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陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ

陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14560360.jpg安倍晋三の真珠湾訪問とそれに関する一連のマスコミ報道には、強い違和感と脱力感を覚える。この噴飯で侫悪きわまる猿芝居に対して、何も反論や抵抗をせず黙って見ている左翼や右翼に対しても、言いようのない不信と軽蔑を感じる。真珠湾での安倍晋三のスピーチのキーワードは「和解」だった。朝日も、NHKも、この真珠湾の政治を宣伝しまくって、「和解、和解」と滑稽に騒ぎ続けている。いつから日米関係で和解がイシューになったのか。われわれは、米国との歴史認識で和解を求められる立場にいつから立ったのか。戦後の二国間関係で和解が問題になっているのは、中国であり、韓国である。米国との間で和解が政治案件に上った記憶はなく、何で今さらこんな的外れな言葉を拾い上げ、上から押しつけなくてはならないのか得心がいかない。日米戦争で和解の宿題が残っているとすれば、米国による広島・長崎への原爆投下であり、10万人が焼き殺された東京大空襲であり、1945年に行われた米国による非人道的な大量殺戮の戦争犯罪だろう。米国の公式謝罪が必要であり、日本はそれを求めなくてはならない。真珠湾攻撃の歴史から「和解」という問題が提示されるのは、意外で唐突であり、政府とマスコミがいくら強調しても素朴に腑に落ちない者は多いはずだ。



陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14563537.jpg日米戦争の開戦となった真珠湾攻撃についてマスコミが歴史を語るとき、本来、そこで説明しなくてはいけないのはハルノートであり、開戦直前の緊迫した日米外交の真実である。今回、ハルノートについてマスコミは一言も触れなかった。1941年に始まった日米戦争が、形の上では日本による一方的で不意討ちの侵略戦争でありながら、日本政府が真珠湾攻撃について謝罪の必要なしという立場を維持しているのは、一つには開戦に至るまでの交渉経緯があり、ハルノートの歴史についての判断があるからだろう。結論を言えば、ハルノートは米国による交渉打ち切り宣言であり、事実上の開戦通告であり、11月26日に野村吉三郎・来栖三郎の両大使との会談でハルノートが手交された後は、日米間でいつ戦争が勃発してもおかしくない局面に至っていた。ハルノートの中身を整理すると、米国の要求は次の3点に要約される。(1)中国・仏印からの全面撤兵、(2)汪兆銘政権の否認、(3)日独伊三国軍事同盟の実質廃棄。これは、当時の日本(の支配層)には受諾も妥協もできない無理な要求に他ならない。ハルノートが最後通牒であるという歴史認識は、われわれには一般的なものだし、客観的に検証すれば、外交的・安全保障的にその性格のものだと誰もが断定するだろう。

陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14571989.jpgハルノートは、8月から積み上げてきた戦争回避のための日米交渉を、一瞬にして白紙化して終わらせる米国による卓袱台返しの一撃だった。ハルノートを受け取った外相の東郷茂徳は、後の手記で回想してこう言っている。「眼もくらむばかりの失望に撃たれた」「日本の極東における大国たる地位を捨てよと言うのである、然しこれは日本の自殺に等しい」「この公文は日本に対して全面的屈服か戦争かを強要する以上の意義、即ち日本に対する挑戦状を突きつけたと見て差し支えない」。この東郷茂徳の感想は、歴史を公平に見て妥当なものと言えるだろう。ハルノートを受け、12月1日の御前会議で対米開戦が正式に決定され、昭和天皇から杉山参謀総長と永野軍令部長に作戦実施の指示が出る。12月2日、北太平洋上を航行中の空母機動部隊に、12月8日に作戦決行と大本営発の正式命令が電文で伝えられた。これより先、空母機動部隊は択捉島単冠湾を11月26日に出航、攻撃決行の場合の暗号は「ニイタカヤマノボレ」、作戦中止の場合は「トネガワクダレ」だったという。真珠湾攻撃は、DCでの対米交渉と平行して両睨みで準備され進められた軍事作戦で、もしハルノートの決着にならず、米国が譲歩して交渉継続になっていれば、昭和天皇も作戦中止を指示しただろう。

陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14573182.jpg11月29日、ハルは駐英米国大使にこう言っている。「日米関係の外交は終わった。今や問題は陸海軍の手に移った」。対日交渉の外交の仕事は終わり、あとは軍事だけだと言っている。一外交官が、独断で戦争を決意した最後通牒など出せるはずがなく、ハルノートが大統領のルーズベルトの意思決定だったことを示している。この時期、のちに連合国となる全ての国(英国、中国、ソ連)が米国の対日参戦を切望していて、ルーズベルトの決断と米国民への説得と扇動を期待し、米国をそこへ持って行く外交と諜報に懸命になっていた。11月27日、ルーズベルトはスティムソン(陸軍長官)を通じて現地司令官に「最後的警戒命令」を出し、「日米交渉はすでに終わり、日本の侵略的行動がここ数日以内に予想される」とする「戦争警告」を発した。一部に、日本の暗号電文が米国に解読されていて、真珠湾攻撃を事前に予知していたという説もあるが、その点はまだ明確な証明が与えられていない。ただ、ルーズベルトが日本との戦争を覚悟し、フィリピンであれ、ハワイであれ、日本側からの第一撃を予定し待機していたことは疑いようもなく、ハルノートの時点で両国の次の運命は決まっていた。すなわちルーズベルトは、日本軍の奇襲があった場合、次に何をするか策を練っていたということだ。

陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14574529.jpg官邸の配下にあり、安倍私設放送局のプロパガンダを撒いているNHKは、今回の政治の説明にあたって、ハルノートには一切言及しないのに、「恥辱の日」だの、「Sneak Attack」(騙し討ち)だの、「Remember Pearl Harvor」だのの歴史は、モノクロ映像で食傷するほど丁寧に教えてくれる。これは何をしているかというと、米国側から見た真珠湾攻撃の歴史認識を日本人に刷り込んでいるわけだ。日本人からすれば、最後通牒を突きつけて戦争やむなしの状況に強引に誘導したのは米国ではないかという言い分があり、その事実を公平に照らせば、「騙し討ち」の主張は明らかに根拠を失う。不当な言いがかりと決めつけそのものだ。だが、ルーズベルトは対日戦争を正当化し、国民を戦争の熱狂に引っ張り込むため、反日ナショナリズムを燃え上がらせる演説弁辞を周到に細工した。日本と戦争を始めれば、自動的に日本が軍事同盟を結んでいるドイツと戦争に突入できる。チャーチルの要望に従って英国を助けられる。そのときの政治工作の言説が、「恥辱の日」であり、「騙し討ち」であり、「真珠湾を忘れるな」のエモーショナルなフレーズの連呼だった。これらの言葉は、戦争のために作られたプロパガンダの部品である。そうした悪辣なプロパガンダが、今でも歴史認識として米国で生きているのだ。

陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14580289.jpgそれは、「原爆投下が戦争を終わらせた」の言説と同じである。歴史を捏造した政治言語だ。客観的にも不当で、われわれ日本人には到底受け入れがたい歴史認識だが、米国は今でもそれを押し通していて、原爆投下を正当化している。「恥辱の日」や「負の歴史」は、「原爆投下が戦争を終わらせた」と構造的にセットになった歴史認識であり、米国民に正義の戦争だと確信させるところの、米国の自己正当化の身勝手な言説体系に他ならない。だから、日本人が「原爆投下が戦争を終わらせた」の言説を認めないのであれば、「恥辱の日」の言説も認めてはいけない。それをそのまま受け入れて、米国人と同じ歴史認識を自分のものにする態度になってはいけない。米国ナショナリズムの観念に不要に内在してはいけない。それは、自らを植民地奴隷に改造し洗脳する自滅行為そのものだ。NHKは、「原爆投下が戦争を終わらせた」については、被爆者に配慮し、その歴史認識に抵抗を示すくせに、今回、「恥辱の日」については痛痒なくそのまま認め、安倍晋三の陳腐な「和解」を合理化する回路へと繋げた。「恥辱の日」のイデオロギー性については無視し、留保や異論を付することなく、米国側の歴史認識を丸ごと受け入れて安倍晋三を賛美した。「恥辱の日」があるから、原爆投下も東京大空襲も米国人には正当化されるのである。

戦争の始まりの時点で誤った歴史認識を持っているから、戦争の終わりの歴史認識も誤ったまま補正されないのだ。
厳密に言えば、ハルノートで「騙し討ち」に出て来たのは米国ではないか。外交は狐と狸の化かし合いでもあるから、それを不当と論うつもりはないけれど、ハルノートから真珠湾攻撃までの過程にせよ、ソ連に和平仲介を頼んで裏切られた件にせよ、ナイーブに騙されて操られているのは昭和天皇と日本政府の方なのだ。

陳腐な「日米和解」プロパガンダ - ハルノートの歴史認識を隠すマスコミ_c0315619_14583761.jpg

by yoniumuhibi | 2016-12-28 23:30 | Comments(1)
Commented by my29my at 2016-12-28 16:31
下記、オリバー・ストーン監督、米日韓加中英豪沖台の専門家など53名 真珠湾訪問に際し安倍首相の歴史認識を問う
安倍首相への公開質問をご参考にしてください。
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2016/12/oliver-stone-and-52-scholars-and.html


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