アベノミクスの出口戦略 - 円と日銀と公的年金を潰す金融TPPの末路

c0315619_19105253.jpgアベノミクスの金融緩和の出口戦略をどうするか。巨大に膨らんだマネタリーベースをどうやって圧縮し、円暴落のリスクを回避し、ハイパーインフレの危機を未然に防ぐか。一つの方策として、3年間の日銀の「異次元緩和」が辿った道を逆に戻る考え方がある。日銀当座預金に溜め込まれた200兆円超の市中の残高を、順次、国債に置き換えていくことである。国債を日銀から市中に流し、市中から日銀券を回収する。回収した日銀券を会計処理で償却する。こうすると、マネタリーベースはアベノミクス発動前の水準の150兆円に戻り、ハイパーインフレ発生の芽を原理的に摘み取ることができる。無論、このオペを可能かつ有効にするためには、マイナス金利を中止して元に戻し、国債を抱えていても市中の収益が上がる原状に復さないといけない。そうでないと市中は国債を買わない。要するに、3年前に戻すということであり、白川方明の時代の健全な日銀と日本の金融市場に戻すということだ。私はこの方向と選択がベストだと思うが、この政策を実行すると市場は確実に円高株安になる。1ドル80円をつけ、日経平均は8000円になるだろう。東証で株転がしをしているハゲタカとか、円高で収益に打撃を受ける大企業は、この政策には反対に違いない。



c0315619_1911558.jpg本来、中央銀行の使命は通貨と物価の安定を守ることで、金融システムを健全に維持し、国民経済と国民生活を混乱や危機から守ることである。その原点に立てば、ハイパーインフレの不安要因こそ消さなくてはならず、マネタリーベースを圧縮しなくてはいけないし、政府債務(国債発行残高)を縮小しなくてはいけない。ハイパーインフレの警告は、私がブログで言うと、すぐに罵倒趣味で侮辱中毒の左翼方面から「陰謀論」の誹りが始まるが、私だけが指摘していることではなく、金子勝も言い、大前健一や池田信夫も言っていることだ。一方で、日銀はいくら国債を買い続けても大丈夫だという楽観論もある。その楽観論は、現状では妥当していて現実的な認識として通用しているけれど、私にはそれは原発の安全神話と等しいものに思えてならない。事故が起きたとき、それは安全神話だったと誰もが認める。だが、事故が起きたときは取り返しのつかない事態になっている。事故が起きる前、広瀬隆や小出裕章は「トンデモ」扱いをされ、科学界で迫害され排斥され続けた。異常な政府債務やマネタリーベースについて、過去と現在に何も起こってないから未来もずっと安心安全だというのは、あまりに安易な思考というものだろう。

c0315619_19111592.jpgギリシャ危機に端を発して、2011年から2012年、欧州でソブリン危機が発生したことがあった。フランスやイタリアの国債への信用不安が市場で煽られ、格下げされ、国債の利回りとCDSが高騰し、ヘッジファンドが仕手戦攻勢に出て市場を混乱させた事件があった。一応の収束はしたものの、欧州での金融不安は未だに燻り続け、金融(統合)と財政(分散)の矛盾も問題解決の方向に至っていない。あのとき、日本でも他人事ではないという議論が起きたが、結局、国債も通貨もじゃぶじゃぶ際限なく発行するアベノミクスの方向に操舵された。異論は特に起きず、3回の選挙で3回ともアベノミクスを争点にして民意で信認され、金融緩和とリフレ策がこの国の絶対的命題になってしまっている。アベノミクスが始まった頃にマスコミでも登場したところの、反論としてのハイパーインフレ懸念説は、最近は全く耳にする機会がない。今回のマイナス金利でも、市場が裏目に出たのだから、失策だったのだから撤回して元に戻せという声が出るかと思いきや、日銀の責任を問う正論は上がらず、マイナス金利幅拡大に備えて金庫を買おうというような倒錯した報道になっている。5円以上も円高になったのに、経済界が黒田東彦を批判しない。

c0315619_19112456.jpgここで私の単純な見通しを書くと、1ヶ月に1000円ずつ日経平均が下がり、同じく1ヶ月に2円ずつ円が上がり、半年後に株は1万円割れを起こし、為替は1ドル90円になるというものだ。アベノミクス・バブルの崩壊である。参院選の頃は、株価が3年前の水準に戻ることでアベノミクスの失敗が明白となり、その認識がマスコミ報道の基調になっているだろう。そこまで株価が下落する基本要因は何かというと、それは原油安である。原油は1バレル30ドルの線まで下がった。2年前の90ドル台の3分の1の水準だ。原油バブルの崩壊と言っていい。この価格が持ち直さないと、NYダウも下降トレンドを免れない。原油バブルの崩壊は、中国経済の高度成長の終焉によってもたらされたもので、中国に代わる大きな成長源がない以上、原油相場を元の高値に戻すことはできないだろう。それは、他の商品(工業原料)についても言える。ここで指摘して注意を喚起したいのは、2008年に起きた世界金融危機の中身である。それは、リーマンショックという言葉で概念化され、一般の表象になっている。だが、内実を腑分けすると、そこには三つの要素があったことが分かる。(1)住宅バブル崩壊、(2)サブプライムローン危機、(3)リーマンブラザーズの破綻、の三つである。

c0315619_19113524.jpgこの三つの要素はそれぞれ関連しているけれど、一つ一つは同じものではない。(3)のリーマンブラザーズの破綻は2008年9月15日の出来事だった。(2)のサブプライムローン危機は2007年から表面化し、デリバティブ商品のデフォルトに連鎖して金融市場で深刻なパニックを起こしていた。(1)の住宅バブルの破裂は2006年の後半で、この時期に米国の住宅価格はピークから下降に転じていた。米国に空前の好景気と爆発的な消費をもたらしたところの、長い長い住宅ブームが終焉した。あのとき、米国市民は高騰を続ける住宅をローンで購入し、それを担保にして金を借り、高級車を買って贅沢三昧の生活を楽しんでいた。日本の80年代末の浮かれた世界が現出していた。こうして見ると、(1)(2)(3)には時間差があることが分かる。NYダウの推移を見ると、2007年の前半は順調に上がっていて、後半から下がり始めたことが確認できる。サブプライムローン危機によって金融市場が縮小を始めた。(1)(2)(3)の時間差という問題を現在に当て嵌めるとどうなるか。明確に言えるのは、(1)の住宅バブルの崩壊が原油バブルの崩壊に該当するということだ。つまり、(1)はdoneである。(2)と(3)については今のところそれが何か不明であり、(2)と(3)がこの構図どおり再現するのかどうかも分からない。

c0315619_19114633.jpgハイイールド債の事故を言う者もいれば、石油企業の不全を言う者もいる。欧州での銀行倒産が先に起きるという予測もあれば、日本市場の暴落が世界金融危機に至るという見方もある。(2)と(3)は未知の領域だが、一つ言えることは、NYダウの下降トレンドはすでに始まっていて進行しているということだ。昨年前半1万8000ドルを超えていた株価が、上下の変動をしながら基本的に下落している。これは、原油バブルの崩壊が影響したものであり、原油価格が勢いよく上昇を続ける局面にならないかぎり、1万8000ドルの線を回復することはないだろう。原油価格が30ドルに張り付けば、必ず何かの形で矛盾が表面化して(2)(3)の破綻に繋がる。と、普通の人間は考えるのであり、投機家も含めてそうした想定が合理的なものだ。NYダウは、半年後に1万3000ドルの線に下落しているだろう。米国は日本と較べてはるかに実体経済が好調であり、バーナンキからイエレンと続いたFRBの政策も特に誤った判断や調節があったということはなく、株のバブルが崩壊すると言っても、アベノミクスのような矛盾が爆発するという可能性は小さい。日本市場の場合は、他と較べてリスク要因が大きく、アベノミクスや黒田東彦への信用失墜が、すぐにボラティリティを高める影響に繋がって行く。NYダウよりも下落幅は大きく出るだろう。

c0315619_19115799.jpg最後に、本当のところで、黒田東彦や浜田宏一はどういう出口戦略を考えているのか。非常に言いにくいことで、これを言うとまた「陰謀論」の誹りが返ってくるので勇気が要る直観の吐露だが、おそらく彼らの出口戦略の真相は、日銀と円を破綻させることなのだ。日本の通貨をドルにすることが、彼らの最終的な問題解決として念頭にあるのだろう。そもそも、TPPとは、日本人が米国人と同じ経済生活をすることであり、同じものを食い、同じものを着て、会社では英語を使い、学校も病院も徐々に英語でというものだ。植民地市場圏になることである。植民地が無理に独自通貨を持つ必要はない。FRBが欧州のECBのようになり、域内として組み込んだ日本や韓国や東南アジアでドルを使わせる。それが浜田宏一が構想している出口戦略だろう。だから、日本銀行のバランスシートを毀損しても問題を感じないのであり、年金基金を食いつぶしても何も不都合はないのだ。米国人のように、株を転がして個人の資産を作れと言っているのであり、老後資金は公的年金を頼るのではなく、株の自己責任で自分で手当てしろという発想なのだ。浜田公一や黒田東彦のような新自由主義者にとっては、日本に残る金融システムの公的な制度や慣習は、悪しき社会主義の遺物なのであり、一掃して純然たる米国型に変えることが幸福と理想なのである。

日本の中小の金融機関は、どんどん潰そうというのが彼らの思惑で、日本の中小金融機関がTPPの日本の農家になるのが、彼らの描くアベノミクスの将来図である。


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by yoniumuhibi | 2016-02-19 23:30 | Comments(2)
Commented at 2016-02-19 22:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by たけ at 2016-02-22 21:15 x
何度も記事を読み返しました。

マイナス金利を元に戻せないのかという話はテレビ新聞、ネットでも目に触れず唯一このブログだけです。

報道やお抱えファイナンシャルプランナーが住宅ローンの金利が下がって借金と教育費の支払いに困窮している現役世代に恩恵があるとか、消費税が上がる前の住宅の買い時だとか言ってますが住宅は安倍政権で高騰していて東京周辺では既に高嶺の花で恩恵なんて何もありません。

リーマンショックという言葉で分かったように語っていましたが、3段階の話はとても分かりやすく、他のサイトを回った後でハイイールド債、シェールガス企業、ドイツの銀行等も理解が深まりました。


日経平均1万円割れと円ドル相場200円で、日本企業を買収してしまえばフランスのルノーと日産の関係のように利益を献上し続けることがアメリカ企業と日本企業にも出現してしまうのではないかと想像するとゾッとします。


陰謀論は書きにくいと言いつつTPPの終局に米国の植民地化を述べて頂いたのにコメントが全く無いことが不思議です。

中国との開戦もそうですが日本人の想像力の無さ、無関心さに日本国の行く末を案じてしまいます。


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