、見る事が出来ます。日本の放映では、前後が切り取られています。 Volume を上げて会話を聞き取り判ったのですが、奇妙な握手の原因は安倍首相が”Look at this way." と訳すべきところを” ”Look at me." と訳してTrump に告げたからです。Trump は言われたとおり、晋三を見つめ Photo-Op 様に握手を続けています。0:37に現れる安倍晋三の顔は非常に失礼な表情であるだけではなく、電気ウナギから逃れるナマズを連想させます。

国連や米国議会で原稿丸読みの演説をしてみたところで、首相の英会話能力は私の見地からはレストランの給仕並みです。通訳無しで国政を語る等、危なっかしい話です。


Commented by 長坂 at 2017-02-28 14:04 x
昭和は遠くなりにけり、、、仰る通り。「民主主義ってなんだあ」でデモしてるグループが「おまわりさん、ご苦労様」「あそこに過激派いますよ~捕まえちゃって」ですよ。まさにそれが共謀罪の怖さでしょ?気に入らない組織や団体を密告、拷問自白、起訴で有罪。冤罪を産む為の法律。
大逆事件や金子文子と朴烈の天皇暗殺未遂事件は知らないとしても、戦前戦中の治安維持法が主義者ばかりでなく市井の人を狙い撃ちしたのももう知らないの!うちの爺さんは「日本は戦争に負ける」と言って2度捕まりました。多喜二の様な大物でもなく田舎町の事、無事帰って来ましたけど。(植民地での治安維持法はもっと苛烈を極めた)いったいどれだけの人が犠牲になったのか?拷問三昧だった特高は戦後何食わぬ顔で司法の世界へ。デモで「国民ナメるな」って叫んでたけど、私は敢えて言いたい「権力なめんな」と。


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