4月に解散総選挙し、7月に再び衆参同日選を打って改憲を固める

c0315619_1744774.jpg解散総選挙の可能性が、些か現実味を帯びてきたように思われてきた。これまで私は、4月解散説にも衆参同日選にも否定的な見解で、その理由は、安倍晋三の立場に立って考えたとき、現在の衆院勢力(自民292:自公327)をリセットするような無謀な冒険には出ないだろうという判断からだった。現状、自公で3分の2の議席を持っている。この数が物理的にあるからこそ、安保法制も無理やり押し通すことができた。今年は、昨年見送った残業代ゼロ法案を成立させる予定が控えている。安倍晋三にとって衆院3分の2はエースのカードで、独裁権力の最終的根源であり、簡単にこれを手放す博打はできない。衆院選で3分の2を取るのは至難の業だ。そうした現実的な観点から、早期解散と同日選の見通しには首を傾げる見方だった。だが、ここへ来て、全く新しい政治情勢が出現して、安倍晋三にとって願ってもない順風の環境が訪れている。それは、民主党が民進党という奇怪な名前に変わったハプニングであり、民主党の関係者と支持者を落胆させる「敵失」が発生した事件だ。組織を結集させてきたシンボルが、突然、事故死のように失われる政変が起きた。党内では不満と困惑が渦巻いていて、不具合な党名変更をキャリーした執行部に異議と反発が燻っている。



c0315619_17441977.jpgこのことは、選挙で民進党と戦う自民党にとって、まさしく棚からぼた餅の好機と幸運が到来したことを意味する。ここに重要な証拠資料がある。朝日新聞が3月12・13日に実施して15日に発表した世論調査の政党支持率に注目しよう。自民党は前月の34%から6ポイント増の40%に上昇し、民主党は前月の8%から1ポイント減の7%に低下した。夏の参院選でどの政党に投票するかを尋ねた数字を見よう。自民党は前月の37%から5ポイント上がって43%に、民主党は前月の16%から3ポイント下がって13%になった。今週末が投票日ならこの得票率の選挙結果になる。このデータを紹介して焦点を当てるのは、これが朝日の世論調査結果だからだ。言うまでもなく、朝日は他紙よりも民主党支持の世論が強めに出て、自民党支持の世論が弱めに出る傾向の媒体である。数字を見た安倍晋三と自民党支持者は小躍りしたことだろう。世論調査を実施した時期は、党名を決める選考が進行していたときだった。党名変更は、選挙で自民党に勝つため、国民の支持と期待を集めるための戦略だったはずである。だが、岡田執行部の苦心の合流新党作戦は完全に裏目に出てしまった。明らかに、国民から袖にされて不興を買う展開になっている。

c0315619_17443091.jpg私が安倍晋三なら、ここで間髪を置かず勝負に打って出る。新党結成の意気が上がらず、元の名前に未練が残り、党内が動揺している民進党を急襲して一撃を与える。民進党は、これから新ロゴと新綱領で表紙と看板をリニューアルしないといけない。4月に解散総選挙となれば、全国津々浦々の選挙運動で態勢を切り換えて臨むのは難しく、元のロゴのままの選挙カーとか、準備不足で右往左往して躓くのは確実だろう。喩えれば、空母甲板上で爆弾から魚雷に戦闘機の装填を切り換えていた混乱のさなか、不意の敵機来襲を受けて全滅したミッドウェー海戦の歴史が想起される。戦って勝つ側は、敵の弱点こそを衝かなくてはならず、敵の混乱にこそ乗じる兵法でなくてはいけない。自民党の勝機は今だ。今、選挙となれば、民進党は、安倍政権を攻撃する前に、民主党から民進党に党名が変わって政策がどう変わったのか、これまでと何が違うのか、国民に説明するところから始めなくてはならない。国民に自己紹介して新党の意義を納得してもらう必要がある。野合批判に反論する政見主張にシフトせざるを得ず、選挙の戦い方はどうしても守りの姿勢になる。安倍晋三と自公の側は、野合だと声高に連呼し、民主党と何が違うのかと攻めまくればいい。

c0315619_17444040.jpgすなわち、選挙の争点は民進党(合流新党)の是非になる。安倍政権ではなく民進党を審判する選挙戦の構図になる。安倍晋三の方は、形式的には、(1)安保法制の是非、(2)TPP政策の賛否、(3)消費増税を先送りする可否、(4)アベノミクスを継続する諾否、を争点として設定すればいいし、実際にそのように戦略を組むだろう。(1)については、最近の世論調査では、次第に賛成が増えて反対が減っていて、半年前とはかなり国民の意識が変わってきている。また、4月からは、報ステは後藤謙次が陣取り、NEWS23は星浩が仕切る配置になるから、安保法制をめぐる報道の論調は従来とは一新された状況になるだろう。(2)のTPP政策については、安倍政権の政策と民進党の政策が近く、民進党と共産党の間で対立軸が線引きされる形になり、「野党共闘」は説明に苦しむ立場になるはずだ。(3)の消費増税先送りについては、与野党共に公約が同じになり、2014年のときと同じく争点が消される形になる。同じ手を二度使う愚について、安倍晋三を叩く声も上がるだろうが、国民は増税先送りでホッと一安心できるのであり、姑息であってもこの争点回避策は歓迎だろう。(4)については議論になる。だが、安倍晋三の立場に内在して考えると、(4)こそが重要な急所なのだ。

c0315619_17445053.jpgそれはどういう意味かと言うと、解散総選挙の時期が4月より後であればあるほど、株価が暴落している可能性が高いという危険があることである。つまり、株価をキーポイントとして着目すれば、解散総選挙の日程は、高値で安定している現在に近ければ近いほどよく、早ければ早いほど好条件になる。時間が経つほどリスクが高くなる。株価が1万2000円を割ってしまう不測の事態になると、「溶かした年金」問題で騒然となり、内閣支持率は暴落し、最早、安倍晋三に選挙の勝ち目はない。解散総選挙などできず、政権は死に体と化し、ポスト安倍で総裁選前倒しの政局になるだろう。安倍晋三の立場に即して考えれば、選挙は株価が高値安定の裡にやらないといけない。原油バブル崩壊がイールド債市場破綻に連鎖し、リーマンショックと同じ金融危機が再現したら終わりだ。そうなる前に衆院選で勝つ必要がある。今なら自民党単独で3分の2を獲得できる勝算は十分だ。実は、私が安倍晋三なら4月の解散総選挙に出ると試論したのは、憲法改正を実現するための戦略の布石としてであり、4月の初戦で大勝利を収め、7月の本戦を前に民進党を二つに割るためだ。改憲賛成の右派と改憲反対の左派の二つに割る。橋下徹とくっつく右派と、共産党と「野党共闘」の路線に拘る左派に割る。

c0315619_174525.jpg4月の総選挙に大敗した後、前原誠司、細野豪志、長島昭久、野田佳彦などの右派は、江田憲司や松野頼久と共に、もう一度右寄りの野党再編を再開するだろう。党は最早、民主党でなくなっていて、シンボルを欠き、求心力と統合力が決定的に弱くなっている。組織は壊れやすい状態にある。民進党などと、誰も未練と愛着のない党だ。左派も同じであり、失敗に終わった野合を反省し、政策と理念でピュアに結集を図ろうという方向に向かうだろう。そうなると、野党第一党が分裂して解体する。ここぞとばかり、安倍晋三は - 上に並べた争点で4月の衆院選に勝った後で - あらためて憲法改正を切り出し、分解した民進党右派に改憲を持ちかけるのである。自民、お維、公明、民進右派の4派が一致できる具体案を探り、一つの改憲策を纏めるのだ。4派が纏まれば、左翼リベラルを除いた国民的な合意体制ができる。場合によっては、伊勢崎賢治と想田和弘の「新9条」を改憲案にして、左翼リベラルを切り崩すところの、最も左寄りの妥協案を絞るかもしれない。現実的に、そこまで徹底して妥協しないと創価学会を取り込むのは難しい。この4派体制で、7月の選挙を衆参ダブルにして、改憲派vs護憲派の関ヶ原にするのである。5月から6月の間にその政治構図を作ってしまうのだ。3か月の間に2度衆院選をする。

c0315619_17451592.jpg3か月の間に2度も解散総選挙などと、そんな荒唐無稽なと思うかもしれないが、憲法改正の発議に踏み切るなら、これは民意を問う手続きとして当然だし、国民も受けて立たざるを得ない。4月の解散総選挙は改憲が争点になっておらず、具体的な改憲内容が公約として提示されていない。ということは、その選挙で当選して議員になった者は、そのままでは改憲発議に賛成できないし、発議をする主体の正統性を持ち得ていない。国民に対する騙し討ちの発議だ。これを避けて正統性を確保するためには、7月に衆参同日選をして、国民の信認を得た議員で正式に発議をしないといけない。また、そうした手続きを踏んで3分の2の勝利を収めることが、改憲をする側にとっては次の国民投票で勝つ有効な戦略にもなり得る。実際のそのときの結果は、自民、お維、公明、民新右派だから、3分の2を超えて9割以上の議席を占めるだろう。私が執拗に、「野党共闘」などではなく永田町の外から新党を立ち上げる必要を説き、新党で改憲を阻止せよと訴え続けているのは、こうした改憲側の戦略に対抗するためだ。民進党と共産党に依拠する「野党共闘」の戦略では、金融危機という「神風」が吹かないかぎり、安倍晋三に勝つことは絶対にできない。安倍晋三の最終目標は、岸信介の悲願の達成にある。畢竟、どこかで必ずルビコンを渡る。

党名変更の失策で民主党が自滅を招いた今は、安倍晋三にとって天佑の一瞬であり、改憲の大勝負に出る腹を密かに固めておかしくない。以上、4月の解散総選挙があり得ると想定して、安倍晋三が狙う改憲戦略の思惑を大胆に分析してみた。4月、安倍晋三が本当にこの作戦に出てきたときは、民進党と「野党共闘」は大敗し、永田町とマスコミは一気に憲法改正の政局に流れ込むだろう。


c0315619_17453081.jpg

[PR]
by yoniumuhibi | 2016-03-17 23:30 | Comments(2)
Commented by 愛知 at 2016-03-17 19:41 x
賽は投げられた―――貴下ご教授に感謝。短文投稿サイトでのご教授も含め、不勉強の吾身、業火に焼かれる思いです。政権戦略の貴下ご分析、フォン・ノイマンのミニマックス法を思い起こし。比類なき正鵠を射たご分析、一人でも多くの方に広がればと。心の奥底より、そう願います。
Commented at 2016-03-21 17:41 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


カウンターとメール

最新のコメント

左派が、前原をほめるなど..
by 前原より小池 at 21:21
続き: ◆ 視点をアメリ..
by NY金魚 at 12:35
数カ月前の当ブログに「慰..
by NY金魚 at 04:11
細野氏の三島後援会の会長..
by 一読者 at 19:15
優れた日本型システム ..
by 優秀な日本型システム at 16:12
本当に仰る通りだと思いま..
by liberalist at 00:12
そうでした。「民主」と言..
by 長坂 at 23:45
私たちの世代(60代)に..
by ametyan at 11:04
稲田が辞任しましたね。晋..
by ロシナンテ at 13:19
TWされている通りだと思..
by 長坂 at 11:47

Twitter

以前の記事

2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月

記事ランキング