共産党のベタ降り - 「駆けつけ警護」を容認した民主・維新の安保法対案

c0315619_1738451.jpg2/19に5野党が共同で安保法廃止法案を国会に提出し、党首会談を開いて参院選で協力する方針を確認した。この席で、志位和夫が「国民連合政府」構想を脇に置くことを正式に表明、棚上げ宣言を行い、1人区での候補者を取り下げる「思い切った対応」をコミットした。先週末、このニュースがネットとマスコミで議論になった。左翼リベラルの論調は、「ようやくここに到達した」「市民が野党共闘を訴え続けた結果だ」「市民の力でここまで来た」「これからがスタートだ」という祝賀ムード一色で、今回の「野党共闘」の意義を強調する勝利感で溢れている。だが、この政治は本当に「勝利」と呼べるものだろうか。私は今年に入ってから、共産党・市民連合の「野党共闘」の不調を論じ、左系マスコミが「熊本型」の順風を宣伝する中、共産党は1人区でベタ降りするか、突っ張って独自候補で戦うか、二者択一に追い込まれるだろうと辛口の予想を述べてきた。民主党との間で政策合意を成立させ、「熊本型」の候補擁立を全国展開するのは困難と言ってきた。予想的中で、ベタ降りの結果となった。熊本以外の1人区で共産党が応援することになる候補は、すべて民主党が擁立した公認候補か、民主と社民が推薦を決定した候補だ。市民連合は全く関与していない。



c0315619_17382259.jpgその候補の適性や政策について、共産党・市民連合は何もチェックしないまま、自らの候補として担いで街頭で支持を訴えることになる。例えば、典型的な例として、直近の京都3区補選に着目すれば、前原誠司の子分で軽薄な反共小僧の泉健太を、市民連合と京都の共産党は全力応援しないといけない羽目になる。共産党が選挙区で候補者を降ろすとは、そういう屈辱的な事態の甘受だ。毎日の記事を見ると、共産党は32選挙区の全部で立候補を撤回する方針で、まさに「思い切った対応」だが、選挙区の有権者には戸惑いや失望や不満も少なくないだろう。民主党と共産党では基本政策が全く違う。TPP政策が違う。消費税の対応も違う。原発政策も違う。TPPについては、共産党は断固反対だが、「バスに乗り遅れるな」とTPP加盟を扇動したのは菅直人だった。消費税10%についても、共産党は断固阻止だが、民主党は「一体改革」の当事者で、もし安倍晋三が再び増税延期を公約にすれば、三党合意の立場からそれを無責任だと批判する構えでいる。軽減税率を外せば賛成だろう。消費税とTPPをめぐって民主党は苦い分裂を経験した。原発政策については、民主党は規制委が安全確認した原発は再稼働OKであり、共産党は再稼働反対で即廃炉の立場だ。

c0315619_17383641.jpgTPP、消費税、原発。国民生活に直結する重要な基本政策で民主党と共産党は真っ向から対立していて、二党の政策は水と油である。これらについて交渉と調整をせず、「反安保」の標語だけで無造作に選挙共闘を組むことが、果たして国民に対して責任ある「政策合意」と言えるだろうか。「野党共闘」候補として共産党の推薦と支援を受ける候補は、有権者に向かって三つの基本政策をどう説明するのだろうか。普通に考えれば、2月よりも4月が、4月よりも7月の方が、TPPと消費税と原発について有権者の関心が高まり、選挙の争点として重視される環境になっていると思われる。安保法制への関心の度合いは現在よりも相対的に低くなり、TPPや消費税や原発について争点化を求める意識が高まっているだろう。3.11のマスコミ報道では原発が焦点になる。年に一度、この時期に原発の議論が活発になる。4月の北海道5区補選では、泊原発の再稼働が論点に浮上する可能性がある。そしてこのままでは、選挙区の有権者は、4月の補選と7月の参院選で、TPP反対で消費税10%阻止で再稼働反対の候補に投票できなくなる。受け皿を失う。従来は、落選確実であっても共産党が受け皿になってきて、選挙で民意を拾う役割を果たしてきた。有権者に選択肢が与えられてきた。

c0315619_17385068.jpg共産党が候補を降ろし、民主党候補に投票せよという構図になると、有権者は各主要政策(TPP・消費税・原発)への反対の民意を示せなくなる。こうした民主主義政治の不全を避けるためには、共産党と民主党が政策を調整し、二党が妥協してシングルボイスの共通公約を示さないといけない。それが政策合意の意味である。一部の共産党関係者から、北海道5区では両党で協定文書を作成したのだから、十分に政策合意しているではないかという強弁が聞こえるが、そんなアリバイ主張を有権者が納得するはずがない。5区補選で公表された協定文書は、単に今回の中央での党首会談での選挙協力の大義をなぞっただけの代物で、「安保法の廃止」だけが書面になったものだ。TPPと消費税と原発を争点と考える有権者は混乱するばかりだろう。特に北海道ではTPP政策への関心が高い。3月にはTPP関連法案の閣議決定がある。予算が成立した後の後半国会では、TPP関連法案と大型補正が論戦の主役になるだろう。北海道は特にそうだが、1人区の地方県はTPPへの注目が都市部より強いことは言うまでもない。共産党と市民連合は、第一次産業に従事する有権者に、民主党候補に鼻をつまんで投票せいと言うのだろうか。6月の参院選のテレビ討論では、民主と共産の政策不一致が問題になるだろう。

c0315619_173941.jpg今、「野党共闘」が賑々しく喧伝されるばかりで、この政治の経緯がどうだったかが見落とされている。整理しよう。もともと、共産党が9月19日に「国民連合政府」の構想を打ち出し、合意せよと民主党に迫ったのが始まりだった。11月には市民連合が立ち上がり、参院選の1人区で「野党共闘」を実現して勝つと意気込んで運動を始める。めざしていたのは「熊本型」、すなわち下からの候補者選びであり、「熊本型」の政策合意と選挙協定を32選挙区で実現することだった。ところが、大阪W選で「オール大阪」候補が負け、そこから政治の潮流が変わる。12月になり、熊本以外に成果が広がらず、1月には行き詰まって「国民連合政府」を断念せざるを得ない情勢になった。1月初旬、市民連合は、「野党共闘」の無所属候補が当選後に「政治団体」を作って院内活動する方式を模索し、選挙運動においても民主党が丸抱えする形ではなく、各党が応分に負担する、政党から独立した完全無所属候補の姿を追求していたが、その提案を強気の民主党が拒否、各選挙区に続々と独自候補を擁立して既成事実を固めて行った。無所属候補であっても、民主党が擁立推薦する候補であり、選挙の費用は民主党が全額拠出、当選後は民主党に所属してもらうのだと言って市民連合をはねつけていた。この時期、中四国の合区や北海道5区で揉めていたのはこの問題で、共産党・市民連合はなお粘っていた。

c0315619_17391596.jpg共産党・市民連合が望みを繋いだのは、1月31日の宜野湾市長選と八王子市長選で勝ち、2月7日の京都市長選で勝ち、劣勢の状況を挽回、逆転させることだった。だが、この三つの選挙を想定外の大敗で落とし、結局、共産党・市民連合は民主党に何も交渉の条件を出せず、ベタ降りを余儀なくされる立場に押し切られてしまう。政策合意もできず、永久無所属の要求も容れられず、単に「安保法廃止」の大義だけが残る結末となった。政局(権力闘争)的に見れば、共産党・市民連合の惨敗であり、白旗の無条件降伏である。SEALDsを押し出した選挙では四戦全敗となり、「熊本型」は熊本1県だけに止まった。もっと重要で看過できない点だと思われるのは、先週(2/18)、民主と維新が共同で提出した安保法制の対案だ。その中身を見ると、驚くことに、周辺事態法改正案の中で、米軍以外の軍への支援も可能にしてしまっている。安保条約を結んでない豪州軍にも、米軍と同じように自衛隊が支援できるようにした。さらに、何と、あの「駆けつけ警護」まで認めている。「駆けつけ警護」は、昨年の安保法制の政局で大きな争点になった問題の一つで、安保法制に反対するマスコミ報道は、こぞって「駆けつけ警護」の危険性を指摘、自衛隊が紛争に巻き込まれ、武装勢力だけでなく現地住民を殺傷する可能性に警鐘を慣らしていた。

c0315619_17392764.jpg明らかに、国民が安保法制に反対する中身として、「駆けつけ警護」への反対があったはずだ。ところが、民主党は対案で「駆けつけ警護」を可能としたのである。恐るべき、言語道断の、憲法9条違反の立法行為ではないか。こんな対案を平然と国会提出した民主党の安保政策を、共産党は容認すると言うのだろうか。「駆けつけ警護」を法制化する民主党候補に、選挙区で一票入れろと市民連合・共産党は有権者に言うのだろうか。信じられない。さて、それでは、4月の補選がどのような結果になるか予想しよう。私の見方は、もし株価が1万5000円の水準で維持されていれば、宜野湾や八王子や京都のトレンドと同じく、大差で自公候補が勝つだろうというものだ。株価が下落せず、安倍内閣の支持率が現状のまま推移したとき、選挙の争点は、安保法廃止の大義で民主と共産が組んだ「野党共闘」の是非そのものとなる。それはすなわち、大阪、八王子、京都と続いたところの、SEALDs運動に対する有権者の審判の続きとなる。市民連合の運動に対する賛否の民意の表明になる。SEALDs運動は国民に共感されておらず、市民連合は国民に支持されていない。そのことが、選挙結果として四度明らかになるだろう。一方、もし株価が1万4000円を割る事態になれば、争点はアベノミクスの功罪になり、「溶かした年金」の責任問題となる。こうなると、民主候補が勝つ。

株価が大きく下落した状況では、民主候補は共産票を必要とすることなく、無党派の浮動票が流れ込んで勝つ展開となり、安保法もTPPも原発も争点から外れるだろう。


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by yoniumuhibi | 2016-02-22 23:30 | Comments(0)


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