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内部留保を労働セクターに、配当金を政府セクターに、社会主義の導入へ

c0315619_1827323.jpg保育園の待機児童問題が関心と注目を集めている。今日(3/7)発表された毎日新聞の世論調査では、内閣支持率が前月から9ポイントも一気に下がり、特に女性の支持率下落が顕著な結果として表れていた。明らかに、国会で議論になった待機児童の問題が影響している。ひょっとしたら、参院選対策の補正予算の中に、待機児童解消のための保育所整備の交付金を増額する措置を打ち出して、選挙の目玉にしてくるかもしれない。補正予算の規模は5兆円と言われている。2015年度の保育対策の予算では、保育所等整備交付金は534億円だ。2015年度の本予算もほぼ同額だろうから、補正で500億円を追加すれば倍額となる。待機児童の問題が特に深刻化しているのは大都市の一部に限定されているので、予算を倍額にして世田谷や練馬などの自治体に配ることで若干の緩和にはなるだろう。保育園の問題を考えるとき、要件として考えなくてはいけない点が二つある。一つは、保育士の給料を上げないといけないことで、国の補助を増やすことで実現しなくてはいけないことである。そのためには財源が要る。もう一つは、少子高齢化の下では行政が保育所を増やしにくいことである。緊急対応は必要だが、将来的には設備過剰になって自治体の負担になる問題がある。



c0315619_18384641.jpg先々週の金曜だったか、報ステのコメンテーターで出演した古市憲寿が、この待機児童の問題解消のために消費税を上げて対応せよという発言をした。その前の週の金曜の報ステでは、子どもの貧困問題が特集され、阿部彩が出演して窮状を説明する場面があった。阿部彩がどんな問題解決策を出しているか、気になってネットを調べると、案の定、「子どもの貧困解消対策の財源として消費税増税は必要」と言っていて、「逆進性が高いと言うが、納税額は所得が高いほど多いという持論を述べたという情報があった。これは2014年4月19日の発言だから、税率を8%に引き上げた後のものだ。阿部彩は、子どもの貧困問題を解決する社会政策論として、「広く薄く支え合い」の消費税増税を提唱しているのである。古市憲寿にせよ、阿部彩にせよ、日本の社会学者は、社会矛盾の問題解決について、二言目にはサラッと消費税増税を言う。消費税税率を上げることがどれほど所得の低い層の生活に打撃を与え、貧困を加速化させるかについて注意と配慮がない。自分たちの言論が、官僚の世論操作の道具だということに気づいてない。官僚が消費税を増税するときに、左を切り崩すための有効な権威的説得装置が、岩波系学者による「広く薄く」の洗脳工作であることを自覚していない。

c0315619_18524818.jpg米国ではサンダースが社会主義を掲げて登場し、大統領予備選で善戦するという現実が起きている。日本でも、そろそろ社会経済の問題について、脱構築の社会学で対症療法を安直に語るのではなく、経済学の概念でラディカルに分析し、社会主義の原理を政策に応用することを試みたらどうかと、そう私は提案したい。消費税を8%から10%に引き上げたら、今度は子どもの貧困が5人に1人に増加するだけだ。消費税増税は問題解決にならない。三党合意から増税の前まで、唯一、一環して増税に反対した共産党は、8%への消費税増税が社会保障の充実のためではなく、法人税減税の財源作りのためである事実を暴露して批判していた。その政策指摘が正論だ。2011年の菅内閣のときからから策動が始まった「税と社会保障の一体改革」は、内容を精読すれば分かるとおり、社会保障を斬り捨てて消費税を上げるという政策体系になっている。社会保障を充実させるとか、高福祉中負担というのは嘘であり、財政難を理由にした一方的な負担増が列挙されたのが「一体改革」の中身で、それが政治決定されたのが2012年の三党合意だった。三党合意は、2011年の復興財源探しのときから始まっている。官僚と政治家とマスコミが一つになっての、選挙で民意を問わずに増税できる態勢作りだった。

c0315619_18542073.jpg私は、子どもの貧困にせよ、保育園の待機児童にせよ、介護の人手不足・施設不足と自己責任にせよ、その問題解決のためには根本的な政策転換をする以外になく、貧困を拡大する社会経済の構造に大胆なメスを入れ、社会主義的な外科手術をするしか救済できないと考える。それしか方法がない。唯一の現実的な解決策が社会主義の導入だ。敢えて言えば革命。問題解決のための財源は、「広く薄く」の消費税ではなく、354兆円の内部留保であり、年13兆円の配当金である。今、金子勝の「日本病」を読んでいるが、2014年度の配当金13兆円は、企業の純利益の4割の比率だと言う(P.51)。驚かされる。昔はこんなに高い比率ではなかった。配当で儲けようなどという不心得な株主はおらず、「おしん」で描かれていたように、あくまで定期預金がわりに長期保有して値上がりを待つ金融資産だった。添付資料では、2001年の配当金の総額は5兆円だ。小泉・竹中の構造改革で劇的に変わった。マルクス的に言えば、剰余価値の不払労働分が異常に搾取され、労働セクターから資本セクターに激しく移動している。これぞ新自由主義。純利益の配当金比率を3分の1に下げ、8兆円を仮に政府セクターに入れれば、要するに法人税増税だが、子どもの貧困と保育園と介護と年金の財源が生まれる。奨学金を給付型に変える財源が生まれる。

c0315619_1973675.jpg内部留保の空前の354兆円に至っては、私は他の左翼リベラルとは違って、ネオリベのイデオロギーに対する憎悪や仇憤の前に、わくわく嬉しくなる感覚を禁じ得ない。見事だと感嘆する。さすがに腐っても日本の労働者、恐るべき巨大な富の山を築いている。2013年から2014年の1年間に、何と26兆円も資産を増殖させていた。これは日本の労働者が汗水垂らして働いて溜めたカネだ。これもまた、剰余価値の不払労働の搾取の蓄積形態に他ならない。剰余価値の中で、投資にも回されず、公的セクターにも回されず、行き場もないまま資本会計に溜め込んだ利益剰余金が内部留保である。価値を生産するのは労働者であり、企業は従業員と社会のものでもあり、この蓄積した内部留保の運用と配分も、資本家たる株主だけでなく労働者と政府の意思決定が入ってよい。2013年から2014年の1年間に26兆円の資産増殖。GDPはゼロ成長なのに、これだけ内部留保に溜め込む利益を日本の企業は出している。これこそ、浜矩子の言う「老いらく国家」を実現する原資であり、物質的基礎に他ならない。理論上というか物理的に、日本は十分に「老いらく国家」が可能で、老老介護で疲れた夫が妻を殺して死ぬ必要はなく、「下流老人」社会の地獄と絶望を必然視する必要はない。内部留保の運用増殖分を労働者のインカムに回せばよいのである。

c0315619_19132757.jpg労働者の賃金に年20兆円を振り向け、消費と生産を拡大させ、パイを増やした上で所得税を徴収すればよいのだ。われわれが思い出さなくてはいけないことは、ほんの20年前までは、1人の世帯主が外で仕事をしてその収入で一家4人を支え、年収の5-6倍のマイホームを購入してローンを払い、2人の子どもを大学までやり、親の死を看取り、定年まで働いて貯金を貯め、退職金と年金で静かな老後生活を暮らすモデルがあったという事実だ。誰もがそのライフスタイルを当然視して生きる社会があった。1人の労働者の給料で所得税を払い、その所得税の総額が20兆円を超えていて、年金保険料を払い、生命保険料を払い、一家4人で中流階級の暮らしをしながら、家のローンを払ってもなお貯金をすることができた。それだけ労働者のインカムが十分にあり、また、負担がずっと少なかったということだ。35歳で550万円、45歳で650万円、55歳で750万円、くらいの平均的な生涯曲線があり、妻はパートをするしないを別に専業主婦という形が基本だった。マイホームの価格が年収の5-6倍相場だと言われていたから、昔は35歳で550万円くらいの年収だっただろう。最近は、マイホームが年収の何倍という話をすっかり聞かない。非正規の年収は正規の半分以下だから、とても1人の収入でマイホームは購入できないし、頭金を貯めることさえ不可能だ。

マイホームどころか、まともなライフステージのプランさえ思い描くことができない。20代で、奨学金の返済で人生を破綻させられる。ブラック企業の恐怖の中で生きないといけない。古代か中世の生き方だ。実質的権利において、奴隷とか農奴に等しい。日本経済のデフレの原因は、労働力商品の価格である賃金が切り下げられたことに起因していて、賃金すなわち購買力が他の消費材の市場価格を規定づけるから、全体の商品の価格が下がって行くのである。どれほど日銀が通貨供給量を増やしても、需要の中身である購買力が商品単価を限界づけてしまう。


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by yoniumuhibi | 2016-03-07 23:30 | Comments(4)
Commented at 2016-03-07 23:21 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 長坂 at 2016-03-08 01:42 x
保育園落ちた母親達に、ねぎらいやいたわりの言葉すらかけられない人が首相だという事だけでも日本は死んでいる。無策のままなら、「アグネス方式」で父親でも母親でも子連れ出勤するしかない。
朝日、岩波、学者先生達が旗を振る。先進国の中でも日本の消費税率は低すぎ、消費税は安定税収、日本企業の国際競争力に影響を与えない。膨張する医療費や格差貧困解消目的の社会保障の財源はとにかく消費税だと。5から8%になった時、年金しかない高齢者は1日2食を1食に、2品のおかずを1品に切り詰めざるを得なかった。10%になったらどうなるか?生存権より増税見越した駆け込み需要や膨れ上がる内部留保が大事?民主と維新の合流に何も期待しないのは、ネオリベ臭が強すぎるから。
Commented by PEACE at 2016-03-08 16:11 x
>2014年度の配当金13兆円は、企業の純利益の4割の比率だと言う(P.51)。驚かされる。昔はこんなに高い比率ではなかった。

これは株式持ち合いを解消したり、規制したりする動きがかなり大きくなったことも一因だと思います。投資家でなく企業がお互いの株を持ち合って支えることで経営を維持していたので、配当金も低くて済んだのでしょう。

>ほんの20年前までは、1人の世帯主が外で仕事をしてその収入で一家4人を支え、年収の5-6倍のマイホームを購入してローンを払い、2人の子どもを大学までやり、親の死を看取り、定年まで働いて貯金を貯め、退職金と年金で静かな老後生活を暮らすモデルがあったという事実だ。

これは終身雇用、年功序列、定時昇給といった日本型雇用が当たり前だった時代の話ですね。問題の解決には、すべての民間企業(総合職やキャリアなどは除いて)で日本型雇用を復活させれば良いと思います。
定年まで正社員として雇用してもらい、給料も役職も確実に上がっていくということが保証されているということは大変心強いことだと思います。将来への経済的な見通しが明るいので、消費が増えるでしょうし、結婚もしやすい、ローンも組みやすいとメリットは多いはずです。
小沢一郎が民主党代表時代にこの論を展開していましたけど、立ち消えにせず民主党には取り組んで欲しいんですけどね。
Commented by さくら at 2017-02-12 13:53 x
>さすがに腐っても日本の労働者、恐るべき巨大な富の山を築いている。2013年から2014年の1年間に、何と26兆円も資産を増殖させていた。

同感です。そして、その労働を可能ならしめている日本社会の経済的ポテンシャルにも気づかされました。日本は、やり方さえ間違えなければ、かつてに勝るとも劣らない豊かな国になれます。

消費税ではなく累進的所得税(法人税)を基本にすることが、資本主義経済において「社会主義」を実現する制度上の基盤だと思います。
消費税が導入される以前、日本は世界最強の経済大国であり、最も成功した社会主義国とも言われていました。


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