人数が昨年の5分の1に減った「安倍政権NO」デモ - その原因と真相を探る

c0315619_17594276.jpg3年ぶりの共産党大会が熱海で開かれ、初めて他野党の党首が招待されて挨拶を述べた。NHKの7時のニュースでも大きく取り上げられ、共産党を中心にした「野党共闘」が安倍政権に対抗する図が強調されていた。だが、共産党大会に出席したのは安住淳で、肝心の代表の蓮舫は北九州に姿があり、NHKのカメラの前で、共産党の「野党連立政権」に否定的なコメントを発していた。朝日の3面記事を見ると、蓮舫が入った福岡9区というのは共産党の比例現職(真島省三)が立つ重点区で、ここには同じく民進党の比例現職(緒方林太郎)が出馬を予定し、二党間で競合区だという説明がされている。蓮舫は、わざわざ共産党大会の初日を選んで福岡9区に入り、現地の会合に出席して選挙応援の檄を飛ばし、その行動をマスコミに書かせたのだ。意図的で姑息な計略であり、連合への配慮と言い訳であり、国民に向けてのメッセージの発信である。共産党と連合と、二つにバランスをとるという意思を明確に表明し、共産党と連立政権は組まないという態度を示している。福岡9区(若松・戸畑・八幡)に入らせたのは、野田佳彦の差配と演出だろう。こうして、共産党大会と「野党共闘」のニュースは、サプライズのアピールに冷水がかけられて相対化された。



c0315619_18000116.jpg共産党大会が開かれた前日の1月14日、渋谷で「安倍政権NO」のデモが行われ、主催者発表で2000人が集まって行進している。このデモには、管直人、吉良よし子、福島瑞穂、渡辺浩一郎と、四野党の議員が参加して隊列先頭の横断幕を持った。「安倍政権NO」のデモの主催者はしばき隊である。デモの様子を伝える写真や映像が数多くツイッターで投稿され、格差・宣伝されているが、サウンドカーの荷台に立って行進の音頭をとっているスタッフが、しばき隊の制服の上着を着て誇示・宣伝(ブランディング)しているのが看て取れる。また、実行委のHPにカンパの送金先が載っており、首都圏反原発連合の銀行口座が明記されている。このデモも回を重ね、ロゴマークもすっかり馴染みのものとなった。ネットで履歴をたどると、2014年6月に開催されている形跡がうかがえるが、反原連のHPでは2015年3月の時点から事務局に入っている事実が確認できる。日比谷の野音が会場で、志位和夫が連帯の挨拶で壇上に立った。このときの参加者数は主催者発表で1万4000人となっている。一昨年2015年は3月と7月と10月に開催され、昨年2016年は2月と6月に開催されている。共産党が準備と動員に深く関わっていることが察せられる取り組みだ。

c0315619_18001740.jpgほぼ1年前の2016年2月に開催された安倍政権NOのデモについて、赤旗に記事があり、主催者発表で1万人の参加が報告されている。場所も同じ渋谷で、野党各党の代表が顔を揃えていて、今回のデモとほぼ同じ中身と性格のものと言っていい。わずか1年で規模は5分の1に減ってしまった。2015年3月は1万4000人、2016年2月は1万人、2017年1月は2000人。2年前と比べると、7分の1という数に激減している。どうしてこのような顛末になったのだろう。内実を分析する必要があるが、私には一つの仮説がある。それは、主催者発表の数字の水増し率を小さくしたという推測だ。昨年と比べて動員数が減ったことは間違いないが、それでも、共産党の組織が周到に準備し、しかも歴史的な意義のある党大会に合わせて開催するデモで、前年同期比で5分の1の規模に縮小してしまうという事態は考えられない。通常、左翼系のデモというのは、実数の2倍から3倍を主催者発表としてマスコミに伝えていた。戦後最大の爆発となった60年安保のときは、主催者発表で33万人、警視庁発表で13万人という数字が残っている。実際はその中間だろう。ところが、2012年の官邸前デモのときから、事務局を仕切るしばき隊(反原連)がこの不文律を破り、論外な水増しの数字を公表し始めた。

c0315619_18003255.jpgサンデーモーニングの関口宏が顔をしかめて苦言を呈したことは、われわれの記憶に新しい。2012年より水増し率は5倍から10倍となり、例の2015年8月30日の安保法制反対集会の際も、SEALDsとしばき隊は「35万人」などという途方もないデマをツイッターで捲き散らして得意になっていた。SEALDsのデモの主催者発表値は、どれも信じられない水増しの数値がまかり通っている。この点については、拙著『SEALDsの真実』でも指摘したとおりだが、2015年夏の国会前のSEALDsのデモの人数は、7月15日が10万人、7月24日が7万人などと発表されている。金曜夜の報ステで国会前の映像を出していたが、この数字は完全に出鱈目で、どう見ても実数は10分の1しかない。しばき隊が、2012年から始めた誇大宣伝の手法を驕慢に繰り返した図だ。数字を10倍に膨らますしばき隊の手法が、一緒にデモをやっている左翼の中で、あるいは共産党の中でどう議論され顰蹙されていたのかは分からない。だが、これは明らかに異常な政治であり、左翼の正統な方法の転覆だった。今回、安倍政権NOのデモの人数を2000人とし、敢えて正直な申告に出て、昨年の5分の1の恥を受忍した事情と理由を考えるとき、そこに内部での力関係の変化を考えざるを得ない。

c0315619_18004777.jpgすなわち、5倍から10倍に水膨れさせて平然としてきたしばき隊の詐術をやめ、従来の左翼の常識と方式に戻り、実数の2倍から3倍を主催者発表の掛け率としたという真相だろう。この意味は小さくない。昨年の「安倍政権NO」のデモでは、中野晃一と香山リカが前面に出ていて、しばき隊主催を示威する趣向になっている。今回のデモを報じる毎日新聞の記事には、しばき隊関係者の名前がない。どうやら運営の主導権が、しばき隊から党都委員会に移ったのではないか。そう想像すると、水増し率に変化が生じた原因が納得できる。楽観的観測かもしれないが、飛ぶ鳥を落とす勢いだったしばき隊に斜陽と落日が見えてきている。人数の水増しの程度は別として、昨年と比較してこのデモが低調だったことは、報道したマスコミが毎日のみである事実からも頷ける。昨年2月のデモは、毎日だけでなく朝日とNHKも報道していた。今回は朝日とNHKの記事がない。東京新聞の記事も見つからない。昨年2月に開催されたデモは、2か月後の4月下旬に行われる北海道5区補選に向けての景気づけのイベントだった。今年、1か月早く前倒ししたのは、共産党大会にタイミングを合わせたのが動機の第一だが、解散総選挙が近いという事前の情勢観測も影響したに違いない。

c0315619_18010353.jpg共産党大会のあった翌日(1月16日)、JNNの世論調査で安倍内閣の支持率が67%という数字が出てネットで衝撃が走っている。2013年11月以来だと言う。第二次安倍内閣が発足して1年後の、株価が上がってアベノミクスが快調だった頃の水準だ。4年も経った政権で、かくも高い支持率が維持されているのは驚異と言うほかない。政策が支持された結果というよりも、他に選択肢がなく、支持を移動させる野党(あるいは与党内勢力)の受け皿がないため、このような惨めな政治状況で固まってしまった。2015年の安保法制の政治戦の後、マスコミで安倍晋三を叩く声が絶たれ、報道体制が翼賛化され、国民の中で政権批判の意識や感覚が芽生える契機が消えた。民進党は日を追って国民の期待を失っている。「野党共闘」に支持が集まらないのは、民進党が政権交代の主体として認められなくなったからで、言わば用済みの政党になったからに他ならない。政策が自民党と同じだから、自民党でいいやという認識に帰着した。民進党と共産党とは政策が異なるから、一緒にやれないことを国民はよく承知している。民進党にせよ、共産党にせよ、他の弱小二党にせよ、「野党共闘」というのは、自らの生き残りの方策に汲々としているに過ぎず、その実情を国民は見抜いている。

だから「野党共闘」のモメンタムが上がらない。時間が経つほどに逆に下がっていく。われわれは2015年夏に戻って、このときの重大な失敗と過誤 - SEALDsを主役にして担いだこと - を謙虚に見つめ直し、そこから真摯に出直さないといけないだろう。しばき隊の政治を清算する必要がある。



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by yoniumuhibi | 2017-01-16 23:30 | Comments(0)


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