人にやさしい象徴天皇制 - 生前退位、天皇陛下の勇気ある決断と挑戦

c0315619_1405234.jpg天皇陛下の生前退位の件。最初に発表されたのは7月13日のNHKの7時のニュースだった。衝撃の一報だったが、生前退位を望む現天皇陛下の意向やその理由を説明し、視聴者である国民に告知と説得をするような、生前退位について前向きな報道だった。私は、すぐにこの考え方が両陛下からそのまま発信されたもので、天皇陛下の重要な決断であることを察し、また、NHKがここまで既成事実的に報道するのだから、政府内の根回しもほぼ終わって、前向きに手続きが始まるのだろうと期待した。だが、一日経って様相は一変し、マスコミ各社から否定的な反応が次々と出ている。日テレは、「天皇陛下の生前退位は無理」と言った政府関係者の発言を紹介、肝心のNHKも「政府は慎重に対応検討か」などと論調を後退させている。明らかに、政府側から巻き返しが起こっていて、生前退位を潰そうとしているのが安倍晋三であることは明白だ。これが天皇陛下と安倍晋三との政治闘争である事実を、世の中でどれだけの人が察知し認識していることだろうか。好き勝手にはさせないぞという、安倍晋三の強烈な独裁意志が看取される。二人の二度目の戦いだ。一度目は10年前の女性天皇のときだった。あのときも、最初に天皇陛下の意向がマスコミに出て、その方向で決まるかと思いきや、安倍晋三と右翼が怒濤の逆襲で阻止してしまった。



c0315619_141736.jpgマスコミで紹介される解説は、例えば、原武史や半藤一利を含めて、今回の生前退位の本当の意味と目的について正しい指摘をしていない。これは、第一に雅子妃のことを慮った決断であり、雅子妃の人権にフォーカスした皇室制度改革の構想だ。皇室典範が改正され、生前退位が可能になれば、今の皇太子が即位した後、仮に新皇后の公務が不能だったり不適格だったりして二人が天皇皇后を続けられないとき、生前退位という道を合法的に選ぶことができる。もし、その制度がない場合は、新皇后は苦痛な重責に耐えて死ぬまでその地位と職務を強制されなくてはならない。また国民は不興を堪えながら、あるいは不満を言いながら、不具合な「両陛下」に接し続けなくてはいけない。それでは憲法第1条は全うされない。憲法第1条には、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」とある。これは象徴天皇制の正統性(Legitimacy)の根拠を言っているもので、要するに、根拠は「国民の総意」にあり、国民から支持され尊敬される天皇や皇室でなければ象徴天皇制は成立も維持もできないという意味だ。国民は天皇を選挙できない。国民が天皇を尊敬し信頼する関係があってこそ、象徴天皇制は機能し、日本国は国家として正常で安泰で治まる。

c0315619_1411843.jpgこれはフィクションだけれども、第1条の理念を、現天皇陛下は努力によって見事なまでに実現してきた。両陛下は国民から深く愛されている。憲法第1条が全うされず危うくなること、すなわち国民が皇室を敬愛も支持もできない状態になることは、国民の統合が機能しなくなることを意味し、国家にとって大きな危機を迎えることを意味する。マスコミは何も言わないが、皇后がいつも不在で、例えば、被災地の慰問に天皇だけが単身で行く絵ばかりとなると、昔と違って異常だと国民が落胆し、第1条の理念からは大きく逸脱してしまう事態になる。国民は、一刻も早い雅子妃の健康回復を祈り、公務への完全復帰を願っているけれど、治療が長引いているのか、最近の園遊会の映像でも数分間ほど姿を見せただけですぐに中断して引っ込んでしまう。このまま雅子妃が皇后になって大丈夫かという懸念と不安は国民の多くにある。即位後の徳仁天皇の人格や態度がどれほど完璧でも、国民は前の明仁天皇と美智子皇后の理想型と比較し、納得できない気分を払拭できない。それは、憲法第1条が揺らいだ姿であり、日本国という国家が不全に陥った図だ。もしもこうなったとき、徳仁天皇が早めの生前退位を選べば、憲法第1条の不全は解消されることになる。雅子皇后の心労や負担も取り除くことができる。

c0315619_1412948.jpg生前退位が認められるように制度が変われば、即位した二人を退位した二人が見守ることができ、後ろから援助することができる。二人は今よりも自由に発言することができ、国民に新しい天皇皇后を応援して下さいと言うことができ、新しい天皇皇后に指導教育をすることができる。退位した二人のカリスマは絶大なので、その説得力で新しい天皇皇后を支えることができる。新しい天皇皇后の負荷も減る。とにかく、いろいろ想像すれば、このアイディアは最高であり、コロンブスの卵であり、よくぞ実現しようと天皇陛下は立ち上がったものだと私は感動する。象徴天皇制にとって、この絵が最もそれを安定に導くものだ。13日のNHKのニュースでは、陛下は近くお言葉を発する機会を持ち、このことを内外に発表し、記者会見して質疑応答をすると言っていた。私はそれを聞いて、必ず安倍晋三が巻き返しに出て、この構想をぶち壊しにくるだろうと想像した。この案を安倍晋三が受け入れているとは思えなかった。きわめて大胆な制度の転換であり、まさに女系天皇のときと同じく画期的なチェンジだ。天皇制を明治から昭和初期と同じ態様にしたいのが安倍晋三と右翼の欲望であり、国家のレジームをそこに戻そうとする安倍晋三が、日本国憲法の思想を延長したような、人にやさしい象徴天皇制のこのアイディアを認めるはずがない。

c0315619_1414469.jpgNHKのニュースから時間が経つほどに、生前退位に否定的な論調がマスコミの記事になり、自民党と政府がそれを潰そうと動いていることが分かる。天皇陛下はどう動くのだろう。天皇陛下が考えているのは、2020年の東京五輪の開会式を徳仁天皇と雅子皇后の出席で催行しようという工程表だろう。2019年が天皇即位30年の記念の年になるので、そこでバトンタッチしようというプランだろう。あと3年の間に皇室典範を変えることを考えている。もし、NHKのニュースで言っていたように、天皇陛下が直接にこの件で国民に意思を発表し、記者会見に臨めば、間違いなく世論は天皇陛下の味方になる。安倍晋三は止めることができない。だから、安倍晋三としては、発表の機会を全力で握りつぶし、天皇陛下の意向がマスコミに漏れないよう、13日のような「事故」が起きないよう、宮内庁とテレビの監視を厳重強化するだろう。まるで、江戸時代の京の公家と京都所司代のような状況だ。日本の政治は歴史を超えて普遍的なものだとあらためて感じる。前回、女性天皇のときは右翼と安倍晋三の反転攻勢が成功し、天皇陛下の革命は潰された。今回は、安倍晋三の巻き返しも計算しているだろうし、決して諦めてはおらず、生前退位実現に向けて手を打ってくるだろう。天皇陛下は本当に勇気がある人だ。勇気を出して大胆にチャレンジをする。革命を起こそうとする。戦後民主主義の同志である皇后陛下と共闘し、二人で果敢に国家の旧弊を破壊しようと挑んでくる。

人にやさしい象徴天皇制。永久革命に挑み続ける明仁天皇。主権者である国民として、天皇陛下のこの構想を支持したい。人生最後の闘争を支援したい。その実現に向けて、それを阻止しようと図る邪悪な者を排除すべく、両陛下を援護射撃したいと思う。この政治闘争の成否がどうなるか、天皇陛下と安倍晋三との戦いがどうなるか、予想を述べたいし、私は楽観的で今度は潰されないという確信を持っているのだけれど、それについては詳しく書かない。天皇陛下がどういう手を打ってくるか、私には戦略の予想があり、楽観論に立つ根拠がある。だが、それをここで書くと、安倍晋三側に先手を打たれて抑え込まれてしまう恐れがある。


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by yoniumuhibi | 2016-07-16 23:30 | Comments(6)
Commented by タブロウ at 2016-07-16 16:13 x
いつも読ませていただいています。
J-Wave、7/17(日) 22:00〜22:54の「Heart to Heart」に
辺見庸さんがゲスト出演されます。
J-Waveのサイトに収録時の辺見庸さんの写真がアップされていますが
あまり見たことのないような穏やかな表情で、聴く前からその言葉への期待が高まります。
なんか、すごく良い番組のような気がしますが、実際そうであればいいですね。
Blog主さんがあまり聴かれない放送局のような気がしましたので、
お知らせした次第です。
Commented by 長坂 at 2016-07-16 19:12 x
真摯に謝ってと言うアジアの戦争犠牲者には未来志向だから謝罪しない。核兵器廃絶を願う被爆者には見解の相違。仮設住まい被災者には復興は進んでいると10分だけの視察。辺野古反対には振興費削減と座り込みを容赦ない暴力で排除。無関心、無感動、無神経、無慈悲のシンゾーに代わり人々に寄り添ってきたのは、天皇皇后両陛下。
世間はシンゾーを「あの人は坊ちゃんだから、、、」と言うが一体どこが? 月一回の「子ども食堂」を楽しみにする母子家庭や食材確保に東奔西走するボランティアを尻目に、連日高級レストランでの食事。年末の路上生活者の安否よりゴルフと芸能コンサート。小さい時から自分と真逆の境遇の使用人に囲まれ、差別や格差を目の当たりにしてきたのに、驚くほど弱者に冷たい。こんなのはボッチャンとは言わない。究極のお坊ちゃま、お嬢様は天皇皇后両陛下!憲法を蔑ろにするシンゾーが総理の座にいる限りリタイアできないと。皇居のある東京都だけはせめて護憲で楽になっていただこう。
Commented by 渡辺 喜久雄 at 2016-07-16 20:05 x
平和に関して平成天皇•皇后両陛下がお心をくだいていたのは多くの国民が知るところです。それは幾多の慰問からも察することが可能です。
翻って、安倍内閣は立憲主義を否定したり安保法案の強行、あげくに平和憲法を踏みにじようとし、そして参議院選挙で3分の2の議席を獲得するや否や選挙の争点にもしていないにもかかわらず、国民を騙すやり方に終始しました。
このようなやり方に我慢が出来ないのは、石田純一氏や鳥越俊太郎氏だけではありません。何よりも平和の尊さを大切にお考えの両陛下も同様かと存じます。日本会議に巣食うネオナチのような人々や安倍内閣の目論見に反して、平和な日本にしてゆきたいと切に願っています。
Commented by ​七平​ at 2016-07-17 13:04 x
かなり昔の話になりますが、現天皇が ”愛国心は強要するものでは無い” と明言された時、私は最初、自分の耳を疑った。同様の発言を2度目にニュースで知った時に私は微笑まずにいられなかった。 掃いて捨てるほどいる 偽善愛国者が我こそは日本人なりと、まるで戦時中の様に国旗掲揚や国歌の斎唱を強要し愛国心を押し売りする中、ものの見事に正論を述べられた。 故Elizabeth Gray Vining 女史 が生きておられたら、さぞ感激されたであろうと思う。 言いたいことも自由に言えないような窮屈な環境下に長年おられても、 自立心と主体性を維持されていると尊敬するようになりました。

現天皇が望まれる、生前退位が持つ政治的意味合いは横において、 私は御本人の意思に反して無理だとか、許されない、承知しない、等と申す無礼者が如何に常識外れで非人道的であるかを指摘しておきます。 先ず、天皇は現人神ではなく、天皇であると同時に一国民、一個人です。血の通う人間です。 83歳の御老人が長年、お国のためのお勤めを全うされ、隠居して余生は自由を楽しみたいと望まれた時、その希望を否定する根拠がどこにあるでしょうか? ”長らくご苦労様でした。”とねぎらい、Happy Retirement を祝すのが常識ある国民の望む所だと考えます。

英国の皇室が時代と共に変化したように、日本の皇室も時代と共に変化すべきだと考えます。基本的人権擁護は庶民にも皇室にも適応されるべきです。 雅子皇太子妃の様な優秀な人材が、DRAM の塊まりのような宮内庁や政府の取り巻きに寄って潰されないよう、国民が見守る必要があると考えます。








Commented by 私は黙らない at 2016-07-22 06:01 x
生前退位の速報を奇しくも広島で観ました。速報でまず私が思ったのは、生前退位のご決断には、陛下の現状に対する強い懸念の気持ちがあるのではないかということです。
不測の事態が起こる前に退位し、新天皇皇后に今まで自分たちが築いてきた戦後民主主義、平和国家への姿勢が引き継がれることを見届けたいのではと思いました。
言いかえれば、それほどまでに、陛下は現状に心配されているのではないでしょうか。
Commented by カルム at 2016-08-01 01:43 x
この記事、視点に関しては感心した。


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