都知事選での鳥越俊太郎の大敗 - 1年で終焉へと向かう「野党共闘」

c0315619_1784546.jpg都知事選の開票結果の集計を見ると、小池百合子が291万票、増田寛也が179万票、鳥越俊太郎が134万票となっている。保守分裂選挙でありながら、野党統一候補で反安倍の鳥越俊太郎は次点につけることもできず大差で敗れた。保守vs野党の票で見ると、470万票vs134万票というとんでもない差になっている。3週間前の参院選での東京選挙区の得票では、保守vs野党は287万票vs265万票のイーブンだった。組織票と呼ばれる民進や共産の固定票も切り崩され、無党派の票の過半数が小池百合子に持って行かれ、正視できないほどの惨敗となった。そして、ほぼ事前のマスコミの情勢調査どおりの結果となった。安倍晋三は笑いが止まらないだろう。この都知事選の意味を総括する上で重要なのは、鳥越俊太郎が出馬表明したときの訴えが民意で否定されたという現実だ。7月10日の参院選の結果に強い危機感を覚えたこと、憲法が変えられようとしていること、戦争が近づいていることに焦燥し、都知事選出馬を決断したことが12日の会見で語られ、テレビ報道で大きくクローズアップされた。その直後、公示日前後のある調査では、鳥越俊太郎は小池百合子を抜いてトップに躍り出ている。



c0315619_1785799.jpg公示日前後、報ステ(後藤謙次)やNEWS23(星浩)の口調も鳥越優勢の見通しを示唆していた。明らかに、出馬会見の鳥越俊太郎の渾身の言葉が人々に共感され、安倍与党に3分の2を奪われた状況への危機意識に共鳴が広がり、代弁者としての鳥越俊太郎に期待が集まった瞬間だった。ほんの一瞬だったが、その場面が出現し、都庁に反安倍の政治拠点ができるかと思われた。だが、その後、鳥越俊太郎の言葉は続かず、「政策はこれから」のままで、街頭演説は一日一回夕方のみしか開催されなかった。言葉の続きを待っていた都民を裏切る展開となった。言葉とは、胸中を代弁されて感動し昂奮することであり、メッセージとモメンタムに確信を深めることである。裏切りの典型的な事件が、巣鴨の聴衆の前に森進一と登場した7月18日の出来事だった。7月12日の会見の言葉が、参院選の結果に暗澹としていた反安倍の人々の代弁だったことは間違いない。代弁は止まり、醜聞の騒動が続き、目を覆うほどの惨敗の結果が出て、12日の言葉の意味は雲散霧消することとなった。参院選の結果が、再び都知事選で追認される政治となった。参院選の民意を覆すことができず、逆に固められる図となった。きわめて厳しい現実だが、このことの認識が必要だろう。

c0315619_17981.jpg都知事選の結果を受けて、野党の動揺が始まっている。民進党を見ると、昨夜(7/31)、都連会長の松原仁がマスコミの取材に応じ、岡田克也が投票前日に敵前逃亡したことに不満をぶちまけ、また、古賀茂明を推そうとした都連の頭越しに、執行部が一方的に鳥越俊太郎を候補に決めて押しつけたことを強く批判している。さらに今朝(8/1)、長島昭久が「野党共闘」批判を全面解禁し、Twで「来月の党代表選で野党共闘の是非を問う」と宣言している。選挙の敗北責任を執行部に対して問い、共産党との共闘の是非を詰めて転換を求める右派の声は8月を通じて高まり、9月の代表選時には「野党共闘」の清算が迫られる政局になるだろう。と同時に、岡田執行部時代の憲法政策 - 立憲主義からの反改憲 - も見直しの方向となるだろう。共産党との共闘の絆であったところの、昨年成立した安保法制の廃止という目標が看板から降ろされると思われる。この一年間、参院選を重視して共産党との共闘のために政策を左に寄せていた民進党は、代表を蓮舫に替え、幹事長を枝野幸男から別の者に替え、振り子を右に振り戻して路線を右に旋回させるはずだ。辻元清美や山尾志桜里の姿は消える。

c0315619_1792054.jpgそんなことをしたら、衆院選の小選挙区で共産の票がもらえなくなるではないかという「心配」の声が左側から出そうだが、お維と組めば、同程度の量の票の積み上げは計算できる。参院選での共産党の比例票は601万票、お維の比例票は515万票。単純に上乗せする票数だけなら、共産とお維はパートナーとして同等同格で、お維と組んで自民現職と1人区で争うという「健全野党」の戦略設定は可能だ。もともと江田憲司や柿沢未途は維新の幹部で、政策的にはお維との共闘は何の矛盾も障害もない。無論、そうなった場合は赤松広隆ら官公労系の左派は反発するから、民進党内はいつものように左右のお家騒動が激化する。党の分裂含みの様相となる。その際、前から私が論じていることだが、仮に民進党がお維と組む右寄り路線にシフトしても、小沢一郎は民進党と組む方針を捨てず、政策よりも「二大政党制の政権交代システム」の方を選ぶだろうと予想する。生活が社民党との蜜月を終え、山本太郎は小沢一郎と袂を分かつだろう。昨年夏から形ができた四野党共闘というのは、中身は脆く危ういもので、この態勢を固めるに十分な政治的勝利を「野党共闘」は今年夏の選挙で得ることができなかった。

c0315619_1793111.jpg一方、共産党の方も動揺は小さくない。投票結果が出た直後、宇都宮健児が口を開き、野党統一候補の決定プロセスの密室性について批判、宇都宮陣営を攻撃した鳥越陣営の市民運動にも痛烈な批判を加えた。「野党4党も市民連合も、深刻に総括をすべき。これをやらないと、これからも負けっぱなしですよ」と苦言を呈し、「こんな腐敗堕落した運動ではいつか崩壊しますよ。市民運動、とくにリーダーと言われる人の考えを変えないと」と、鳥越陣営に関わった市民運動を切り捨てている。この「市民運動」なるものが、しばき隊・SEALDs・市民連合であることは論を俟たない。共産党の言いなりになって動いたしばき隊が指弾されている。他方、しばき隊の側も宇都宮健児叩きのボルテージを高め、宇都宮健児が7月28日に鳥越陣営に提出したところの、応援要請を断る理由を並べた公開書簡に対して、「希望のまち東京をつくる会」の正式な承認手続きを踏んでないなどという難癖をつけ始めた。こういう難癖を堂々とつけて宇都宮健児に喧嘩を売るということは、UK陣営内部に共産党と内通した造反者がいて、内部告発の証拠を持っているぞと脅している意味に解釈できる。いずれにせよ、左翼側の従来の一枚岩体制に亀裂が入った状況が露呈されており、事態はきわめて深刻だ。

c0315619_1794179.jpg世間では、四野党共闘のために立候補を降ろされた宇都宮健児に同情が集まっており、マスコミもネットもUKを擁護する世論で一色になっている。鳥越俊太郎が小池百合子にダブルスコア超で負け、さらに二番手の増田寛也にも負けたという事実が、宇都宮健児の立場的正当性を補強する材料になっていて、宇都宮健児の株が上がる空気になっている。そして、善玉の宇都宮健児に対して、コントラストの悪玉の位置に立たされているのが共産党だ。今回の都知事選は、マスコミが候補者の戦略に従って劇場型に演出し、夏祭りの娯楽イベントに仕立てたため、大衆の「関心」が高まって投票率が上がった。だが、2年前と較べても政策論争の要素がどこにもなく、テレビの放送は毎日延々と続きながら、都政の具体的課題は何も耳に残らない空疎な選挙戦だった。それに較べれば、宇都宮健児がテレビに出演し、給食無償化や特養老人ホームの待機問題解消を縷々論じて、数字を並べ、立て板に水の政策論議を華麗に披露した2年前の方が、今回よりもはるかに中身のある都知事選だったと感じる。今回は、まさに電通が仕切ったキャラクターの人気投票で、「病み上がり」だの「厚化粧」だの女性スキャンダルだのだけが印象に残った選挙だった。共産党と市民団体は、野党共闘の枠組みの維持のみが目的で、それ以外は眼中になかった。

鳥越陣営のネット選挙の主力はしばき隊が担ったが、ツイートに説得力がなく、ネット世論をドライブするメッセージ発信の能力に欠け、小池百合子へのネガキャンと、宇都宮陣営への恫喝だけで終わっていた。共産党そのものが、鳥越俊太郎を野党統一候補に担ぎ、宇都宮健児を降ろした時点で組織の目的を遂げ、後は軽く流す気分でやっていたため、運動に力が入らなかったという事情もあるだろう。結果的に、「野党共闘」の枠組みを守るためにやったことが、「野党共闘」を崩壊に導く条件を作り出したとも言え、政治の弁証法が共産党に厳しい運命を与えようとしている。世間の評価で株を上げた宇都宮健児は、4年後の挑戦に向けて布石を打つことに成功したわけで、この老人には、ルックスとイメージは別にして年齢はあまり関係ない。4年後、「野党共闘」が続いているとは思えず、共産党は単独で候補を選ぶ必要に迫られ、そうなったときは、おそらく「カノッサの屈辱」の試練が共産党を襲い、宇都宮健児の前に土下座して許しを請う羽目になるだろう。


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by yoniumuhibi | 2016-08-01 23:30 | Comments(2)
Commented at 2016-08-01 23:29 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 通りすがり at 2016-08-02 12:52 x
今回の都知事選では、宇都宮弁護士が明かした鳥越陣営からの嫌がらせに着目すべきでは?
左右関係なく、自分に同調しない人間はネトウヨ(ブサヨ)が行き着いた結果でしょう?


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