ガチガチ選挙の孤独と疎外 - 北海道5区補選で棄権した有権者の選択

c0315619_12494130.jpg北海道5区補選の結果を見て、あらためて「受け皿新党」の必要性を認識し、その可能性を強く確信するところとなった。その理由は以下のとおりである。何より、投票率が低いこと。山口二郎やしばき隊の発言を聞いていると、今回の57.6%という投票率に対して、通常の補選と較べて高かったという言い草で、それを積極的に意味づけて拡散することばかりしている。自分たちの選挙運動の正当化のために、57.6%という投票率を「高い」という評価で固めている。この見方には全く同意できないし、一般の感覚とはかけ離れたものだろう。この国の4月の政治の関心は、一にも二にも北海道5区補選だった。左翼リベラルのTwは、熊本の地震そっちのけで、毎日毎日、池田真紀への応援コールで埋め尽くされていた。4月の左翼リベラルのTLはピンク色で染まっていた。アフリカののように。4月24日の投票日は、誰もがその結果に注目して朝からテレビのニュースに食い入り、投票の進捗を見守ったはずである。おそらく、その誰もが意外に感じたのは、有権者の出足が異常に悪く、刻々の投票率が前回の衆院選を下回る報告がされていたことだ。どうしてこんなに投票率が低く出るのだろう、北の5区の人々は何を考えているのだろうと、全国の市民が不審に思ったのではあるまいか。



c0315619_12495512.jpgその感覚こそが自然なもので、通常の補選に較べれば高いから評価できるなどと言うのは、年中永田町に張りついて政治でメシを食っている政局屋の発想と言葉だ。国民的関心事が集中した政治イベントであった今回の北海道5区補選は、他の補選と同レベルで比較することはできない。これだけ熱く注目され、マスコミで報道され、情報が多く飛び交い、そして事前予想でデッドヒートが報じられた選挙で、どうして前回を下回る57.6%という低い投票率になったのだろうと、首を捻るのが当然なのだ。そして、ここで着目すべきなのは投票に行かなかった有権者の行動であり、約半分(42.4%)の人々がどうして投票所に足を運ばなかったのかという問題なのだ。その理由と意味こそが問われなくてはいけない。この42.4%の人たちは、選挙や政治に関心のない、無責任なミーイズムの人々だったのだろうか。私はそうではないと考える。そうではないのだ。この42.4%の人たちも、道新の記事を毎日読み、UHBの公開討論会の放送を見ていたのに違いないのだ。北海道の住民なら道新を読む。道新に信頼を寄せている。道新があれだけ精力的に報道しているのに、その注目の焦点から5区の有権者が無関心でいられるはずがない。

c0315619_1250638.jpgその上での判断と行動なのである。つまり、語の正しい意味での棄権なのだ。主体的に棄権しているのであり、ボイコットしているのだ。自公の候補にも、民共の候補にも、Noを突きつけているのであり、自分には自分の選択と意思があることを棄権という行動で表明しているのだ。この棄権行動には積極的な意味がある。決して無関心や無責任なのではない。われわれが汲み取らなくてはいけないのは、鐘や太鼓の鳴り物入りで連日喧しく、中央からひっきりなしに著名人や大物議員が出入りして大騒ぎし、東京のマスコミが商売で駆け回った地元の選挙で、そこから背を向けた、背を向けて俯かざるを得なかった有権者の孤独な心情であり、苦渋の決断としての棄権の重い意味であり、政治から疎外された彼らの憂鬱と煩悶と絶望である。今回の5区補選の結果で、最もホットな論点としてフォーカスされているのは、無党派の中で7割が池田真紀に投票し、和田義明は3割しかいなかった事実である。この数字をもって、しばき隊や左翼リベラルは「野党共闘」の成功を強調し、7月の参院選(同日選)での「野党共闘」の攻勢を展望する根拠にしている。恰も全国の無党派層が丸ごと、7割が民共支持で3割が自公支持であるような表象を操作して宣伝に使っている。

c0315619_12502014.jpgだが、この数字はあくまで出口調査のものであり、つまり投票に行った者のカウントであって、棄権した無党派層は含まれていない。その重大な事実を巧妙に捨象して、無党派層全体の7割が「野党共闘」を支持しているような言説を工作し、プロパガンダを散布している。数字を厳密に検証しよう。5区の無党派は全体の43.5%である。出口調査でカウントされた無党派は全体の24%である。このうち7割が池田真紀に投票している。無党派は5区で43.5%(19万8000人)もいるのに、投票した無党派層は投票全体の24%(6万3000人)に過ぎない。つまり、無党派の7割は棄権してしまっている。3割が投票所に行き、その大半が池田真紀と札に書いて箱に入れた。それでは、投票に行かずに棄権した有権者はどういう傾向だったかというと、4月18日の道新によると、池田真紀が5割、和田義明が4割という比率になっている。最も信頼性の高いと思われる道新の調査分析で、無党派における池田真紀と和田義明のバランスは5対4だ。池田真紀は7割には達していない。要するに、無党派の中で、池田真紀への支持度が強い一定の者が棄権せず投票したというのが真相であり、和田義明への支持度が強い者は寝ていたということだ。キャラクターの差が出たのであり、プリファレンス(好感度)の差が出たということだろう。

c0315619_12503050.jpg誰も指摘していない点で重要だと思われる急所として、前回2014年の選挙では、各党の支持層はどれだけ票固めされていたのかという問題がある。今回の選挙は、各陣営が自らの支持層をガチガチに固めた選挙だった。このことは山口二郎も茂木敏充も異口同音に言っているし、出口調査の結果でも歴然で、今度の選挙を特徴づけるキーのトピックとなった。民進と共産は支持層の96%が固められ、自民と公明は支持層の90%が固められている。果たして、前回2014年の選挙ではどうだったのだろう。投票率は前回の方が若干高いが、今回とほぼ同じである。民進(民主)と共産を合計した票は、前回よりも3.000票減った。鈴木宗男が共産を嫌って鞍替えした分、これまで民主に入れていた大地の反共票が逃げたのが理由の一つだろう。ただ、それだけでなく、民進と共産の支持層のベースが減ったという要因は考えられないだろうか。前回は今回のようにタイトに固めてはいない。共産は別かもしれないが、自民や民主はもっと支持層にルーズな選挙だったはずで、支持しているけど投票しなかったという部分の割合が大きかったはずだ。ガチガチに固めて投票させながら、票数が減ったということは、支持層のベースが減ったという理由しか考えられない。大地の反共性向とも重なるかもしれないが、ともかく、北海道5区の民主の支持層のベースが2年前より減ったことは間違いない。

c0315619_12504226.jpg私は、独自な見方だが、ひょっとしたら共産の支持層のベースも2年前より減ったのかもしれないと観測している。2014年の選挙では共産候補は31.523票を得た。今回、果たしてこの31.523人はそのまま池田真紀に投票しただろうか。共産と民進が5区の支持層をガチガチに固めて投票所に追い立てながら、それでも前回の票数を割ったことは、二つの党の支持層のベースが減ったか、無党派層からの票の流入が減ったか、いずれかである。今回は、無党派層は基本的に票を流しに行かなかった。自民も、公明も、民進も、共産も、ガチガチに支持層を固めて投票させ、一方で無党派層は、ガチガチにこの選挙をボイコットして棄権した。ガチガチだったのは両陣営だけではなく、無党派層も棄権の態度でガチガチだったのだ。政党を拒否したのだ。それが今回の北海道5区補選の実像である。有権者は全員がガチガチとなり、ガチガチに投票する者とガチガチに投票を拒否する者とに分かれ、そこで大きく線が引かれ、ガチガチに投票した者は、自公と民共の間で線が引かれて二つに分かれた。投票か棄権かで分断されて高い壁が築かれ、さらに自公か民共かで対峙して深い溝が掘られた。選挙区の有権者は三つの空間に分かれて立った。相交わることのない別々の生き方の3クラスタに分割された。これが今回の選挙の本質だ。ガチガチ選挙である。

だから私は、壁の一方の側の、棄権を選択した者たちの立場に内在したい。溢れる選挙情報に接しながら、投票せよと催促されながら、投票したくでもできず、選挙から疎外され、空しく歯噛みしながらお祭り騒ぎに背を向けていた孤独な者たちと同じ位置に立ちたい。「受け皿新党」を人々は求めている。「受け皿新党」のプロジェクトは成功すると私は思う。左翼リベラルとしばき隊は、あと少し選挙運動を頑張って、投票率を60%以上に上げていれば、無党派層を投票所に足を運ばせ、選挙に勝利していたなどと勝手なことを言っている。だが、その考え方は間違っていて、鐘や太鼓が鳴り響くお祭り騒ぎの中で、真剣に悩んだ挙げ句、棄権を選んだ無党派層をバカにした論理だ。


c0315619_1248566.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2016-04-27 23:30 | Comments(3)
Commented at 2016-04-29 15:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2016-04-30 13:33 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 題名のない題名 at 2016-05-01 18:10 x
北海道5区って過去の選挙みると、今回の得票数はおよそ毎回安定して選挙にいく人間の票って感じですね。
44回と45回は投票率はあがりましたが、世間の興味が薄い選挙だと一定の範囲内の得票数におさまってますね
無党派とはいえ反自民の受け皿としていつもどおりの固定票しか集まらなかっただけなんじゃないかと思います


カウンターとメール

最新のコメント

憲法の精神はわかるのです..
by かな at 23:34
東京女子高等師範学校(現..
by 愛知 at 23:15
続)もうひとつ、カズオ・..
by NY金魚 at 11:40
サーロ節子さんの拡張高い..
by NY金魚 at 11:38
100万部とはびっくりで..
by T at 23:48
「君たちは」の醍醐味でも..
by 長坂 at 00:53
報道は中立であるべきなの..
by ワイドショーでも大切に at 14:43
(2の2) 日本の将来..
by 七平 at 02:26
(1の2) 小生は..
by 七平 at 02:25
宮崎駿が次回長編タイトル..
by NY金魚 at 07:08

Twitter

以前の記事

2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング