国連は中立だったのか、欧米はシリア内戦を止める意思があったのか

c0315619_17283627.jpgシリア政府軍が東アレッポをほぼ制圧したのは12日だったが、翌日の13日に虐殺事件が起き、政府軍と親アサド派民兵によって82人の民間人が殺害されたという報道が出た。犠牲者には女性11人と子供13人が含まれているとされ、国際社会から大きな怒りの声が起こり、世界各都市でロシアを糾弾するデモが行われた。この虐殺については、国連人権高等弁務官事務所が声明を発表しており、その信憑性を疑うということは普通の感覚ではできないものだろう。だが、19日付のロシア・インサイダーの記事は、虐殺の証拠が何も出てないではないかと反論を上げている。言われてみれば、目撃者が複数いて、数が具体的にカウントされているにもかかわらず、路上の遺体の写真とか、射殺の現場を遠方から撮影した動画とかを未だ見たことがない。目撃者の証言も私は目にしていない。国連人権高等弁務官事務所は、「信頼できる複数の目撃者が証言した」と言うのだが、果たしてどこまで正確な根拠を確認した上での断定なのだろう。5年間の内戦の間、あれほど頻繁にSNSを使った映像で政府軍の非を証明し、西側に告発してきた反政府軍側の「市民」が、この「虐殺」については1枚の写真も開示せず、被害者の特定もしないというのは奇妙なことだと思わざるを得ない。



c0315619_17285950.jpg国連人権高等弁務官事務所が判断の根拠としている「信頼できる複数の目撃者」とは、果たして何者なのだろう。ここで気になるのは、「ホワイト・ヘルメット」というNGOの存在だ。中東情勢のテレビ解説でよく見る青山弘之(東京外大)が、10月にニューズウィークに記事を載せていて参考になる。これを見るかぎり、このNGOの正体はきわめて怪しい。われわれが普通に連想するところの、紛争地で現地の人々の救済のために尽力している公平で中立な人権団体とは違う。国際的人権団体という非政治的な外貌や名前を利用して、紛争の一方の側である反政府軍を勝たせるべく、諜報活動をしたり、海外から支援を調達したりの暗躍をしている工作機関の性格が濃い。ひょっとしたら、アレッポの国連の出先そのものが「ホワイト・ヘルメット」と密接な繋がりを持っていて、「ホワイト・ヘルメット」に操縦されているか、あるいは両者が癒着し結託しているのではないかとすら疑ってしまう。青山弘之の説明から推測して、「ホワイト・ヘルメット」が英国のMI6と繋がっていることはほぼ確実と考えていいだろう。「ホワイト・ヘルメット」の活動家は、「シャッビーハ(政権支持者)の遺体はゴミ箱に棄てる」などと堂々と言っていて、人命救助団体の名に似つかぬ異常さに驚かされる。

c0315619_17291862.jpgシリア内戦については、国連の立場と態度そのものが疑わしく、私は理解も納得もできない。潘基文はシリア内戦を全く止めようと努力しなかった。欧米サイドに寄り添って状況を見ていただけであり、和平調停のフリ(フェイク)をルーティンワークのように繰り返しただけであり、欧米とロシアが介入して戦争を拡大するのを放置・黙認していただけだった。国連のリーダーシップはどこにもなく、調停者としての公平中立性はどこにも担保されていなかった。シリア和平会議というのは何度も開かれたが、EUと米国が主導権を誇示して「和平」を演出するパフォーマンスの機会だけであり、まともに和平プロセスの提案がされたわけでもなく、誰か指導者が真剣に割って入るということはなかった。私はモゲリーニに期待したのだけれど、彼女はイランの核問題解決にはそれなりに熱心で、大統領がローハニに変わった機会を捉えてイニシアティブを発揮、よく米国をイランとの国交正常化に導いたが、シリアの方はさっぱりだった。無能だった。ここでこんな愚痴を言っても失笑を買うだけだけれど、アサドに直談判して大統領を隠居させ、代わりに、英国で生まれ育って「砂漠の薔薇」の異名で人気のある、美貌の妻のアスマを代理に立てる案ならば、英国もフランスも一興を感じて妥協に応じ、停戦が成って次のステップに移行できたのではないかと、私は未だに持論に未練を持っている。

c0315619_17293584.jpg他にどんな策があっただろう。潘基文は無責任で、シリアの人々が何万人死んでも意に介さず、欧米の後ろを下男の従者のようにヘコヘコ歩いていた。欧米はどこまでも傲慢で、アサド政権を全否定したまままともに向き合おうとせず、いずれカダフィと同じ運命になるだろうとタカを括っていた。EU主導のシリア和平会議は名ばかりで、反政府軍の態勢立て直しを図るための巧妙な時間稼ぎであり、交渉で停戦合意が実現する有効な策を事務局は用意せず、その必要すら感じていなかった。アサド政権を国際的に吊し上げる機会を作り、アサド政権の評判と自信を失わせるためだけの外交だった。結果的に、ロシアが武力でシリアに介入し、力でアサド政権を守り、反政府軍を屠って内戦を終わらせた。プーチンの胆力と腕力で平和の見通しがついた。最近、自由シリア軍という言葉がマスコミに出ない。最早、自由シリア軍は有名無実の存在で、東アレッポを死守していた(東アレッポに蟠踞していた)のは、アルカイダ系のヌスラ戦線だったというではないか。欧米は、アサド政権よりヌスラ戦線の方がいいのだろうか。サウジや湾岸諸国からすれば、シーア派を駆逐してスンニー派のシリアに塗り替えたいだろうから、それでもいいかもしれないが、MI6やCIAがヌスラ戦線に資金とメディアで支援していたなどと、あまりに異常な話ではないか。

ロシアの直接武力介入がなければ、内戦は泥沼化したまま、さらに5年は続いていただろう。死者は100万人に達したかもしれない。



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by yoniumuhibi | 2016-12-22 23:30 | Comments(3)
Commented at 2016-12-23 00:54 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ローレライ at 2016-12-23 19:58 x
『トランプ大統領産みの親、プーチン』『ロシアが武力でシリアに介入し、力でアサド政権を守り、反政府軍を屠って内戦を終わらせた。プーチンの胆力と腕力で平和の見通しがついた。』この現実がアメリカ民主党政権の欺瞞を暴露した!『トランプ大統領産みの親、プーチン』となる。
Commented by ローレライ at 2016-12-30 15:23 x
『シリア全土で停戦、』トランプとプーチンが米露関係修復して、オバマがシリア政策失敗したと発言したら、あっさり停戦。
今まで何だったのか、オバマを問い詰めたいわ。
そしてロシアだけ批判してた人権団体には、何が平和だよと言いたい。
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