山城博治の勾留決定と再逮捕 - パレスチナ化する沖縄、アラファトとヤシン

c0315619_14271467.jpg先週(10月20日)、山城博治が再逮捕された。容疑は防衛局職員への傷害と公務執行妨害、同時に大和市の牧師(吉田慈)も共犯で逮捕された。沖縄右翼が動画で予告したとおりの結果になった。8月25日にP1裏のテントで起きた事件に関わる容疑で、名簿書類が奪われたとして防衛局側が被害届を出していたものだ。私は、この件での逮捕はないだろうと楽観的な予測を立てていた。その理由は、右翼による動画予告(14日)があった3日後(17日)に、有刺鉄線切断の器物損壊で現行犯逮捕という展開になっていたからである。もし、右翼が予告で言っていたように8月25日の紛争の件で警察が逮捕状を取っていたのであれば、わざわざ別件で現行犯逮捕の手を回して身柄拘束する必要はない。逮捕状を請求して、それを裁判所に蹴られていたから、本人の自供を取るべく別件の逮捕と拘束に出たのだろうと思っていた。右翼の話はブラフでなければ勘違いだろうと甘い見通しを持っていた。だが、どうやらそうではなく、逮捕状も承認・発行されている。園良太のTwによれば、「関東の自宅で逮捕され沖縄に連行される人が出た、家宅捜索も」とある。吉田慈は大和市の自宅で逮捕され、家宅捜索までされている。令状なしにこんな捜査はできない。



c0315619_14273103.jpgだったら何で、慌ただしく別件逮捕などやったのだろうと警察の意図を訝しがっていたら、沖縄タイムスが再逮捕翌日の21日に記事を出し、そこには、那覇地裁が17日の現行犯逮捕(器物損壊容疑)の件で勾留を認めたと書かれていて、この事実にも驚かされた。記事中に弁護士の三宅俊司の説明があり、「警察は一般的に勾留満期で再逮捕する。今回は請求が却下されると見越して再逮捕したのだろう」と言っている。私もこの見方と同じで、17日の現行犯逮捕については20日に裁判所が勾留請求を却下し、それを見越して警察が新しい容疑を仕立てて無理やり再逮捕の挙に出て、再び72時間勾留に持ち込むだろうと考えていた。何度も何度も逮捕と72時間勾留を繰り返し、その都度、裁判所が勾留請求却下という進行が続くと予想していた。そう考えた根拠は、7月にヘリパッド工事が強行されて以降、現地の抗議行動の揉み合いで現行犯逮捕(公務執行妨害)された者の全てが、例外なく勾留請求を却下され、身柄釈放となっていたからである。那覇地裁による勾留承認は意外だ。那覇簡裁が一度は却下したものを、その決定を那覇地裁が覆して勾留を認めている。裁判所も「安倍一族」になってしまった。

c0315619_14280708.jpgおそらく山城博治の早期釈放は叶わず、再逮捕容疑の「傷害」で10日間勾留され、例の「名簿書類」の「窃盗」の件でも追及を受けて再々逮捕もあるだろう。「傷害」の方は起訴されて裁判になる可能性が高い。沖縄右翼の予告と産経のリーク報道では、「窃盗」の容疑でもう一人の男が逮捕されるという情報になっている。20日に大和市の吉田慈が逮捕されたとき自宅が家宅捜索されたが、21日にはP1裏テントと山城博治の自宅が家宅捜索を受けている。防衛局側が8月25日に強奪されたと主張する「名簿書類」の捜索が目的だったようだが、発見はなく押収物は何もなかった。吉田慈の取り調べを通じて新しい供述が出て、さらに家宅捜索の範囲が広がるかもしれない。「もう一人の男」とはしばき隊の添田充啓だろうと噂されている。逮捕から72時間が過ぎ、勾留延長が決まり、再逮捕もされた後の20日夜、ようやく照屋寛徳が名護署にやって来て接見、署前に集まった支持者の前で報告をした。「まず身体を休めて今後に備えるようにと言ってある」と言い、「事実関係、行為の正当性については今後、きちんと主張してゆくことになる」と言っていて、不当逮捕、不当勾留だとは一言も言っていない。社民党側の腰砕けがよく伝わり、この状況だけで起訴が不可避だということがよく分かる。

c0315619_14284031.jpg今回、社民党側は何の抵抗もしなかった。添田充啓が逮捕されたとき、しばき隊が無視と沈黙を決め込み、顧問弁護士も何の抗議もしなかったのが印象的だったが、あの山城博治が逮捕勾留されたというのに、身柄を奪還する運動を社民党がやろうとしない。福島瑞穂のTwは、17日以降、山城博治について全く触れられておらず、8月には高江のテントへ赴いたり、9月には逮捕された市民の釈放に尽力したのが嘘のようだ。この方面の刑事司法の屈指の専門家である高島弁護士によれば、こうした不当逮捕に対抗するには初動が肝心で、弁護士が勾留理由開示請求をしなければならないと言っている。さらに、勾留決定に対する準抗告や勾留取消申立の手段があり、それらの手続きを駆使して釈放実現に動くのだと言う。20日夜の照屋寛徳の発言からは、そうしたマニュアルの法的措置を打っている気配がない。獄中で身体を休めろと言っていて、要するに早期釈放はないから長期拘留を休養の場にせよと言っている。身柄を警察から取り戻す意思が微塵もない。私は、17日の現行犯逮捕のときから、福島瑞穂がダンマリなのが気になっていた。別ルートで正確な情報を掴み、沖縄右翼の予告が事実だと確認していたのだろうが、反撃せずに黙っていると、裁判所がその弱腰の態度に影響されてしまう。

c0315619_14291654.jpg結局、勾留延長が認められてしまった。この問題について、再逮捕前の19日の琉球新報が興味深い記事を書いている。記事の最後の方に、「当初、抗議の市民らは訓練場内への立ち入りはしていなかった。しかし工事車両を止めるために行った路上の抗議活動で一般通行にも支障が出るといった課題が浮上した結果、抗議の場が訓練場内へと“追い詰められていった”側面もある」とある。この書き方は、山城博治らの抗議行動を擁護する筆致であると同時に、車両を県道で停止させていた7月・8月の戦術が高江住民の日常に不具合を起こしていた事実も指摘していて、抗議行動における合法性の維持確保が難しくなり、防衛局と警察側の罠に嵌まって行った経緯が認識されている。防衛局・警察側と山城博治側の中間のスタンスのように読める。客観的といえば客観的だが、傍観者的といえば傍観者的で、目取真俊や渡瀬夏彦には納得できない総括かもしれない。この琉球新報の記事を見てただちに思い起こすのは、10月12日の沖縄タイムスの報道だ。この記事では、北部演習場の中に侵入して工事を妨害するしかないとする山城博治の方針と、逮捕者を出すと世論に受け入れられないとする共産党系の慎重論と、二つの立場が両論併記で並べられていた。19日の琉球新報の記事は12日の沖縄タイムスの記事と平仄が合っている。

c0315619_14293718.jpg10月14日の右翼の動画予告、17日の山城博治の現行犯逮捕、20日の山城博治の勾留決定と再逮捕、21日の島袋文子の警察出頭と事情聴取と、高江のヘリパッド建設に反対する沖縄の運動には強烈な逆風が吹いている。無論、そこには安倍政権の強権と暴政があるのだけれど、10月に入って以降、それまでは考えられなかった禁じ手の行使が続き、一線を越えたファッショ的弾圧としか言いようがない進行に戦慄させられる。山城博治の勾留と起訴とか、87歳の島袋文子に出頭要請とか、沖縄の平和運動のシンボルのような人物を次々と捜査の手にかけるなど、嘗ては想像もできないことだった。何が起きているのか。高江の政治の意味を考察しようとして想起するのは、2002年のイスラエル軍によるラマラのアラファト邸攻撃であり、同じく2004年にガザで起きたヤシン暗殺事件である。まさか、イスラエルがこの二人に手を出すとは思わなかった。アラファトは2004年に死亡(毒殺?)するが、この事件を契機に「テロリスト」になった。それまでの日本のマスコミ報道では、アラファトは「国家元首」であり、一時代を築いたカリスマ的指導者で、カストロのような英雄の扱いだったのに、この前後から「殺されても仕方のないテロリスト」に変わった。ヤシンも同様で、殺される前、ヤシンはハマスの精神的指導者として何度も日本のテレビの取材を受けていた。

ハマスがガザ地区で慈善事業をやり、学校を経営し、恵まれない者を助け、住民から圧倒的な支持を受けていることを、ヤシンのインタビューを通じて日本のマスコミは日本の視聴者に伝え、ハマスの客観的理解を広めることに貢献していた。事件の後、ハマスは世界を敵にしたテロリストとなり、ガザの人々は殺されても仕方のない、人権を認められない「準死刑囚」の群団となった。国連憲章が適用されない、例外扱いの、古代そのものの、残虐で無情な地上に生きる気の毒な人々となった。今、沖縄はガザ化している。マコーマックが言った言葉を逆説的に思い出すではないか。日本でいちばん民主主義が高度に発達しているのは沖縄だとマコーマックは言った。その言葉に私は同意する。政治はどこまでも弁証法的で、最も民主主義が発達した地上で、最も民主主義から縁遠い、日本国憲法が適用されない、本土の法律がまともに通用しない、ガザとイスラエルのような政治的現実が発生して進行している。


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by yoniumuhibi | 2016-10-24 23:30 | Comments(0)


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