自民党と民進党のTPP採決合意の政治 - 山口二郎の民進党弁護に呆れる

c0315619_15280470.jpg昨日(11月1日)の正午ごろ、民進党と自民党がTPP承認案の採決を11月4日で合意したというニュースが速報された。朝日の朝刊1面に、「TPP法案、4日衆院通過」と見出しがあり、いよいよ強行採決かと思っていた矢先、採決合意の報が伝えられて驚かされた。今国会はTPP国会と呼ばれていて、TPP批准が最大の争点であり、与野党が激しく衝突する構図になっていた。夜の報ステの映像を見ると、午前中の特別委で阿部知子が質疑に立ち、まだ審議は全体の10%もされておらず、採決などとんでもないと言って政府を批判している。特別委で民進党の議員が「採決反対、審議継続」を唱えているとき、民進党の山井和則と自民党と自民党の竹下亘が会談し、あっさりと11月4日採決で合意して発表した。おそらく、阿部知子たちは寝耳に水で、何も事前に知らされてなかっただろう。強行採決必至と見られていた対決議案のはずのTPPが、どうして一転して採決合意の顛末となったのか。その理由について、納得できる説明をしているマスコミ報道はない。後藤健次の話では、11月1日の採決を遅らせたことで、今国会会期中の自然成立を阻止したことに意義があり、参院での審議が名目だけのものでなくなったなどと、冗談みたいなことを真顔で言っていた。



c0315619_15282322.jpgこれは全く説明になっていない。会期を延長すれば30日後の成立になるからで、与党は会期延長すればいいだけだ。採決合意を正当化できる理由にはならず、子供騙しの屁理屈にもならない。民進党の執行部が、あれほど対決姿勢を見せていたTPPが、どうして急転直下で採決合意に変わったのか。今日(2日)の朝日の政界面にも説明はなく、真相は藪の中だ。誰もが予想していたのは、今週末に国会で騒動があり、野党議員団が「審議続行」のプラカードを持って委員会室に殺到し、議運委の理事会室を塞ぎ、肉弾戦の悶着の末に強行採決が行われて、深夜未明に本会議採決という推移だった。マスコミも、国民も、野党議員も、誰もがその絵を想定していただろう。民進党執行部は、意表を衝いて採決合意に出た。その必然性はなく、理由は憶測するしかない。おそらく、自民党と民進党との間でバーター取引があり、自民党側が与えた対価は、(1)蓮舫の二重国籍問題の参院での追及見送りか、(2)残業代セロ法案の先延ばしか、(3)解散総選挙の取り止めの約束手形か、そのあたりが真相だと見当をつけてよいだろう。他に思いつく条件がない。蓮舫については、二重国籍問題とは別の致命傷になる醜聞が噂されていて、安倍晋三はそのカードを切って解散に出るのではと囁かれていた。

c0315619_15283706.jpgいずれにせよ、民進党のTPP採決合意の決定は説明できないもので、国民に対する恥知らずな裏切り行為である。報道が出た後、ネットの中では共産党支持者による民進党叩きの怒りの声が充満した。そんな中、今は「野党共闘」の顧問学者に収まっている山口二郎が、かくTwで言って民進党の擁護に出たのである。「これだけ与野党の議席差が大きい状況では、政府与党の提出した案件を可決されることは、野党の罪ではない。TPPの問題点をどこまで追及できたかは野党の力量の表れ。これほどの重要案件でメディアが審議の中身をほとんど伝えないというのは、記憶がない」。民進党の対応は仕方ないと弁護し、批判の矛先をマスコミに向けるよう促している。野党はよく追及したが、マスコミの報道が不十分だったため反対世論が沸き起こらず、TPP議案の可決に持ち込まれたのだという釈明だ。野田佳彦の代弁をやっている。だが、本当に悪いのはマスコミなのか。野党は正しく国会で追及する任務を遂行したのか。私は、山口二郎に同意しない。ここに、今国会でのTPP特別委の活動を記録した証拠がある。衆議院が公開している資料だ。その中身を検証しよう。9月26日に臨時国会が招集され、その日にTPP特別委が設置、委員の選任と議運理事の指名が行われた。

c0315619_15285058.jpgそこから、10月14日、17日、18日、19日、21日、25日、27日、28日と委員会が開催され、8回分の議事録(要約)が出ている。このうち、民進党と共産党の議員が出席したのは5回で、19日、21日、25日の3回は欠席している。審議が佳境に入るとき、18日夜に飛び出した山本有二の失言に反発し、民進党と共産党は審議を拒否、大臣辞任を求めてボイコットした。結局、審議拒否は長続きせず、野党は27日から委員会に戻るが、審議時間を埋められ、採決をお膳立てする参考人と公聴会の進行を止められず、採決日程が焦点となるだけのTPP国会に追い詰められていた。委員会で本格論戦を交え、有効な質疑討論をして政府を追い詰め、世論を喚起する意思があったなら、19日から25日までの大事な一週間を審議拒否で潰してはいけなかっただろう。圧倒的な数を持つ安倍政権は、10月中の衆院通過で臨んでいて、会期延長を見越しても僅かな日数しか採決を延滞できないことは歴然だ。つまり、実質的な審議期間は半月しかない。そんな大事な時間の真ん中の一週間を、野党は欠席で空白にしてしまった。最初からやる気がないのは明白ではないか。共産党は、大事な半月間の審議で一度も見せ場を作ることがなかった。期待させた爆弾の投下もなかった。志位和夫の格調高い講義もなかった。

c0315619_15291376.jpg野党はサボタージュした。このような事実経過を前に、山口二郎が言うような野党擁護とマスコミ叩きの弁が通用するだろうか。確かにマスコミは、その半月間、安倍晋三と菅義偉の指示どおりに「小池劇場」にフォーカスし、毎日毎日高い服を取っ替え引っ替え着飾ってパフォーマンスする都知事にテレビの報道時間の大半を割いたのは事実だ。だが、国民は決してTPPに無関心だったわけではない。野党が有効な質疑を組み立て、共産党が爆弾の投下や知的な講義を提供し、国会を騒然とさせるか粛然とさせるかすれば、それは、視聴者にはやや食傷気味の「小池劇場」をリプレイスして、報ステやNEWS23のトップニュースになって国民の注目と関心を集め得たのである。昨日(2日)夜、この採決合意を批判する穀田恵二の映像が出たが、補選後に民進党に苦言を垂れた小池晃のときと同じく、その顔はニヤニヤと笑っていて緊張感がなかった。事の重大さに直面して蒼然としているのは山井和則の方で、穀田恵二の方にそれはない。おそらく、事前に安住淳から説明を受けていたのだろう。共産党の方は、TPPで猛然と反対論を演出すると、民進党との政策の違いが露骨に出て、すなわち「野党共闘」が危うくなるため、TPPの国会論戦は捨てている。「野党共闘」の保全が第一で、国対は完全に民進党の下僕になって追従を決め込んでいる。

c0315619_15292854.jpg確かに、状況としては、安倍与党の数の力の前にTPP承認の阻止は不可能だろう。だが、この問題について、山口二郎のように簡単に「仕方がない」と言い捨てることは私にはできない。TPPの議論は6年間も続いてきた。私はずっと反対と阻止を言い続け、輿石東の議員会館事務所に電話攻勢をかけるようにTwで訴え、自分も実際に応対に出た秘書とやり取りし、そのことをTwで報告した。TPPの6年間の間に、宇沢公文が鬼籍に入った。TPPは小さな問題ではない。私と山口二郎では立場と前提が違う。民主党の顧問学者で、小沢一郎の粛清追放にも声援を送っていた山口二郎が、民主党の中で最も近い関係だったのは菅直人である。菅直人こそ、首相のときTPPの旗振り人となり、「バスに乗り遅れるな」と扇動した張本人だ。その1年前の2009年の総選挙では、農家戸別補償政策を言い、日本の農業を再建する、自給率を高める、農家の農業を守ると真顔で言い、農村の保守票を民主党に集めていたのが菅直人だった。菅直人がTPP参加を突然言いだしたとき、山口二郎がそれに反対したという情報に接していない。TPPの議論と関心はネットでも低調で、もう決着がついたものという受け止めが強い。不思議なのは、この長かった政治戦に負ける側に敗北感がないことだ。悲愴感がなく、心の傷つきがないことだ。TPP後に自分の生活と日本の社会がどうなるか、それを想像して苦しみ悩むという情景がないことだ。

そのことが不思議でならない。


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by yoniumuhibi | 2016-11-02 23:30 | Comments(2)
Commented by さくら at 2016-11-02 21:23 x
日本政府が私たち国民の生活を守ってくれている実感が無い。むしろ、増税増税カットカットで景気が悪く、苦しめられている。国会は本質的な議論をせず、党派根性丸出しで茶番の与野党対立をして騒いでいるだけ。公約なんかあって無きが如し、選挙をしても民意は実際には反映されない。

日本国民は、すでに半ば主権者の地位を失っているようなもので、最高意思決定機関が日本政府・国会からTPP条約体制に代わろうとしていることに実感は持てないし、どうしていいのか分からないのでしょう。今は、他力本願ですが、民主主義がより機能している米国の国民の力で阻止してもらうしかないのかもしれません。

日本国民としては、まず日本で、民主主義が機能する政府・国会を再構築しないことには、TPPがあろうが無かろうが、いずれにせよ展望がありません。
Commented by 私は黙らない at 2016-11-03 02:51 x
先週土曜、TBS報道特集はTPP特集でした。視聴後、どうも釈然としません。さくらさんもコメントしているようにTPPは、最高意思決定機関が国家から企業にとってかわることです。単に、日本の農業の競争力を高めればよいとかいう問題ではないはずだ。私はそのコンシクエンスを考えると、とても怖い。
今、採決の日程でもめているが、自民党は何が何でもアメリカ大統領選までに採決を強行し、既成事実を作ってしまいたいのだと思う。
それと、横道にそれますが、日本の方は、欧米の方が民主主義が進歩しているとか、より機能しているとか思っておられる方が多いようですが、この欧米型民主主義に対する無邪気な信頼は危険です。選挙に必要な巨額の資金を企業からの大口献金に頼り、当選すれば献金者のために働くというのは、日本よりむしろアメリカの方がひどいかもしれません。



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