朝日の1面大見出しが暗示する補選情勢 - 京都3区の泉健太も苦戦か

c0315619_14444268.jpg二つの選挙区での衆院補選が告示された。今日(4/13)の朝日の1面トップの大見出しには、「アベノミクスの評価焦点」とある。勘の鋭い読者なら、この見出しの打ち方が、北海道5区での自公候補の優勢を伝える情報だと直感したことだろう。今日の紙面には、二つの選挙区で朝日が独自に世論調査をしたという記載はない。選挙区の有権者が、この選挙の争点としてどんな政策項目に強い関心を持っているか、その調査結果が特に付記・報告されているわけではなく、「アベノミクスの評価」が争点だという根拠はどこにも示されていない。「アベノミクスの評価」が争点だという規定は、朝日の編集部がアプリオリに与えたものである。一方、具体的に有権者が何を重視しているかについては、地元紙の北海道新聞が4/1-3に発表したデータがあり、それによると、(1)社会保障、(2)景気・雇用、(3)教育・子育てという順番になっている。社会保障政策への関心が最も高い。北海道新聞の調査からは、一概に「アベノミクスの評価」が争点だと判断することはできないだろう。今日の朝日の1面トップの見出しには朝日の作為と主張があるのであり、その意味は、安保法制が争点ではない、安保法制は争点にならないというメッセージの発信だ。



c0315619_14445319.jpg民進党と共産党は北海道5区で選挙共闘を組み、この選挙を「野党共闘」の成否がかかった重要な一戦だと意味づけて臨んでいる。「野党共闘」が立脚する基礎は、安保法制廃止の合意であり、野党内で対立してきた二党が、あらゆる政策の違いを超えて、反安保・反安倍で一致して戦うのだと共闘の意義を強調してきた。そしてまた、実際の選挙運動でも、反安保法の象徴であるSEALDsが前面に出る陣立てになっていて、告示日の昨日(4/12)も、二党の党首の姿は札幌になく、SEALDsが街頭活動を仕切って有権者に支持を訴える態勢で初日をスタートさせている。ということは、「野党共闘」の側からすれば、今日の朝日の1面見出しは、言わば袖にされた格好になるもので、自分たちが争点設定しようと企図した戦略構図が否定されたことを意味する。リベラルの新聞とされる朝日は、「野党共闘」の側が争点として位置づけようとした政策系(安保・憲法)を、争点として採用せず、それとは別の政策系(アベノミクス)を争点とする報道姿勢に出てしまった。選挙の争点をオーソライズするのは、中立表象を持ったマスコミである。読売の論調を見ても、「アベノミクスやTPPが主な争点になる」とあり、安保法制は争点から除外され無視された見方になっている。

c0315619_1445680.jpg前から指摘してきたように、選挙における争点の設定と定置は、柔道の試合での組み手争いと同じであり、有利なフォーメーションを素早く取った方が戦いを優勢に運ぶことができる。逆に言えば、告示直後に、マスコミが公認し定義づけた争点が何かによって、その選挙がどちらに転ぶかを判別できるのであり、したがって、ほぼ趨勢が決まったも同然なのである。朝日のような大手のマスコミは、独自に非公開に選挙区を調査しているのであり、過去の経験から現状を分析して選挙の見通しを立てている。もしも、一部で言われているように、北海道5区の選挙が「接戦」なり「デッドヒート」であったなら、朝日が告示翌日に1面で「アベノミクスの評価焦点」と見出しを打つことはなかっただろうし、「安保法制の是非」も争点の柱の一つとして明記されていただろう。すなわち、リベラルの新聞である朝日が、「安保法制の是非」を補選の争点からオミットし、その意義を無視する態度に出たことは、序盤で両陣営の間に大差がついている事実の示唆に他ならない。最も分かりやすいのは、告示日に岡田克也が札幌に入らなかったことだ。岡田克也は京都3区に入っていた。自民党の側は、党トップである幹事長の谷垣禎一を札幌に入れ、一泊させ、翌日の今日(4/13)も選挙区に張り付かせている。

c0315619_14451818.jpg私はずっと、マスコミが発表する政党支持率や、「参院選でどこに投票するか」を尋ねた世論調査の結果を元に、安倍与党(自公お)と「野党共闘」(民共社生)との間で3倍ほどの差が開いているため、北海道5区補選でも「野党共闘」に勝ち目はないと言い続けてきた。選挙情勢について、告示前までにマスコミから責任ある報道は出ていない。4/5に日刊ゲンダイが、「自民40野党45と、野党候補が5ポイントリード」という記事を書いて話題になったけれど、文責の署名はなく、いわゆるイエロー・ジャーナリズムの類のものと見なすのが妥当だろう。4/5は告示の1週間前、投票の3週間前である。こんな時期に、85%の有権者が投票先の態度を決めているなどあり得ない。通常、告示時点で4割前後は態度未定で、マスコミは、4割が態度未定であることを理由に、「投票日まで行方は分からない」と慎重な書き方をする。そしてまた、通常は、その4割は投票所に足を運ばず棄権してしまう。日刊ゲンダイに従って想定したとき、85%が態度を決定しているのであれば、北海道5区の投票率は85%になってしまうではないか。そんなことは絶対にあり得ないのであり、「85%」という数字を見た時点で、すぐに記事の信憑性を疑わなくてはならず、イエロー・ジャーナリズムの意図と動機を見抜かないといけない。

c0315619_14453078.jpg「野党共闘」の側に立って応援する多くの者、すなわち左翼リベラルは、この日刊ゲンダイの情報をガセだと知りつつ、プロパガンダの材料として利用し、世論の風向きを「野党共闘」候補の方へ傾けるべく、選挙運動の武器として歓迎して、嬉々としてTwで拡散し続けた。それはそれで自然な行為と言えるだろう。だが、この日刊ゲンダイの記事にはもう一つの見逃せない側面があり、それは、安倍晋三の側の思惑にも合致した工作情報だったという点だ。安倍晋三の側の目的とは、北海道5区の運動員を引き締めることであり、全国から動員して投入した800人の士気を維持することである。安倍晋三の側にとっては、この記事発信は願ったり叶ったりのもので、緊張が弛緩しがちな運動員に鞭を入れる上で絶好の材料提供となっただろう。つまり、この記事は、政治的効果として相矛盾する二つの目的性を持っていて、「野党共闘」の側に歓迎されるネタでありながら、安倍晋三の側の利益にもなるネタなのである。そしてまた、記事を書いた者(プロ)は、そのプロパガンダの価値の両義性をよく心得て投擲している。だから、この記事は、どちらの側もよくエンカレッジする方向に機能するのであり、そのため、どちらの側からも叩かれることがなく、ジャーナリズムの信憑性がどうのというクレームを受ける心配がない。

c0315619_14454124.jpg問題は、そうした深い政治の作為性や工作性について、「野党共闘」を素朴に応援してTwで喧噪している左翼リベラルが、どこまで自覚的で透視的であるかということであり、ガセ情報を敢えて放擲した者のマチュアな政治商売のバランス感覚を察知しているかということなのだ。北海道5区の選挙の実態が、実はすでに大差なのではないかという私の推測を媒介し補強づける物証は、4/2に現地に入った蓮舫の絵であり、4/3の岡田克也の絵であり、4/9の枝野幸男長妻昭の絵である。党の最高幹部たちが、選挙戦を左右する最も大事な時期に5区の現場に入った。だが、どの写真や映像を見ても、演説に耳を傾ける聴衆を撮ったものがない。聴衆の姿は配信の絵から周到にマスクされている。多くの支持者が集まった気配がない。全国の視線が集中している場所なのに、当の空間は寒く閑古鳥が鳴いている。普通は、政党の幹部が選挙区で街頭演説するときは、運動員が事前に人集めして絵作りに尽力するもので、街頭演説の群衆が多ければ多いほど、その政党の選挙は有利な情勢にあることが一般に証明され示威される。マスコミで紹介される。民進党の北海道5区の選挙運動は、拍子抜けするほど空っぽで人の熱気がない。土地の有権者に選挙への関心が低く、民進党や「野党共闘」への期待が薄いことが推察される。

c0315619_14455338.jpg安倍晋三の方は、逆に選挙戦の後半、新さっぽろ駅前で、これまでにない大群衆の絵を作って誇示するだろう。さて、岡田克也はどうして告示日に札幌に入らず、もう一つの長岡京の方に入ったのだろうか。ある筋から入った情報では、実は京都3区も民進党が苦戦なのだという。一瞬、信じられずに驚いてしまった。東京では、と言うよりマスコミとネットの情報では、自民党が降りた京都3区は無風であり、泉健太の勝利は確定で、誰も接戦だなどと思っておらず、民進党が苦戦など想像もしていない。京都は民進党(民主党)の牙城でもあり、同時に共産党の伝統の聖地でもある。ダブル地盤の固い固い土地だ。比例から鞍替えした泉健太は知名度が高く、補選に出馬するまで現職議員だった。それが、自民党が候補を立てずに逃げた選挙で、お維の無名新人候補を相手に、どうして苦戦だの接戦だのという噂が立つのだろう。東京の感覚ではキツネにつままれたような話だ。だが、子細を見ると、共産党は京都3区で自主投票で、泉健太に推薦を出しておらず、民進党の方も共産党の支援を嫌って共闘を隠す戦術に出ているのだと言う。前原誠司と泉健太なら、その行動選択もむべあるかなで、彼らのネイティブ(=反共の立志)からの理の当然と頷いてよかろう。ということは、自民党の支持者がどちらに流れるかで結果は決まる。

民進党への強い逆風の現実を鑑みれば、京都3区の「接戦」も十分あり得ると思い直した。


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by yoniumuhibi | 2016-04-13 23:30 | Comments(3)
Commented by 通りすがり at 2016-04-18 22:57 x
 京都3区を知る者です。正直、泉健太以外にまともな候補者がいない。おおさか維新の候補者は愛媛の人。乙訓(おとくに)を「おとくん」と言っていた人でまったくの土地勘のない人で間に合わせの人。日本のなんとかは泡沫。ビジュアル的にも難あり。
 自民・公明の支持者は棄権するか、しぶしぶ泉健太が半分。共産党支持者から見ても、一番マシなのは泉健太。共産党支持層から見れば、後は基地外にしかみえない。民進や社民支持層はほぼ9割。無党派層から見ても泉健太。20時の投票締め切りと同時に当確です。棄権が増えこそすれ、泉健太の当確はほぼ99パーセント。
 他のご意見が勉強になるだけに、本件のご論考はちと残念です。政党支持率だけではなく、地元の土地勘というか、候補者に対する評価も変数としてあるのです。
Commented by わかめ at 2016-04-19 19:58 x
京都3区の企業で働いている無党派層です。現地の政治的な雰囲気は仕事での外回りでよく感じます。無党派の視点ですのでどこも強く応援もしませんし、非難の視点もありません。これまでは、辞職した自民党の宮崎氏が1位当選で、その次点で民主党の泉氏が比例当選、共産党候補は記憶する限りは当選者はいなかった区域で、宮崎氏と泉氏はほぼ拮抗状態の票数です。つまり、今回、自民党は候補者を出していないので、その票が流れることとなる訳ですが、自民公明票の半数が棄権、半数が野党連合の泉氏にというのには、若干??と感じています。去年、大阪W選挙でおおさか維新が勝ったのは、共産党が自民党を支援したために、市民に根強くある「共産アレルギー」が風を送ったと感じてます。共産党が強いはずの京都ですが、それでも3区の共産党候補は勝てていないのを見ると、民進党が連合と称して共産党との統一候補&応援スタイルの泉氏へ、自民公明票の半数が流れるとの推測は、私は甘い感じがします。大阪W選挙での民主党支持者でも、共産党が応援をすることへの拒否感から、おおさか維新へ票が流れています。また、テレビ新聞は安倍自民党批判のオンパレードですが、批判ワンイシューの必死な世論作りであるがため正直距離を置いているのでは。民進党も明らかに共産党批判をする前原氏を応援する人も京都人で、民主集中制をとらない民進党の支援者の投票行動は、共産党より自由意志度が強いです。宗教的な民主集中制があるのが公明党で、そのコア票が共産党に流れるとは考えられません。普段から創価学会批判をする党を利する行動はしないでしょう。無党派の感覚は、安倍がダメだから共産党(民進党)へと単純には流れません。また共産党支持者以外には、多少の「共産アレルギー」があるのもこの京都3区で感じています。テレビで昔の安保闘争をいかにも権力に拮抗する若者の清き闘いのように流しますが、あの当時を知る人の中には、学生運動やってた人を快く思わない世論が強かったから社会主義政権ができなかった訳で、今もその世論は前期高齢者の世代には強くあります。泉氏の当落の予想はしませんが、自民公明が候補を出さないからと言って、共産党と連携した泉氏が余裕当選とはいかないような気がしています。拙い文章で失礼いたしました。
Commented by うめこ at 2016-04-20 12:42 x
私も、先のわかめ様のコメントに同意致します。
大阪W選挙で、少なくとも普段自民党に投じる方の何割かが大阪維新へと投票しました。
やはり共産党アレルギーだと思うのです。
京都3区に自民党候補は出ませんが、自民党支持者で確実に選挙に行く層の多くは、棄権せず大阪維新か日ころ党に投じて、共産党が見え隠れする民進党を勝たせないように動くのではないでしょうか。
そうでなくとも大阪維新も日ころ党も、その思想から自民党支持者とは相性が良いのです。
無党派の中でも共産党アレルギーの有る層や保守層の票が、大阪維新と日ころ党で真っ二つに割れた場合は、民進党候補者が悠々と当選出来るような気もしますが。
目の離せない選挙区です。


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