予定どおり右回帰となった民進党代表選 - 「野党共闘」から離れる国民世論

c0315619_16572935.jpg民進党の代表選挙が行われている。台風の災害の他に大きなニュースがないため、マスコミは毎日取り上げて報道しているが、特に盛り上がっているような様子がない。昨年の夏から長く続いた政治の季節が終わり、人は政治に倦み疲れているように見える。政治への関心から離れ、生活と政治との間の距離感を持とうとしているように見える。眼前で行われている民進党代表選の政策論議は、私が予想したとおりの展開となり、憲法改正と「野党共闘」の見直しが争点となった。立候補した3人は異口同音に憲法改正に前向きな姿勢を示し、衆院選での共産党との協力に消極的な立場を明言している。岡田克也がこの1年間言ってきたような、安倍政権の下での憲法改正に断固反対とか、自民党が憲法草案を撤回しないかぎり憲法審査会の審議には応じられないとか、そうした、護憲にウエイトを置いた左寄りの憲法論を言う候補者がいない。明らかに岡田克也のこれまでの路線から離れ、共産党との共闘から離れ、改憲に積極的な右向きの方向に変わっている。それは、民進党(民主党)という政党のネイティブな体質と軌道への回帰と言える。



c0315619_16581466.jpgこうした現状に共産党支持者は危機感を募らせているようで、しばき隊が蓮舫の事務所に圧力をかけるキャンペーンを展開、「野党共闘」を維持しろと要求するFAX攻勢の扇動に血道を上げている。「野党共闘」がご破算になってしまえば、「野党共闘」を実現させたというSEALDsの神話が丸潰れになって、この1年間の「市民」の「社会運動」の「成果」が台無しになり、しばき隊としばき隊化した左翼リベラルの政治的な存在意義が根底から否定されてしまう。だから、しばき隊が半狂乱になって新代表になる蓮舫に恫喝を加える事情はよく理解できる。だが、この流れが止められないものであることは、例えば、菅直人と阿部知子が玉木雄一郎の推薦人になった意外な事実からも察することができるだろう。阿部知子は党内最左派であり、菅直人は昨年のSEALDsのデモの壇上に頻回に立って「野党共闘」をアピールする顔だった。菅直人が党内で存在感を残すべく、第三の若手候補者のサポートに回った動機は分かるが、それにしても担いだ若手の中身には唖然とさせられる。玉木雄一郎が2012年の総選挙で再選した際の、毎日の「候補者アンケート」の回答を見てみよう。

c0315619_17001790.jpg(1)憲法改正については「賛成」。(2)集団的自衛権行使容認の憲法解釈の見直しには「見直すべきだ」。(3)消費税の10%引き上げについては「引き上げるべきだ」。(4)原発再稼働には「新基準を満たした原発は再稼働すべきだ」。(5)2030年代の原発稼働ゼロをめざす政府の目標については「支持しない」。(6)普天間飛行場の移設先は「名護市辺野古」。(7)衆院選後の望ましい政権の枠組みは「民主、自民の大連立」。と、答えている。まさに党内最右派。長島昭久や渡辺周や松原仁と同じで、自民党議員の政策的立場と何も変わらない。4年前にこう答えた若手を菅直人や阿部知子が担いで応援している。玉木雄一郎の出馬に手を貸したところで、代表選の政策論議が左方向に矯正されるわけではなく、3人の中では真ん中の位置を取るわけだから、前原誠司の右寄りアピールをむしろエンハンスさせる要因になるだけだ。つまり、民進党全体の政策論議をより右に傾ける意味と効果にしかならない。党内で左派とされる長妻昭の存在感が今回の代表選では完全に消えていて、蓮舫を担いでいる左派Grの赤松広隆からも、蓮舫の代表選での暴走に対してチェックがない。容認している。

c0315619_17030317.jpg関連して注目されるのは、こうした場合に常に党を左側に引っ張り戻すべく警告を入れる山口二郎が、今回は沈黙していることだ。8月25日に、市民連合の今後について「しばらく考える作業をすべきだと思う」と言い、「選挙は疲れた」と言ってTwの発信を止めてしまった。しばき隊や共産党支持者にとっては、頼りにしている「ご意見番」の不甲斐ない態度に映るだろう。この代表選の政治を考える上で興味深い世論調査があり、看過するわけにはいかない。昨日(9月4日)の毎日の世論調査の記事では、民進党と共産党の今後の選挙での協力について、「続けた方がよい」が28%で、「続けない方がよい」が51%という結果になっている。この世論傾向は、参院選と都知事選のあとくっきり鮮明になった。8月8日の朝日の世論調査では、「野党統一候補を衆院選でも立てるべきか」という質問に対して、「立てた方がよい」が37%で、「そうは思わない」が43%という結果が示されている。参院選前の世論調査では、野党統一候補について「立てた方がよい」が47%、「そうは思わない」が32%と、逆の世論になっていた。今年前半、NHKの世論調査でも、参院選が近づくにつれて、民共の野党共闘を支持する声が高まっていた事実がある。参院選と都知事選を経て、「野党共闘」への評価は明確に切り替わった。

c0315619_17033601.jpgその一方、9月3日の共同通信の調査では、民進党の47都道府県連の幹部に野党共闘の継続の是非を尋ねたところ、22の都道県が継続を求め、9府県がやめるべきだと回答していて、数の上では野党共闘継続派が上回る結果になっている。都連はおそらく本音では継続に消極的なのだろうが、10月に10区で補選が控えているため、共産党に対して露骨に拒絶姿勢を示すのを避ける配慮をしているのだろう。基本的に、連合の中で自治労が強い地方の県連で野党共闘の継続を求めていて、また、参院選の結果と同様に、東日本より西日本の県連で民共共闘に冷淡な実態が窺える。そして、都会ほど民共共闘への期待が過去のものとなって薄れ、田舎ほどそれへの期待が残っている傾向も看取される。総じて、東京など都市部では、失業率が減って雇用環境が改善された日常に安堵を覚える気分が出ていて、逆に、いつまで経ってもアベノミクスの恩恵がもたらされることがなく、若者が姿を消し、地域経済が悪化して都会との間で格差が開く一方の地方で、反安倍の空気が沈殿している状況が世論に反映されている。アベノミクスは失敗だという認識と、安倍晋三に騙されたという感覚は、地方へ行くほど強い確信となっているだろう。都会と地方との物質的土台の条件の違いが、政治に対する意識の違いになって表れている。

c0315619_17035843.jpg単純化すれば、地方ほどラディカルでルサンチマン的な様相を強め、ネオリベ官民による資本投下が集中する都会ほどコンサバティブでオプティミスティックな気配が横溢して、両者のコントラストが際立つ構造になっている。また注意して観察すれば、TPPが直撃する東北・北海道の政治には、小沢一郎や旧社会党の影響力の残存があり、一方の西日本の政治には、反共労組の旧同盟(現連合)の主力と基盤があり、10年前から発生繁殖した奇形亜種たる橋下徹と維新の影響力が強くありという差異もある。左翼やしばき隊は虚勢を張り、共産党の票がなければ民進党は選挙を戦えないとか、民進党はすでに依存症体質になっているなどと言い、毎日もその見方に乗っかった記事を書いているのだが、真実はそうした甘い認識とは異なっている。むしろ、代表選での政策論議は維新と民進党とのコンパチビリティを高め、それを確認する準備作業に他ならない。民進党が「野党共闘」を離れて右旋回することは、右の維新と接近することを意味する。憲法、消費税、原発、TPP等の基本政策において、もともと民進党と維新とはきわめて近く、共産党と民進党との共闘がアクロバティックであるのに対して、民進党と維新との共闘は論理整合的でスムーズに進むものだ。

参院選比例で600万票取った共産党と515万票取った維新と、衆院小選挙区で民進党が票数を加算する相棒として見たとき、特に決定的な優劣はない。

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by yoniumuhibi | 2016-09-05 23:30 | Comments(2)
Commented at 2016-09-05 21:08 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by やれやれ at 2016-09-07 18:23 x
日本共産党に対するある種の信仰のような信頼は、潔癖と言うべき「ブレなさ」「まじめさ」「がんこさ」に起因していたものだ。言い方を変えると、「現実から乖離した建前的な正論」と言ってもよい。
例えば、未だに政党助成金を受け取っていないが、その分の税金が国庫に戻されるのならいざしらず、結果として他の政党により多く配分される利敵行為になっている。

政党である以上、政権を担うことを目標とするものであって、できる限り全ての国民に主張を届け、できるだけ多くの国民の信任を得る必要がある(=国会内の椅子とりゲームではない)のだから、全ての選挙、全ての選挙区に独自の候補を立てるのが当然であり、それをしないのは、はじめから何か薄汚い別の理由で作られた組織なので、政党の名に値しない、というのが、従来の日本共産党の理屈だったと理解している。

社会党が野党第一党であった昔から、「全ての選挙区に候補を立てるのは、野党の票を割る結果になるから、自民党を喜ばせるだけだ」という意見はあった。が、日本共産党がそれに応じることはなかった。

「野党共闘」は、画期的な出来事であるが、タイミングが遅すぎたことと、やり方がまずかったことが、致命的だった。
民主党がもっと左寄りだった時期に実現すべきだったし、今の今まで選挙協力をせずに何度も自民党を勝たせてきた長い歴史に対する言い訳として「SEALDs」などという「本質のないハリボテ」を持ち出すべきではなかった。戦略が軽薄で下手すぎる。

結果、これまで培ってきた信頼をも日本共産党は失ってしまった。「あいつら融通きかないし、現実離れした理想論を振りかざすし、話めんどくさいけど、でも、真面目で筋が通ってるところもあるよな」という巷の評価を失いつつある。戦略を立て直した方がいい。

ちなみに「しばき隊」というネーミングセンスのグロテスクさには、愕然とする。あまりに頭が悪すぎる。お勉強はできるタイプの頭の悪さの究極の形だ。


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