トランプの暗殺と軍産複合体のクーデターの予感 - 実験国家の黙示録

c0315619_15424189.jpg大統領就任式の翌日(1月21日)、首都ワシントンで50万人、全米で300万人規模となる反トランプの抗議デモが行われた。一方、就任式の参加者は20万人ほどで、デモの人数の半分以下で、しかも白人ばかりであり、就任演説のマイクに会場からの抗議の声が拾われるという異例の事態となった。日経新聞は19日の記事で就任式に90万人が集まるなどと書いている。NHKを筆頭に、トランプの大統領就任を祝賀報道しようとした日本のマスコミは、すっかり予測が外れて恥をかいた格好になっている。全米で300万人の動員を実現した反トランプの市民は、自信を深め、ニューヨークタイムズなどマスコミと連携してさらに気勢を上げ、政権に対して圧力の手を強めるに違いない。退陣へ追い込む「市民革命」めざして追撃することだろう。何もかも異例ずくめの米国大統領就任の進行。米国の政治がこのような目も当てられない惨状になるとは、いったい誰が想像したことだろう。これが現実。トランプ時代の始まりは米国政治の激動の始まりであり、一寸先は闇の熾烈な権力闘争が続く混乱の始まりである。昨年の選挙戦の状況がそのまま続き、米国政治は安定を見ることなく、国民はトランプ支持と不支持に分かれて争うことになる。



c0315619_15431998.jpg米国の分断は解消することはない。深刻化するだけだ。NHK-BSの『ザ・リアル・ボイス - ダイナーからアメリカの本音が聞こえる』で描かれたとおり、トランプ支持の白人保守層というのは全米に根強く広範にいて、強固な信念を持っており、マスコミがどれほど醜聞を暴いても動じない。トランプ批判をするリベラルなマスコミを、エスタブリッシュメントとして敵視し反発する生理を持っている。トランプ支持者の要求は、安定した雇用と生活であり、移民問題の解決である。それが至上の優先順位であるため、それ以外の問題や情報は二の次になる。報ステの小川彩佳がツイッターを検証して報告したように、トランプは移民問題をキーイシューにして共感を集める選挙戦略を据えた。不法移民問題というのは、地域の低所得白人層にとって単に雇用を奪われるとか賃金を引き下げられるという脅威だけではなく、麻薬問題の恐怖とも繋がったリスクだ。メキシコ国境の壁というのは、不法移民だけでなく、麻薬の流入を防ぐ防壁を意味しているのである。信じられない数字だが、ニューハンプシャー州では人口130万人のうち10万人が薬物治療を必要とする身になっていて、死亡者は3年で3倍に増えたとABCが報じている。米国の白人男性の平均寿命が短くなっているのは、アルコールと薬物への依存が直に影響している。

c0315619_15433385.jpgこの現状に耐えられなくなった白人たちが、ポリティカル・コレクトネスのタブーを破って本音を公約に掲げたトランプに共鳴した。だから、反トランプの側が民主主義と人権の正論で押せば押すほど、トランプ支持の白人保守層はカウンターのプレゼンスを
示威する動きに露骨に出て、米国民主主義の歴史が築き上げてきた倫理的前提(米国社会の規範と秩序)を決壊させていく。それは、外から見れば、米国が、自由と民主主義の理念を領導する偉大な国家ではなくなることを意味し、米国の威厳と説得力が失墜してゆくことを意味する。米国を中心として団結する「自由世界」の観念が崩れることを意味する。安倍晋三とNHKが繰り返し説教して刷り込むところの、「自由と民主主義の価値観」を担保する根拠が消えてなくなることになる。自由と民主主義の国の偉大なリーダーが複数の女性に性的暴行を加え、名誉毀損で訴えられるようでは、まるで話にならないではないか。民度の低い、民主主義の欠如した途上国の政治の話である。米国はここまで劣化してしまった。その上部構造の劣化は、土台である社会の劣化の反映であって、麻薬中毒の者が3年間で3倍に増え、13人に1人が依存症で苦しんでいる米国の国家的現実の別の一面でもある。社会が毒素に侵され腐っていて、悲鳴を上げているということであり、辺見庸的に言えば痙攣しているということだ。

c0315619_15434928.jpgトランプ時代のあと、何が来るというのか。果たして米国は自由と民主主義を復元して、本来の国家の理念の体現を納得できる、世界から信頼と尊敬を得られる姿に戻るのだろうか。私はそれは難しいと考える。分断した米国の再統合は戦争の発動でしか果たせない。ここに第3次世界大戦勃発の契機がある。大宅映子が22日のサンデーモーニングで吐露した素朴な危機感は、世界中の庶民の誰もが持っているはずのもので、もっと声を大にしてマスコミが言わなくてはいけない言論だ。 テレビで頻繁に目にするようになったラストベルトを象徴する錆びた工場の建物の絵は、米国の「自由と民主主義の理念」の今の姿そのものである。朽ち果てて意味の内実を失った、疎外態となり倒錯態となった米国の「理念」が、トランプの政治として目の前に現象化している。1986年にソ連を旅したときのことを思い出す。モスクワとハバロフスクの市民の様子を目撃して、この国が長くないことを実感した。ペレストロイカの初期だったが、ソ連は潰れるだろうという確信を持って帰ってきた。ソ連も偉大な理念を掲げた人類史の実験国家だったが、使命と理想を背負った実験国家としての性格は合衆国も同様である。ソ連は70年で滅び、米国は230年続いている。そろそろ金属疲労の蓄積が限界を超え、シビア・アクシデントの破局が起きておかしくない。

c0315619_15440457.jpg人類史の実験国家というのは、世界の注目の中でモデルとして振る舞わないといけないから、どうしても背伸びをして無理をしてしまう。ある州では13人に1人が薬物依存症でのたうち回り、そのうちの少なくない者が自殺しているというのに、あの大袈裟なDCの大統領就任式の過剰演出は何なのだろう。NHKの「ザ・リアル・ボイスⅡ」では、今日レイオフされる男が、ミシガン州ランシングのダイナーの店で6ドルのハンバーガーを「最後の晩餐」として食していた。一杯のコーヒーをただで飲ませてもらうために、金のない男が店の前で雪かきの奉仕作業をしている。そういう中で、連邦事堂前に宗教関係者を呼んで、神がどうとか、自由がどうとか、偉大な米国の歴史がどうとかレトリックを言い重ねている。ゲップが出るような、壮麗な虚飾に満ちた大統領就任式は何なのか。末期ソ連の矛盾と欺瞞そのものだ。その新大統領は、過去に何度も女性に卑劣なハラスメントをして訴えられている男であり、買春したのか売春接待を受けたのか知らないが、ロシアのホテルで痴態を盗撮されて映像を押さえられている愚人である。欺瞞というよりジョークとしか言いようがない。トランプはどこかで暗殺される運命なのではあるまいか。トランプ政治の今後を考えたとき、思い浮かぶのは、第3次世界大戦の危惧と、核使用の悪夢と、暗殺されるのではないかという予感である。

c0315619_15442178.jpg軍産複合体が、レイムダックになりかけたトランプを始末し、証拠を捏造してイスラム過激派のテロリストの仕業にしたり、ヒスパニックの凶徒の計画的犯行にして冤罪事件化するのではないか。トランプを暗殺して誰かのせいにすれば、分断を埋めて国内の結束を修復することができる。「米国の敵」と戦争を始められる。軍産複合体と共和党タカ派とウォールストリートが、DCの権力を恣(ほしいまま)にすることが可能だ。非業に斃れたトランプの政策は神からの啓示となり、リベラルとマスコミは反動の前に沈黙を余儀せざるを得ない。軍産複合体が仕掛けるファシズムにとって、都合のいい支配の道具と環境が手に入る。米国は今後、トランプとリベラル・マスコミによる抗争と攻防が続くだろうが、今年春からの欧州の極右化の情勢とともにリベラルが押され、トランプに順風が吹いて強権独裁にシフトする条件ができるだろう。日本と同じように。日本でも、安倍晋三が首相になった当初はマスコミが批判していたが、4年の間に飼い慣らされて身内になった。米国では、リベラルの不満が燻って抵抗と混乱が続き、支持率の上下が続くに違いない。そんな中、ある日どこかで暗殺事件が発生、軍産複合体による事実上のクーデターの図になるのではないか。陰謀論の誹りを恐れず敢えて言えば、ケネディを殺したのは軍産複合体である。彼らはいつでも邪魔な大統領を消す。

トランプは民主党でも共和党でもなく、軍人でもなく、DCに利害と人脈と派閥がない。バックに庇護者の組織とネットワークがない。軽薄で頭と口の悪い、スタンドアローンの独裁者であり、すなわちDCの権力構造によって命を狙われやすい位置と境遇にある。



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by yoniumuhibi | 2017-01-23 23:30 | Comments(3)
Commented by おこめ at 2017-01-23 19:23 x
小沢シンパの人たちがトランプを反グローバリズムってだけで称賛することに心配を覚える
サンダースのほうが良かったのに
Commented by ametyan at 2017-01-23 22:45 x
21日の夜から22日の未明そして徹夜して、私はCNNの画像をほれぼれする思いで見ていました。「トランプ新大統領の祈祷会参加」かなんかをちんたら映していた画像が切り替わり、いきなりワシントンDC、NY、ボストン、シカゴ、デンバー、LA、ロンドン、パリ、バルセロナ、シドニー…。Women's march運動の大群衆です。なんと美しかったことか。翌朝、CNNが「政権委譲は『平和的に』行われました」と報道していました。途上国ならともかく米国でしょ。どういうこと?この「反トランプデモ」は選挙直後から宣言され準備され、相当の人出が予想されていましたが、私は「もしかしたら暴動になるかも」「そこから内乱に?」と妄想していました。Women's marchデモは平和的に行われ解散したようです。ベトナム反戦運動以来の規模だったとか。この運動に参加したアメリカの名もなき大衆の行動とパワーに私は深い敬意を表します。彼らは今回はこれで収まりましたが、今後トランプの動き次第ではアメリカ社会を変える力を持っています。ベトナム反戦運動の時のように。
夜明け前の空が一番暗いのです。
このデモで爽快だったのはどこぞの反原発運動のように「シングル・イシュー」などとセコいことを言わない。「女性の人権」「LBGTQの人権」「移民の人権」「黒人の人権」「ムスリムの人権」…。白人女性の活動家が登壇して主張していました。「『ムスリム登録法』ができたら、私たちみんなで登録しに行きましょう!」絶対マイノリティを孤立させない!というホンモノの人権派の矜持を感じました。社会を変える力のある運動とはこういうものなんだ、と学びました。
Commented by 長坂 at 2017-01-24 14:21 x
しがらみのない(?)ボナパルトは分割農民(白人中間層)を喜ばせるため、これまでとは違うアメリカをアピールし続けないといけない。だけど肝心の閣僚やその候補アドバイザーは軍人ネオコンの戦争屋と大企業CEOや大富豪、ゴールドマンサックス同窓生のネオリベ。まさに格差の生みの親達。オリバー・ストーンは楽観視しているが今後4年間アメリカが一切軍事介入なしでやっていけるか?「再び強いアメリカ」って経済面だけで語られるが、日本の小粒のボナパルト達がそうであるように結局富国強兵?「一つの中国」の原則に踏み込んだり、エルサレムにアメリカ大使館を移転、イスラエルファースト、イランラストを明確にして盛んに挑発してるでしょ?自ら介入しなくても、いくらでも介入せざるを得ない状況は作り出せる。保護貿易だ、自由貿易だは単に目くらまし、着々と準備しているかもしれない。戦争は雇用創出、ピケティによれば格差が縮まる機会、ある意味公約を果たすチャンスではある。注視しないと。


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