補選の結果と「野党共闘」 - TPP国会で論戦せず欠席する共産党

c0315619_15420759.jpg10月23日に行われた二つの衆院補選で自民党系の候補が圧勝し、「野党共闘」の候補が惨敗した。その一週間前、新潟の知事選で野党候補が事前の予想を覆して勝利し、反安倍・左翼リベラルの陣営は大いに沸き立ったが、その昂奮はわずか一週間でかき消される政治の展開となった。政局の主導権は再び安倍晋三の手に握り直された感がある。新潟知事選の直後は、ネットの中は「野党と市民の共闘の勝利」のフレーズで溢れ、この勢いで衆院選も「野党共闘」が制するのだと咆哮するTwが充満していたが、今は連合叩きや野田佳彦叩きの憎悪のTwが散乱している。補選を落とした責任のなすりつけに議論が向かい、神津里季生が槍玉に上がっている。不思議なのは、新潟知事選に蓮舫が応援に行ったのも野田佳彦の指示だし、補選敗北後に会見に立って批判を受ける役割を演じているにも野田佳彦で、すべて野田佳彦が決めて党を動かしているにもかかわらず、それを知ってか知らずか、しばき隊を筆頭とする左翼が蓮舫を善玉にし、野田佳彦を悪玉にし、党執行部に善悪二つがあるように見なしていることだ。自分が悪役になることで蓮舫への風当たりを弱めている野田佳彦の世論対策だが、しばき隊は野田佳彦の芝居に乗って騒ぎ、蓮舫を左の救世主のように期待を寄せている。



c0315619_15422159.jpgここで指摘しないといけないのは、補選敗北後、民進党の対応を批判している小池晃の表情と口調に怒りがなく、緊張感がなく、ヘラヘラと笑いながら会見している面妖な様子だろう。共産党は、野田佳彦の二股芝居をよく承知し了解しているのであり、「政党間の信義の問題になる」「本気の共闘が実現できなかった」などと口先では憤っているけれど、腹の底では何も痛痒に感じてないのだ。万事オーライなのである。共産党には自信があり、年明け解散で衆院選が打たれるとなれば、民進党執行部には時間がなく、小選挙区の現職は共産党票が喉から手が出るほど必要で、結果的に、どのような形であれ「野党共闘」の選挙に着地せざるを得ないだろうという目算がある。連合が反共の音量を上げて派手に暴れても、それは民進党支持者の右派層を宥めるパフォーマンス(見かけのアリバイ政治)にすぎず、目前に迫った選挙の小選挙区は「野党共闘」の態勢でしか臨みようがなく、共産党を切り捨てる覚悟が民進党にあるわけがないと達観しているのだ。その余裕の証左が、小池晃の会見でのヘラヘラした態度の「民進党批判」である。ここには、二つの補選を落として悔しいとか、共闘に砂をかけた民進党の背信が許せないとか、諸悪の根源の連合を糾弾せよとか、そういう断固たる意識はまるでない。

c0315619_15423267.jpgすなわち看取すべきは、共産党に次の選挙に勝つという意志がないことである。共産党の次の選挙の目的は、「野党共闘」を維持することであり、勝とうが負けようが関係なく、小選挙区で独自候補を降ろして、民進党候補を野党統一候補として票を提供する構図が保全できればいいのだ。政策協定や共通公約は二の次であり、それはお飾りの看板にすぎず、選挙の間際に間に合わせで整えればよいのである。民進党の方は、民進党の独自候補が党の政権公約で戦ったと言い、共産党の方は、「野党共闘」の統一候補が反安倍の共通政策で戦ったと言い、どのようにも説明できる玉虫色の形にする。共産党の真の狙いは、そうやって何度も選挙を繰り返す中で、民進党の衆院小選挙区や参院選挙区の現職が、あるいは民進党の県連組織が、共産党票なしでは選挙できない体質と前提に変えてしまうことで、つまりは、自民党の選挙にとっての公明党の位置に収まることだ。民進党の体内に完全に潜り込み、民進党の臓器の一部になり、それなしでは呼吸も消化も運動もできないような存在になることである。そうすることで、二大政党制のシステムの中で共産党を生き残らせることである。それがホンネの党利党略だ。そしてまた、高齢化と機関紙読者減少によって火の車の党財政の中で、選挙の出費を節約することができる。

c0315619_15425748.jpg共産党の目的は組織のサバイバルであり、目的を実現する手段が民進党への抱きつきであり、それを美称化したのが「野党共闘」に他ならない。共産党と民進党とは基本政策が180度異なる。憲法も、日米安保も、消費税も、TPPも、原発も、辺野古も、掲げる政策が根底から対立した関係にある。だからこそ、共産党は自らを「確かな野党」だと呼んできたし、少なくとも政策の観点からはそれは事実だった。基本政策を並べれば、民進党の政策の中身は自民党とはるかに接近していて、共産党とは非互換なのであることが自明だ。対立軸は民進党と共産党の間に引かれ、自民党と民進党の間には引かれない。衆院選は政権選択の選挙であり、基本政策が異なる二党が政策の違いを詰めないまま候補者を一本化するのは有権者を欺く野合に違いない。実のところ、共産党は政策についての転換は言ってないが、国会運営については昨年から大きく変容し、民進党と常に歩調を合わせるようになった。例えば、今国会の目玉であるTPP法案については、民進党と一緒に審議拒否を続けている。従来の共産党は審議拒否はしなかった。必ず委員会に出席して質疑をやった。TPP法案について、世論の賛否は二つに分かれているが、審議せよという要求では国民世論は一致している。たとえ結果的に可決成立になるとしても、国民は国会の審議を見たい。

c0315619_15462259.jpgこれまで、こうした国民注視の重要法案の国会でのヤマ場では、共産党は隠し球の爆弾を炸裂させてきたのであり、マスコミが報道して世論が盛り上がり、一時的にせよ政府与党を窮地に追い込む瞬間を作ってきた。真打ちの志位和夫が質問に立って華麗な見せ場を作った。入念に論理を設計した秀逸な討論で諄々と問題点を衝き、法案の矛盾を浮かび上がらせ、饒舌な安倍晋三を沈黙させた。日頃は汚い野次を飛ばして喧しい自民党議員団の口を塞ぎ、国会を粛然とさせてアカデミーの講義の場に変えてきた。TPPは国家の基本に関わる重要問題であり、2010年から6年間も侃々諤々の論争を続けてきたが、ここで国会の議論が最後になるのなら、志位和夫が記憶に残る名講義をやって欲しいものだ。それが国会中継を見守る庶民の偽らざる気分だろう。だが、共産党はそうした見せ場を作ろうとせず、民進党のコバンザメのように国対で手を握り、委員会を欠席して国民不在のTPP国会にしてしまった。TPPを国会で議論する最後の機会なのに、不毛な空転国会に固めてしまった。これが国民が共産党に期待した姿だろうか。先週からの野党の空転戦略は、TPP法案の強行採決の横暴を演出するための仕掛けであり、強行採決で騒然とする絵をマスコミに撮らせ、昨年の安保法と同じように政権与党の非を責め、年明けの総選挙で有利な争点材料に仕込もうと思惑している。

民進党と共産党の手の内は見えている。TPPでは政策が基本的に異なる二党が、こうすれば、総選挙でTPP問題を問われたとき、「与党による強行採決で成立した法案の撤回」を共通公約にすることができる。自公攻撃で口を合わせることができ、不具合を隠すことができる。その主張を「野党統一候補」の公約の代替物にでき、テレビ討論で綻びなく訴えを言うことができる。安保法のケースと同じだ。共産党はおかしな党になってしまった。国民から遠く離れ、永田町で生息する一政党になった。


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by yoniumuhibi | 2016-10-26 23:30 | Comments(4)
Commented by 私は黙らない at 2016-10-27 01:43 x
世に倦む日々様、本当におっしゃるとおりです。もう、何もいうことはない、そのとおりです。
Commented by 私は黙らない at 2016-10-29 04:37 x
世に倦む日々様、私は最近、日米両国の保守の論客と呼ばれる人の著作、ブログを熱心に読んでいることがあり、我ながら驚いています。これはどうしてか、しばらく考えたのですが、結局、私の政治的立ち位置が変わったわけでなく、アメリカの民主党の変節が原因ではないかと思うようになりました。保守の主張には到底受け入れがたいところもあるのですが、一部保守の言う「反新自由主義」的主張が私の心の琴線に触れるのです。
今の私には、米民主党は、ネオリベ、グローバリズムの擁護者にしか思えません。尚且つ、クリントン候補の挑発的な対ロ発言、財団を隠れ蓑にした不正蓄財、金融業界との癒着、アサンジをドローンで始末したらどうかといった発言にみられる凶暴性には許しがたいものがあります。
一部巨大企業にとって、グローバリズムはまことに都合がよく、税率の低い国での「節税」にはげみ、富を独占する。でも、我々大多数にとってグローバリズムって一体何でしょうか。TPPは断固阻止しなくてはなりません。こんな、巨大企業が国家権力をしのぐようなルール、絶対に許してはなりません。へらへら笑っている場合じゃないでしょう。
Commented by 私は黙らない at 2016-10-29 04:39 x
(続き)クリントンは、今TPP反対と言っていますが、こんなこと信じているアメリカ人なんて誰一人いません。自民党も、これをわかっているからTPPに躍起になっているのです。
繰り返し言いますが、米民主党はもはや、ブルーカラー、中間層の声を代弁する党ではないのです。こうなると、二大政党制というのは、国民にとって、本当に息詰まるようなシステムでしかないのです。
共産党の「公明党化」、私は本当に悲しい、情けない。日本の民進党のモデルがアメリカの民主党だとしたら、今のアメリカの状況を見てほしい。アメリカは自分の支持する大統領候補のシールを車に貼る習慣があるのけど、今年は見事に一台も見たことがない。バーニーのシールを数回(今は剥がし済)、反ヒラリー(註:支持ではない)のシールを2、3回見たきりだ。これが、人々の諦めなのか、無言のプロテストなのか。二大政党制の断末魔を見ているようだ。ひとつ断言できるのは、従来の二大政党によるワシントン政治に人々が辟易しているということだ。日本はここから学ばなきゃいけない。
Commented by ゴーヤ at 2016-11-11 06:13 x
野党共闘に関する見方はブログ主に同感です。今、言われている「野党共闘」の実態は、共産党が勝手連みたいに候補者を一方的に降ろすことによって成り立っている、政策協定抜きの「候補者調整」に過ぎない。選挙後も維持される「共闘」ではない。口頭での政策の一致といっても、候補者調整の妨げにならないものを消去法で選んだに過ぎない。民進党は支援を「頼んだ覚えはない」という態度だから、民進党の候補者が当選しても共産党や他の野党が重要と考える政策を顧みることはない。当選がゴールなのだから。そんな「野党共闘」にのめり込む共産党の幹部は選挙で勝てなくても、「野党共闘を維持した」ことを「成果」と喧伝する伏線を敷いているように思えます。


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