暗雲が漂ってきた「野党共闘」 - 民進と共産、同日選の共闘で歩調合わず

c0315619_18191554.jpg本日(3/29)、安保法が施行された。今日の朝日は、1面、2面、4面、16面、17面、38面と、関連記事や社説を配していて、安保法特集の紙面に仕立てている。基調は昨年と同じく反対の立場での論陣だ。法制全体を概念的に整理した4面の図は分かりやすく、復習の教材としてありがたい。一方、成立から半年経って、少しずつ状況に変化が生じていて、安保法制に賛成の世論が増えている現実がある。日経の最新(3/25-27)の世論調査では、安保関連法を「廃止すべきだ」が36%、「廃止すべきでない」が52%となり、安保法を容認する意見が多数となる結果となった。読売の記事によると、安保法に反対の世論がなお多いが、昨年と比較して賛成と反対の差が縮まっている傾向が報告されている。現在のマスコミの議論や国民の認識では、安倍晋三は安保法制を選挙の争点にすることを避け、参院選(同日選)が終わった後に自衛隊を南スーダンの駆けつけ警護の任務に派遣するという話になっている。安保法隠しの選挙にする思惑だと考えられている。だが、私の見方は違っていて、安保法制が選挙の争点になるだろうと予測する。安保政策を争点にして勝つシナリオが仕組まれつつあるのではないか。



c0315619_18193591.jpg4月中は、消費税増税先送りの問題に絡んで、アベノミクスの成否やら、保育士の待遇改善を実現する財源捻出の議論やら、大型補正の中身やら、TPP対策やら、経済政策が政局の関心になるだろう。予算成立後の4月の国会の主要な論点は、特別委を設置して審議を始めたTPP承認案とTPP関連法案だと言われてきた。4/12告示、4/24投開票の北海道5区補選を睨みながら、消費税とTPPを中心に、結成された民進党と安倍自民党が政策論争を演じるというのが、われわれが予想している4月の政治対決の構図である。そしてその議論の中身がそのまま、7月の参院選(同日選)の争点に持ち込まれ、民意を問われる方向になるだろうという感覚でいる。経済政策が争点だろうと漠然と意識している。だが、本当にそうだろうか。ここで、補選から1か月後の5/26に伊勢志摩サミットが予定されている点に注意を促したい。選挙の1か月前のタイミングだ。サミットで焦眉のアジェンダになるのは、中国の南シナ海の問題である。日米と西側主要国が中国に牽制と警告のステートメントを発する場になるだろう。東アジアの安全保障が会議のテーマになり、西側主要国vs中国の対立が露わになるのではないか。当然、中国は反発し、日米を強く批判する展開になる。

c0315619_18194894.jpg私の想像はもっと悲観的で危機的な領域に踏み込んでいて、4月から南シナ海でフィリピン・ベトナムと中国との間で紛争が起こり、米国が介入して艦隊を派遣し、軍事衝突の一歩手前の状況が現出しているのではないかと恐れている。米国は、その危機を意図的計画的に誘導、演出し、紛争当事国であるフィリピン・ベトナムの首脳を緊急で伊勢志摩サミットに招待するのではないか。現時点で、朴槿恵の出席が調整されている。これは、北朝鮮に対する西側主要国の圧力を示威する狙いからの動きで、今回のサミットが通常のマイルドなセレモニーではなく、東アジアの安全保障を見据えたクリティカルな場として設定されていることが窺える。今年2月、オバマはASEAN10か国の首脳をパームスプリングズ近郊のサニーランズに招き、中国の南シナ海領有を牽制する国際会議を開催した。意表を衝く大胆な米国の動きだったが、その延長線上の戦略の一手を、伊勢志摩サミットで打ってくる可能性がある。サミットには世界中の注目が集まり、オバマと安倍晋三にとって中国封じ込めの国際政治を差配する絶好の機会だ。米国のアジア太平洋戦略の次の具体目標は、この地域にNATOと同じ集団安全保障のスキームを作ることである。

c0315619_1820055.jpg4/24に北海道5区補選が終わったとき、安倍晋三は態度を豹変させ、政治の景色は一変するのではないか。現時点では、マスコミの世論調査の政党支持率が、安倍与党と「野党共闘」との間で3対1の開きがあり、1か月後の選挙までにこの勢力差を埋めるのは難しいと見通されている。敗北でも接戦に持ち込めれば、空気はかなり違ってくるだろうが、大差で惨敗となると「野党共闘」には大きな痛手で、安保法制を争点にして参院選に勝つという戦略そのものも足場が崩れてしまう。そして、「野党共闘」にとっては最悪なことに、5/3の憲法記念日を意気消沈して迎えなくてはいけなくなる。「野党共闘」側の戦略では、4/24を勝って5/3を迎え、参院選へのモメンタムをステップアップする作戦だった。昨年、横浜に3万人以上が集まった絵は壮観で、あの勢いのまま左翼リベラルは5/17の大阪住民投票に勝利している。そして、6月の安保法案阻止の運動に流れ込んで行った。5/3の大集会が起点だったと言える。1年前の朝日の記事を読むと、1万人を目標にした集会に3万人が押し寄せたという実行委の証言が載っている。今年、同じ熱と勢いの政治のストリームを作れるかどうかは、4/24の補選の如何にかかっていて、緒戦を取った方が7月の本戦で断然優位になるのは間違いない。

c0315619_18201360.jpg昨夜(3/28)、「野党共闘」に暗雲をもたらす不吉な情報が飛び込んできた。衆院小選挙区の選挙協力の協議が、民進党と共産党と間で開かれておらず、共産党が独自候補の擁立に踏み切ったとある。これは衝撃のニュースで、左翼リベラル界隈に動揺が走っていることだろう。会見で事実を明らかにしたのは共産党の山下芳生。協議を呼びかけているのに枝野幸男が拒絶しているのだと言う。深刻な事態だ。同日選まで残り3か月のタイミングである。民主党と共産党が選挙協力をするのは初の試みで、一刻も早く準備を始めて関係者が調整を重ねなくてはいけない。物理的な作業時間を考えて、もうとっくに協議が始まっているのだろうと思っていた。現在のところ、民進党は衆院選で共産党と共闘する意思はなく、小選挙区では敵として戦う関係になる構えでいる。共産党からすれば、衆院小選挙区では敵として民進党と戦い、参院選挙区(1人区)では民進党候補に票を流すという、奇妙なねじれの選挙になる。有権者には分かりにくい、通常はあり得ない選挙の形であり、そのまま突っ走って歪な形で固まれば、「野党共闘」は失敗で、戦う前に敗北が決定的な情勢となる。共産党は、どこかの時点で小選挙区候補を降ろすしかなく、参院選1人区のとき以上に惨めなベタ降りを余儀なくされるだろう。

c0315619_18202720.jpg民進党は、どうして共産党との衆院選小選挙区での共闘の協議入りを拒んでいるのだろう。その理由は簡単で、衆院と参院では選挙の定義と性格が異なるからだ。衆院選は「政権選択」の選挙である。参院選はそうではなく、「政権にお灸をすえる選挙」となり得る。その相違があり、したがって衆院選で民進党が共産党と手を組むことは参院選ほど簡単ではなく、そこに躊躇と逡巡がはたらくのは当然のことだ。自民党寄りの保守層は、参院選なら気楽に政権批判票を投じられるが、衆院選となるとそう単純には浮気できない。政権交代をめざす民進党は、自民党支持の保守票を取らなくては小選挙区で自民党に勝てない。政策が水と油で、イデオロギー的なイシューのある共産党とは、衆院小選挙区での共闘に踏み切るのは容易ではないのだ。同日選がほぼ確実な情勢となった今、この判断をどうするかは民進党の執行部にとって難しい問題だろう。客観的に見たとき、補選告示から2週間前のこのタイミングで、衆院小選挙区での民進党と共産党の選挙協力が頓挫している事実が明らかになったことは、北海道5区補選を戦う現地の「野党共闘」陣営にとって大きな打撃と言える。選挙戦に悪影響が及ぶだろう。報道から察せられるのは、民進党の幹部が5区補選の様子見をしていることで、結果次第で「野党共闘」全体を見直す腹を持っているのではないかという疑いを抱く。

北海道5区補選の負けを視野に入れて、その後の対応を睨んで、共産党との共闘から後ずさりしているのではないか。例えば、社民党と生活の党とは選挙協定を組み、将来の合流も視野に入れて態勢を固めるけれど、共産党とは一線を画し、選挙協定は組まないから自主的に票を流してくれと、そういう、共産党を除け者にする態度に出るのではないか。もしそれが民進党幹部の真意であったなら、この時点で「野党共闘」はすでに破綻したということになる。


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by yoniumuhibi | 2016-03-29 23:30 | Comments(1)
Commented at 2016-03-29 23:50 x
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