どういう国を作るべきか - 法人税と所得税と消費税の社会主義的モデル

c0315619_16525661.jpgどういう国を作るべきか。そのことを考える上で、国の税収別推移のグラフはヒントを与えてくれる。ネットで見つけた資料は、2013年までの数字が載っていて、すなわち税率5%の時代までであり、消費税収は10兆円ほどだが、税率を8%に上げて3年目の2016年度予算では、消費税収は17兆円となっている。所得税収とほぼ同じ規模だ。グラフを見ると、所得税収はどんどん減っていて、25年前の1991年に26.7兆円だったのが、2010年代は半分の13兆円台に落ちている。アベノミクスの恩恵で企業はバブル期を超える空前の利益を出しているが、法人税減税のために2016年度予算では法人税収は12兆円で、バブル期1989年の19兆円の3分の2しかない。財務省の法人税率の推移のグラフを見ると、基本税率が43%から23%に下がっていて、半分になっている。税収の数字が半減する道理だ。この税収別推移のグラフ図を眺めていると、日本の社会経済の矛盾というものが一目で掴めるし、どうすればよいかの解答と展望も自ずと導かれるように思われる。社会主義の原理を政策と経営に導入し、法人税収を20兆円に戻し、所得税収を20兆円に戻すことだ。消費税率を5%に戻して消費税収を10兆円台に下げ、三つの税収計を50兆円にすることである。



c0315619_1653787.jpg企業の利益剰余金を内部留保(年26兆円)や配当金(年13兆円)に回すのではなく、労働者のインカムに回し、消費市場を拡大させる購買力の原資にし、所得税収や保険料収入を増やすこと。年金と医療と介護の保険会計を安定化させること。また、政府の法人税に回し、増える社会保障費の財源にあてがうこと。そうして企業も労働者も政府も、三つのセクターが拡大して均衡すること。トリクルダウンとは逆の、ボトムアップの経済発展と財政再建の道があり、われわれはそれを構想に据えなくてはいけない。それは、戦前に講座派が唱え、戦後に大塚久雄が唱え、戦後改革の中のシャウプ税制として制度化されたセオリーとモデルである。現在でも、共産党などはこのモデルでの政策体系を主張している。どういう社会経済を作るかを考えるときは、モデルを提示しないといけない。私は、日本が戦後に成功させてきたモデルへの回帰を選択すべきであり、欧米が「世界史上唯一成功した社会主義」と呼んで評価したところの、いわゆる日本型資本主義の意義を再発見し、その再建に努めるべきだと思う。すなわち、年功序列と終身雇用のシステムの復活であり、家族的企業経営の再建である。

c0315619_16531843.jpg人が物として扱われない社会経済の回復だ。前回の記事で、日本のマスコミや論壇に登場する社会学者が、子どもの貧困にせよ、保育園(保育士)不足にせよ、社会問題への解決策として、すぐに消費税増税を言い、「広く薄く支え合い」の言説で消費増税の政策を正当化する傾向を指摘した。児童の虐待にせよ、高齢者の虐待にせよ、奨学金問題にせよ、日本社会の貧困化と共に矛盾が拡大激化した問題だが、世間的にリベラルと目される東大岩波系の学者たちは、そこで内部留保を言わず、富を労働者の所得に移転せよと言わず、国民全員にコンパッションの説教を垂れ、「広く薄く支え合い」で解決せよと忍耐を唱える。2007年頃から、こうした風潮と言説が左翼リベラルの世界で台頭し、北欧型モデルの宣教が始まり、左が左を説得して消費増税路線が左翼リベラルの世界でオーソライズされた。岩波の雑誌「世界」も、2000年代後半から、それまでは消費増税反対だったのを賛成に転換している。この転換に最も大きく貢献したのが、反貧困カリスマの湯浅誠であったことは世間の常識だろう。右から新自由主義者がグローバルスタンダードを咆哮し、左から脱構築主義者が北欧モデルを折伏し、挟撃されて国論は決した。

c0315619_16533035.jpg愚かなことに、われわれは、目の前で内部留保の富の山が年26兆円も増殖し、純利益の4割が配当金となって年13兆円も富裕層に浪費されているのに、それを問題視せず、「広く薄く」の宗教に帰依して、消費を圧縮する清貧生活に邁進しているのである。この20年間に顕著になった子どもの貧困、児童虐待、DV、老老介護殺人、等々の社会問題は、基本的に家庭が弱く脆くなったことが原因で起きている。弱く脆くなったという意味は、得るべき収入が削られ、健全な再生産に十分な経済的基盤を得ていないという意味だ。20年前のように、一家の働き手に十分なインカムがあり、家を買ってローンを払い、四人家族の生活を支え、子どもを大学にまでやれ、貯金をして老後を送れるという生活が普通にできていれば、これほど悲惨な諸問題が噴出、多発して絶望的状況が蔓延することはなかっただろう。一億総中流が続き、堅固で健全な家庭が維持されていれば、こうした社会問題の対策に行政が没頭するという事態はなかった。今、学校でクラスを持った教師たちは、教科を教えること以上に、貧困で問題を抱えた児童の心と体を守ることに気を配らなくてはいけない。貧困が社会を蝕んでいる。だが、家庭にインカムがあれば、健全な家庭と家族があればという視点は、こうした問題を考えるとき、今では完全に抜け落ちてしまっている。

c0315619_16534197.jpgこうした現状を見ながら、私が思うのは、阿部彩ら社会学者の存在というのは、結局のところ官僚の手先であるということだ。彼らが社会問題の深刻さを紹介説明し、官僚が対症療法的な制度を考え、新規事業にして予算(調査費)をつけ、それを膨らませ、何やら独立行政法人を作って官僚が天下り、接待の飲み食いと海外出張で遊興三昧し、渡りで退職金をせしめている。官僚は、新しい予算を作るために新しい仕事を必要とし、貧困が起因とする社会問題を発生・激化させ、東大岩波のリベラル学者にマスコミで騒がせ、同情と篤志を説き誘い、消費増税に同調する空気を巧妙に作るのだ。「政府は新しい仕組みを作りました」などとNHKや朝日新聞で宣伝し、役所に名ばかりのアリバイの制度窓口を設け、いかにも住民に対策しているような素振りをしながら、真の目的はシロアリの遊興と天下りなのだ。東大岩波のリベラル学者は、実のところ官僚と一体なのであり、最近の米大統領選の政治の言葉でいえば、まさしく「エスタブリッシュメント」に他ならない。アカデミーの社会学者の言うとおりに消費増税されても、結局はその逆進性が効いて、弱者の生活はますます苦しくなり、子どもの貧困は6人に1人から5人に1人になる。こういう欺瞞が、ネオリベの20年間延々と続き、官僚と結託したアカデミーの脱構築主義を批判する知識人は現れなかった。

c0315619_18314692.jpg若い夫婦が子どもを二人育てないと、社会は単純再生産することができない。子どもを二人産んで育てることは大変なことだ。20年前の日本はそれが一応はできていて、誰でもそれができるという前提があった。政府の社会政策モデルがあった。生涯賃金のカーブとボリュームがあった。専業主婦でも専業主夫でもよいが、一人が家事と育児を受け持ち、一人がインカムの責任を負い、夫婦が分業で一家四人を支え、所得税と保険料を払って社会を支えるというあり方や生き方を、われわれはもう一度見直してよいと思う。本来、それは分担ではなく分業でやるべきことで、その方が子どもにとってよく、企業にとってもよいあり方である。結婚後に出産があり、一人目と二人目の育児が始まったときは、どうしても15年間はそこに拘束されざるを得ない。子どもがそれを必要とする。会社の方からすれば、その時期は最も精力的に現場で活躍して欲しい時期で、実務のリーダーあるいはエキスパートとしてのキャリアを形成してもらいたい時期である。成果を上げて認められ、技能と人脈を身につける時期だ。この時期に、育児優先で毎日遅刻とか早退とかでは戦力にならないだろう。公務員は別にして、企業ではそれは困難なことだ。民間企業は競争の中にある。社員には納期とノルマがある。だが、幼い子どもは、すぐに熱が出るし、夜中でも耳が痛くなる。親の都合に合わせられない。

熱が出た子ども、耳が痛い子どもを小児科に連れて行かなくてはいけないとき、大事な得意先との商談があったり、幹部の前でプレゼンテーションする会議があったりする。二つの時間が重なるとき、女であれ、男であれ、その30代半ばの社員はどうするのだろう。まして、子どもが二人いる家庭の場合、そうした現実の問題はどうクリアするのだろう。


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by yoniumuhibi | 2016-03-09 23:30 | Comments(6)
Commented by さくら at 2016-03-09 21:20 x
法人税収を20兆円に戻し、所得税収を20兆円に戻すことだ。消費税率を5%に戻して消費税収を10兆円台に下げ、三つの税収計を50兆円にすることである。(以上、本文記事より)

このモデルこそが国民一般を豊かにするものだと思います。累進課税によって政府財政のビルト・イン・スタビライザーも復活させることができます。消費税は、人件費(労働者のインカム)を減らす圧力ですから、5%でもまだ高すぎるかもしれませんが。ともかくも、ご指摘のような方向への転換が、日本社会が持続するための必須条件だと思います。
Commented by 愛知 at 2016-03-09 21:40 x
「輝く時代」が、大きく跳躍して、未来がこちらに駆け寄って―――今回の記事は昨年6月26日の御ブログ、立憲等で選挙に勝つ(貴下オリジナル)に接したときのような胸のときめきを覚えました。読んでいて、わくわくいたします。本当に有り難く思います。添えて頂いた資料も大きく頷かされるものばかりでした。

ところで昨年2月16日のNEWS9を目にいたしました。預金封鎖、NHK、動画で検索可能です。官邸が、大越健介を通して1946年2月16日の預金封鎖について視聴者に通知しています。また8分ほどのそのニュースの中で、日本総研(三井住友フィナンシャルグループ)の上席主任研究員を登場させ、「借金をおっているんだという認識を。」「国民の借金なんだ。ツケは国民に回ってくる。」と言わせています。2014年度末の政府債務残高は対GDP比232.8%、1143兆円であり、その比率は預金封鎖の時代、つまり戦争のツケを国民から搾り取った時代と同じだと喧伝しています。貴下命名の鼓腹撃壌の身なれど、さすがに大本営発表に耳を傾けようとは思いません。「広く薄く」のネオリベの「精神的支柱」と思える政府債務残高に関しても折を見てご教授賜れればと。甚だ勝手で幼稚な質問だと思いますが、何卒、宜しくお願いを申し上げます。


Commented by 読者 at 2016-03-10 06:13 x
東海アマ氏のメインアカウントが復活したようです。珍しいケースだと思います。
https://twitter.com/tokaiama
Commented by 私は黙らない at 2016-03-10 06:58 x
今回、前回の記事(税体系と配当金について)、大変興味深く読ませていただきました。
先日、クリントン政権下で労働長官を務めていたロバートライシュのドキュメンタリ「みんなのための資本論」をテレビで見たのですが、その中で今日の格差の原因として、税体系の変化をあげられていました。台所仕事をしながら聞いていたのでおぼろげな記憶なのですが、アメリカでも法人税の引き下げはそんなに昔のことではなく、以前はもっと法人税率も高かったと言っていたと思います。
それと、驚いたのは、経営者に高額の報酬を払うことが当然のように思われているアメリカでも、実は昔(といってもそんなに昔のことではありません。)は、エグゼクティブと呼ばれる人達と一般市民との年収格差はこれほどでなかったということ。確かレーガン政権あたりから(すみません、記憶があいまいです。)急カーブで右肩あがりになり、所得格差が急激にひらきつつあるという事実です。
日本でも、経営者に対する高額報酬といえば、日産のカルロスゴーン氏に対する報酬が思い出されます。それまで日本では経営者にこれほどの高額な報酬を払うという慣習がなく、その額に世は驚いたかと思いますが、あの時「これで経営者の報酬額もグローバルスタンダードに近づいた」という肯定的な見方がされていたように思います。でも、我々庶民の本音は一体どうでしょうか。最近の例で言えば、ソフトバンクの孫さんが後継者のニケシュアローラ氏に165億円報酬を払ったのが記憶に新しいかと思います。このニュースに、ソフトバンクで働いている一般社員の方はどう思われているのでしょうか。たった一人の人間に、これだけの報酬が集中してしまうのは、正直腑に落ちません。
ちなみに、ロバートライシュ氏はリベラルな校風で知られるUC バークレーの教授ですが、このバークレー校の学長の年収はなんと45万ドルだそうで、カリフォルニア州の税収悪化により学費が高騰する中、ふざけるなと言いたいです。まぁ、一回の講演で30万ドル稼ぐヒラリーよりはマシですが。

Commented by 私は黙らない at 2016-03-10 06:59 x
(続き)バーニーがなかなか健闘しています。マスメディアは、「バーニーがミシガンで一勝したところで大勢は変わらない」とかのうのうと言ってますが、今に見ておれという気持ちです。意外なのは、「社会主義」という言葉に、もはやアメリカ庶民もそれほどアレルギーがないかのようにみえることです。
「みんなの資本論」はながら見で、記憶が定かではありません。記憶に誤りがあれば、どなたか訂正してください。
Commented at 2016-03-11 10:09 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。


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